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Who(Fu) needs you(Yu)?:part1

楓ちゃん視点です。

「……………………どうぞ」


 病室のドアがノックされる音が聞こえたため、わたしは返事をしつつ読んでいた実用書にしおりを挟んでベッドに備え付けられた白いテーブルの上に置いた。


「……」


 わたしは病室に入ってきた人物を見るや否や、置いたばかりの実用書を掴んでその人物の顔面めがけて投げつけた。けれどそれが命中することはなく、あっさりと受け止められてしまった。


「……『死んでお詫びするための百の方法』か……」


 その人物は……姉はブックカバーがつけられたその実用書の一ページ目をめくってタイトルを確認すると、なにも言わずに着ていた青いツナギのファスナーをおろして、その内ポケットにしまってしまった。


「返してよお姉ちゃんには関係ないでしょ!」

「これは没収だ。お前にこんなものを読ませたくない」


 わたしは、わずかながらに姉に対して違和感を持った。


「わたしがどうしようがどうでもいいでしょ!!」


 わたしはベッドの横に置かれていた丸椅子に座った姉の胸ぐらに掴みかかった。

 けれど、やはり敵わない。いとも簡単に両手首を掴まれ、腕がこれ以上動かない。無理矢理動かそうとすると、ポキンポキンと自らの腕が軋む音がする。姉が強いのか、わたしが弱いのか、おそらく両方だろう。


 そのうち、体力も底をついてわたしの力が弱まると、姉はわたしの両腕を解放した。


ふう、わたしは……」

「なに、イヤミでも言いに来たの?」

「っ……!」

「わざわざ病院まで来て、弱ってるわたしに彼女自慢? 用務員って暇なんだね」

「そんなつもりじゃ」

「じゃあなんのつもり?」

「それは……」



『イヤミなのは、お前の方だ』



 その言葉とともに、幻覚あねが姉の背後に現れた。



『わざわざ恋人との時間を割いてまで、お前の見舞いに来てやったんだ。お礼のひとつも言えないのか。この出来損ないが』

「じゃあ来なくていいよっ!」

ふう……?」

『もう、いい加減にしてくれないか。ようやく、一歩踏み出すことができたんだ。私達の幸せを邪魔しないでくれ』

「わたしにとってはお姉ちゃんの方が邪魔なの!」

ふう、お前いったい誰と……」

『……いままで育ててきてやったのに、この仕打ちか。お前が今、こうして生きているのは誰のおかげだと思っている。お前の毎日の食事を作り、お前の服の洗濯をして、お前の部屋の掃除をして、お前の進学の手続きをして、お前の制服や教材を買い与えて、お前が持ってきた近所とのトラブルを謝って回って……数えればきりがない。それほどの恩を抱えてもなお、お前はわたしに牙を剥くのか。わたしの恋人の最大の不名誉は、お前という無能で恩知らずな義妹を持つことだな』

「うるさいウルサイ五月蝿いうるさぁぁぁいっ!」


 発狂するわたしに、アネの手が伸びた。

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