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十二ヶ月経過:病み少女の闘病生活〜精神病完治は難しい〜

 …………木隠墨子こがくれすみこ、です…………。


 今日で、入院してから一週間が経ちました。今週末には、わたし達の学園の学校祭『星花祭せいかさい』がやって来ます。


 昨日の診察で、とりあえずの退院の許可が下りました。今日から、またいつもの生活に戻ります。けれど、まだ定期的な通院は必要だそうです。お医者さんが言うには、わたしと同じところに入院していたふうちゃんが退院できるようになるのは、どんなに早くても星花祭せいかさい直前になるそうです。


「やほー、木隠墨子こがくれすみこ


 荷物をまとめていると、病室の入り口の方から声をかけられました。振り返ると、そこには入り口の壁に寄りかかっている星花女子の制服を着た女の子がいました。


「えっと、確か……」

「まともに面と向かって話すのは初めてだったよな。アタシは、倉田楓くらたふうと同じくバスケ部に所属している、巣原椎名すばらしいな。よろしく」

「は、はあ……」

「今日退院なんだって? おめっとさん」

「……わたしが今日退院だって、どうして知って……」

「そんな細かいことどうでもいいから。……それよりも、知りたくない? ……倉田楓くらたふうが過去に負った傷について」

「……っ!」


 そう、わたしは決めたのです。

 ふうちゃんのことを、もっと知りたいって。


「知りたいのなら、教えてあげる。…………世界の深淵に、首を突っ込む勇気があるのなら。…………倉田楓くらたふうを愛するということはすなわち、倉田楓くらたふうを取り巻く、深くて冷たい闇に心を沈めるということ。一女子高生であるアンタにその覚悟があるのなら……アタシについてくるといい」

「……深淵? 闇? 覚悟? ……あの、いったいどういう……」

「それが無理なら……倉田楓くらたふうのことは諦めてくれ。そんじょそこらの愛情だと、アンタの身が持たないよ」

「…………」

「……無理する必要はない。アンタが倉田楓くらたふうを諦めたところで、アンタにはなんの責任も……」

「……連れていってください」

「……もう、後戻りはできないよ」

「……それでもいいです。一年間、ふうちゃんと一緒に過ごしてきたんです。ふうちゃんと向き合ってきたんです。わたしは……もっともっと、ふうちゃんのことを知りたいんです」

「……わかったよ。んじゃ、ついてきな」



 ◆



 病院の廊下を歩いていたとき、わたし達の前から星花女子の制服を着た女の子と、その隣を歩く女医さんとすれ違いました。そして、女医さんのネームプレートには「ひぐらしまどか」と書かれていました。

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