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仕事柄、眼球に棘が刺さったり、目に廃油が混入したり、目に鉄粉が入ったりと色々あった。


勿論、身体の切り傷などの怪我は絶えない。


でもね、今回のは初めてだよ。


まさか、エアーホースが炸裂するなんて、予想外だったよ。

お陰で、鼓膜が破けて、何も聞こえない。


血が止まんねぇし。


酷い目にあった…。


二人の男女を見送ってから暫くして、隠し部屋の門番をしていたユートの前に新たな客人が現れた。


酷くやつれた研究者のような白衣を着た者とロープの上に刀を携えた者だ。


「イヒヒッ、やっと、やっと見つけたぞ」


白衣が何か言っているが、その不気味な顔に彼はローブの男から引かれている。

同じく、ユートも引いた。


「貴様だろぉ?私の研究を邪魔し、あまつさえ、全ての魔力を奪い取って行ったのはぁ」


「ん?なんの事?」


白衣の男が気持ち悪すぎて、嫌悪感を露わにするユートだが、受け答えはちゃんとする。


「シラを切るか…だが、この私の目は誤魔化せないみたいだなぁ。この、千里眼と索敵眼にはなぁ」


嫌味ったらしく言う白衣。


「イヒヒヒヒッ、貴様は私の研究の邪魔をした。それ相応の対価を覚悟してもらいたいと思っている。……しかぁし!私は考えたのだ。魔力を全て奪うその力…私の研究に加えてやろう、と。だから、貴様は私の研究材料として扱ってやらんでもない。光栄に思うがいい!貴様は私ーー」


白衣が何やら長々と話し始めて鬱陶しく思ったユートは、今なら殺せると思ってコッソリと取り出した短剣で奇襲を掛けた。


ーーーギンッ


しかし、ローブの男がいつのまにか抜き放った刀で容易く受けられてしまった。


「無駄話は不要でござる、六番」


「ちっ、仕方ない。殺してはならないぞ。生け捕りにするんだ、四番」


四番と呼ばれたローブの男は六番の言葉を聞き流しながら静かに刀を構える。

そんな態度に悪態を吐きながら四番も懐から奇妙な形をした筒状の物ーー銃を取り出して構えた。


しかし、ユートは構えようとしない。

短剣を納めて、扉を背後に棒立ち状態。


あくまで彼は戦いたくないようだ。

その証拠に、会話を試みている。


「アンタのそれって、銃やんな?」


「ジュウ?なんだそれは?私の力作であるコレは魔弾装填式小型照射台だ。変な…いや、ありかもしれないな…」


顎に手を置いて考え始める六番。

どうやら、彼はユートの策略に引っ掛かり易いタイプのようだ。


「無駄話は不要だと言ったでござる!」


四番はそんな六番に喝を入れるが、六番は聞く耳を持たない。


「そうだな、それがいい。これからコレはジュウと呼ばせてもらおう。して、貴様はジュウを知ってる風だったが、なぜ知っている?」


「俺も持ってるから」


そう言って取り出したのは、六番の持っている長く太く扱い辛そうな物ではなく、小さく短く取り回しの効きやすい拳銃を取り出した。


この世界には存在しない、火薬によって弾丸を発射する代物だ。


「ほぅ、興味深い。私以外にも神の道を歩む研究者が居たとはな。…それをどこで手に入れたのだ?」


「俺が作った」


ユートの言葉に感嘆の声を上げた六番だったが、次に発せられた返答に驚愕を露わにした。


「どう言う事だ?貴様が作っただと…?」


「無駄話はよせと言っているではないか!」


六番が敵を前にして驚愕で固まった事で怒りを覚えた四番。

刀を目にも留まらぬ速さで抜き放ち、斬撃を飛ばしてユートを攻撃した。


しかし、それはユートに当たる直前で不自然に掻き消えた。


「っ!?」


常に冷静を保っていた四番も僅かに動揺した。


だが、彼は動揺を通り越して発狂しそうな勢いで興奮していた。


「す、素晴らしい!魔力で闘気を弾く、その技!魔力はそんな使い方もできるのか!新たな発見だ!本当に素晴らしい!私の助手にしたい程だ!!」


「そりゃどうも」


褒められて満更でもないのか、頬をポリポリと掻く。


「だが、貴様を殺さなければ私は組織に殺されてしまう。しかし!貴様は有ーー」


「死ねぇぇぇ!!」


ーーガンッ


六番が何か言おうとしたが、それは怒号と巨大な物体の襲来によって掻き消された。


大剣が六番の背後から飛来し、ユートの眼前で目に見えない壁によって弾かれたのだ。


大剣は半ばから折れて明後日の方向へと飛んで行くと同時に、ユートの前面に張られていた目に見えない壁も音を立てて崩れる。


「あーあ、もう帰ってきよった…」


奥から怒りのオーラを撒き散らして歩いてくる二人の姿を視野に入れたユートはげんなりとして呟く。


四番は振り返る事なく、その二人が誰かを見分けた。


「三番と五番でござるか。随分と遅い到着でござるな」


嫌味の込められた口調でイラッとするが、それ以前に彼等はユートに騙されて罠や魔物の巣などに突撃させられた為、既に怒りは最高潮。


これ程までに怒りを抱いた事はない。と言える程に怒り狂っている。


「お前がっ、お前がぁあああああっ!!」


頭を抱えて発狂し、新たな武器を何処からか取り出す五番。

取り出したのは、短槍だ。


それを、ユート目掛けて力一杯投げ飛ばす。


「うおっと!?」


しかし、彼女の攻撃はユートに掠りもしない。僅かに体を動かすだけで避けられてしまった。


「なぜ怒っているでござるか?」


「…騙された」


四番が手の空いている三番に尋ねると、一枚の紙を渡された。

それは、この迷宮の地図だ。


しかし、嘘しか描かれていない迷惑な地図である。


「俺達も協力する。…ヤツを殺す」


どうやら、無表情ながらも三番も怒っているようだ。


一体、彼等に何があったのかなど想像が付かない四番だったが、協力してくれるのは有り難かった。

なにせ、口の上手いユートに六番は乗せられて、全く話が先に進まず、何も出来なかったからだ。


事態が動いてくれるだけでも、彼にしてみれば有り難い事であった。


そんな二人の会話を他所に、五番は取り出した色々な種類の武器をユートに投げつけ続けている。


五番の所持スキルの一つ【武器想像】。それによって形作られた武器を彼女は投げて使う。


しかし、投擲物はユートに通用しない。

弾丸の速度でさえも、彼の瞳は視認できるのだ。そんな遅い投擲速度では彼を捉える事などできやしない。


「少し落ち着くでござる、五番」


「殺す!殺してやるぅ!!」


四番が五番を宥めようとするが、彼女は止まる事を知らない。

武器を想像し、ユートに投擲を繰り返している。


「イヒヒッ、怒りで我を忘れてるようだな」


「………」


容易く体を僅かに動かすだけで避けられる五番の攻撃。それを愉しげに見守る六番と、怒りを孕んだ視線をユートに送る三番。


まるで息が合ってない。


しかし、それはその短い間だけであった。


「拙者達も参戦するでござる」


「…殺る」


「イヒヒッ、仕方ない。仕方ない。助手にしたかったが、仕方ない。ついでに、丁度良い機会だから、私の開発した武器を試させてもらおう」


彼等四人の総攻撃が始まった。


五番は滅茶苦茶に出現させた武器を投擲し続ける。それを避けた瞬間の隙を狙って四番は一瞬にしてユートの懐に入り込んで居合斬りを行う。

しかし、それすらも見切られて避けられてしまう。が、三番が伸び縮みする短槍を器用に扱い、四番の攻撃を避けたユートに攻撃を加える。


だが、宙に居ようと地に居ようと彼は逃げ道が見えているかのように壁や天井などの空間を大きく使い、スルスルと迫り来る攻撃を避ける。


そんな彼を避けれないようにする為に六番がジュウを乱射している。


だけど、彼には誰の攻撃も当たらない。

完璧すぎるチームワークを見せているにも関わらず、だ。


ユートは攻撃を軽々と避け、見えない壁で防ぎ、余裕さえ見える回避を続けている。


にも関わらず、彼は一切反撃をしない。

それを不思議に思った四番は、攻撃を繰り返しながら声に出して尋ねた。


「どうしてっ!反撃しないっ!でっ!ござるかっ!!」


「そりゃ、俺は戦うのは苦手やからな」


戦っている最中だと言うのに、ユートは普段通りにヘラヘラと、呼吸すらしてないかのように易々と答えた。


そんな彼の体に内心で四番達は動揺した。

明らかにオカシイのだ。


行動範囲も動く量も、ユートの方が断然多い。しかし、彼は息切れ一つしていない。

それどころか、受け答えすら容易にこなしているのだ。


地を蹴り、壁を走り、天井に張り付く。そんな予測不能な動きをするだけでも眼を見張るものだ。なのに、彼はそれだけで収まらない。


例え、彼の言った通り戦闘が苦手だとしても、余りにも戦闘に慣れすぎているのだ。


いつ反撃が来てもおかしくない状況。

このままでは不味いと思った彼等は一度攻撃を中断してユートから距離を取った。


ブチギレ状態の六番も、攻撃を繰り返す内に冷静になったのか、投擲を止めて警戒に移った。


「……お前は何者だ?」


この場にいる彼等が一番気になっていた事を、一番無口な三番が尋ねた。

そんな問いに誰も答えないだろう。そう思ったのも束の間。


ユートは笑いながら答えた。


「俺はこの学園の教師や」


「…違う。そうじゃないーー」


「そうじゃないでござるっ!拙者達が聴きたいのは、貴殿が何なのかなのでござるっ!」


痺れを切らした四番が三番の言葉を遮り、早口で捲したてるかのように言葉を発した。


「ハハッ、俺が何者?俺が何なのか?それはな、ーーっ!?」


彼等の求める答えを言おうとした。

だが、少し遅かった。


なぜなら、彼の胸辺りーー心臓を白銀色の輝く槍が貫いていたからだ。

いつ刺さったのかさえ分からない。


しかし、槍の矛先が四番達を向いている時点でどこから攻撃が来たかが判断できる。


ずっとユートの背後にあった扉の方向からだ。


引き攣った笑みを浮かべながらユートはゆっくりと振り返りーー腕、腹、肩、脚と順番に剣や斧や矢が貫いき、突き刺さった。


緩やかに背中から倒れて行くユート。

そして、彼に攻撃を加えた者が露わになる。


白銀色の武器の数々を浮かせて周囲を固めている彼はーー。

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