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250:Sランク攻略

 それは数体のキラータートルである。


 ガラフェゴルンの周囲を守護するかのように配置されていたキラータートル。その中に、まるで別動隊が突っ込んでくるかのように数体のキラータートルが突出してきたのだ。


 他のキラータートルは、同じモンスターだということでそれほど警戒はしていない。数体のキラータートルは、その群れの中を突っ切っていき、先に浮かんでいるガラフェゴルンの腹部へと接近していく。


 だがその時、突如ガラフェゴルンの頭部や四肢が甲羅の中に引っ込み、甲羅自体が激しく回転し始めたのだ。


 そのせいで巨大な渦巻きが生まれ、海中にいるキラータートルたちもまた渦巻きに飲み込まれて身動きを失う。当然ガラフェゴルンに近づいていたキラータートルたちもだ。


 このタイミングでの動き。ガラフェゴルンは、海中から接近してくる気配に気づいていたのかもしれない。だからこその迎撃態勢だったのだ。


 つまりガラフェゴルンは、ソルが囮として放たれ、本命が海中からやってくることをお見通しだったのであろう。


 さらにその直後、キラータートルの姿が、一瞬で人形へと形を変える。それは間違いなく日呂が有する《コピードール》だった。


 ガラフェゴルンに接近していたキラータートルは、キラータートルに扮していた日呂たちではなかったのである。

 それはガラフェゴルンの判断が間違いだったことを示す。


 では一体日呂たちはどこにいるのか。

 回転を止めたガラフェゴルンは、その直後にギョッとする光景を目にしてしまう。


 何故なら自身の目の前に、自分そっくりのモンスターが座していたから。

 まるで大きな鏡があるかのように、ガラフェゴルンを睨みつけている。


 さすがのガラフェゴルンもこれには驚きを隠せないのか、しばらく様子見をするかのように動かない。

 だが忘れてはいけない。空にはまだソルたちが攻撃の隙を窺っているのだ。


 その中で、残っていたすべてのソルがボボンッと白い煙に包まれ、一瞬にしてシキの姿へと変わる。


「「「「――《爆手裏剣》!」」」」


 シキのお得意の触れた瞬間に爆発する手裏剣の乱舞。それらが一斉にガラフェゴルンに向けて放たれた。


 ガラフェゴルンは、もう一体の自分からあまり意識を離すことができず、このままではシキの攻撃をその身に受けてしまう。


 ガラフェゴルンもやってくるであろう衝撃に身を固めるが、手裏剣が何故か身体に突き刺さらず、周りの海や氷床に当たり爆発していく。


 これだけの大きな的を外したとは思えない。ということはシキの目的は最初からガラフェゴルンではなかったということ。

 またも困惑するガラフェゴルン。


 相手が何をしたいのかガラフェゴルンには分からないのだ。攻撃を当てるチャンスだったはず。大したダメージを与えられずとも、初めての有効打に成り得たのにもかかわらずだ。


 しかももう一体のガラフェゴルンは、ただ睨みつけてくるだけでも何もしない。そのこともガラフェゴルンの精神を揺さぶるには十分だった。

 さらに攻撃をしたシキたちが、今度はこぞって逃げ出していく。それもまた意味不明に思えるだろう。


 だがその時、ガラフェゴルンはようやくハッとして気づいた。

 何者かが、遥か上空から直下してくる気配を。


 雲を突き抜けて流星のごとく向かってくる正体は――カザだった。


 カザは六本ある腕に、それぞれ刀を有している。

 そして滑空しながら身構え――。


「――《六刀・麒麟》」


 刹那、カザの身体から溢れ出すは紫雷。バチバチと音を鳴らせて広がっていき、次第に伝説の麒麟の姿へと変わる。


 空から翔けてくる天馬がごとく、麒麟は真っ直ぐガラフェゴルンのもとへ降りていく。


 先の《爆手裏剣》から発せられるオーラとは比べ物にならない気配を感じたのか、ガラフェゴルンは迎撃態勢に移り、《命光閃》でもって駆逐しようと試みるが……。


「グルオォォォォォォォォッ!」


 もう一体のガラフェゴルンから凄まじいまでの咆哮が迸る。

 当然この中で容赦ならぬ一番の敵だと思い込んでいるもう一体のガラフェゴルンに、再び意識は向いてしまう。


 もし本当にSランクモンスターであるならば、上空にいるカザより圧倒的に警戒すべきは目の前にいる存在だからだ。


 それにガラフェゴルンの脳裏には、先程のシキの攻撃のこともある。カザの攻撃もまた自分には届かないのではと半ば考えても仕方ない。


 故に楽観視してしまう。カザの攻撃は自分には当たらないし、当たったところでたかがAランク以下の力だ。どうということはない、と。


 何の障害もなく楽々ガラフェゴルンのもとへ辿り着いたカザ。いや、雷獣麒麟。それが《氷甲籠》の頂点に突き刺さった。


 瞬間、物凄い雷撃が周囲に迸り、海中にもそれが届き、キラータートルたちが感電したのかプカプカと浮き始める。


 しかしガラフェゴルン自体はビクともせずに、ほくそ笑んでいるような表情を見せていた。やはり大したことはないとでも思っているのだろう。

 しかしそれがガラフェゴルンにとっての想定外へと繋がってしまう。


 攻撃を受けてビクともしていないはずの《氷甲籠》だったが、驚くことにヒビが入り始めたのである。

 それに気づいたガラフェゴルンは、驚愕しながらも、このまま放置はできないと、カザの迎撃へと移っていく。


 《氷甲籠》が眩く輝くのを見たカザは、すぐさま攻撃を止めて身を翻して海中へと逃げ込んだ。

 すでにキラータートルは失神しているのでカザへの襲撃は来ない。

 しかし危うい敵を払った事実に、ガラフェゴルンはホッと息を吐く。


 ――その直後のことだった。


 《氷甲籠》の頂点を突き破り、そこから何かが飛び出してきたのである。


 そしてそれは――――翡翠色の羽毛を纏ったオレミアだった。

 さらにその背には、日呂とソルの姿もある。






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