種
投稿した!
はずだった…。
消えてたのよ……。
書き直して、再投稿します。
もう、私の体力はゼロよ…。
鋼鉄の村ーーララトゥールの村の外には、無残な亡骸しか残っていない。
その原因を作ったのが攻撃を仕掛けて全滅させられた今は亡きハウグリル・サートンとそのお仲間達だとしても、完膚なきまでに叩き潰したのは彼等ーーリョーガとクリムである。
なのだが、
「ちょっとリョーガ。これはどういう事なの?」
「…テヘッ」
「テヘッ、じゃないわよ!どうしたらこうなるのよ!それに、皆殺しにする事なかったじゃないのよ!もし、帝国に知れたら私達犯罪者よ!?」
「殺すつもりなかったんやけど…」
リョーガだけが怒られていた。
ちなみに、リョーガは誰一人として殺していない。殺したのはクリムだ。だが、真犯人はリリィに見つからなかったのか、知らん顔でシレーッとこの場に混ざり、リョーガが怒られるのを見ている。
「儂らは助かったのじゃ。じゃから、そこまで怒る事はーー」
「ダメよ!少しでも甘やかすと碌でもない事をしでかすのよ!」
村長のナータルが止めに入ったが、リリィのお怒りは止まらない。
キッとリョーガを睨みつけてリリィのありがた〜いお叱りを再開させる。
「そもそも、私は止めたわよね!?跳ぶ前に止めたわよね!?どうして跳んだのよ!それも、わざわざ私達の前で跳んだわよね!何?嫌味なの!?」
「そんなつもりは…」
あの傍若無人なリョーガが、今は珍しく心から反省している。
その姿にエリオスとユースは驚きを隠せない。
だけど、リリィは止まらない。
「言い訳しないのっ!!アナタが行かなかったら、もう少し穏便に済ませれたかもしれないのよ!?どうするのよ!この死体の山!!」
リリィは両手をバッと広げて周囲を見せつける。そこには、数え切れない程の死体の山が転がっている。
だが、それを見ても誰も気持ち悪いとは思わない。
あのリョーガでさえも、だ。
なぜなら、死体は全て脳天を撃ち抜かれており、血が頭から垂れているだけで人間としての原型は残り、グロテスクな光景は少ない。
酷くて四肢が明後日を向いているだけだ。
故に、リョーガは殺していない。もし、彼が殺したのならば原型は残らないだろう。
だが、それにリリィは気付いてくれない。リョーガ自身ですら気付いていない。
「帝国に見つかったらどうなるか分かってるの!?死刑よ!死刑!!殺されるのよ!?誰が片付けるのよ!」
「それは儂らが…」
「少し黙って!私はリョーガに言ってるの!」
ナータルが名乗りを上げたがリリィの威圧の篭った喝に口を閉じさせられる。
「リョーガ一人で今日中に片付けなさいよ!それと、死体はちゃんと燃やしてから埋めるのよ!分かったわね!」
言い終えると同時にリリィは踵を返して村へと戻って行く。それに、リョーガ以外の皆が続く。
村長含む村の男衆はどこか申し訳なさそうに。ユースやエリオス、クリムは一瞥もせずにリリィの後に続いた。
「……う、うぃー」
リリィ達が村に入って行くのを見送ったリョーガは視線を空へと向けてボソリと誰にも聞こえない返事を返す。そして、一人寂しくせっせと死体を片付け始めた。
ーーー
『聖歴207年。水の月の17日目。
私の名前はサクラス。
今日、この日から私は日記を書こうと思う。
理由は色々ある。
その中の一つ。今日起きた事がキッカケで書こうと思った。
その事を記述しよう。
私はとある貴族の側近をしていた。
名はハウグリル・サートン。性格の悪い性悪貴族だ。
その貴族がララトゥールの村と呼ばれる鋼鉄の壁で囲われた壁に目を付け、要塞にしようと企んだ。
もし、その時に止めていれば、こんな事にはならなかっただろう。
その時の私達は無知すぎたのだ。
数日前から村の壁へと攻撃を加えていたが、今日、本格的に攻めに入った。村人達を殺しに。
ハウグリルが雇った者達は総勢2300の私兵と冒険者の寄せ集めであった。
寄せ集めと言っても数は圧倒的であり、少人数しか住んでいない村を相手するには過剰戦力だった。
だがしかし、私一人を残して全滅した。
一瞬の出来事だった。
唐突に現れた二人の悪魔によって私以外の全員を無慈悲に殺したのだ。
一人は全身を暗闇に包んだ騎士であった。片手には黒いモヤの掛かった剣を持ち、一振りで地を裂き全てを蹂躙した。
もう一人は、全身に黒光りする物を抱えた者であった。遠くてよく見えなかったが、彼の持つ筒のような物の先端から花火が飛び散ると人が一人死んでいた。
私の目の前で人が瞬く間に死んでいったのだ。
その悪魔を私はこう呼ぶ。
『暗黒騎士』
『不可視の閃光』
彼等を一度でも敵に回せば誰であろうと生きては帰ってこれないだろう。あの強大さには誰であろうと怖気付き、恐怖するだろう。
それが例え魔王だとしても…。
私は綴ろう。
あの悪魔達のことを。そして、これから私が見聞きする事を全て。私が奴らに殺されるまで。
この日記を誰かが読んでくれると信じて』
サクラスは日記を書いた本を閉じて椅子から立ち上がり深呼吸をする。
新鮮な酸素が肺の中から血管へと流れ、身体を循環するのが感じられる。
それだけで、今ここに自分が生きているのだと思える。
大きく息を吐いて肺の中の空気を出し切る。そして、『しっかりしろ』の意を込めて自分の頬を強く叩き、宿屋の個室から退出した。
ーーー
大きな満月が二つ、空に浮かんでいる。
それを屋根の上で紫煙を立ち昇らせながら呆然と眺める人がいる。
「種は蒔いた。後は育つのを待つだけ。種子が芽となり花となるのを…。それはさぞかし綺麗になる。デッカい花火みたいに綺麗に……」
側から見ればニヤリと笑いながらブツブツと何かを呟く変な人だ。
「ご主人様。急にどうしたんですか…?」
彼の側には女性が一人。唐突に変な呟きをした主人に心配を抱いた。
だが、当の主人は気にした素振りもなく、彼女に聞こえるぐらいの声量で話す。
「俺とアイツとで帰る為に、俺は世界を手に入れる。できなきゃ俺が神に成り替わる」
「神様…ですか…?」
彼女は疑問を発したのにも関わらず、彼は話を続ける。
「その為に俺は沢山の種を蒔いた。もう数えきれんぐらいにな」
「…その種って…なんですか?」
再度、彼女は疑問を投げ掛け、ようやく彼は受け取った。
だが、少し考える素振りを見せただけ。
「うーん、秘密」
彼はケラケラと笑いながら空を見上げた。
空には満天の星空が浮かんでおり、その中でも一番輝く光がある。
その光を彼ーーユートは一点に見つめて笑う。
まるで、これから起きる事を見透かしたかのように嗤った。
ーーー
リョーガが一人でせっせと死体を片付け終え、2日が経った。
今日、リョーガ一行はララトゥールの村を出るーー予定だ。
「もう行ってしまうのか」
村長のナータルは少し悲しげだ。いや、この場に集まっている村の皆が寂しげにしている。
リョーガ達は僅か2日の間に村の皆と親睦を深め、仲が良くなっていたのだ。
だけど、リョーガ達には目的があり、行方不明のユートを捜しに行かなければならない。だから村人達も止めようとしない。
ただ、『リョーガ達が村に居続けてくれたら良いな』と思い、村に住む若い男の子や女の子をあてがっていた。
そんな思いがあったとは知らないリョーガは、手を振って別れを惜しんでくれる女の子に鼻の下を伸ばして手を振り返し、リリィに脇腹を肘で殴られていたりする。
リリィの攻撃が痛かったのか、痛みに顔を歪めながらナータルに返答する。
「そうやな。ここに居ってもユートは見つからへんし」
「それに、私達がここに留まると貴方達に迷惑を掛けてしまうわ」
リョーガの言葉に続きを付け足し、申し訳なさげな表情を浮かべるリリィ。
「儂達は助けられてるのじゃ。迷惑だなんて、儂を含めて村の者は誰一人として思ってない事じゃ。逆に感謝したい程じゃよ」
「そう言ってくれると助かるわ」
リリィはニコッと笑みを浮かべてから視線をリョーガへと向ける。
それに気が付いたリョーガは少し離れた場所で村の者達と楽しげに会話する残りの三人を呼ぶ。
「おーい!行くでー!」
「おう!」
「はい!」
「分かったなのっ!」
リョーガの呼び掛けに各々の返事を返し、会話中の相手に一言二言残してから駆け足で戻ってくる。
彼等が戻ってくるのを確認したリョーガはナータルへと視線を戻す。
「ほな、また機会があったらユートも連れて来るわ」
そう言いながら、【アイテムボックス】から全体が強固な特殊金属で造られた装甲車ーー《TYPE-2》を取り出す。
それに村人達は「おおぉー」と感嘆の声を漏らす。
始めにリョーガが運転席に乗り込み、エンジンを掛ける。
その後に続き、リリィが助手席へ。
「また来て遊ぶのっ!」
「また来ますね」
「今度来る時は何か手土産でも持って来るぜ」
クリム、ユース、エリオスも仲が良くなった人達に一言残して《TYPE-2》に乗り込む。
そして、村の門が完全に開ききると彼等は走り去って行った。
隣街のニーアへと。




