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捜索物

六番は息を大きく吸って、笛を吹こうとする。


その笛の名は”死楽器(デッド・ラプソディー)”。知る人ぞ知る、聴いてしまうと狂ったように自殺すると噂される楽器の一つである。


笛に息を込めて、甲高い音を奏で始める六番。


その音色は、死を招くなど嘘のように綺麗で、天にも登るかのような美しさがある。

しかし、それとは裏腹に、その音を聴かされた生徒達は頭を抱え始めた。


「ゥゥッ、ゥアアアアッ!!」


生徒の一人が発狂し、頭を地面に打ち付け始めた。

それが引き金となったのか、次々と生徒達は自殺紛いの行動に走り始めた。


それは、耳を塞いでいた三番と四番も同じ事。

なんとか意識を保とうとしているにも関わらず、手が勝手に刀、短槍に伸ばされて行く。


生徒達の内の数人が懐から短剣などの護身用の武器を取り出した。そして、自らの心臓に当てがってーー。


「ダメッ!」


マリンが奪った。

彼には死楽器(デッド・ラプソディー)が効いていないのか、武器を手にした者から次々と奪い取って行っている。


それでも、生徒達は武器を奪われようと気にした様子もなく、地面や壁に身体を打ち付けて苦しみ、のたうち回る。


四番は何とか刀に手を伸ばす右手を左手で抑えて、堪えているようだが、三番の短槍が遂に喉元へと突き立てられた。


それでも、六番は止めない。

仲間が死のうと彼女にとってはどうでも良いのだ。


しかし、次の瞬間、唐突に彼女は笛から口を離した。いや、離さなければならない事態が起きたのだ。


「た、助けてくれぇぇぇぇ!!」


その悲鳴は、先に帰ったはずの五番の声であった。

まるで、幽霊にでも出会ったかのように青白い顔を、より白くして、戻ってーー逃げてきた。


死楽器(デッド・ラプソディー)の音色が止み、それから逃れる事が出来た三番、四番は安堵の一息。

生徒達は自分に何が起きたのか理解できずに混乱し、身体に走る痛みに悶絶。


六番は『何してんだ』とでも言いたげな表情で振り返り、五番を視野に入れる。

それに気が付いた彼は必死に助けを求め、


「悪魔だっ!た、たすッーー」


転けた。


ズザザザザーーッと頭から地面にダイブして、滑って行く。

その後、立ち上がって動くかと思われたが、なぜか微動だにしない。


三番と四番は、仮にも命の恩人になる彼を助け起こそうとして駆け寄ったが、


「…大丈夫、か?」


「死んでるでござる……」


脳天に指先程の穴がポッカリと向こう側まで空けて死んでいた。


背後からの何者かの攻撃だと。そう判断した二人は、即座に視線を五番が走って来ていた方向へと向ける。


そして、目を見開いて愕然とした。


ーー彼等がいたのだ。


「「ーーッ!?」」


これ以上の彼等に接近してはならないと身体が勝手に反応し、武器を構えながら飛び退く。


「ユートは…ユートはどこじゃゴラァァ!!」


「ユート様ぁぁぁ!!」


しかし、彼等が飛び退いたと同時に、悪魔は駆け出した。

狂気染みた怒号と狂信染みた声を上げながら。


そう。悪魔とは、リョーガとクリムである。


「ひ、ヒィィッ!?」

「……ッ!?」

「ちょっ!なんか来た!なんか来たよ!?」


その二人組の放つオーラに三番、四番、六番は目に見える程に怯えた。


生徒達は彼等の姿が視認できてな為、なぜ四番達が怯えているのか定かではない。

しかし、彼等の耳には聴こえた。


”ユート”の名が。


ザワザワと騒がしくなる生徒達。

彼等の話題は、新たな乱入者がユートの名を叫んだ事である。


そんな彼等の事など全く知らないリョーガ達。

まず、クリムは走りながら的確な射撃を行った。


三番は避け、四番は刀で弾いた。しかし、六番は避けきれず、迎撃も間に合わなかった為、足を撃ち抜かれた。


そうしている間にリョーガは彼等の目前まで迫り、気が付いた瞬間には三人共殴り飛ばされ、生徒達の頭上を通って奥の壁に打ち付けられた。


またもや静寂が生徒達に訪れた。

彼等の視線は、一度殴り飛ばされた三人組に向けられたが、すぐに別の方向へーーリョーガ達へと向けられ、畏怖した。


「ユート様の匂いはここなのっ!ここで途切れてるのっ!」


「ユートォォォ!どこじゃゴラァァ!!出て来いやぁボケェ!!」


頭が完全にイカれた輩だ。

そして、彼等が存在している事で言い表せぬ恐怖を覚える。


黒光するゴテゴテしい銃器に身を包んだクリム。

身長は小さく、可愛らしい顔付きからは、まだ子供だと判断できる。

しかし、彼女の持つ数多の武器は、かなりの重量を誇り、軽やかに歩く彼女の姿からは想像も付かない程の重さがある。


その証拠に、彼女が歩くと、足元の石畳がたまに悲鳴を上げて割れている。


そして、リョーガは、もう殺人鬼としか言い表せない形相をした凶悪犯罪者のような顔だ。

もしも、彼が鬼の一種だと自称したならば、誰が何を言おうと信じるだろう。


歯車が嫌ってほどに付いた巨大な剣を背負っている為か、その凶悪さが倍増している。


主に、リョーガが恐怖の象徴である。クリムはそれを少し和らげている存在である。


奇声さえ発していなければ。


「ユート様ぁぁぁぁ!!」


完全に狂った狂人共だ。

もし彼等に関わろうものならば、命が幾つあっても足りないだろう。


そう生徒達に思わせた。


しかし、生徒達の『関わりたくない』と言う想いは神様に届く事はなかった。


「おい、そこのクソガキ。ユート、どこや?」


とある生徒がリョーガに絡まれたのだ。

胸倉は掴んでいないが、上から目線での高圧的な発言。

それはもう、恐喝とかそんな度合いを軽く通り越している。


その生徒ーー悪ガキ3人組の内の一人の金髪君がションベンを漏らす程だ。

しかし、喋らなければ今すぐにでも殴り飛ばされた四番達のようになると察した彼は、必死に声を絞り出す。


「き、きききき…んくっ…き、消え…ました……」


言葉が上手く吐き出せず、生唾を飲み込み、なんとか出した声だが、リョーガは納得しなかった。


「あ”ぁ?」


「ひッ!」


リョーガのドスの効いた声に小さく悲鳴を上げた金髪君は、泡を吹いて気絶した。


「ちっ」


使い物にならない。そう思ったリョーガは、先程殴り飛ばした輩の下まで歩いて行く。


その間に、クリムは聴き込み。


「ユート様はどこなの?」


彼女が尋ねれば、リョーガ程に怯えられない。しかし、生徒達の視線は彼女ではなく、彼女の持つ武器に釘付け状態。


何度か聴き込みを繰り返していると、ようやくマトモに会話ができる相手と巡り会えた。


「ユートさんなら、ついさっきまで居ましたよ」


マリンだ。

彼だけが今の状況を冷静に把握しようとしていた。


「どこに行ったなの?」


「どこって…消えた。としか言いようがないですね…。まぁ、ユートさんなら、どこに行っても大丈夫だと思いますけど」


「そうね、ユートならね」


「ユートさんなら…」


「ユート、凄い」


会話にカウリーウ達も混ざる。


「そう言えば、あのアイって子はどこに行ったの?いつもユートと一緒だったじゃない?」


「アイさんなら、ユートさんに用を言い渡されてニーアに行きましたよ」


「そのアイって子の事を教えて欲しいのっ!」


唐突のカウリーウの疑問に難なく答えたマリン。そして、クリムはそれに食い付いた。


そして、マリンは話した。アイの事を、ユートのこれまでの事を、全て事細かに説明した。


リョーガも、殴り飛ばした三人を叩き起こして、彼等の目的や目論見(もくろみ)なども含めて強制的に全てを吐かさせた。


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