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消失とイケイケゴーゴー


三番、四番、五番、六番が、突如現れた神々しいまでの人ならざる者を前に呆然としながら見守る中、


「ハハッ、もう来てもうたんか…タイミング悪いなぁ…」


体中に多種多様な武器を突き刺されても、ユートは笑って呟いた。


『異端者ユート。貴様は我が管理する法と掟に背いた。よって、貴様を排除する』


まるで頭の中に響くような反響する低い声。


人ならざる者の周りを浮いている武器が数本上昇したと思えば、一瞬の内にユートの体に突き立てられる。


まるで、瞬間移動したかのように見えるソレは、見るだけで業物だと判断できる程に仰々しい。

しかし、ユートは笑ったままだ。


例え、普通ならば死は間逃れない筈の心臓部分や、目玉から脳にかけてを貫かれようと、彼は笑っている。


嗤っていたのだ。


「ハハッ…ハハハッ…クヒッ、クヒヒヒッ…キハハハハハハハハハッ」


狂ったように。

いや、彼は既に狂っていた。


地面に武器に貫かれて固定されていたにも関わらず、不意に、不自然に立ち上がった。そして、猛然と人ならざる者へと駆け出した。


彼の狂気に若干の焦りを見せた人ならざる者が幾重もの攻撃を加えるが、ユートは止まる事を知らず、そのまま人ならざる者に抱き着いた。


かと思えば、


「爆破」


ーーボンッ


自爆した。


生徒達を外界から遮る壁や四番達を勢い良く吹き飛ばし、迷宮を揺るがす程の大爆発。


しかし、周囲の影響は少なかった。

たかだか、扉や四番達を吹き飛ばしただけに留まったのだ。


そして、中心地はと言えば、球状に大きく抉れていた。

ユートは自身もろとも全てを消し飛ばしたのだ。


なのに、消し飛んだ跡には彼が残っていたーー人ならざる者が。


『今のは危なかった。しかし、所詮は人間。この程度で我が死ぬ筈がなかろうが』


ユートの自爆技を喰らっても、彼は傷一つなかった。

神々しい服にも汚れ一つない。


その背後には混乱した生徒達の姿がある。

そして、人ならざる者を挟んだ対面には、何が起きたか理解できていない四番達が居る。


唐突に現われた者に標的が突撃して、吹き飛んだ。としか理解できていないのだ。


『ふんっ。我が出向くまでもないではないか。クロノスめが…』


誰かに悪態を吐いて、宙を浮き始める人ならざる者。


だが、彼はユートを甘く身過ぎていた。


『ぐべっ!?』


人ならざる者が唐突に地面に頭突きをかました。

いや、地面から突然生えた骨組みのような機械の手がガシッと彼の足を掴んで地面に叩き付けたのだ。


即座に飛んで(・・・)声の発生源から距離を取った人ならざる者だが、彼を見て驚愕に目を見開いた。


『なっ!?なぜ生きている!?』


「アホか。俺がそう簡単に死ぬわけないやんけ」


地面からヒョッコリと顔を出したユートだ。


まるでゾンビのように地面から這い出て来て、服に付いた汚れを払う彼の身体には、服に穴は空いてるものの、傷一つ残っていない。


いや、右半身は肉片一つすら残っていない。

機械質な内骨格が丸見えである。


『ちっ、ならば、塵も残さずに消すまでッ!』


人ならざる者の周囲に刃に炎や氷などが付与された武器が多数出現し、ユートを襲う。が、


「あーあ。お前の所為で全部台無しやわ。責任取って、大人しく俺に食われてや」


なぜかユートに当たる寸前で軌道を曲げて地面に突き刺さる。

地面に突き刺さった武器は周囲の物を吹き飛ばし、燃やし尽くし、凍りつかせる。


『ど、どう言う事だ!?たかが人間如きがっ!』


どれだけ攻撃しようが全く当たらない。

それは、四番達も感じた事である。


攻撃されながらも、クレーターから這い出して大きく背伸びをするユート。呑気に大きな欠伸までしている。


そして、全ての攻撃は彼を避けて明後日の方向へと飛んで行く。


それが人ならざる者にとって余計に恐怖を煽られる。


『ちっ!』


舌打ちを一つ、すぐさまこの場を離れようとした人ならざる者。

しかし、彼は既にユートの罠にハマっていた。


「俺は…『我はエクスマキナ』。『法と掟の神、デミス』。お前を…『取り込む』」


『人間風情がその言葉をーー』


人には理解不能な言葉を紡いだユートに怒りを露わにした人ならざる者ーーデミスだったが、その瞬間、彼は天井から飛び出して来た黒い何かに喰われて姿を消した。


「アハッ、アハハハハッ、さすが神さんっ!最っこーー」


そして、喜んでいる最中のユートも忽然と姿を消した。


残ったのは、混乱中の生徒達と四番達だけだった。


暫し呆然としていた四番達だったが、このまま居ても仕方がないと思った四番が真っ先に口を開く。


「………と、取り敢えず……どうするでござるか?」


「そ、そうだよね…うん、気を取り直して、生徒達を皆殺しにしようよ!」


「キヒッ、私は任務を遂行したから、帰らせて貰うぞ」


「……俺は…手伝う」


「よし、分かった。拙者も助太刀致す」


五番以外の彼等は生徒達を殺す為に歩き出した。



ーーー



ユートが消えてしまう数分前。


「そんまま突っ込めぇ!!」


「ハイッなのぉ!!」


「ダメですよぉぉ!!」


「何やってんだ馬鹿野郎共がぁぁ!!」


「もう、知らないわよ…」


ーーズドォォンッ


リョーガ達はアークノート学園に到着していた。

滅茶苦茶な方法で。


いつしかユートがやったように、アークノート学園の囲う壁を強行突破したのだ。


ユートの場合は門であったが、リョーガが行ったのは文字通りの壁である。

門を探すのが面倒臭いだけの理由だけで、壁を破壊した。


しかし、それはアークノート学園に起きている事態にとって好都合な事であった。


壁を破壊した音に反応した教師が学園内で起きている事態に気が付いた事や、学園内を徘徊していた赤ローブ達を数人撥ね飛ばすなどをやってのけたのだから。


「さて、どこにユートおるんやろか?」


学園に突入し、数人の赤ローブを知らぬ内に跳ね飛ばしてから、途中まで進んだところでリョーガが疑問を発した。


「クリム分かるのっ!ユート様の匂いがあるのっ!間違いないのっ!」


だけど、運転手のクリムは既に場所を特定していたようで、迷いなくハンドルを操作している。


途中、飛び出してきた赤ローブを撥ね、攻撃を加えてきた赤ローブを撥ね、逃げ惑う赤ローブを撥ね、呆然と佇む赤ローブを撥ねて到着したのは、迷宮の入り口。


ちなみに、赤ローブを撥ねていた理由は、攻撃してきたからだけではない。

何人か撥ねてしまい、どうしようもなくなり、遂に諦めの境地に辿り着き始めたら、更に攻撃されたからだ。

要するに、自衛の為に撥ねたのだ。


彼等に罪はないが、問題は山程ある。


言ってしまえば、リョーガとクリムのイケイケゴーゴーが止まらなかったのである。


「ここなのっ!ここにーー」


ユートが居る。そう言おうとしたクリムだったが、突如発生した地震によってバランスを崩してコテンッと可愛らしく尻餅をついた。


「何やってんねん。ここにユートがおるんなら、はよ案内してや」


リョーガは地震が起きた事など全く気が付いていないようで、転けたクリムや、地震に驚くエリオスや、車に残って罪悪感に苛まれるユースや、全てを諦めきったリリィを置いてズカズカと迷宮へと入って行った。


後から続いてクリムとエリオスが追い掛ける。



ーーー



「さてっ、先に死にたいのは、だーれ?」


厄介なユートが居なくなった事を良い事に、五番を除いた彼等は生徒達の前に姿を現した。


「あれれ?居ないのかなぁ?それじゃあ、私が決めるよ?」


「そう言う事はやめるでござる。彼等はまだ若い。死ぬ時は一瞬で、痛みも感じさせずに殺すのが良いでござる」


「四番は優しいんだね!三番はどうしたいかな?」


「………」


「あらら、また無言なのね」


六番は今の状況を楽しんでいた。

ユートが居ない今、生徒達を守る存在は居ない。


居るのは、


「誰ですか、貴方達は」


ユートに鍛えられたマリンだ。

怯える生徒達と違い、彼は商業科にも関わらず、堂々と六番の前に立ちはだかった。


「ん?君から死にたいの?良いよっ!殺してあげる!」


「六番。これは遊びではないのでござる。殺す時は苦しまないように一瞬で死ぬようにするでござるよ」


「はいはい」


適当な返事を返す六番。

そして、武器を創造し、投擲の構えをとってーー投げた。


彼女の投擲速度は、まだ未熟な生徒達にとって一瞬の出来事である。

咄嗟に目を背ける者も居れば、その出来事を信じれずに呆然としている者もいる。


しかし、彼等が一様に思い浮かべるのは、マリンの身体に六番が創り出した槍が突き刺さる未来だけだ。


それは、槍を投擲した六番や、成り行きを見ている三番と四番とて同じ事。


だが、マリンは冷静に飛んできた槍を優しく手を添えるように掴んで、槍の飛来速度の勢いを利用して一回転。速度を倍にして投げ返した。


「ーーっ!?」


そんな一生徒が出来る筈のない行動を予測していなかった六番は咄嗟に屈んで避け、扉付近で生徒達が逃げ出さないように見張っていた四番が驚きながらも得意の居合で斬り落とした。


「す、凄いねぇ、君。可愛い顔してるのに、こんな事が出来るだなんて」


新たに武器を創造しながらマリンに声を掛ける六番。

それにマリンは返答する気はない。


ユートに教わった通り、敵を良く見て冷静に構え、いついかなる時でも動けるように相手を見据えている。


「ほぅ」


居合の道を極めたと自負する四番をも感嘆させる構えであった。


「お、おい、マリン。お、お前、商業科の癖にでしゃばるなよ。そ、そんな奴に勝てるわけねぇだろ…」


生徒の一人。いつもマリンを虐めていた三人組の一人の金髪君が忠告するが、彼は黙ったまま目の前の相手を睨みつけている。


全てはユートに教わった事だ。


敵に集中し、周囲にも気を配る。

少しでも怠れば、足をすくわれる。


何度も言われ続けた。

そして、それを今、初めて実行している。


「そこまで真剣に見つめられちゃ、お姉さん、コロッと落ちちゃいそう。だから、もう良いや。殺しちゃおっ」


そう言った瞬間、彼女は懐から一本の骨で出来た笛を取り出した。

それを確認した三番と四番は焦燥を露わにしながら、咄嗟に耳を塞ぐ。


そして、六番は彼等の事などお構いなしに笛に口を付けた。


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