X-3-4"X days:わたし、立派なお姉ちゃんになります。"
「……楓、おっきくなるの遅いの?」
「……あぁ。別に病気とかじゃないらしい」
小児科から帰ってきたその夜。思わず私は、邑に昼間のことを伝えてしまった。子どもに話すべきではないと、分かっていながら。
「……遅いと、どうなっちゃうの?」
「……たぶん、同年代よりも背が低かったり、うまく自分の気持ちを伝えられなかったり、冗談が通じにくかったりするんだと思う」
「ふーん……」
そう返事をすると、邑は電話の知育玩具をいじっている楓に近づき、こちらへ振り向いて、そして私に言った。
「だったら……わたし、がんばるよ」
「……どういうことだ?」
「楓が高いところに手が届かなかったら、わたしが代わりに取ってあげる。楓が気持ちを伝えられなくて困っていたら、誰よりも早く楓の気持ちを考えて、わたしがみんなに教える。楓ができないことがあったら、わたしが一緒に付き合う。……わたし、もっともっときよーになる。背もおっきくなる。だってわたしは……楓のお姉ちゃんだもん!!」
その力強い言葉に、私は半ば圧倒されていた。
邑は、私の不安なんて振り払うような、パワーに満ち溢れた目をしていた。