表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/60

X-5-5"バツ1:嫌いと好きは紙一重"

「じゃあ、六時くらいには帰ってくるから。腹減ったら、冷蔵庫の中にあるもの食って待っててくれ。……じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃい、おかーさん」

「…………」


 私はしっかりと扉に鍵をかけて、家を出た。

 パートが休みの今日は吉美よしみと会う約束があるのだが、七時から小学校でふうの担任と面談があるため、あまり長居はできないな。


 ……あれから、吉美よしみとは週一の頻度で会うほどになった。日頃の悩み事を聞いてもらったり、たった三ヶ月だったとしても幸せだったあの頃の思い出話に花を咲かせたり。


 親が死んだ私にとって、もう、頼れるのは吉美よしみしかいなかった。


 今日は、吉美よしみの知り合いが経営しているエステに行く予定だ。生まれてから、あまりそういう美容系の店には行ったことがなかったため、楽しみ半分、緊張半分といった気持ちだ。



 ◆



「じゃあ、六時くらいには帰ってくるから。腹減ったら、冷蔵庫の中にあるもの食って待っててくれ。……じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃい、おかーさん」

「…………」


 きょーは、おかーさんとせんせーとわたしで、だいじなおはなしをするひ。でも、おそいじかんだから、わたしはいっかいげこーして、おともだちとあそびにいったおかーさんがかえってきてから、いっしょにがっこーにいくことになったの。


「……わたし、部屋にいるから。ふうは勝手に遊んでて」


 そういって、おねーちゃんはおへやにはいっていった。


 ……どうしようかな。


 ……のど、かわいたな……。


「おねーちゃん、じゅーすのみたい」

「自分で用意して」


 どあのそとからおねーちゃんにたのんだけど、だめだった。


 わたしは、しょっきだなからがらすのこっぷをだして、ぶどーのじゅーすをいれた。


「あ、こぼしちゃった……」


 てぃっしゅ、てぃっしゅは……あ、むこーにあった。


「いたっ!」


 てぃっしゅをとろーとおもったら、ろーてーぶるのあしにあしをぶつけて、ころんだ。こっぷがろーてーぶるからおちて、われて、ふたをあけたままのじゅーすのぺっとぼとるがたおれて、ころんだわたしにかかって……なきそーになった。


「うっ、うっ……」

「……いったいなに……? ……ふう


 おねーちゃんは、あきれてるみたいだった。


「……ごめんなさい、じぶんでじゅーすのもーとおもったの……。おねーちゃん、ごめんなさい…………」


 もう、なみだががまんできなくて、ないちゃったわたしに、おねーちゃんはいった。





ふうは不器用なんだから、余計なことしないで。そして邪魔をしないで。……お願いだから」



 ……え……?



 じゃまなの……?



「じぶんでよーいして」って、おねーちゃん、いったのに……。



 わたし、ひとりでやろーとしたのに。



 よけーなことなの……?



「……そうやって」

「……?」

「そうやって、おねーちゃんは、わたしのだいじなものをぜんぶひてーするんだ。わたしがもらえないものがかんたんに、すてるくらいてにはいるから。……おねーちゃんにはわからないよ。なんでもできるかみさまには、わたしのきもちなんて。だから、おりがみのつるもぐちゃぐちゃにできるんだ」

「……わたし、もう誰も信じられないから。ふうのことも。……お母さんも、ふうも、二人ともどうせいつか、わたしを傷つけるんでしょ……?」

「……いいんだ、それでわたしがどんなめにあっても」

「うん」

「じゃあ……じゃあもーいーよ。おねーちゃんが、わたしの『しあわせ』をぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶとるなら。わたしも、おねーちゃんのこと……」

「……」

「だいっきらい!!」


 わたしは、われたこっぷのはへんをつかんで、おねーちゃんに…………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ