対角
平山先生が出ていった数十分後、続々とクラスメイトが教室に入ってきた。
穂海も朝が早いため、私が独りになる時間は少ない。しかし、それが有難くも迷惑だと感じてしまう私は贅沢なのだろうか。
「さなえ、おはよー」
「おはよう」
「朝から数学とか面倒くない?」
「うん、でも今やってるとこは結構好きだから楽かも」
「えっ、マジで??」
「いや、数学苦手だから他のとこは全然できないけどね。それに穂海のほうがすごいでしょ」
「そんなことないよ、大して変わらないと思う」
こんなことを言っている穂海だが、テストの順位では学年一桁代を維持している人物だ。自分がどれだけ努力してもそんな結果は残せないだろうから、こういう人を天才とか言うんだろう。
「天才が何言ってんのさー」
「やめてよ。それよりさ、放課後にちょっとグラウンド行こうよ」
「えっ、なんで、?」
私にとってグラウンドなんてあまり好ましくない場所だ。ましてや放課後なんて運動できる人たちが集まって、劣等感を増幅させる地獄のような所になる。私があからさまに嫌な顔をすると、穂見は慌てて詳細を話してくれた。
「いや、その、ちょっと見たい人がいて…」
「見たい人?」
「うん、だから付き合ってくれない?流石に美術部員一人で行くのは勇気が居るので」
「あー、んーー」
グラウンドでしている部活といえば
________サッカー部だ。
理由はよくわからなかったけれど、数ある部活の中から自然と浮かんできたのは、それだった。
(サッカー部といえば…水田くん)