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その箱は…2


この街に来てからの仲間の動向を話したエリオス。

と、言っても、彼が一番初めに行動を開始した為、詳しくはリョーガが語ったが。


「そうか。他にも仲間が居るのじゃな」


「いや、俺の下僕共やな」


リョーガの発言に苦笑いを浮かべるレイルム。

エリオスもザグサも苦笑いだ。


「一応だが、俺はエリオスって言うんだ。剣豪シャングルに会えて光栄に思ってる」


「お、俺は情報屋のザグサだ。これからも宜しく頼む」


エリオスが今頃になって自分の名前を名乗り、それに便乗してザグサも名乗った。

ザグサの場合は、縁を作っておこう的な思惑があるのだろう。


「ああ、宜しく」


エリオスが握手を求めた為、二人と握手を交わすレイルム。

その後、暫くしてメリナとミナがやってきた。


「お、お待たせしました…レイルム様…」


「お待たせ、しまし…た……」


なぜか、二人共とても疲労しているようだ。

ミナはその場でグデェーンッとなり、メリナは息を荒げている。


その原因は、彼女達の後方に置かれている木箱だと予測できる。

リョーガが横になれば同じぐらいの大きさか、それ以上ある縦長の棺桶を思わせる木箱だ。


引き摺って持ってきたのか、廊下に傷が残っている。


それは、地下倉庫に置かれていた為、持ってくるのに苦労したのだろう。

なにせ、この部屋は二階に位置しており、登らなければならない階段は三階分にもなるのだ。


だが、明らかに彼女達の疲れ方が異常だとレイルムは思った。

三階分もの階段を上がれば、誰でも疲れるだろう。だが、彼女達ならばそれぐらいで倒れ込んだりしない筈なのだ。


少し疑問を持ったが、頼んだ物が届いた為、リョーガに開けるように促す。


「あれはユートがお主に残して行った物じゃ。…ちと、中身が気になってるのじゃが、お主にしか開けれんのじゃよ…ここで開けてくれぬか?」


「ふーん…。ほな、開けてみるわ」


余り興味なさげなリョーガは、木箱の置かれた廊下へと移動して、開けようとする。


しかし、開かない。


押しても、引いても、殴っても、開く気配はおろか壊れる気配すらない。

リョーガが殴っても壊れない事に驚愕するエリオスはさて置き、不思議そうに首を傾げるレイルム達。


ユートはこの屋敷を発つ際に『もし、リョーガが来たら渡したって』と言い残したのだ。

それは、メリナもミナも耳にしている為、その言葉は間違いない筈である。


だが、そのリョーガでさえも開けれない。そうなると、リョーガが偽物かユートの設計ミスだとしか考えられない。


「アイツ、何がしたいんや?」


コンコンと爪先で木箱を蹴るリョーガ。

そんな時、箱の頑丈さに驚いていたエリオスが何かを思い出したようで「もしかして…」と呟いてからリョーガに声を掛けた。


「クリムが持ってるアレみたいなやつじゃねぇのか?」


「アレ?…あー、アレね」


成る程。と言った風に木箱に手をかざすリョーガ。

そして、放たれる真っ黒な魔力の塊。


ーーバギッ


木箱にヒビ割れが入った。

それはみるみると拡がって行き、全体をヒビ割れが覆うと同時に木っ端微塵に砕け散った。


そして、出て来たのは、


「剣…かの?」

「剣…だよな?」


レイルムとエリオスが同時に疑問を発した。


彼等が疑問に思うのも仕方ないだろう。


木箱と同等程の大きさで、鍔はなく、持ち手を除いて全体が歯車で彩られた異形の武器。歯車は、まるで、時を刻むかのように動き続けている。

そして、それは一見すると長細いハンマーか何かのように見えるのだ。


だが、違う。彼等の言う通り剣である。

その証拠に、リョーガは少し重たそうに持ち上げて歯車だらけの()から片刃の剣を引き抜いた。


刀身は浅黒く、刃は何人も人を切っり裂き血に濡れたかのようにドス黒い巨大な方刃剣だ。

リョーガはその剣が醸し出す禍々しくも妖艶な魅力に見惚れている。


それを横目に、メリナはユートから貰った端末機(スマホ)をポケットから取り出して、とあるアプリを起動させてカメラを剣へと向ける。


そして、目を見開いて口をパクパクとさせた。


「レ、レイルム様っ!?」


何とか口から言葉を絞り出してレイルムを呼んだメリナ。

レイルムは端末機(スマホ)の画面を覗き込み、驚愕した。


「なっ…何なのじゃコレは…!?」


端末機(スマホ)の画面には、リョーガの持つ剣のステータスが表示されているのだ。

そして、そこに描かれた内容が信じられない事であった。



武器ーー《£イ%9@":ス》


階級ーー禁忌級(タブー)


スキル

【絶望の謳】【狂戦士】【血喰】【鬼神】【制限解除】【暴走】【清浄】【修復】【体力回復】【魔力吸収】【超重量】


【絶対的破壊】【壊滅の謳】【破撃】【強靭たる歯車】【重量軽減】【自動修復】【魔力回復】【体力吸収】



それはもう、武器の類から逸脱してしまっていた。破壊の為だけに生み出されたとしか言いようのない代物であったのだ。


武器名なんて、文字化けしてしまっており所々しか読めず、階級など全く見聞きした事のないものだ。


どう考えても人の手に余る物であり、人の手によって造れられた物ではない。

レイルムの知る限り、階級で最高位に位置する筈の神話級(ゴッズ)の中ですら、この様な怪物専用武器は存在していない。


どうしてユートがこんな代物を持っていたかと、そう考えたが答えは出ない。

『ユートならば』と、それで片付けてしまえるのだ。


「やっぱ、重たいな」


リョーガが重たいと言った。すなわち、その剣は相当の重量があると言う事だ。


怪力のリョーガでさえ持ち続けるのを辛く思える大剣。

それを鞘に納めて、少し軽くなったのを感じながら【アイテムボックス】へと仕舞おうとする。


「あれ?」


だが、【アイテムボックス】に収納できなかった。

何度試そうが、やはり出来ない。


「まぁ、ええか」


リョーガは半端諦めを含めた言葉を発してから大剣を床に置いた。

いつも、何かしらの荷物があると即座に【アイテムボックス】に収納するのに、今回はしなかった事を不思議に思ったエリオスが尋ねる。


「ん?どうして【アイテムボックス】に入れないんだ?」


「入らへんねん」


苛立ち混じりに答えたリョーガ。

【アイテムボックス】の中はまだ空きがあるし、なんでもかんでも入れれる筈なのに、入らない。

それが彼にとって苛立ちの原因である。


「こんな事、初めてじゃねぇか?家でもスッポリ入ったってのによ」


「ホンマにやで」


エリオスの言う通り、リョーガの【アイテムボックス】には、とある貴族の豪邸が入っている。

ただの仕返しの為に回収した物であるが、今は関係ない話だ。


「……リョーガよ。少しこれを見てくれぬか?」


今頃になって我に返ったレイルムが一応ステータスを見せておこうと思い、リョーガを呼ぶが、余りにも衝撃的な事だった為に半分程が裏返った声になった。


呼ばれてレイルムの方へと視線を向けるリョーガ。

端末機(スマホ)がある事を少し不思議に思ったが、ユートが関係してるからか。と納得し、画面を覗き込みーーニヤリと笑った。



〜〜〜



歯車で彩られた大剣をレイルムから貰った鎖で巻いて背中に携えたリョーガはエリオスとザグサを伴って冒険者ギルドへと向かう。その理由は、


「あっ!リョーガさん!」


「遅いわよ!いつまで待たせるのよ!」


「大きい剣なのっ!」


リョーガの存在に気が付いたユースは、自己を主張するかのように手を振り、リリィは戻るのが遅かった事に怒り、クリムはリョーガの背中の剣に気が付いて目をキラキラとさせた。


「それじゃあ、俺はこれで」


「ああ、助かった」


「せんきゅー」


ザグサは用が済んだと思い、二人に別れの挨拶を交わして去っていった。


それを最後まで見届けたリョーガとエリオスは、ユース達の居る机席へと向かい、適当に飲み物を頼んでから席に着く。


席に着く際、リョーガは大剣を机に立て掛けるが、机がミシミシッと悲鳴を上げた為に床に直置きする事にした。


「随分と大きい剣ですね」


「ユート様の匂いがするの!」


「………」


それを見ていたユースが感想を述べ、クリムは訳の分からない事を発し、そんな彼女を心配そうに見つめるリリィ。


剣を触ったり匂いを嗅いだりして興奮するクリムは置いておき、リョーガは本来の目的の話をする。


「ユートの居場所が分かったで」


「どこですか?」


リョーガの発言に逸早く返答したのはユースだ。

リリィは狂信者のようになってしまったクリムを見て苦笑いを浮かべている。


「サクラムかアークノート学園らしい」


「場所が真逆ね。で、どっちから行くの?」


狂信者の未来を諦めたリリィが視線を上げながら尋ねた。


「どっちがええやろ?」


だけど、リョーガの答えはハッキリとしないものだ。

なにせ、彼はこの世界の地理を知らない。


名前だけ知っているが、場所などサッパリだ。


「アークノート学園は学生か商人しか入れねぇから、先にサクラムに行った方が良いんじゃねぇか?」


「ほな、そうするか」


とても適当な返答を返したリョーガ。

ユートの場所がハッキリとした為か、随分と余裕があるみたいだ。


「決まりだな!じゃあ、ユース!」


エリオスの呼び掛けに、まるで待っていたかのようにすかさず人数分の鍵を取り出して、各自に渡す。


「はい。ちゃんと宿は確保できましたよ。鍵はコレです。あと、宿がなかったから高級宿を選びました。食事はどうします?」


「私はアッサリしたのが食べたいわね」


「俺は肉だな!」


「クリムはタコ焼きが食べたいのっ!」


「俺は甘いのがええなぁ」


「僕は…なんでも良いですよ」


随分とバラバラな要望だ。

ユースだけが後々の事を考えて自粛したようだ。


「ほな、各自、解散!」


ユースの自粛は余り意味を成さず、バラバラで食事をする事となった。

この後のユースはと言えば、クリムと一緒に先に宿に戻り、二人で仲良くタコ焼きを焼いて食べていた。

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