Angry zone
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綺麗に並べられた、ラックの中の本。ラックの上にのせられた、雑貨類。
繊維の密度が高いカーテンは朝日を遮り、僅かに隙間から漏れた光だけが、わたしを儚げに照らしている。
今日も、新しい朝がやってきた。大して希望のない朝だ。
「……」
わたしは額に右手首をあて、この現実を痛感する。
やっぱり、あの人はこの世にいる。
わたしの心に居座り続けるあの人。
神様。あなたはなぜ『姉』という存在を創ったのか。
恨めしい。
そんな神様も、わたしから全てを奪った姉も。
「……お姉ちゃん、大っ嫌い」
残念ながら、今日もわたしの憎悪は健在だ。
「……死ねばいいのに」
とりあえず、姉に対して思っていることを口にしてみる。
何も起こらない。起こるはずがない。
たとえ万が一、何かが起こっても、わたしは、何も変わらない。変えられない。
わたしの、この不器用な部分は。
「……朝」
起こらないから、わたしは起きるしかない。
起き上がるしかない。
掛け布団を捲り、ベッドから降りて、床に脱ぎ散らかされた服を見回す。夜明け特有の冷えた空気が素肌に当たり、肌寒い。
今日も、パンツはダメか。
わたしはパンツを穿くのを諦めて、ビリビリに引き裂かれたパジャマを着た。寒い。
「これも全部お姉ちゃんのせいだ」
わたしは部屋のドアノブを回して……回して……回し……回……回して、廊下に出る。
「これもお姉ちゃんのせい」
廊下へ出たら右へ進み、足を踏み外して階段を転げ落ちる。
立ち上がって……ズボンのゴムが転げ落ちた衝撃で切れたから脱いで手に持ち、階段の横へ、そして右の扉のドアノブを回して……回して……回し……回……ま……回して、リビングダイニングへ出る。
「おはよう」
「おはよう、楓ちゃ……。今日も悲惨……だね……」
わたしのあいさつに、同居人の木隠墨子は振り向いて答える。そして、いつも通り驚く。
パンツと、ビリビリに引き裂かれた上にゴムが切れたパジャマのズボンを片手に持ち、下半身は何も身に付けていなくて、同じくビリビリに引き裂かれたパジャマの上着がギリギリ隠すべき場所を隠している。そんなわたしの姿を見れば、誰だって驚く。
「それもこれも全部……全部全部全部全部全部全部全部全部全部……お姉ちゃんのせいだぁァァァァァ-~/3/」’!?_…「26?7・,」?##@っ!!」
叫びながら空いた手で壁を叩いた刹那、わたしの手首がゴキッと静かな悲鳴を上げた。