結構凄い能力なんだけど
「急にドカンってするなんて! ぷんぷんだよ!?」
「はぁ、嫌になる。とりあえず、落ち着け」
グネデアの[インパクト]によって吹っ飛ばされた二人。アンリペアラーはかなり驚いたのか、語彙力が低下している感が否めない。ただ、驚いている人物がもう1人居る。逆上せ猫はなんとなく散歩をしていたら、唐突に知らない人物が二人も目の前に落ちてきたのだ。驚かない訳が無く、眼を白黒させている。
「えっとー、誰なのかな?」
「私はアンリペアラーなんだよー、何でも直せるの!」
「俺はヒートファンだ。驚かせてすまないな」
とりあえず自己紹介。アンリペアラーはマイペースだが、ヒートファンは別に常識が無いわけではない。前回ロジクマスに対して冷たかったのは、ロドキア研究員の関係者である事が気に入らなかっただけである。
「ボクは逆上せ猫っていうんだ。何でも直せるって言ってたけど、これとか直せるの?」
「ふふーん、私の出番だね! 混沌[アンリペア]」
逆上せ猫が差し出したのはメガホン。それにアンリペアラーは溶接棒を向け、電気を放つ。見た目には何も変化はないのだが、内部はまるで時間が巻き戻ったかのように直っている。
「テストー、テストー。うりゃりゃりゃ!? ちゃんと直ってるよ! 凄いんだねー!」
「私凄いんだよー! 何でも直すからねー」
「うりゃー。リペアラーちゃんはすごいよー」
なんだかテンションが上がっている二人である。とても微笑ましい。ヒートファンはのんびり見つめている。だが、次のアンリペアラーの言葉でそれが崩される。
「猫ちゃんの右手壊れてるの? それも直してあげるね!」
「え、リペアラーちゃん人の身体も治せるの?」
「アンリペアラー! 止めておけ!」
「え? だって私は直す存在なんだよ? それなら直さないとなんだ」
もはや脅迫的なものなのかもしれないが、それでも巻き込まれる逆上せ猫からしてみれば勘弁して欲しいだろう。どうにか説得を試みる二人。
「機械と生命体では構造が大きく違うんだ! お前の能力はそんなに万能では無い!」
「うりゃりゃりゃ!? リペアラーちゃん。もう少し落ち着いてみよ!?」
「えっとー? こうぞうは良くわかんないけど、動かないのを動くようにするんでしょ? 大丈夫! ちゃんと直すよ!」
そういって、アンリペアラーは聞く耳を持つ気が無いようだ。溶接棒を向ける。ヒートファンは無理やりにでも押さえこもうと身構えるが、その前に逆上せ猫が行動を起こした。
「神力[ブレインジャックメディア] 号外! 号外! 危険人物はっけーん! みんなーにげろー! ボクも逃げるよー!」
メガホンで拡張されて爆音となった声。あまりのうるささに耳を塞ぐが、逆上せ猫の能力によって強制的に声が届けられる。つまり、耳を塞ごうか関係なく、頭の中に直接叩き込まれるのだ。
「あー、あたまの中がー、ぐわんぐわんしてるよー」
目の前で爆音を叩き込まれたアンリペアラーは完全に混乱している。ついでに、巻き込まれたヒートファンは頭を抱えている。そして、今のうちにと逆上せ猫は無事に逃げ出したのだった。