一ヶ月経過:百合色の少女たち
現在の時間では邑先生が楓ちゃんと必死に向き合っていますが、突然の新章です。
最近、倉田さんのことを「楓ちゃん」と呼べるようになってきた木隠墨子です。
楓ちゃんと暮らし始めて、今日で一ヶ月が経ちました。
好きな人との二人暮らし。始めたばかりは、「楓ちゃんかわいい」とか「楽しいな」という気持ちでいっぱいでした。
ずっとそうだと、思っていました。
ですが、いざこうして暮らしてみて、いろいろなことに気がつき始めました。
一ヶ月の食費。
一ヶ月の消耗品費。
電気代。
ガス代。
水道代。
楓ちゃんと暮らすことで、汚れやすくなった場所、逆に汚れにくくなった場所。
現実的にしっかりと考えなければならないことが、浮き彫りになってきました。
そのほかにも。
楓ちゃんに食物アレルギーがないか。
楓ちゃんに好き嫌いがないか。
楓ちゃんが生活の上でこだわっているところはあるか。譲れないところはあるか。
楓ちゃんはどんなコーディネートが好きなのか。
楓ちゃんはどんなインテリアが好きなのか。
楓ちゃんにはどんな癖があるのか。
楓ちゃんにはどんな趣味があるのか。
楓ちゃんはどんなテレビ番組を観るのか、もしくはテレビそのものを観ないのか。
楓ちゃんの好みのシャンプー、リンス、コンディショナー、ボディーソープ、せっけんはなにか。どこのメーカーのものがいいのか。
楓ちゃんはどのくらいの茹で加減のパスタがいいのか。お肉はどのくらい焼いたらいいのか。味付けはどうしたらいいか。
楓ちゃんの服のサイズは、靴のサイズは。
楓ちゃんのお気に入りのブランドは。
楓ちゃんの睡眠時間は。
楓ちゃんが嫌がることは。
楓ちゃんはどんなときに補助してほしいのか。
気をつけなければならないこと、忘れちゃいけないこと。
数えるとキリがありません。
でも、いいんです。
好きな人の……楓ちゃんのことで頭がいっぱいになって、とても幸せです。
さて、と……。
「楓ちゃん、お買い物に行くよ」
「…………………………うん」
わたし達の同棲生活は、始まったばかりです。




