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始隅
「はぁ、」
机には突っ伏しながらまた一つため息を吐く。静かな朝の教室は好きだが、何度も経験すると何も起こらなくて退屈になってしまう。
(平山先生が来たりしないかなぁ)
そんなことをぼんやり考えていると
ガラララと扉の開く音がする。
「っ!!」
バッと顔を上げて横を見ると平山先生が扉をあけてこちらを見ていた。
「な、なんですか?」
「これ。返しそびれてたから」
先生は近づいてきて私にワークを渡す。先週の課題を遅れて出したため、今返ってきたのだろう。
「ありがとうございます」
「それにしても早くね?」
「あはは。まぁ、人が多いの苦手なんで」
私がそう言うと先生は
「へー、以外」
「そうですか?」
「だっていっつも友達と居ない?」
自分の行動を振り返ると確かに殆どの時間、穂海と過ごしている気がする。
「んー、佐々木さんとかですか?」
「そう、まあそこそこに頑張りな」
「はいっ!」
「頑張りすぎんなよー」
最後にかけられた言葉にじわっと胸が熱くなる。
(やっぱり先生はわかってくれるなぁ…)
そんなことを考えながらも一生追いつけない背中を羨ましく思った。