Neon
俺は、番人だ。
今日も酒に、金に、そして愛に飢えた獣が、俺が照らし示すネオンサインに惹かれてやってくる。俺は、そんな獣連中が暴れださないように、監視しているのさ。
俺の目の前でエンジェル・ウイングを飲むこの女もまた、そんな獣の一匹だ。
「……ねぇ、マスター」
「なんですか?」
おっと、獣が俺の臭いを嗅ぎ付けたみたいだ。チャイコフスキーの旋律に乗せて、獣の声が俺の鼓膜に染み渡る。
「……運命って、あると思う?」
「……運命? ありますね」
当たり前のことを言ってやった。どうだ……?
「やっぱりね、私もそうだと思っていたのよ」
「……なにか、心当たりがあるようで」
「……その天使の翼で、我が胸中に舞い戻ってくれませんか。マイエンジェル」
店の扉が開いたことを知らせるベルとともに、新たな獣が割り込んできた。
すると、エンジェル・ウイングを飲み干した獣は席を立ち、そのしなやかな両腕を奴の右腕に絡ませた。
「喜んで」
「おやおや、これは……」
既に獣は射止められていたらしい。
「さあ帰りましょ、墨子の元へ」
「ああ。きっとびっくりするだろうな」
……こいつは一本とられた。