18、予感
目が覚めると私は自室のベッドに寝かされていた。聡一様がそばの椅子に座って手を握ってくれている。とても怖い顔をして窓の外を見ている。
目が覚めた事に気付き安堵の表情になった。
「目が覚めたのか、あの後玲二はお前を置いてどこかに行ってしまって俺が一人でここまで運んで寝かせたんだ。本当に重かったぞ。」
「すみません。」
「ああ、いやまあいいよ。それより大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です。」
もう聡一様にも本当の事を話そう。ここまできたらこの人にも言ってしまおう。
玲二様が怪しくなってしまった以上もう誰に言っても同じ気がする。
そして記憶がない事、玲二様に拾ってもらった事、聡一様には隠しておけと玲二様に言われた事を話した。
聡一様は信じられないという表情をした後、憐れむような表情で私を見ている。
「そうか。大変だったな。」
聡一様はそれしか言わなかった。ただそう言った後私の手を強く握りなおした。
「玲二は美雨が来る1週間前にこの家に帰ってきたんだ。それまでは勤務先の最寄りの駅のマンションに5年前から住んでいたよ。2年位前から彼女と住み始めて、3ヶ月位前に別れたと言って帰ってきた。あのマンションは両親が玲二に買ったもので何故帰ってきたのかが分からない。4LDKで8階建ての最上階の分譲マンションだ。この家を俺に、あのマンションを玲二にという遺言になっている。」
「……。」
私は何も言えずに黙り込んでいた。あの写真。あれは今年のものでは無く2年前に撮られたもの。でも全く記憶にない。
記憶を追いかけようとするとまた気を失いそうになる。
日記、そういえばなんだかんだで全然確認出来ていない。
「聡一様、私はもう大丈夫です。絹川様の事をどうにかした方がいいです。」
「ああ、そうだな。大学をクビになるかもしれないが話してみるよ。」
と言って部屋から出て行った。電話をするようだ。
そして日記を確認し始めた。