結局のところ動物は動物です
「ふっふっふー」
「何をしているんだ。アンリペアラー」
逆上せ猫が逃げ出して、ようやく頭に響く声から解放されたあと、アンリペアラーは何かを作っていた。金属の棒に、針金を沢山くっつけて、それはどこからどう見ても立派な金属たわしに見えなくも無いという感じのものでした。
「猫ちゃんを見て思ったの! ブラシで毛をキレイにするんだよね!」
「あー、間違ってはいないのか? 根本的な部分に疑問を感じるのだが」
このアンリペアラー特製金属タワシ、もとい、ブラシもどきで毛がキレイになるだろうか。いや、おそらくは見るも無残な光景になるしか無いだろう。そして、根本的な話になるのだが、逆上せ猫は人間と猫のキメラであって、猫という訳では無い。まぁ、普通の猫であっても、この金属タワシで梳かれるのは我慢できないだろう。
「あ、丁度そこに居たよ! こっちきてー」
「む? エルフェを呼ぶのは誰かね?」
アンリペアラーが声をかけた先には、白衣を着た子供……、にしか見えないが、年齢的には立派な大人である。自身をキメラに改造してしまった為にそれ以上歳をとらないらしい。因みに、犬と合成したらしく、その要素が外見も出ている。
「ねぇねぇ、これで毛をキレイにしてあげる!」
その金属タワシを見せられてエルフェはぎょっとする。金属タワシと称してはいるが、針金の塊を見て、それで毛づくろいをしてもらいたいと思うわけが無い。そもそも、犬のキメラではあるが、犬ではない。もう、色々と問題外な訳である。
「エルフェは遠慮しておくのだよ」
「えぇ! 毛玉吐くよ!?」
「吐かないのだよ!? 君はエルフェの事なんだと思っているのかね!?」
天才だとか、奇才だとか言われたりする事もあるエルフェにも、こればかりは想定外だったようだ。そもそも、どうしてそんな事になったのか、全くわからない。
「猫ちゃん?」
「違うのだよ!? どうしたら猫に見えるのかね!? どこからどう見てもエルフェは犬と」
エルフェの弁解に対して、ヒートファンが口を出す。
「猫で良いだろ」
「どうしてだね!? どこからどう見ても人間の要素があるようにしか見えないと思うのだがね!?」
犬と猫のキメラでは、完全に獣である。ヒートファンは適当に返答しているだけで、別に理解していないわけではない。ただ、心底どうでも良いだけである。
「んー、何が違うのかよく解らなくなってきたけど、大丈夫だよ!」
何が大丈夫なのかはわからないが、勝手に大丈夫という事にしているらしい。アンリペアラーは、怖い無いよー等と言いながらエルフェに近寄る。どちらも幼い容姿をしているのでホッコリしそうではあるが、実際にはそんな生易しいものではない。そして、ロドキア研究員を良く思っていないヒートファンは助ける気が皆無である。
「いい加減にするのだよ! 秘学[キメラルール]」
「……本当に嫌になる! アンリペアラーそれに触れるな!」
エルフェは謎の肉塊の入ったフラスコを懐から取り出し、アンリペアラーに放り投げる。そのままでは直撃してしまうが、咄嗟に動いたヒートファンによって突き飛ばされその場を脱する事に成功した。そして、フラスコは地面に落ちて砕けた。
「まぁ、いいのだよ。操作[サクリファイスキメラ]」
割れたフラスコから出てきた肉塊は、どんどん成長してエルフェと二人を分断する肉の壁となる。もし、アンリペアラーに当たってしまっていたら、そのまま肉塊の中に取り込まれていたかもしれない。そして、今の内にと、逃げ出したのであった。
「あー、猫ちゃん逃げちゃった」
「それより、この肉塊はどうするんだ。本当にキモくて嫌になる」
「うーん。焼肉?」
「食欲がなくなりそうな焼肉だ。それより、どこで覚えたんだ? そんな言葉」
何も食べる事の無い機械が何故焼肉なんて知っていたのかは、謎である。