焦燥
何だろう、この気持ちは。
(どうして?何でこんなに、もやもやするの?)
「どうしたの?なんかぼーっとしてるけど」
「あ、ううん、なんでもない、水田くんって同じクラスのあのー、メガネかけてる人だよね?」
「そう、いいよねぇ…」
そうか、きっとそうだ。
穂海は好きなんだ。
私が彼女の思いに気づくと同時にグラウンドにも着く。
「んー、どこだろう?」
険しい顔をしながら、穂海は水田くんを必死に探している。
私も軽くグラウンドに目を向けると、ぱっとこちらを向いた水田くんと目があった、ような気がした。
「あ、あれじゃない?」
「あー!!ほんとだ!!」
穂海に教えてから彼女は興奮した様子でぴょんぴょんと跳ねている。
そこには私の憧れている青春そのものがあって酷く嫌悪感が私を襲った。
(あー、だめだめ、やめよう、)
こんな気持ちを抱いてしまう自分が許せない。結局、自己嫌悪に陥るのだ。
「穂海、私ちょっと戻ってもいい?」
「ん?あー、んー…あっ、いいよ」
少し悩んだ様子から、視界に別の友達がグラウンドで応援しているのに気づいたのか、許してくれた。
「じゃあまた明日ね」
「うん!気をつけてー!」
穂海と遠ざかるとともに心のもやもやも晴れてくる。
(嫌だなぁ、水田くんだよ、ただのクラスメイトじゃん)
私は自分の手をぎゅっと握りしめた。




