魔人兵
後書き、少しづつ編集する……つもりです。
気長にお待ちしてくれると、嬉しい…かもです。
そこは魔科学によって生活を補い、快適に暮らせる事が可能となった珍しい街であった。
住民が自らの魔力を消費せずとも水を出せ、火を扱え、作物は良く育ち、とても住み心地の良い街であった。
それは、他の街で噂としてまことしやかに囁かれ、知る人ぞ知る有名な場所となり、魔法を使えない者からすれば一等地にも勝る街だった。
だが、その快適な暮らしを提供する街は一変。人っ子一人いない閑散とした街へと変貌した。
その原因は判らない。
物知りユートですら知らない。
だが、一つ分かるとするならば、
「やべっ!見つかった!」
「な、なんじゃ?なにがじゃ?」
何者かに発見され、追われていると言う事だ。
ユートはいつもの如く笑っているが、声には若干の焦りがあり、車の速度はグングンと上がる。ついでに住民の居ない家々を破壊しながら突き進んでいる。
レイルム達には誰に追われているかなど皆目見当がつかない。だが、何やら嫌な予感がするのだ。
「ちょっと無茶するで!」
そう言った瞬間、ガンッと音が鳴り車体が大きく揺れた。
それはまるで、何か重たい物が車の側面に激突したような衝撃だった。
「今のはなんなのじゃ!?」
「魔人兵や。ちとヤバイ」
ユートは何か知っている口振りだが、今はそれを尋ねる事は躊躇われてしまう。
先程の衝撃を皮切りに次々と衝突音が鳴り響く。
「だ、大丈夫なのかのぅ!?」
「たぶん…入って来たらなんとかして」
「なんとかって、どうしろと言うんですか!?」
メリナは攻撃を加えて来ている敵の正体を見たのか、焦りが顕著に表れている。
ミナなんかは敵の姿を直視してしまい、助手席で縮こまってしまっている。
ユートはハンドルを操作し、家々を破壊し回ってから来た道を辿るルートへと戻る。
後は、街から出るだけだ。が、それを敵は勘付いていたのか、大通りの先を人数に物を言わせて封鎖してしまっていた。
「よし、掴まれ!!」
そう言うや否や、ナビ下の赤ボタンをポチッと押す。
刹那、ゴウッと轟音が鳴り響き、TYPE-1がエンジンだけではない高出力の加速を見せた。
100km/hを超えていた速度メーターが一気に上昇し、車内に乗るユート達に多大な重力が波として襲い掛かりながら、正面を封鎖した人型兵器の壁を強行突破する。
それはまるで、ポーリングのピンを跳ね飛ばすかのように。
「このまま一気に行くから、掴まっとけよ」
どこからどうやったのか、ナビ下の赤ボタンのある場所がクルッと裏返り、スイッチだらけのボードが出現する。
「名付けて、殲滅車モード」
スイッチをカチカチと幾つか倒すと、TYPE-1のヘッドライト部分からミサイル弾の発射口と花火弾の発射口が出現し、ナビが地図ではなく周囲を見渡すカメラへと早変わりし、次にユートは、どこからかゲーム機のコントローラーを取り出してミナに渡す。
「ほな、操作よろしく」
そう言いながら、コントローラーのボタンを適当にポチッと押すと、ボヒュッと音が鳴ってミサイルが前方へと飛来して行った。
そして、前方から向かってくる敵ーー魔人兵へと命中。
周囲の家々を巻き込みながらの大爆発を起こした。
突然、目の前が炸裂したので唖然とするミナだったが、一拍、目の色を変えてコントローラーのボタンを早押し。
次々と放たれるミサイルや花火の数々。たまに綺麗な火花を散らす花火や猫型ミサイルが放たれているのはご愛嬌だ。
「あと、背後と車体に張り付いてるんも頼むわ」
そう言い、またもやスイッチを幾つか入れると、TYPE-1の上部に機関銃が生え、後方のテールランプからミサイルの発射口が出現した。
それと同時に、後部座席の天井から二つのコントローラーがポロリと落ちて来て、窓ガラスが液晶えと変わる。
「レイルム、メリーさん、今落ちて来たやつのボタン適当に押して」
「わ、分かったのじゃ!」
「よく分かりませんが、分かりました!」
刹那、鳴り響く銃声と爆裂音。
襲い来る人型兵器の魔人兵は尽く壊れ、殺されて行く。
近寄ろうとする者は大口径の機銃によって身体を木っ端微塵にされ、遠方から向かって来る者は飛来するミサイルによって粉々に吹き飛ぶ。
TYPE-1は、ただ頑丈なだけの装甲車だと思いきや、とんでもない乗り物であった。
〜〜〜
街を出ると、魔人兵達は追い掛けてこなくなった。
「ふぃ〜、逃げ切った〜」
その街から少し離れた所にTYPE-1を停車させ、疲れを露わにグッタリと全身から力を抜くユート。
それを確認したレイルムは、聴くなら今しかないと、疑問に思っている事を口に出す。
「さっきのは一体なんだったんじゃ?」
「あれは魔人兵。俺の親戚みたいなもんや」
「さっきも言ってたな。その魔人兵とやらを…それが親戚とはどう言う事じゃ?」
詳しく説明しろ。と言う口振りのレイルム。
だが、ユートはそこからの事を言うのに躊躇いを見せている。
「……ま、まぁ、無事やったんやしええやんか。俺は車の修理するからゆっくりしといて」
やはり話したくないのか、ユートは無理矢理話を切り上げて外に出て行ってしまった。
「あの、レイルム様。私、魔人兵と言う言葉に聞き覚えがあります」
「なんじゃ?」
「その…あくまで噂程度ですが、帝国が密かに研究をしている人ならざる兵士だと聞きました」
「うぅむ…それとユートはどう言った関係なのじゃ…」
レイルムは頭を悩ませる。
このままユートを可愛い孫に渡して良いのかどうか。
これまでのユートならば、問題は良く起こすが、それまでならば許容範囲だった。
だが、今回にユートが多大な問題を抱えているかもしれない疑惑を見つけてしまった。
まさか、ここ、帝国が密かに研究をしている物と関わりがあるとは思いもしなかった。
もし、ユートを安易な考えで可愛い可愛い孫に渡し、もしもの事があればと考えると、ユートを渡すのは躊躇われる。
だが、まだユートがそれに関係してるとは限らない。ユートの事だから一方的にソレを知っているだけかもしれない。
けれども、それを確かめる術は一つしかないわけで、
「仕方あるまい。直接ユートに聴く事にしよう…」
これまで、幾度もユート自身の事を尋ねたが、いつもはぐらかされたりしていた。
だが、今回ばかりはそうはいかない。
そう強い気持ちを持って、全てを聞き出す覚悟でクルマから降りるレイルム。そして度肝を抜かれた。
街の空に巨大な魔法陣が形成されているのだ。
例え、魔法がどれだけ得意であろうと、街一つを覆い隠せる程の巨大な魔法を発動させる事はできない。
それが出来る人など、大賢者の他には存在しないと言われている。なぜなら、魔力の消費が大きく、人一人では補えきれない量を使用するからだ。
だが、レイルムには思い当たる節があった。
『まさかっ!?』と思い、ユートへと視線を向けると、そのまさかであった。
ユートは空に向けて裾から見える限りビッシリと文字の刺青が入った左手を掲げ、そして肘付近からは幾度もの魔法陣が手のひらにかけて形成されているのだ。
間違いなく、街の空に浮かぶ魔法陣はユートが作り出したものであると示していた。
「な、何をしておるのじゃ…」
「魔人兵の動力源を貰ってんねん」
まぁ、見ててや。と言葉を続け、更に魔法を多重に発動させる。
その瞬間、魔力を感知できないレイルムでさえも魔力を見る事ができた。
街から龍のように立ち昇る魔力の奔流が空に浮かぶ魔法陣へと吸い込まれるように呑み込まれて行く。
そして、ユートの手のひらに浮かぶ魔法陣から多大な量の魔力が出現し、ユートの身体へと吸い込まれて行く。
例え、レイルムが魔法を少ししか使えなくども分かる。
それは、ただの魔法ではない。秘術に近い魔法であると。
「な、何事ですか!?」
ユートが街から吸い取る膨大な魔力に反応してか、メリナが焦燥を露わにクルマから飛び出し、そして驚愕に目を見開いた。
「一体…これは…」
この中で一番魔法に詳しい筈のメリナ。だが、その魔法は知らない。
いや、本の一部に記されているのを読んで知った事はあるが、ただの御伽噺として、そして、創造物だと終わらせてしまったもの。
「よしっ、これで吸い尽くしたから、もう動かへんやろ」
軽い口調で魔法を解くユート。
街へと視線を転じれば、街付近の草木は枯れ果て、文字通り死の街と化している。
「今のは、今のはなんじゃ!?何をしたのじゃ!?今回ばかりは全て話して貰うぞ!」
「えぇー。長なるで?」
「構わん!」
レイルムは『話せ!』と言外に伝える。
「今のはマナ・ドレインですよね。魔法が使えない筈のユートさんが、どうしてあんな大魔法を使えるのですか?詳しく教えて下さいね」
ニッコリと笑みを浮かべるメリナだが、目が全く笑っていない。
もう、これ以上は逃さない。全てを話して貰う。と、彼等の心の声が嫌でも聴こえてくる。
それでも話したくないユートは視線を周囲に走らせて逃げ場を探す。が、逃げられないようにする為か、ササッと歳に似合わない動きをするレイルムに背中から羽交い締めにされ、冷静沈着が売りのメリナに胸ぐらを掴まれ、脅迫めいた状態になってしまった。
だが、ユートは話したくない。
それは単純に嫌われたくないからだ。誰からも嫌われたくない。そう願うが、それは叶わぬ事。
だからこそ、近くに居る人にだけは嫌われたくないとしている。
両目を強く瞑って暫く思考を巡らす。
話せば嫌われるかもしれない。だが、話さなければ嫌われてしまうかもしれない。
どちらにしても、嫌われる要素がある。
できれば、話したくない。知られたくない。
だけど、これ以上はぐらかす事はできない。レイルムとメリナ。ついでにミナ。
できれば、この事は知らないまま別れられたら良かったのに。と、心の中で愚痴りながら、これはもう仕方ない。と諦めて渋々ながらに語る。
「……ま、まぁ、あれや。さっきも言ったと思うけど、俺は魔導型人機兵士の親戚みたいなもんで、俺は魔物型人機なんよ」
「………?」
「どう言う事ですか?」
ユートの大雑把な説明は彼等には通じなかったようで、二人揃って意味が分からないと言った表情を浮かべている。
それが良い逃げ場になるかと思ったユートは、なんとか話を切り上げてようとする。
「分からんかったらそれでええやん。俺の事話しても面白くないし」
「それでも、全て話して貰うぞ。可愛い孫に何かあったら儂はお主を許さんからな」
「そうですよ。レイルム様のお孫様は兎に角、私は気になるんです」
「孫がぞんざいな扱いを…儂、主人なのに…」
メリナが尋ねる理由はどうやら好奇心が大きいようで、うっかり口を滑らせてレイルムを悲しませている。
だが、二人から発せられる『全部話せ』のオーラは消えない。
「はぁ…。話すけど、誰にも言わんとってな。結構気にしてる事やから」
「分かったのじゃ」
「はい」
渋々とユートは詳しく語る。
「俺が迷宮におったって前に言ったの憶えてる?」
「うむ」
「俺、そこの迷宮で死に掛けて…いや、一回どころか何回か死んでんねん。初めは身体の一部欠損とかやったから何とかなったけど、やっぱり力が足りんくて死んでもうてん。せやからーー」
「ちょっ、ちょっと待って下さい!え?どう言う事ですか?死んだって、今普通に生きてますよね?それに、死んだら何もできないんじゃ…」
”死んだ”の言葉に反応したメリナはユートの言葉を途中で遮り、疑問の声を発した。
それも当然だ。人は死んでしまうと動けなくなる。その状態で生き返るなどーーいや、生き返る事自体おかしな事だ。
途中で話を遮られたが、特に咎める事なくユートはメリナの疑問に答える。
「ネモ…”ソラの瞬き”のソラとか”世界樹の楽団”のアルファ。アンタらが知ってんのはこれぐらいやろうけど、もっと沢山おる。んで、アイツらを造ったんが俺で、俺の命を繋いだんがアイツらや」
「じゃから、ユートは色々知ってた訳か…」
思い返せば、最近有名になった噂の人達の事をユートは知っていた。
いや、知っていたなど生温い。全てを事細かに把握していたのだ。
「そゆこと。俺は力が足りんくて死んで、生き返った。今や弄りまくった俺の身体は普通の人間とは違って、魔物であり、機械であり、人間でもある。んでから、ステータスさんには人外認定もされてる」
「そ、そうじゃ!お主の本当のステータスはどうなっておるのじゃ!?あの奴隷商が儂に渡したステータス表と明らかに違うじゃろ!」
レイルムが嫌な事を聴いてきたと思いながらユートは自虐気味に笑う。
「そうやな。俺のステータスなんて人に見せれるもんちゃうからな。見て喜ばれるもんでもないし…」
「見せて貰って良いですか?っと言うか見せて下さい」
有無を言わせぬメリナの発言に、レイルムの強い瞳の威圧に押され、ユートは渋々ステータスを開く。
〜〜〜
HP:4538/4538
MP:75683/316
STR:284
DEF:284
INT:5028
DEX:4262
AGI:2274
[スキル]
〈アクティブ〉
【指導LV6】【削ぎ取りLV4】【解体LV8】【地図作成LV5】【完全調合LV9】【罠師LV6】【調理LV10】
〈パッシブ〉
【翻訳LVー】【ガレージLVー】【自動修復】【悪運】【器用貧乏】【機械技師】【魔道奇術】【神眼】【昇華】【双技】【技巧】【魔技】【武技】【探知術】【覇術】
[魔法]
《無》
[称号]
異世界人、巻き込まれた者、迷い人、機械技師、馬鹿力、解体師、人外、人越者、迷宮攻略者、魔法の極、狂気、偽る者、罠を愛する者、偽り奴隷、最高の料理人




