"Good morning" makes of the "Good night"
ぶちぶち。
ブチブチブチブチ。
ビリリッ。
食器洗いや洗濯など、一通りの家事を済ませたわたしが寝室の扉をそうーっと開けると、いつも通り、先に寝ていた楓ちゃんは自分の着ているパジャマのボタンを引きちぎり、生地を裂いていました。本人曰く「不器用で寝相が悪いから」。
「うぅーん……。お姉ちゃん……大嫌い……。………………さみしいよ…………」
ブチビリリリリッ!
「わたしを……見てよぉ………………」
ブツンッ。
はち切れたような音がしたあと、ベッドの布団のすきまから、ほんの数秒前まで楓ちゃんが穿いていたはずの、楓ちゃんの下着が、はらりと、落ちました。
「……いつも、おんなじ寝言だね。楓ちゃん…………」
わたしはベッドに上がり、布団をかけて横になります。
布団を被った瞬間、わたしの体はとてもあったかくなります。これは、布団自体の温もりだけではありません。大きな声では言えませんが、布団の中で半裸になっているであろう楓ちゃんの、温かさも。
この温もりに、今日も包まれて。
明日もまた、頑張ろうって、思えて。
発狂したり、寝てる間に服をビリビリにしたり、ちょっとだけ、騒がしい時もあるけれど。
ブチィッ!
……楓ちゃん。
お願いだから、わたしのパジャマはこれ以上破らないでね…………。袖、無くなっちゃった……。
でも、なかなか人との交流がうまくができなかったわたしに、「好き」を教えてくれて、ありがとう。
この先、どれくらいの時間、楓ちゃんの隣にいられるかわからないけど。
わたしは、わたしは……。
最後まで、楓ちゃんに「おやすみ」を言ってあげられる人でありたいから。
「おやすみ、楓ちゃん」
明日も「おはよう」と言えることを信じて、わたしは今日も、眠りにつきます。