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祖父とみかん

作者: まろん

高校生の頃、冬に夜遅くまで受験勉強をしていると、祖父がみかんを差し入れてくれることが多かった。みかんを食べすぎて手が黄色くなってしまうくらいみかん大好き人間の私は、そのみかんを食べることが勉強の息抜きだった。

みかんは1階のリビングのかごの中に常に大量に入っていたため、勉強前に自分で部屋に持っていってもよかったのだが、私は祖父がみかんを差し入れてくれたときに見せる笑顔が見たくてわざと自分では持っていかなかった。当たり外れのあるみかんだが、祖父が差し入れてくれるみかんは、不思議なことにいつも甘くて美味しかった。そのことを伝えると、祖父は嬉しそうに笑っていた。次の日から、差し入れのみかんは2つになった。

大学生になって一人暮らしをするようになってからも、私が帰省するたびにみかんをたくさん用意して待ってくれていた。そして、実家から戻るときにも、たくさんみかんを持たせてくれた。大家族で育った私は、一人暮らしになかなか慣れなくて辛かったが、祖父からもらったみかんを食べると元気が出て頑張る気力が湧いた。

大学を卒業し、4年ぶりに実家に帰ると祖父はとても喜んでくれた。いつも私を応援し、見返りのない無償の愛を注いでくれた祖父。これから仕事をバリバリしてたくさん恩返しをしよう、そう思った矢先、私が入社してすぐ他県に研修に行っている間に脳梗塞で倒れ、1ヶ月後に天国へ旅立ってしまった。祖父らしく、恩返しなんていらないよとでも言うように。

今、私は冬になると、祖父の仏壇にみかんを供える。祖父が私にしてくれたように笑顔で、とびっきりの甘いみかんを。

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