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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第70話 城塞都市の攻防戦~敵機はドコよ?~

 イーグニース共和国から、リースディア帝国になされた宣戦布告。


 それにタイミングを合わせ、元ルータス第3王女エリーゼ・エクシーズは挙兵した。


 自分こそが、ルータスの女王であると名乗って。




 イーグニース共和国軍は、高い戦闘力を誇る獣人傭兵マシンゴーレム部隊を(よう)していた。


 エリーゼ女王を(ひっ)(とう)とするルータス解放軍は、戦力不明。


 これら2勢力による連合軍は、3つの帝国軍駐屯地を壊滅させた。


 宣戦布告から、(わず)か2時間以内にだ。


 あまりの早業に、帝国軍上層部は(しん)(かん)した。




 物量で勝るはずの帝国軍であったが、かなり押されている。


 共和国軍制式採用機、MG-2〈ユノディエール〉の運動性。


 その性能を()かんなく引き出す、獣人傭兵部隊の優れた操縦兵(パイロット)達。


 そしてルータス解放軍に所属するという、得体の知れない()()のマシンゴーレム。


 これらが中心となって展開される電撃戦により、苦戦を強いられていた。




 連合軍は、帝国軍の重要な拠点を次々と制圧。


 ()(ちく)の勢いで、戦線を北上させていく。


 かつてルータス王国の首都であった、エランに向けて。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 ルータス王国の南端に位置していた、サーブラウス公爵領。


 その中でも特に城塞都市ダスカンは、交易の中心地だった。


 帝国の支配下となった(あと)も、要所である。


 進駐する帝国軍も、かなりの戦力が割り当てられていた。


 配備されているマシンゴーレムは、GR-1〈リースリッター〉とGR-3〈サミュレー〉が合わせて40機。




 そのダスカン都市防壁から、北に約20km(キロ)離れた山岳地帯。


 標高1000(メートル)程の地点に、1機のマシンゴーレムが伏せていた。


 そのマニピュレーターには、長大な狙撃砲が握られている。




「おー。手ごろな(まと)が、いっぱいおるねー。こら、弾が足りんばい」


 緑色に塗装された全身。


 カメラである〈クリスタルアイ〉は、乗り手と同じく()()


 長距離狙撃特化型マシンゴーレム、XMG-3〈サジタリィ〉。


 その操縦席(コックピット)で、イースズ・フォウワードは楽しげに(つぶや)いた。




「え~? ご主人、そんなにいっぱい仕留める気? オレっち、面倒くさいなあ~。弾ももったいないし、5機ぐらいで()めとかない?」


 コックピットの(すみ)で、羽の生えた(たぬき)()だるそうにボヤく。


 風の高位精霊、フーリだ。


 作戦開始直前だというのに体を丸め、完全に「寝」の体勢だったりする。




イースズ(フリーダム4)。フーリの言うことも、(いち)()ある。俺達の仕事は、(せん)(めつ)じゃない。陽動だということを、忘れるな』


 魔道無線機から流れる、(よく)(よう)のない声。


 ルータス解放軍の指揮官である、(やす)(かわ)(けん)()だ。




『それと建造物への被害も、なるべく抑えろ。お前のことだから、隠れた敵機を壁ごと撃ち抜くとか平気でやりそうだ』


『わかっとるよ、ケンキさん(フリーダム1)。そんじゃ、せいぜいパニクってもらうけんね』






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 帝国の支配下に置かれる前。


 まだこの地を、ルータス貴族サーブラウス公爵が統治していた頃の話だ。


 首都エランが陥落したという知らせを聞いた公爵は、即座に住民を避難させ始めた。


 そして帝国軍がダスカンに迫ってくると、あっさり城塞都市を明け渡し(てっ)退(たい)したのだ。




 当初、帝国軍は喜んだ。


 「臆病な公爵のおかげで、簡単に城塞都市が手に入った」と。


 しかし彼らは、都市内部に入ってみて(がく)(ぜん)とする。


 食料や飲料水、武器、衣類などの活用できそうな物資は、跡形もなく持ち去られていた。


 さらに城門の開閉装置や上下水道は、完全に破壊されていた。


 道路は馬車が通行できぬよう、土魔法で念入りに耕されているという徹底ぶり。




 そして帝国軍が駐留を始めると、さらに面倒な事態が起こった。


 密かに掘られた地下通路から、撤退したはずの公爵軍精鋭たちが夜な夜な侵入。


 チクチクと、いやらしいゲリラ戦を展開したのだ。




 やがてサーブラウス公爵は、山林に潜伏していたところを捕らえられ、処刑された。


 だが彼の判断により、帝国軍は長期の足止めを喰らったのだ。


 その結果、多くの住民をイーグニース共和国へと脱出させることに成功する。




 公爵の城は特に破壊されてはいなかったので、帝国進駐軍はそのまま司令部として使おうと考えた。


 しかしいざ城に入ってみると、公爵の嫌がらせが炸裂。


 「ようこそ! 帝国のマヌケ諸君」と書かれた張り紙が、帝国軍を出迎えた。


 さらに城の至るところに巧妙で悪質な魔法トラップが仕掛けられており、多数の犠牲者を出すこととなる。


 魔法トラップは発動後に必ず「ザマ~ミロ~」という音声が流れ、帝国軍の神経を逆撫でした。


 どうやら公爵自身の肉声が、録音されたものらしい。


 やがて全てのトラップが解除され、安心して司令部として活用できるようになった。


 だがそれは、駐留開始からずいぶんと経ってからのことである。




 現在では城の塔上部に、強力な広域魔力レーダーが設置されている。


 城塞都市に近づくマシンゴーレムや、車両型ゴーレムを見逃さない。


 進駐軍の「目」である管制塔と、「脳」である司令部としての機能を果たしていた。




 その司令部にある広域魔力レーダーが、強力な魔力反応を感知する。




「司令! 北方約20km(キロ)! 強力な魔力反応です!」


 司令部に、女性管制官の緊迫した声が響き渡った。




「イーグニースのMG-2か!?」


「いえ! 推定出力は……MG-2の4倍!? これは……」


「陛下からの情報にあった、フォウワードの狙撃特化型マシンゴーレムである可能性が高いな……。しかしいくらなんでも、20km(キロ)……。そんなに遠くからでは、さすがにまだ射程外だ。他に敵機の反応は?」


「いえ。今のところ、全く」




 スキンヘッドの進駐軍司令官。

 彼の表情が、(あん)()に緩む。


 恐らくは、単機での偵察だ。


 もう少し近ければ話は変わるが、この距離なら下手にちょっかいを出さずにいたほうが良い。


 むしろ相手がこちらの戦力を過小評価してくれるよう、(しょう)(かい)任務中のマシンゴーレム部隊を引き上げさせようかと思った時だった。




 重くて鈍い着弾音が、司令部まで届いた。




 それに続いて、魔道無線機から(せっ)(ぱく)した通信が入る。




『オニキス6より、司令部(HQ)! オニキス7が、頭を吹っ飛ばされたぞ! 管制官は、何を見ている!? 敵機はどこだ!?』


「そんな……。敵機はまだ、20km(キロ)先の山中です!」


『馬鹿な! そんな距離から狙撃な……』




 通信の途中でノイズが入り、オニキス6の反応が管制レーダーから消えた。




 オニキス6、7はGR-3〈サミュレー〉に乗り、都市防壁北側を哨戒していた2機だ。




「なんだと!? そんな距離から、届くというのか!?」


「司令……。いきなりレーダーに、反応が……多数!」




 ついさっきまで、何の反応もなかった。


 それは司令も、確認している。


 しかし今は無数の光点が、映像投影魔道機(ディスプレイ)を覆っていた。




(いっ)(たい)どこに、隠れていたというのだ……。そうか! これがセナ・アラキ殿の(けい)(かい)していた、ステルス技術!」




 敵機を示す黄色い光点は、次々と増え続ける。


 その数は、軽く見積もっても50以上。


 これはイーグニース軍の本隊以外に、考えられない。


 ()(かい)して、回りこまれたのだ。




「デフコン1発令! 北方から、マシンゴーレムの大部隊が接近中! (ただ)ちに迎撃せよ!」






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「……って、司令がカッコよく言ってたけど……。敵機はドコよ?」




 とある帝国兵が搭乗するGR-3が、都市防壁門の陰から外の様子をうかがう。


 門はかなり大きい。


 全高が8(メートル)以上あるGR-3でも、立ったまま通過できる高さがあった。




 依然、魔力レーダーには50機以上のマシンゴーレムと思わしき反応がある。


 だがコックピットの映像投影魔道機(ディスプレイ)には、何も映っていない。


 ただっ広い平野が、延々と続いているだけだ。




 遠くには、山岳地帯が見えている。


 そこにバカみたいな長射程から狙撃してくる、危険極まりない敵機が潜んでいるらしい。


 従来機と比べれば高性能なレーダーを積んでいるGR-3だが、さすがに司令部の大型管制レーダーほどの索敵能力はない。


 20km(キロ)も先に隠れているマシンゴーレムは、捉えられない。




『オニキス1より、各機へ。敵マシンゴーレムの機影を、確認できた奴はいるか?』


『オニキス3、否定(ネガディブ)


『オニキス5、確認できません』




 それ以降、他の味方からの報告が上がらない。




『ん? 6、7はさっきやられたが、2、4はどうした?』




 オニキス1の背中を、嫌な汗が流れる。




 機体に、軽い衝撃が走った。




 脚部の動作に支障が出たことを、機体の〈擬似魂魄AI〉が教えてくれる。




 恐る恐る目線を下に向け、自機の脚部を確認するオニキス1。




 〈仮想全天周囲ディスプレイ〉により、コックピットの床が透けて機体足元が見える。




 目に入ったのは、マシンゴーレムの腕だ。




 地面に這いつくばったGR-3のマニュピレーターが、自機の足首を(つか)んでいる。


 そして地面に()っている機体の右脚は、何か鋭利な武器で切断されていた。




 地面から身を起こし、右脚の無い機体が顔を上げる。


 通常は緑色に光っているはずの双眼式〈クリスタルアイ〉が、不気味に赤く輝いていた。




『ヒッ!』




 あまりの不気味さに、オニキス1は短い悲鳴を上げてしまう。



 だが良く見ると、自機の脚を(つか)んでいるのは副官のオニキス2だ。


 肩に「Oー2」という、識別番号が書かれている。




 赤く光る両眼の原因は不明だが、敵にやられて助けを求めに来たのだろう。


 そんな副官に悲鳴を上げてしまい、オニキス1はバツの悪い気持ちになった。




『どうした!? オニキス2! 敵にやられたのか!? 敵機はどこだ!?』


『ココだ! 見えぬのか!? 貴様の機体についている〈クリスタルアイ〉は、飾りか!?』


『マリア。せっかく隠れているのに、教えてどうする』




 不意に入った通信に、思わずオニキス1が視線を上げる。




 するとそこには――




 ――何も無かった。





(いや……。大気が少し、揺らいでいる?)




 オニキス1が、目を凝らした時だ。




 突然魔力レーダーに、大きな反応があった。




 位置は自機の正面。






 何も無いはずの空中から、唐突に(やいば)が生える。




「え……?」




 戸惑うオニキス1の動力源(リアクター)を、赤く輝く刃が貫いた。






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