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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第4章 エルフの里 テスラの大森林編

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第65話 終わりの始まり~本当にできないのですか?~

 フォーウッド精霊国の建国祭は、1日中続いた。




 カレラ・ジーテ――いや、カレラ女王は用意周到だった。


 建国を宣言する前に、食料や酒をローラの大神殿へと運び込んでいたのだ。


 それも大量に。




 昼過ぎからは多種多様な種族が、祝いの品を持って駆けつけた。


 彼らは平然と、(うたげ)に加わる。


 イーナクーペの街に、住む者達だ。


 イーナクーペはこのまま、フォーウッド精霊国の玄関口となる。




 最初は他種族相手に、ぎこちなく接していた大森林のエルフ達。


 だが酒が入り宴が盛り上がってくると、段々と打ち解けてきた。




 祝いの品と(いっ)(しょ)に、ドワーフの建設会社が次々と資材を運び込んでくる。


 カレラの説明によると、明日から首都の建設に取り掛かるらしい。


 この大神殿を中心とする都市。

 名前は「ジーテ」になる予定だそうだ。




「まあ! あんなに重そうな木材を、軽々と……。凄い筋肉。ドワーフの男性って、(たくま)しいのね」


「おい、見たか? あのドワーフ女性の立派なモノを……。まな板ばかりのエルフ女とは、(おお)(ちが)……痛たた! ごめんなさい! ごめんなさーい!」


 仲が悪いと評判のエルフとドワーフ。


 だが実際会ってみると、意外にお互い好印象のようだった。




 ドワーフ達の素晴らしい()(ぎわ)によって、あっという間に仮設ステージが完成する。


 そこでは、様々な(もよお)しが行われていった。




 まずは弓の(しゃ)(てき)大会。

 なんともエルフらしい。




 優勝者はぶっちぎりで、イースズ・フォウワード。


 2番手には、元【テスラガード】リーダーのカレラ女王。


 そして3位に入ったのは、人間である(あら)()()()


 並み居る天性の射手、エルフ達を押しのけての好成績である。


 女神の加護【英雄】の力により、空間認識力がずば抜けている瀬名。


 射手としても、(ちょう)(いち)(りゅう)だ。


 それを無表情で見つめるのは、【ゴーレム使い】(やす)(かわ)(けん)()


 無表情だが、内心ではかなり悔しがっていた。


 彼は小型無人マシンゴーレム〈トニー〉に弓を引かせた瞬間、失格を言い渡されたのだ。


 感情を表に出さない賢紀に代わり、〈トニー〉が地面に(ひざ)を突いた。


 (あるじ)の心情を表すかのように、大地を金属の拳で叩きまくる。




 続いて開催されたのは、(うで)()(もう)大会。


 これはエルフ参加者のために、組まれたイベントではない。


 彼らに他種族の筋力を観てもらおうというのが、主催者の(おも)(わく)だ。


 (きん)(こつ)(りゅう)(りゅう)なドワーフや獣人の男性参加者に、エルフのご夫人達から熱い声援が飛ぶ。


 普段は細身で筋肉の無いエルフ男性に囲まれているせいで、マッチョな男性に()えているらしい。


 だがマッチョな野郎共を蹴散らして勝ち上がってくる、予想外の選手達がいた。




 1人は荒木瀬名。


 彼が勝ち上がるのは、わからないでもない。


 細身だが、鍛えられた体つき。


 何といっても、女神の加護がある。




 あとの2人の快進撃に、観客は驚いた。


 エリーゼ・エクシーズとアディ・アーレイトだ。


 ()(れん)な女性2人が大男達を次々とねじ伏せていく(さま)に、会場は熱狂していた。




 準決勝第1試合は、エリーゼ対アディの組み合わせだ。


 テーブルを破壊する激闘の(すえ)、再試合をエリーゼが制した。




 そして、準決勝第2試合。




 瀬名が敗れた。




『勝者! ジョセフ・リンキート・レイ~ン!』




 声高らかに、宣言したのは賢紀。


 彼はいつの間にか、実況と審判を任されていたのだ。


 拡声魔道器(メガホン)越しの声が、テスラの大森林に響き渡る。




「安川の奴……。普段は()(あい)(そう)なのに、マイクを持つとよく(しゃべ)るなあ。俺はマイク持つと、アガっちゃうのに……」


 今度は瀬名が賢紀に対して、悔しそうな顔をしている。




『さて、皆様! お待たせいたしました! いよいよ決勝戦です。まずは選手紹介。その()がらな体には、(たい)(りく)(いち)のパワーを(ほこ)るドワーフ族の血が流れている! 赤コーナ~、白銀のまじ……」


「コラ! ケンキ!」


『ウォッホン! 訂正します。「怪力女王」、エリーゼ・エクシーズ陛下~!』


「それも可愛くない~!」


 エリーゼ陛下は不機嫌そうに、(ほお)(ふく)らませた。




『続きまして、青コーナ~! 皆様を守る【テスラガード】のマシンゴーレム、〈フックスレーレ〉の開発者でもあります。鍛え上げられた肉体に、優れた頭脳! 「鉄腕のジョー」こと、ジョセフ・リンキート・レイ~ン!』


「やーねえ、ケンちゃん。私のことは、『ジョー』じゃなくて『リン』って呼んでって言ったじゃなーい」



 レイン七()()の四()リンは、体をくねくねさせながら抗議した。


 くねりに合わせて、(たん)(ねん)に手入れされた緑色の髪がふわふわと揺れる。


 両手を当てがった(ほお)には、()(れい)な脱毛処理が(ほどこ)されていた。




『失礼しました。リン選手は素晴らしいパワーを持っていますが、ハートは(せん)(さい)な乙女なのです。パワフルで可憐な乙女達の熱き戦いに、我々は酔いしれましょう!』




 【ゴーレム使い】は静かに右手を掲げ、振り下ろした。




『それでは決勝戦! レディー……ゴォーッ!』




 激しい戦いだった。




 エリーゼとリンのパワーに耐え切れず、何度も破壊されるテーブル。


 その(たび)に、再試合となる。




 4回目の再試合の頃には、両者の表情に疲労が浮かんできた。


 今回もテーブルに、亀裂が入る。




 ――またテーブル交換、再試合か?




 誰もがそう思った瞬間、リンの体が宙を舞った。



 大柄なドワーフの体が、テーブルに叩きつけられる。




 たまらず、粉々になるテーブル。




「ふっ。負けたわ、エリーゼちゃん。あなたのほうが私より、乙女だったということね……」


『勝者! エリーゼ・エクシーズ~!』






 観客の大歓声で何も聞こえない時間が、しばらく続いた。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 腕相撲大会決勝から、数分後。


 賢紀達は屋外に設置された長テーブルに着き、モリモリと料理を食べていた。




「いたたたた……。エリーゼちゃんって、本当に強いわねえ」


 賢紀の正面に座ったリンが、右手をさすりながら(つぶや)く。




「イヒヒヒッ……。ジョーの兄貴が負けるなんて、信じられないねぇ。兄弟の中でも兄貴の馬鹿力に対抗できるのは、ロジャーくらいのものなのに」


「ああ!? ロニーてめえ、俺のことは『リン』って呼べっつっただろうが!? 聞いてなかったのか?」


「ヒッ! リン姉さん、ごめんなさい! もう腕の骨は、折らないで……」


 男性モードへと(ひょう)(へん)したリンに怯えているのは、弟のロニーことローランド・ジェイムス・レイン。


 レイン七兄弟の五男である。


 〈フックスレーレ〉のミサイルや、〈コメットキャリアー〉を開発したのがロニーだった。


 彼がかけている瓶底眼鏡の裏からは、滝のように涙が(あふ)れている。


 くしゃくしゃの黄色い頭髪は、ふるふると恐怖に揺れていた。


 リンの豹変ぶりとロニーの哀れなまでの怯え方に、賢紀は内心ドン引きする。


 


「それにしても、残念ね。せっかく【ゴーレム使い】のケンちゃんと、お話する機会だもの。他の兄弟も集まって、みんなでマシンゴーレムの話をしたいわぁ。特にグレアム兄さんとかリッチー兄さんは、ケンちゃんと話が合うと思うのよね」


 リンがそう言った瞬間、宴の会場に(こう)(しょう)が響き渡った。




「クハハハハ……! リン! (わが)(はい)を呼んだか!?」


「グレアム兄さん!」




 乱入してきたのは、(こん)(いろ)(ひげ)と髪を持つドワーフ。


 宴の席には場違いな、白衣に身を包んでいる。




 乱入者をひと目見て、賢紀はすぐにピンときた。




「あなたがマシンゴーレムの(かい)()。GR-1〈リースリッター〉の開発者、グレアム・レインさんですか?」


「GR-3〈サミュレー〉も、我輩作だ。おうおう。お(ぬし)(うわさ)は聞いとるぞ、【ゴーレム使い】。GR-1を面白おかしく改造したり、ドンと共同でイカス武器を開発したりしているそうではないか。()(よい)はマシンゴーレムについて、語り明かそうぞ!」




 楽しそうに、ニンマリと笑うグレアム。


 賢紀も笑顔で応えたつもりだったが、唇の端が微妙に吊り上がっただけだ。




 微笑み合う2人のマシンゴーレム狂を見つけて、遠くから瀬名と、ニーサ・ジテアールが走ってくる。


 かなり焦った様子で。




「不味いぞ! 安川とグレアムは、最悪の組み合わせだ!」


「グレアム! 変なことを、()らしてはならんぞ! そやつはイーグニース共和国側なのだからな!」


「わかっておる! 全く。お主らがマシンゴーレムを壊していないか、わざわざメンテナンスに来てやったというのに……。それでケンキよ。まずはお近づきの(しるし)として、イーグニースの最新鋭機とウチのGR-3を交換してみぬか?」


「OK。GR-3、欲しかったんですよ。グレアムさんは、話がわかりますね」


『絶対ダメー!!』


 ニーサと瀬名。

 そしていつの間に来たのかエリーゼも加わり、3人で待ったをかける。


 それはそれは綺麗なハモり声だった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 




 建国の(うたげ)は、深夜まで続いていく。




 賢紀はレイン兄弟達と、マシンゴーレムについて語り明かした。




 いつの間にかスピリット()アシステッド()インターフェース()の精霊たちも【ファクトリー】から出てきていて、宴に参加している。


 賢紀には、出した記憶がなかったのだが。


 エルフ達がやたら(あが)めるので、精霊達――特にマリアは調子に乗っていた。




 賢紀はあまり、お酒に強くない。

 なので、飲む量は少な目。


 それでもいつしか酔いは回り、眠りに落ちていゆく。




 地球での飲み会など、楽しいと感じたことがなかった。


 しかしその晩はとても楽しく、幸せな気持ちで【ゴーレム使い】は眠りに落ちた。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 夜が明けた。




 その日、エンス大陸の歴史が大きく動き出す。


 世界樹が枯れ、世界のエネルギーバランスが崩れる可能性。

 その危機に、大陸中の国と種族が(いっ)()(だん)(けつ)した。


 もはや戦争など、している場合ではない。


 大陸中の知識と技術、人材が集められ、【生命の泉】捜索隊が結成された。


 大陸中の人々の期待を(いっ)(しん)に背負い、巨大船型ゴーレムで大海原へと旅立つ(いち)(だん)


 その中には、無表情で水平線の(かな)()を見つめる黒髪黒目の青年の姿があった。




 ――【解放のゴーレム使い】、「完」。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「……っていう展開なら、良かったんだけどな」


 宴の翌朝。


 イーナクーペの街の外で、賢紀達共和国組と瀬名達帝国組は対峙していた。





「エリーゼ。150年は、()()()()な……」


「そうね、ニーサ。もう少し、短ければね……」




 向かい合うルータス女王とリースディア皇帝の間には、緊張の糸が張りつめていた。




 もう少し世界滅亡までの時間が短ければ、本当に各国は団結して【生命の泉】捜索に当っただろう。

 

 しかし150年も先の危機より、目先の争いに目が向いてしまうのが人間。

 短い寿命である種族の習性。




 もはやイーグニース共和国と、リースディア帝国の開戦は秒読みだった。


 自力でマシンゴーレムを開発した共和国を、帝国はこれ以上放ってはおけない。


 共和国のスヴェール大統領も、帝国に娘と親友を殺された憎しみを薄れさせてはいない。


 ニーサはルータス王国難民と、獣人傭兵で結成されたルータス解放軍を無視できない。

 エリーゼがルータス女王を名乗って、解放軍の先頭に立つからだ。


 エリーゼは戦争で焼け出されたルータス難民達にとって、帰郷の希望だ。

 王国奪回を、諦めることはできない。


 帝国は王国やビサースト獣人国連邦から奪った穀倉地帯を、返還することはできない。

 元々侵略の発端は、深刻な食糧危機から来ていたのだ。

 返還すれば、多くの餓死者を出す。




 フリード神の使徒安川賢紀は、この戦争を回避することが――




(本当に、できないのか?)


 心の底で、そう悩んでる自分に気付く【ゴーレム使い】。




 エリーゼは小さな袋を、ニーサに投げて渡した。




「世界樹の種よ。ローラ様からもらったうちの、半分が入っているわ」


「エリーゼ・エクシーズ。ひとつだけ、約束を交わそう。この戦争で生き残った(ほう)が、責任をもって【生命の泉】を探すと。できなければ、できる人物を探して(たく)すと」


「いいわ。約束しましょう」


「結局争ってしまう我々人間を見て、精霊女王ローラは決断を後悔しているだろうな」


 ニーサは哀しげな表情で、深く息を吐き出した。




「正直に言うとね……。私はもう、あなた達と戦争したくないわ。女王失格ね」


「確かにそれは、失格だな。……だが()(ぐう)だな。私もだ。本当はお互い、統治者などには向いていないのかもしれぬ」


「できれば、両軍の犠牲が少ないことを……」


「そうだな、そう祈ろう」




 帝国の4人を乗せた車両型ゴーレムは、()(じん)を巻き上げながら走り去った。


 北の方角。

 帝都ルノール・テシアへと向けて。


 賢紀達5人は、帝国組の姿が見えなくなるまで見送る。


 完全に見えなくなったタイミングで、エリーゼはポツリと(つぶや)いた。






「何だか……やりにくくなっちゃったわね……」






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ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

― 新着の感想 ―
[一言] なにかで読んだ言葉だけど 「憎しみだけで戦争できたらいいのに」 って言葉を思い出した・・・
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