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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第1章 【ゴーレム使い】降臨編

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第12話 犬耳の獣人~刺してもよろしいですか?~

「あっ! ケンキ! な~に自分だけ休んでるの!」




 GR-1〈リースリッター〉の足元で、グッタリしていた(やす)(かわ)(けん)()


 そこへエリーゼ・エクシーズが駆け寄ってきた。




「ヤバい奴を相手にしていたんだ。少し休ませてくれ」


「ダメよ! 歩兵とかはほとんど斬ったから心配要らないけど、休む前にちょっと行くところがあるわ」


「もう終わったのか? 早いな」


「サクっと処理できたわ。あんまり人数居なかったし、帝国歩兵は弱っちいの。強い人はみんな、マシンゴーレム兵になっちゃうから。さあ! 行くわよ!」


「引っ張るな。足の巻き爪が痛い」




 エリーゼはむりやり賢紀を立たせ、手を引いてゆく。


 小柄な体のどこから湧いてくるのか、賢紀には理解不能なほどの怪力だった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 フリード神へのタレコミ疑惑について追及する(ひま)もなく、賢紀は基地内にある地下牢へと連れて来られていた。




「誰か獣人さんが、捕まっているらしいのよ。生き別れになった私の護衛も獣人だから、ひょっとしたら……って思って 」


 地下牢への階段を降りながら、エリーゼは語る。


 やがて2人は地下に到着したが、周囲は真っ暗だ。




 賢紀は照明魔法を発動させ、暗い屋内を照らした。




「ちょっとケンキ! (まぶ)しいって!」




 初めて使う魔法だったので、光量の加減に失敗してしまった。


 自分でも「眩しいわっ!」と心の中で突っ込みを入れつつ、賢紀は光量を絞る。




 照らし出された牢の中は、ガランとしていた。


 捕虜になったルータス国民が、数多くいるのではないか?


 2人はそう予想していたので、少々肩すかしを食らった気分だ。




「誰か1人だけ、奥に居るわ」




 突き当たりの牢に、人影があった。


 床に寝そべり、こちらに背を向け身体を丸めている。


 シベリアンハスキーのような耳と尻尾が生えた、犬の獣人。

 

 体つきからして、女性のように見えた。


 服装は――




「メイドさん……か?」


「メイドさん……よ。 護衛だって、言ったじゃない」


 「当然じゃない?」とでも言いたげなエリーゼに、賢紀の頭は混乱した。


 ルータス王国では、護衛とメイドは兼任するものらしい。


 姫の護衛というくらいだから、女性である可能性は賢紀も考えていた。


 だが、大柄で筋骨隆々なゴリラ獣人女戦士をイメージしていたとは言いにくい。




「アディ? あなた、私の護衛兼専属メイドのアディ・アーレイトでしょう?」


 エリーゼの呼びかけに、獣人メイドが反応した。


 尻尾と耳がピクリと立ち上り、床に転がったままゆっくりとエリーゼを振り返る。




 アディはふわっとしたウェーブの金髪を、肩まで伸ばした美しい女性だった。


 彼女は犬の獣人なのに、金色の瞳は猫を連想させるツリ目だ。


 そのツリ目をまん丸に見開き、エリーゼを見つめる。




「……姫様?」


「私よ。エリーゼ・エクシーズよ。ちょっと待ってね、今開けるから 」


 エリーゼは背中の剣に、手をかけた。


 瞬間、彼女と鉄格子の間に無数の銀光が閃く。


 キィン! という澄んだ音と共に、鉄格子が7本切断されて床に散らばった。




(剣に魔力を(まと)わせずにコレか! ……マシンゴーレムに乗せて訓練したら、エマルツよりヤバい操縦者(パイロット)になりそうだ)


 賢紀が内心で(せん)(りつ)していると、牢の奥から黒い物体が猛スピードで飛び出して来た。




「姫様ぁーーーー!!」


「グエエッ!!」




 目にも()まらぬ速さでエリーゼに飛びつく物体……もといアディと、女の子としてはマズい悲鳴を上げるエリーゼ。


 アディはプロアメフト選手もビックリな強烈タックルで、エリーゼを床に押し倒した。


 そのままガッシリと抱きつく。




「姫様ぁ~! もう二度と、お会いできないかと思っておりましたぁ!」


「よしよし。帝国の連中に、(ひど)いことされなかった?」


「私を捕まえたエマルツという男が、捕虜の拷問や虐待を禁じておりました。わたくしのことを帝国に引き抜きたいと思っていたようで、熱心な勧誘を受けておりましたの」


「そうだったの。本当に、無事で良かった……。ちょっと、アディ! くすぐったい!」


 アディはエリーゼの豊かな胸に顔を(うず)め、激しく(ほお)ずりしていた。




「しばらく会えなかったので、姫様成分が不足しております! 補充させて下さい! クンカクンカ」


 今度は匂いを()ぎ出したアディ。


 少し鼻血が出ているし、ハアハアと息も荒い。


 「大丈夫か? この人」と、賢紀は不安になる。





 マタタビで酔った猫みたいに、(こう)(こつ)としていたアディ。


 彼女は突然振り返り、賢紀を見上げながら尋ねた。


「姫様。この男は帝国兵ですか? 刺してもよろしいですか?」


「相変わらずねえ……。物騒なこと言わないの。この人はケンキ・ヤスカワ。フリード神様の使徒で、私達の味方よ」


()使(つか)い様? 本当ですか?」


 アディは疑いというよりも、驚きの視線を賢紀に向ける。




「いきなり信じられないのも、無理はない。(あと)で【神の使徒】らしい能力を、色々と見せる」


「失礼しました。御使い様」


「ケンキでいい」


「ケンキ様。わたくしは姫様の護衛兼専属メイド、アディ・アーレイトと申します。この(たび)は助けていただき、ありがとうございました」


 深々と頭を下げるアディに、賢紀はヒラヒラと手を振って応じる。




「この基地を、(つぶ)すのが目的だったんだ。アディを救助できたのは、偶然だ。気にするな」


「そういえば、静かになりましたが……。マシンゴーレムが配備されている、この基地を落とせたのですか? いったい、どれ程の戦力を投入して……?」


「今回来たのは、私とケンキの2人だけよ。ふっふーん、凄いでしょ?」


 エリーゼがドヤ顔で、胸を張りながら答えた。




「2人! 2人だけで夜襲を!? 誰かバックアップ要員は?」


「居ない。本当に、2人きりだ。信じられないのも無理はないが、俺の能力を使って――」



 

 そこまで言ったところで、アディはガシッと賢紀の肩を掴んだ。




「つまりケンキ様は、姫様と2人きりで旅をしてきたわけですね? まさか他人の目がないからって、姫様にハレンチなことはしていませんよね? 抱きついたりとか、匂いを嗅いだりとか、おっぱいに顔を(うず)めたりとか……」


(全部アンタだろうが!)


 ケンキは心の中で叫んだ。


 ギリギリと肩を締め付けてくるアディの握力が怖くて、現実には声が出ない。




「コラッ! アディ! ケンキの肩が、(えぐ)れるでしょう! ハウス! ハウスっ!」


「ハッ! 申し訳ございません、ケンキ様。わたくし、姫様のこととなると()(さかい)が……」


「大丈夫……大丈夫だ。そろそろ(てっ)(しゅう)準備に取り掛かるぞ」




 全然大丈夫じゃない肩をさすりながら、賢紀は2人に指示を出した。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 3人は地下牢を出て、マシンゴーレム格納庫の前までやって来ていた。




「さて、まずは戦利品の回収だ」


「マシンゴーレムを、回収できないのが残念ですわね。この人数では……」


「フッフッフッ……。心配無用よ。ケンキ、アディに『アレ』を見せてやって」




 リクエストされた賢紀は、GR-1〈リースリッター〉に近寄った。


 起動前に破壊されたうちの1機だ。




「アディ、よく見てろよ。……【ファクトリー】」




 3人の目の前で、GR-1の巨体が跡形もなく消えた。


 音もなく、(いっ)(しゅん)でだ。




「えっ? どこへやったのですか? わたくし目には自信があるのですが、何がどうなったのか……。さっぱり見えませんでしたわ」


「説明する。これはフリード神から与えられた加護、【ゴーレム使い】の能力のひとつでな……」




 【ファクトリー】。


 それは異空間に物体を収納、格納できる能力。


 異世界ライトノベルやWEB小説のチート能力代表格、【アイテムボックス】。

 あるいは【ストレージ】、【インベントリ】などと呼ばれているものと、似たような能力だ。


 大抵のものは、格納することができる。


 不可能なのはリアクターを作動させているマシンゴーレムや、生き物。


 賢紀が反応できないほど高速で動いているものも、無理だったりする。




 【ファクトリー】の容量は、現在東京ドーム1個分といったところ。


 すでに充分な容量の気もするが、賢紀の能力が成長するとさらに広くなっていく。


 よく聞く【アイテムボックス】と違い、内部の時間経過は存在する。


 しかし、そこが利点でもある。


 材料さえ(いっ)(しょ)に放り込んでおけば、内部でゴーレムの製造、修復、開発、試作なども可能になるのだ。


 ゴーレムにカテゴライズされるマシンゴーレムも、当然対象になる。


 まさにオートメーション化された「工場(ファクトリー)」といえる、ズルい(チートな)能力だ。






 賢紀は背後を振り返った。




 努めて平静を(よそお)っているが、驚きを隠しきれていないアディがいる。


 その隣には、腰に手を当て仁王立ちの少女。

 自分の能力でもないのに、ドヤ顔をしているエリーゼの姿もあった。






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
解ゴー FAギャラリー

他の作者さんが書いた異世界ロボットものとのコラボ作品
スーパーなろうロボット小説大戦~天涯のアルヴァリス×解放のゴーレム使い~

本作のラスボスが、生まれ変わって主人公になる異世界転生自動車レースもの
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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