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X-3-3"X days:ご注文は成長の遅い妹ですか?"
……おかしい。
「うー」
……個人差、というやつか……?
「あ、あー」
……個人差、のはず。
「楓。『ママ』だ。言ってみろ」
「あー」
「……」
ソファにしがみついたまま、私に向かって声を発する楓。
「……いや、さすがに小児科に連れていくか……」
◆
「……蔵梨さん。娘さんが二歳を過ぎても歩いたり喋らないことに関してですが……。検査をしたところ、特に異常はみられませんでした。おそらく、単純に他の子よりも成長が遅いだけでしょう。二歳を過ぎても、というのは、少しばかり遅すぎる気もしますが……人には、器用不器用がありますので。……念のため、今後も経過を見ていきましょう」
「……わかりました」
◆
楓の成長が、ずいぶんと遅い。
邑は一歳になる前に歩いて喋っていたため、余計に気がかりだった。
「……邑を超える不器用、か。邑のように負けん気が強ければ、それを刺激してやることもできるんだがな……。妙に悟るような性格だったら、私にはなにができるか……」
斜めに影ができ始めた、この時間の帰路。私は二人目の娘の成長に、少なからず不安感を抱いていた。




