187:百合っぽいだけだった
「礼なら別にいいよ。謝礼はもらったしね」
「ほら、アイツもそう言ってるし、もういいんじゃない? それに男に感謝することなんてないわよ!」
「っ……ダ、ダメだよ……だって、命を救ってもらったんだもん……。男の人とか女の人とか……関係ない」
「……だったらさっさとやるべきことをしなさいよね! アタシはいつまでもこんな男臭い場所にいたくないんだから!」
「うぅ……ごめんねケイちゃん。いつもわたしに付き合ってもらって迷惑かけて……」
「迷惑かけたのはアタシの方でしょ! ああもう、アンタも黙ってこの子のしたいことに付き合いなさいよね!」
やれやれ。だったらさっさとやることを済ませてもらいたいものだ。
釈迦原に背中を押された凛羽が、目を泳がせながらも前に出てくる。
「あ、あの……その、えと……あのあの……」
男が苦手というのも事実なようだ。
俺は言われた通りに黙って成り行きを見守る。
すると凛羽は、何度か深呼吸をしたあと、恐る恐る俺の眼を見つめてきた。
そしてバッと頭を勢いよく下げる。
「わ、わたしを助けてくださってありがとうございましたぁっ!」
後ろで「よくやったわ」と言わんばかりに、釈迦原が温かい目を凛羽に向けている。
「さっきも言ったように別に構わないよ。俺はただ依頼を受けてこなしただけだからね」
「そ、それでも! ……それでもあなたのお蔭で……まだケイちゃんと一緒にいられるようにしてもらったから」
「……そう。なら素直に礼を受け取ろう。受け取らなければ、君の後ろにいる猛獣に食われるかもしれないからね」
「ちょっとどういうことよそれ! ふざけんじゃないわよ! 何でアタシが男のアンタなんかを食べないといけないのよ!」
「ほう、なら女の子は美味しく頂くと? ……同性愛者かい?」
もしそうなら初めてそういう人種に遭うことになったが。
「違うわよっ! あ、けど男が好きってわけでもないから! 男なんてしょせんヤることしか考えてないだけのサルなんだから!」
あ、違うんだ。
別に百合だろうがホモだろうが、偏見を持っていないので、どっちでも良かったのだが。ただ俺が男ということもあるのか、やはり男同士というよりは女同士の方が清潔さを感じてしまう。これは自分が女だったとしても同じように思うのだろうか。
「……女性がヤるなんて言葉をおいそれと口にしない方が良いよ?」
「うっさいわね! 余計なお世話よ!」
「ケ、ケイちゃん……わたしもその……ちょっと下品だって思うよ?」
「なっ!? アンタはどっちの味方なのよ凛羽!」
「あぅ……ご、ごめんね」
どうも力関係は明らかに釈迦原の方が上らしい。
するとその釈迦原がキッと鋭い視線を俺に向けてくる。
「いい? アタシは男なんか絶対に信じない! 絶対よ!」
だがそのあとに「けど……」と続ける。
「……この子を…………助けてくれたことだけは感謝してる。……ありがと」
「……へぇ」
意外や意外、ちゃんと礼も言えるんだな……男に対しても。
「な、何よその顔は! 勘違いすんじゃないわよ! これは人として当たり前のことだから言っただけよ! ほら、もう行くわよ凛羽!」
「あ、ちょっと待ってよケイちゃん! あ、あの、わたしは沙庭凛羽っていいます! 本当にありがとうございました!」
慌てて自己紹介をしたあと、凛羽……沙庭は去って行く釈迦原を追いかけて行った。
まるで嵐のように騒がしい連中だ。とりあえずトラブルが起きたわけでもなかったのでホッとした。
「ああでも……スキルを調べられなかったな」
さすがにあの状況で《鑑定鏡》を使うのは怪し過ぎるし仕方ないが。
まあ、ここにしばらく居れば、また接触する機会もあることだろう。
今は大人しくその時を待つことにしよう。
もっとも、傍には恐らくあの釈迦原が常にいそうなので、なかなか難しいミッションかもしれないが。
それに……周りには監視カメラもある。俺が下手な動きをすれば、きっとすぐに疑惑の目を向けられ尋問されるだろう。
「ま、ジックリやるか」
俺はこうして、ひょんなことから『乙女新生教』の拠点でしばらく過ごすことになったのであった。
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