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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第3章 獣人の国 ビサースト獣人国連邦編

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第40話 リースディースの化身~下る気はないか?~

 ゴリアテ(しゅう)()、モアンキィの宮殿。




 ここは他州の王宮とは違い、広いが簡素な造りとなっている。


 これは歴代のゴリアテ州王に、宮殿の豪華さよりも実用性を重視する合理主義者が多かった為だ。




 ゴリアテ(しゅう)(おう)エイプスは、(ぎょく)()に座っていた。


 落ち着いた様子で、静かに目を閉じている。


 ゴリラ獣人ならではの、(たくま)しい体。


 それを実戦向けの、簡素な鎧で包んでいた。


 片手で槍を持ち、(いし)(づき)を床に着けた姿勢だ。




 もうすぐ(おとず)れる、決戦の時。


 彼は(めい)(そう)し、精神を()()ませていた。


 広い玉座の間には、エイプス以外誰も居ない。


 他の者はある1人を除き、全員が城壁か城外で戦っている。


 (この)()(へい)すら、(そば)につくことを許可しなかった。




 住民や文官など、戦う力のない者は前もって逃がしている。


 戦争難民を受け入れているというイーグニース共和国の国境まで、彼らが無事にたどり着けるようエイプスは祈っていた。




「……来たか」




 エイプスは、ゆっくりと目を開いた。


 (せい)(じゃく)に包まれていた玉座の間。

 その入り口を見据える。


 遠くから床を震わす重低音と、()(さい)(おん)が近づいてくる。




 数秒の間を置いて、玉座の間入口が吹き飛んだ。




 飛び散る建物の破片と煙の中から、姿を現したのは鉄の巨人。


 リースディア帝国軍のマシンゴーレム、GR-1〈リースリッター〉。




 この機体は、通常の兵士が乗る都市迷彩色ではない。


 ルビーのように輝く、派手な緋色にオールペイントされていた。




 胸部装甲が開く。


 中から姿を見せたのは、20代半ばほどの美しい女性。


 搭乗する機体とよく似た、緋色の甲冑を身に(まと)っている。


 (ゆう)()(たたず)まいながらも、歴戦の戦士を思わせる()(げん)と迫力に満ちていた。




 女性は地面に飛び降りた。


 月光のように美しい金髪が、重力に(あらが)いふわりと逆立つ。


 その姿は神話に登場する(いくさ)()(がみ)、リースディースを(ほう)彿(ふつ)とさせた。


 大陸中で彼女が、「リースディースの()(しん)」と言われるのも(うなず)ける。




「ゴリアテ州王、エイプスだな?」


「やれやれ。乱暴な登場の仕方だな。お主自ら来るとは(おどろ)いたぞ、皇帝ニーサ・ジテアールよ」


 エイプスはそう言って、ゆっくりと玉座から立ち上がった。




「念の為に聞く。帝国に下る気はないか? そなた達獣人は、優れた戦士。その資質を、私は買っている」


「今までにそう言われて、従った獣人はいたかね?」


 ニーサは残念そうに首を振った。


「私では、獣人の戦士達を従わせることはできぬようだ。皆、自分の命よりも獣人戦士としての(ほこ)りを選択した。……そなたも、彼らと同じ道を選択するのか?」


「さてな……。猿系獣人は(ずる)(がしこ)いというのが、獣人達の中での常識だからな。わが身可愛さに、あっさり誇りを売るかもしれぬぞ?」


「そしていつか、私の()(くび)()くというわけか……。猿系獣人らしい、知恵を使った戦い方だな。だがそのような闘気を放ちながら『従う』などと言われても、信用できるはずもない」


「クククッ……。猿系獣人も、(しょ)(せん)は獣人。最期ぐらい、(おのれ)の野生に任せて暴れたいのだよ」


 エイプスは、(どう)(もう)()みを浮かべる。


 ゆったりとした、それでいて(すき)を感じさせない動作で槍を構えた。


 ニーサもそれに合わせ、腰の剣に手をかける。




「マシンゴーレムは使わぬのか? お主達帝国が、(そう)()()(ふう)(すえ)に開発した武器だろう? ()(きょう)とは思わぬ」


「卑怯でなくとも、()(すい)だ。私とて、久しぶりに生身で剣を交えたい。……逆に、質問を返そう。そちらこそ、()()()()()()()()使()()()()()?」




 エイプスは(ちん)(もく)し、答えない。




「わかっているのだぞ? 我が軍のGR-1を1機、()(かく)したことは。いや。コピン村での件もそなた達の()(わざ)なら、2機だな。操縦方法も、パイロットに吐かせたのだろう? なぜ、この場面で使わないのだ?」


「コピン村の件は、(はつ)(みみ)だ。マシンゴーレムは、使いたかった。だが鹵獲した際に故障した()(しょ)を、修理する技術が無くてな」


「ふっ。見え()いた嘘だな。【魂の牙】か?」




 槍の()(さき)が、ピクリと動いた。




「残念だが(すで)に帝国の【英雄】が、【魂の牙】に(せん)(ぷく)している。彼は私よりも、優しい人間だからな。今頃本部の場所を探し当て、(てい)(ねい)に勧誘している頃だろう。『我が軍で、マシンゴーレムに乗らないか』とな」


 ニーサは余裕のある笑みを浮かべた。


「そなたの息子も、おとなしく勧誘に応じてくれればいいがな」


(ちっ。息子のことまで、読まれていたか……。無事でいてくれ、ゴリアーティ。これからはお前や【魂の牙】のメンバー達のような、若い獣人達の時代なのだ)




 内心の動揺を、エイプスは強靭な精神力で封じ込めた。




「何のことか、わからんな。そろそろ始めるぞ。血が(たぎ)って仕方ない」




 エイプスは、槍に全力で魔力を流した。


 目が(くら)みそうな白い(かがや)きが、太陽のように玉座の間を照らす。


 対照的にニーサは静かに腰を落とし、剣の柄に手を添えていた。


 (さや)から若干抜いてはいるが、刀身は見えない。




(きょく)(とう)を使うと聞いていたが、想像していたものと違うな。ずいぶんと、変わった形の曲刀だ」


「これは最近使い始めた異世界の剣で、『カタナ』と言う。今から放つ技も異世界の剣技、『イアイ』だ。散っていった獣人の戦士達に、あの世で語り広めるがいい」


「こいつはいいみやげ話ができた……と、言いたいところだがな。自分で広めに行け!」




 エイプスが()えると、足元の地面が爆発した。




 彼の蹴り出しに、(じゅう)(たん)も石造りの床も耐えられなかったのだ。




 ニーサの体が、射程距離に入る。


 エイプスは(もろ)()()きを放った。


 リーチは短くなるが、重く、威力のある突きだ。




 ニーサはまだ、動かない。




 反応できないのか?


 エイプスがそう、疑問に思った瞬間だった。




(三日月……?)




 エイプスは夜空に輝く、三日月の幻影を見た。


 それがニーサの剣閃だと気付いた時、槍の穂先は斬り飛ばされ、宙を舞っていた。


 ニーサの剣技に、()()れていたエイプス。


 だが長年かけて磨き上げてきた槍術は、彼の体を無意識に動かした。


 反撃として、石突での殴打が放たれる。




 しかしその(いち)(げき)が、ニーサに届くことは無い。


 流れるように振り抜かれた()()()で、エイプスの体は両断されていた。




(三日月か……。そういえばあいつは月の中で、三日月が1番好きだと言っていたな……)




 エイプスが薄れゆく意識の中で思い出していたのは、今は亡き妻のことだった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「陛下! わざわざマシンゴーレムを降りて戦うなど、なんという無茶をなさるのですか!」


 (ふた)()りの剣を背負った男が、玉座の間に駆け込んできてニーサを(いさ)める。


 歳の頃は30代前半。


 オールバックに固めた長髪と、(せい)(かん)な顔立ちの美丈夫。


 せっかくの精悍な顔立ちは、苦虫を噛み潰したように(ゆが)んでいた。




「レクサ。お前にだけは、説教されたくないぞ。生身でセブルス・エクシーズに挑んだ大馬鹿者は、どこのどいつだ?」


 ニーサは浄化魔法で、返り血を落としながら反論する。


「私だから、申し上げているんです。……こうなってからでは、遅いのですよ」


 レクサ・アルシエフ将軍は、自分の右腕をニーサの眼前に(かか)げる。




 彼の右手は、義手になっていた。


 マシンゴーレムの技術を応用した、最先端の義手だ。


 自身の魔力操作によって、かなり(せん)(さい)かつ(なめ)らかに動いてくれる。


 それでも失った右手に比べると、(はる)かに不便だ。


 整備に手間もかかる。




 レクサの右手を奪ったルータス国王、セブルスは(うわさ)に違わぬ怪物だった。


 彼は深手を負いながらも、生身でマシンゴーレムを単独撃破するという(はな)(わざ)をやってのけたのだ。


 そこそこ腕のいい操縦兵が、乗っていた機体にもかかわらずだ。




(降りて来いよ、若いの。俺みたいな、死に損ないのオッサンが怖いのか?)




 口から血を吐きながら、挑発してくるセブルス。


 レクサは恐怖を感じながらも、機体から降りてしまった。


 白兵戦でも、帝国最強の剣士であったレクサ。


 それでも手負いだったセブルスの命と引き換えに、右手を持っていかれてしまったのだ。




「ふん。エイプス州王は、セブルス国王ほどの化け物ではないわ。……死なせるには惜しい、(つわ)(もの)だったがな。レクサよ。どうせなら右手だけといわず、全身マシンゴーレムに改造してもらえ。セブルスなど、足元にも及ばんほど強くなれるぞ」


「陛下。そのような冗談、グレアム・レインの前では絶対に言わないで下さいよ。奴は()()として、実行しそうですからね。……外はらあらかた、片付きましたよ」


 レクサは主戦場となった、城下町の方角を見た。




「残念ですが、降伏する獣戦士は(かい)()です。捕らえて【奴隷首輪スレイヴチョーカー】を取り付けることに成功した例は、ほとんどありません。取り付けても電撃を受けながら反抗し続け、全員死亡しています。全く。獣人族というのは恐ろしい……む!?」


 レクサが何かに反応し、(まゆ)をひそめた。


「どうしたのだ? レクサ?」


「……奴隷契約をしていた、イースズ・フォウワードとの契約が切れました。私が契約解除をしていない以上、殺されたか、首輪を破壊されたと思われます。どちらにせよ、生きてはいないでしょう」


「何!? あのフォウワードがだと!?」


 ニーサは急いで胸元から、(かい)(ちゅう)()(けい)のような形をした魔道具を取り出す。


 魔道具を見た彼女の表情は、(けわ)しいものに変わった。




「セナに渡した、所在位置確認魔道具の反応も消えている……。彼の身に、何が……?」


 いつもは(たい)(ぜん)()(じゃく)としているニーサ帝。


 だがセナ・アラキが(から)むと冷静でなくなるのを、レクサは知っていた。


 恋は賢帝を、落ち着きのない娘へと変えるのだ。




「陛下。セナ殿には、【女神の加護】がございます。若い獣人ばかりのゲリラ組織に、(おく)れを取ることはないかと……」


 先程、「獣人は恐ろしい」と感じたばかりのレクサ。


 だが彼はニーサを落ち着かせるために、あえて楽観的な発言をした。




 しかし、効果は無かったようだ。




「最後に反応があったのは、レオパードのシンディアナ遺跡付近だ。私はすぐに向かう。戦後処理は、お前に任せたぞ」


「陛下! お待ち下さ……」




 レクサが止める間もなく、ニーサは緋色のGR-1にひらりと飛び乗る。


 彼女は足裏の〈ドライビングホイール〉を駆動させると、風のように走り去ってしまった。






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
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他の作者さんが書いた異世界ロボットものとのコラボ作品
スーパーなろうロボット小説大戦~天涯のアルヴァリス×解放のゴーレム使い~

本作のラスボスが、生まれ変わって主人公になる異世界転生自動車レースもの
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

― 新着の感想 ―
[一言] サニー GT-R。やはり人名は車関係の固有名詞をもじった物が多いですなw
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