あの日からとあの日まで
「来週、遊ぼうよ」
そう言って彼女は消えた。
「え、?」
訃報を聞いたのは翌日のことだった。
上手く噛み砕けなくて、飲み込めなくて。
目線だけを彼女の机に向けると、そこには何も無かった。ただただ無機物な物があるだけで、生は存在していなかった。
「美帆、嘘言わないでよ」
「言ってない、本当だよ」
目の前の友達を見れば嘘でないことはわかっていた。なのに。
「ごめん、一限目休むわ、言っておいて」
「うん…」
何だろう、何だろう。
屋上前の階段に座り込んで、頭を抱える。
「ずるいよ、さなえ」
ただその考えが浮かんだ。何故なのかは自分でもわからなかった。
ただ一番に感じることはそれだけだった。
あの日、授業を初めてサボった。
あの日からどこに居ても生きている感じがしなかった。
あの日から彼女に、さなえに嫉妬心を抱くようになった。
あの日から一年。私は17歳になった。
一年間、さなえの机には花が置かれていた。それを見る度に無意味だと感じた。だってそこには、人間のエゴしか詰まっていない。それでも他人は表面だけを汲み取る。
「穂海ー、数学の予習やった?」
「当たり前じゃん。やってなかったら自分が困るだけだし」
「えー、裏切り者ー」
美帆はあれからよく私に付き添うようになった。でも、それが気持ち悪いというか気味が悪いというか、そう感じることがある。
もとはといえば、私の隣を歩いていたのはさなえだ。
だからこそ、ただの違和感だと思うようにした。
ある早朝、ふと寂しくなってさなえの席だった場所に行ってみた。もうそこには別の所有者がいて、彼女が存在したことなんて無かったかのようにされていることが、酷く腹立たしかった。
「さなえ」
その名前を口にするのは久しかったが、じっくりと馴染んだ。
時計を見てそろそろ他人が登校してくる頃だと気づいて、机を撫でる手を止め歩き出すそうとすると、
" もういいんだよ "
そう聞こえた気がした。それでも振り返ることは無かった。




