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6、絹川様


いつものように5時に目を覚ます。洗濯機をまわしお弁当を作る。その後朝食を作りはじめ洗濯物を干す。そこで玲二様が起きてこられたので朝食をお出しする。


「美雨さんおはよう。記憶の方はどう?何か思い出した?」


「いえ、まだ何も。申し訳ございません。」


「謝らないでゆっくり戻っていくといいね。」


「はい、ありがとうございます。」


8時30分頃玲二様は出勤される。玲二様の食器を片付けコーヒーをいれゆっくり飲むと9時になったので聡一様をおこしに行く。


「聡一様!9時になりました。聡一様!」


扉の向こうからは一切物音がしない。起きただろうか?


「聡一様!」


急に扉が開いて聡一様が出てくる。


「うるさいな。もっと起こし方あるだろう?メイドなんだからご主人様を悦ばせろよ。」


この人は朝に弱いようだ。それに朝から鬱陶しい。無視するに限る。


「朝食の準備を始めますね。降りてきてくださいね。」


「おい、お前話を聞けよ。ったく。」


20分経ってやっと聡一様が降りてきた。コーヒーと朝食をお出しして食堂に戻る。私もコーヒーを飲む。聡一様が食器を持って来たので片付ける。


「ありがとうございます。」


「ああ面倒だ。じゃあ弁当をよこせ。」


「はい、いってらっしゃいませ。」


見送りもせずキッチンで片付けをし始める。これには文句を言わず大人しく出かけたようだ。


そして10時になった。休憩時間だけど、どうしよう。する事がない。記憶を戻すには何をすればいいんだろう。

仕方ない今日は自分の服の洗濯と部屋の清掃、スーツケースの確認をしよう。

そうと決まれば洗濯機をまわし始める。仕事をする時はスキニージーンズとYシャツだけどYシャツは何枚か入っていたけど、ジーンズは1本だけ。仕方ない何か他に。

スーツケースに残っていたのは何枚かの黒のTシャツとペンシルタイプのスカート、フレアタイプのスカート、全て黒い。それにズボンがない。仕方なくジーンズの代わりにペンシルタイプのスカートをはくことにした。なんだかピタピタだけどサイズはぴったりだ。私の服なのだからぴったりでいいのだけど、どれも新品にみえる。タグが付いていたり、袋に入っていたり、下着でさえタグが付いているのだ。それを見て浮かんだ感情はなぜだか、


「気持ち悪い。」


新品の服に対する感情が何故気持ち悪いなのだろう。まあいい、メモをしておこう。後は化粧品だけど化粧品は使用感があるものばかりだった。スーツケースには新品の服と化粧品と化粧水、保湿クリームが入っているだけで後は何もなかった。まあこれも毎日使っているし特段、新事実もない。

全ての洗濯物をほし終えまたコーヒーを飲んでぼーっとしている時だった。


ピンポーン。


洋館の中をインターホンが鳴り響いた。どこに居ても分かるように大きい音にしてあるようだ。玄関を開けるとそこには黄色に白の花柄のフレアのワンピースにベージュのコートを着た20代前半位の可愛らしい女性が立っていた。


「えっあなた誰ですか?」


満面の笑みだったのに私を見た瞬間、驚きの表情を浮かべたまま動かなくなってしまった。


「私は家政婦をしております。美雨です。」


「家政婦さんですか!良かった!てっきり聡一さんのこ、恋人、かと。」


話しているうちに恥ずかしくなったのか最後はほとんど声が聞こえない程の声量になってしまった。


「とにかくどうぞお入りください。」


玄関口にスリッパを置き、食堂へ案内する。多分だけど学長の娘さんだろう。初心なお嬢さんだと言っていたし。


「あっ失礼します。あの聡一様に会いにきました。」


大人しく食堂の椅子に座っているこのお嬢さんをどうしよう。聡一さんが帰ってくるまでまだ結構時間がある。


「かしこまりました。只今、仕事に行っておりますので、電話して参ります。紅茶かコーヒーどちらがよろしいですか?」


「じゃあ紅茶をお願いします。あ、私、絹川聖です。」


「かしこまりました。では少しお待ちください。」


食堂の扉を静かに閉め紅茶の準備を始める。その間に私の部屋にある電話で聡一様に電話する。緊急時の為に玲二様と聡一様に携帯電話に繋がるようになっているのだ。3コールしてやっと聡一様が出てくれた。


「お仕事中すみません。絹川聖様が来られています。」


「えっあの箱入り娘が。あーどうしようか……。仕方ない帰るよ。5分程で着くから。」


「かしこまりました。では失礼します。」


「あーあ本当に面倒臭い女。」


と言ってガチャんと切れてしまった。受話器を置き紅茶を持っていく。絹川様は落ち着かない様子で食堂の中を行ったり来たりしていた。


「絹川様どうぞ。」


「あっありがとうございます。いただきます。」


少し驚きそのまま紅茶を飲み始めた。玄関で音がしたので本当に早く聡一様が帰ってきたようだ。。絹川様は少しだけ体をビクリとさせて、聡一様に気付いているご様子だけど食堂で待つようだ。絹川様を食堂に置いて出迎えに行く。


「おかえりなさいませ。聡一様。」


「その格好いいな。意外と、胸も大きいし尻もいい。いつもシャツで隠れているから知らなかった。いつもそれでいろよエロい秘書みたいでいいじゃん。スカートだとシャツ出てるとだらしないもんな。後ろとか。」


と流れで体を触ろうとするのでサッと身を交わした。それでもジロジロと私の体を眺めている。不愉快極まりない。


「おかえりなさいませ。絹川様がお待ちです。」


「うわぁゴミを見るみたいな冷めた目。」


それだけ言って食堂に歩いて行った。私は一度キッチンに戻り聡一様の紅茶をいれ食堂に向かった。食堂の中から楽しそうな声が聞こえる。


「聖さん、今日はどうされましたか?」

「聡一さんに会いたくてそれとこれを渡したくて。」

「えっこんな高価なものいただけません。聖さん。」

「受け取ってください!じゃないと困ります。あの庭園に連れて行ってくださったお礼です。」

「うーん。では有難く頂戴致します。折角、聖さんが私の為に選んでくださったのに無下にするなんてできません。ありがとうございます。今開けても?」

「はい!どうぞ!」

「わあ!財布ですね。素敵な長財布だ!本当にありがとう。使わせていただくよ!」

「よかったぁ。喜んで貰えて嬉しいです!」


そろそろいいかな。ノックして扉越しに声をかける。


「紅茶をお持ちしました。入ってもよろしいでしょうか?」


「ああ、入れ。」


聡一様から許しを得たので食堂に入る奥の席に並んで座り絹川様は顔を真っ赤にして聡一様を見ている。なんともわかりやすい人だ。聡一様の前に紅茶を置きさっと退室する。


「失礼致します。」


扉を閉めると絹川様が話し出す。食堂の扉は薄いのだろうかとてもよく聞こえ廊下に響いている。


「色っぽい綺麗な家政婦さんですね。紅茶も美味しかったしお部屋もとても綺麗。仕事もできる方ですね。」

「いいえ、愛想が悪くて、ずっと聖さんの方が素敵ですよ。さあ送りますよ。私も大学に戻らなくては。」

「えっ素敵だなんて。ごめんなさい仕事の邪魔をしてしまって。父には私から言いますので。」

「いいんですよ。聖さんなら大歓迎です。」


じゃあお見送りの支度をしようかな。急に静かになったけど大丈夫かな?玄関で5分程待っていると先程より赤くなった絹川様が少しだけ息を切らしそわそわとした表情で扉から出てきて、その後ろから酷く冷たい表情の聡一様が出てくる。まさかね。


「じゃあ送ってくるから、片付けておいてくれ。」


「承知致しました。いってらっしゃいませ。」


「で、では。さっさようなら。お茶ごちそうさまでした。」


「またお越しくださいませ絹川様。」


お辞儀をしてお見送りをし、食堂の片付けをしキッチンに戻る。まさか学長の娘に手を出しているとは。聡一様ってスリルを求めるタイプなのね。片付けをしながらそんな事を考えていた。



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