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設置型 便利道具

頭痛が続いてます…


遂に職場に戻ったのですが、頭痛が治りません。


そんなにも私の内心は『働きたくない!』と吠えてるのでしょうか?

やっぱり、表面ばかり繕ってはダメですね。中身から繕はなくては…。


旅立つまでに1日だけの猶予を無理やり作り出したユートは、TYPE-1を取り出せるようにした後、中庭にてせっせと何かを作り始めた。


それは、一見、両開きの扉。ただの豪華な扉だ。片方にドラゴン、もう片方には燃える鳥が象られた鉄製の頑丈そうな扉。

そして、ユートは扉の足元に何か細工を施している。


それを二階の窓から眺めるレイルム達。


「出発を延ばして何をするのかと思えば、物作りか…」


ユートは、毎日のように物作りをしているのに、出発前になってもそれはやめないらしい。

そんなユートにレイルムは呆れの混じった溜息を吐く。


レイルムの反応とは違い、メリナは次は何が出来るのかとワクワクしている。


「次は何を作るのでしょうか?またミナを弄るのでしょうか?」


「ニャッ!?い、嫌っ!今すぐ壊しーー」


メリナの発言に驚いたミナは、窓から飛び降りようとした。が、レイルムに肩をガシッと掴まれてその場に留められた。


「明日でユートは出て行くのじゃ。今回ばかりは我慢してくれぬか?」


「っ!?む、無理ですっ!嫌ですっ!ぜーったいに嫌です!!」


レイルムが慈愛のこもった笑みを浮かべながらミナを説得しようとするが、ミナは本気で嫌がる。

だが、この場にはミナの味方はいない。


「ミナ。ワガママはいけませんよ。今日ばかりは我慢して受け入れて下さいね」


メリナも加勢し、ミナが逃げれないように反対の肩を強く掴む。


双方から肩を掴まれて拘束されるミナは「嫌っ!嫌ニャーー!!」と悲痛な叫びを上げている。


そんなバカなやり取りは、作業をしているユートのすぐ上で行われている為、意図せずとも聴こえてくる声にユートは苦笑いだ。


「アイツらからしたら俺はどんな悪質な人間やねん…」


そうツッコミを入れながらも、作業の手は止まらない。

扉を開き、敷居辺りに細工を施し始める。


ユートが場所を移動してチマチマと作業をするのを横目に、レイルムはある事を思い出して尋ねる。


「そう言えば、ユートのステータス表見せた事あったかの?」


「いえ、見た事は有りません」


「見たい!見たいです!」


メリナは冷静に答え、ミナは手を挙げて主張する。

二人はユートが何者か気になっている為、是非見てみたいと顔で語っている。


「そうじゃったか。丁度、儂の手元にあるんじゃが、見るか?」


そう言ってポケットから取り出されたのは一枚の羊皮紙。

いつか、奴隷商で貰った物だ。


「いいんですか?」


チラッと何かを作っているユートへ視線を向けて確かめるメリナだが、その前にミナがレイルムの手から紙を受け取った。


そして、ミナは内容を読んで首を傾げた。


ミナが読めない字でも有るのかと思って、メリナも隣からおずおずと覗き込む。



〜〜〜


奴隷名簿.10674


名前:ユート

年齢:20


犯罪奴隷

罪状:兵士殺害


趣味:機械弄りと身体を動かす事

得意な事:身体を動かす事なら全て

苦手な事:頭を使う事。特に暗記

産まれ:不明。言葉遣いから東方だと思われる

計算と科学に強く、歴史などに疎い

珍しい職業を所持しており、レベルとステータスは低いものの、スキル三個と多く持ち、スキルレベルが一つ特出している


ステータス


種族:人種

職業:機械技師

レベル:28

HP:453/453

MP:316/316

STR:284

DEF:284

INT:502

DEX:426

AGI:227


[スキル]

【短剣術LV8】【体術LV3】【器用貧乏】


[魔法]

無し


〜〜〜



その内容を全て読み終えたメリナは、ミナと同じように首を傾げる。


書かれている内容はこれまで見てきたユートを思い返すと、一致しない場所や、明らかに足りてない所が多いのだ。


「レイルム様。これって…」


「明らかに偽装じゃ」


自信を持ってレイルムは言う。


「ユートを売った奴隷商…奴が鑑定のスキルを持っておったのは知っておる。が、今までのユートを見ていると内容が足りてないんじゃ。じゃから、ユートは意図してステータスを偽装できるスキルでも持っておるのじゃろうて」


「と、言う事は、ユートはスキルを四つも有ると…?…この短剣術のレベルは…?」


用紙には、どれだけ頑張ろうと到達なし得る事が不可能に近いと言われたスキルレベル8の文字がある。

誰から見ても、ユートの年齢を考慮した結果、偽装でそうしたのだろうと思わせるものだ。


「それは儂もどうかと思うが、ユートが持ってるスキルは四つだけではないはずじゃぞ。昨日の【ガレージ】とやらも、今あやつが行なっている事も全部合わせてみよ」


スキルが一つか二つあれば普通。そして、三つが才能者となる。

だが、ユートはそれを超えると言われたのだ。


それは驚愕に値すると同時に『ありえない』と思える事であり、メリナの言動にも納得がいく。


「ーーッ!?そっ、そんな事って!?」


「うぅむ…儂も昨日これを見返して思ったのじゃが、あやつ、ああ見えて凄い奴かも知れぬ…」


『そんなバカな』とでも言いたそうな表情で視線を作業中のユートへ向け、そして何故か納得してしまう。


メリナは一度、ユートの所持スキルを考えた事がある。

その結果、なんと6つも出てきたのだ。

それは有り得ない事で、馬鹿らしいと思考を放棄した。が、レイルムは本当にユートがそれだけのスキルを持っていると考えているようだ。


視線を中庭に向ける。

そこには、やはり豪華な扉の近くで作業をするユートの姿がある。

ユートから貰った双眼鏡を使い、ユートを見ると、扉に片手を翳して何かをーー魔法陣を描いている。


魔法陣は魔法を使う事が出来ない人が使用する物なのだが、その代物は高価な物で、安物であっても平民であれば手の届かない金額である。


それは一重に、魔法陣を描ける人が少ないからだ。

精密にして繊細に、一つでも間違えば起動させる事はおろか、酷い場合だと爆発する様な危険な代物。


それをユートは易々と描いてのける。自分なりのアレンジまで加えてどんな物にでも魔法陣を描ける。


それだけじゃない。金属を使って何かを作り上げる事もできるし、隠密や地図の作成にも優れ、気怠げに歩く癖に死角からの攻撃にはシッカリと対応する。


と、言う事は。そこまで考えたメリナは、思った事を口にする。

いや、自然に口から出てしまった。


「化け物…」


「メリナよ。それは流石に言い過ぎじゃぞ。そこは、人外とか、怪物で留めておいてやったらどうじゃ?」


「いやいや、そこは普通の人間にしてや。俺でも少しは傷付くんやで」


「申し訳ござ…っ!?」


レイルムの窘める言葉に素直に謝罪を口にしようとしたメリナ。

が、視界の端。部屋の出入り口から気怠げに歩み寄ってくる自然と会話に参加してきていた彼に気が付き、驚愕した。


遅れて、レイルムとミナも彼を視界に入れて驚く。


「い、いつも間に!?っと、言うか、どうやって!?」


ここの部屋は二階に位置している。例え、作業をするユートの近くの部屋だったとしても、レイルム達に見つからずに扉付近まで行くのは不可能に近い。

ならば、下から来たのかと問われても、そんな短時間では不可能だろう。

なにせ、中庭の入り口は二つあるが、レイルム達の居る部屋からそこまでは一番遠い距離だ。


だから、彼は驚いた。だが、驚くのはまだ早い。


「〈転移門〉が出来たから試しに使ってみた」


まるで、携帯買ったから使ってみた。と言うみたいに、あっけらかんとした様子で言うユート。


唐突の事でユートが何を言っているのか理解できなかったレイルムは聞き返す。


「てんいもん?」


「うん。〈転移門〉」


「………はあああああああああ!?」


暫く考え、答えに至った刹那、歳を取って弱ってしまった心臓が止まるのではないかって程に本日一番の驚愕を露わにするレイルム。

彼が驚愕したお陰か、メリナは何とか冷静を保つ事が出来、気が動転しているレイルムの代わりに〈転移門〉について尋ねる。


ちなみに、ミナは何の事か分かってなさそうである。


「…転移と言えば、第一に思い付くのは有名な【転移(テレポート)】の魔法なのですが、それと同じ物…ですか?」


『まさか、そんなはずは無いですよね』と思いながらも否定しきれず、半信半疑の状態で尋ねた。

だが、ユートの返答は彼女の考えを肯定するに近いものだった。


「魔法じゃないけど、たぶんそれに近い奴やな。俺が使ったら俺が知ってる所ならどこでも行ける便利道具や」


「………」


ユートが語った事に声を失ったメリナに変わり、我に返ったレイルムが質問を投げかける。


「な、なら、儂らは、儂らは使えるのか?」


「一応使えるで。けど、行き先を登録せなアカンな」


「…登録?」


「アレと同じもんを作るねん。それで行き来できる。まぁ、そっちの方が俺も楽やから、それするつもりやねんけどな」


ユートが指差したのは、中庭にポツンと存在する異質な扉である。


レイルムは、ユートの言葉を頭の中で翻訳する。それは、登録さえすれば〈転移門〉は誰でも使う事ができると言う事。

それは即ち、


「な、なんて物を作るんじゃぁ!!」


「えぇぇ…」


まさか、喜ばれる事はあれど、怒られる事は予測してなかったユート。


「もし、もしもじゃ!同じ物を作って、そこが敵に侵略されたらどうなる!?敵が〈転移門〉の繋がる先にまでなだれ込むじゃろ!!」


「あぁ〜」


成る程。と言いたげな表情で、頷くユート。

それにレイルムは余計に怒りを覚え、ユートの言い分も聞かずに即座に破壊命令を下す。


「ミナ!今すぐ壊して良いぞ!!」


「はいです!」


意気揚々と窓から飛び出して行くミナ。

そして、次に響いたのは、扉が壊れる音ではなくーー。


「ニギャアァァアアア!!」


〈転移門〉を壊しに向かったミナの悲鳴だった。

慌ててレイルムは窓から顔を覗かせてミナを探すと、〈転移門〉近くに黒焦げになり、ピクピクと痙攣するミナが転がっていた。


「アハハッ、まぁ、レイルムの言った事は一応考慮してるから大丈夫やで」


ミナが現在どうなってるか予測が付くのか、はたまたワザと行動させたのか、いつもの様にユートは笑いながら問題ないと言う。だが、それは詳しい説明を受けていないレイルム達には信用できないものだ。


「あの、どう言う事ですか?」


窓から中庭を難しそうな形相で睨みつけているレイルムに変わってメリナが詳しい事を尋ねる。


「敵対者は入る事はおろか、近寄る事もできへん。安全対策や。それに、使える人は限られてるしな」


「限られている?なら、私達は使えるのでしょうか?」


メリナの問いにユートはニヤリと笑い、


「俺が使用許可出した人だけ」


その瞬間、メリナとレイルムの目の色が変わった。


「ユート!いや、ユート様!儂を、儂を登録してくれぬか!?」


「わ、私も!私もお願いします!一度、遠くに旅行してみたいと思ってたんです!!」


儂を、私を、と迫るレイルムとメリナ。

その迫力に押されたユートは一歩後退りーーと、見せかけての逃走。


「ま、待つのじゃぁあぁ!!」


「登録して下さいぃ!!」


歳の割には元気なレイルムと、冷静沈着を忘れたメリナは、悪戯っ子のように笑いながら逃走するユートと追い掛っこを始めた。


それが終わったのは、数分後で、ユートが忽然と姿を消した時であったが、次の日、何事もなかったかのように出現したユートをレイルム達三人が飛び掛かって捕獲し、〈転移門〉の登録が出来たのであった。


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