始隅
(うわぁ、)
先週受けたテストが次々と返却される。その用紙を見る度に憂鬱な気持ちになり、自責の念にかられる。
(駄目だ駄目だ、こんなのじゃ、まだまだ…!!)
そう。こんな弱い点数しか取れない私は、なんの取り柄もないただの肉塊だ。
休み時間になり、穂海が早速こちらへと近づいてくる。
「さなえー、どうだった?」
「聞かないで…」
「あ、駄目だったの?」
悪戯な笑みを私に向ける彼女はなかなかに楽しそうだ。
「う、うるさいなっ、」
「えーー??いいのーーー?平山先生の教科だよ?」
「だから嫌なんだよっ」
彼女が名前を出した平山先生は私のお気に入りの先生で、それでいて
" 私の生きる意味 "
なのだ。
だからこそこの点数はマズイ。先生に土下座したいレベルだ。
そうして、一気に気持ちが沈んだところに次の授業は体育だ。運動神経が悪いため、体育を楽しめた経験はあまり無い。
(仕方ないか、なんとかやりきろう…)
「なんか暗くない?体育だから?」
「それもあるけどテストがぁ……」
「あー、はいはい。大丈夫だよー」
穂海は軽く私の背中を叩くと、別の話題を持ち込む。
「そういえばあの不登校だった人、退学したらしいよ」
「えっ?!本当に??」
「うん、なんか呟いてたよ」
初耳だ。
こうして私の知らないところで他人は別々の行動をしている。パラレルワールドに迷い込んだかのような感覚に陥るが、どうでもいいという結論に至るのが常だ。
私はいつの日からか「どうでもいい」が思考の癖になってしまっている。
これを使うたびに人間として心が腐る音がする。
止めたい。