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ガレージ

57話が抜けてました。申し訳ありません。


それと、48話〜52話の後書きを書きました。

よければ読んで下さい。


儂は、これまで生きてきた中で今、一番驚いている。

そして、本気でユートが何者なのか気になった。


【ガレージ】の最奥にある部屋。灯がともり、部屋内が詳細に分かるようになっておる。


だから、儂らは驚愕した。


部屋の広さは、先程まで見てきた部屋と同じぐらいの広さだ。

だが、置かれている物は言い様のない恐怖を与えてくる物ばかり。


それなりに生きてきた儂には分かる。ここに置かれている物は、明らかに危険なものばかりだと。


なぜなら、真っ赤なドクロマークの張り紙が幾つも貼られているからだ。


それはまるで、触るな危険とでも伝えたそうな。そんな感じだ。


恐る恐る、儂は部屋の出入り口へと視線を転じる。そして、身を強張らせた。


そこには、矢のような、けれど一目で矢ではないと否定できる金属の塊が置かれていたからだ。

細長く、それでいて太い。矢先は無く、先端は赤い色で塗り潰された物だ。

勿論、張り紙もされている。何枚も…。


「それな、変な刺激与えたら爆発するからホンマに心配したで」


ユートは、儂を心配したのではなく、爆発するかもって心配したようだった。


って、そうではないじゃろ!

そんな危険な物を出入り口に置くでない!!


「あ、危ないじゃろ!」


「いやぁ〜、俺って暗闇でも見えるし、人を入れる事なんて無かったから気にしてなかったんよ」


「わ、私も足を…」


ユートの悪戯に耐え続けてきたあのミナが本気で怯えている。


「まぁ、爆発セェへんかったから良しとしよう」


「良いわけないじゃろ!!」


儂は怒っておるのに、ユートはどこ吹く風だ。


「まぁ、ええやん。そんな事よりさ、付いて来てや」


爆発物を扉前に置いておる事を『そんな事』で済ませよるなど…なんて奴じゃ全く…。


それから数分歩いた。


足元には危険なドクロマークが貼られた物が転がり、明らかに危ない針の球まであった。

これらを見ていると、ユートが何を目的としているのか余計に分からなくなる。


落ちている物は、殆どが金属でできた精巧な物ばかり。素人目から見ても、一級品である事が儂でも分かる。


その中に一際目を惹く物があった。それは周囲の物と比べて明らかに異質な存在。


周りに落ちている物は殆ど全てが金属によって造られた物ばかり。なのに、ソレは明らかに生物の素材によって造られていたのだ。


そして、儂は信じたくない言葉を耳にする事になった。


「あれやねん」


そう。ユートがソレを指差して言ったのだ。


ソレは、一見、車輪が四つある事から馬車の様にも見える。だが、実際には違う。

馬が引く手綱はない。御者席すらないのだ。


皮や巨大な鱗などによって形作られたソレ。その名をユートが言う。


「あれの名前はTYPE-1」


試作品一号や。と自慢げに語ったが、その後、苦笑い気味になって頬をポリポリと掻き、言い辛そうに説明を入れた。


「四輪駆動V型8気筒魔導エンジンを搭載した装甲車…を作るつもりやった。けど、装甲車とは名ばかりの凶器になってもうてんよ…」


それから語られたのは、正直、有り得ないと思える事ばかり。


曰く、走行には何ら問題ないが、魔物や人に衝突した場合、相手は肉片と化す。

曰く、世界最強と謳われるドラゴンでさえもこのTYPE-1に衝突されれば泣いて逃げ帰る。

曰く、魔法や剣や矢と言った攻撃は一切通じず、どんな攻撃でさえも跳ね返す。

曰く、どんな悪路でも走行可能であり、車体の重みを均等に置いた為、転がる事すらない。


それは、一種の破壊兵器である。


本音を言うと、


「なんて物を作ったんじゃ…」


「だって出来てもうてんもん」


仕方ないやん。と、言葉を続けた。

何が仕方ないのか…話を聞く限り、ユート自身でもこれが危険な物だと理解している筈なのだが…。


「あの、たいぷわん?って動くのですよね?」


メリナがおずおずと気になっていた事を尋ねる。

ユートが来てから、何もかもを自分で何とかしていたメリナが、疑問に感じた事を何でも聴くメリナへと変身してしまっておる。


「あぁ、それなら心配あらへんで。馬車よりも速く、んで、快適に走行するように造ってるから」


何の問題もない。と自信ありげに言ってのけた。

ふと、儂は思ったのだ。


こやつ、もしかしてだが、これを一度走らせたのではないか?と。

もし、そうであれば周囲にどれだけの被害が起きたのか…想像するだけで口が引き攣る。


「のぅ、もしかしてだがの、たいぷわんを外で動かした事でもあるのかの?」


兎に角、聴いてみなければ分からない。と、思って尋ねたのだが、帰って来たのは儂の思った返答の斜め上だった。


「そりゃ試したよ。まず、魔法をぶっ放して耐久度を確かめて、んでから、迷宮で拾った剣で斬りまくったりしたよ。それ以外やったら、アホみたいにワラワラよってくる魔物を轢き殺したり、突っ込んできたドラゴンに正面から突撃したりしたで」


なんと、ユートが話した事は全て検証済みであり、事実を元として語っていたのだった。

63年間生きてきた中で、本気の本気で驚愕じゃわい!


「そ、そうですか…で、では、素材は?たいぷわんを造るのに使っている材料は何でしょうか?」


「主に鉄…って言いたいけど、鉄じゃ保たへんかったから、迷宮で拾ったエメラルド色の硬い鉱石使ってる。それから、外装部分はカースドラゴンの鱗とエターナルフロッグの皮とオメガオーガの骨を使ってるな」


「「………」」


メリナと儂は言葉を失った。

ユートの言った事は大昔に滅びた筈の魔物達だ。そんな存在、この世界のどこを捜しても見つからない筈だ。

なのに、ユートはその素材を使ったと言う。


ならば、だ。ユートは儂よりも年寄りなのか?

いや。それだとユートの行動原理が余りにも幼稚すぎる。

ただ面白さを求めるなど、子供のそれと同じだ。

だが、でも、けれど、あああああ…。


取り敢えず、頭が混乱してきたので一度リセットする為にミナを見る。彼女は元気に動き回り、落ちている物を物珍しげに観察しているようだ。


よしっ。頭が正常に戻ってきたぞ。

そうだ。分からない事があれば聴けば良いのだ。メリナを見習わないとな。


「その魔物達とは何時(いつ)…いや、何処でその素材を手に入れたのじゃ?」


言葉を変えた理由は…特にない。

こっちの聞き方の方が良さそうな気がしたからだ。


「ちょっと迷宮から出れんようになった時に出てきた魔物や。なんやっけなあの迷宮…?」


ユートは迷宮の名前を思い出そうと頭を捻り、そして諦めた。

『まぁいいや』っと、お決まりの発言で締めていた。


それにしても、迷宮?

そこに居たのか?この素材の主たる魔物は…。

もしそうなら、一大事だぞ。

いや、世界の何処かに居る時点で大問題だ。


それ以前に、ユートはその素材を持っておると言う事は魔物達を倒したと言う事になる。

儂はユートが戦っている姿など見た事はないが、ミナの攻撃を避けていた時の事を考慮するに、儂らなど一瞬で塵も残さぬようにできるのではないか?


「一つ聞きたい。…それは最近の事かの?」


「最近っちゃ、最近やな。俺がこの世界…コホンッ、奴隷になる前。村人の仲間入りする前の時や」


話の途中、ワザとらしく咳をして何かを隠していたが、聴かれたくない事なのだろう。


「まぁ、そんな話はどうでもええやん。今はこの車やろ」


「…そう…じゃの」


なんだか納得がいかない締め方をされたが本来の目的はたいぷわんである。

いや、簡単な呼び方をユートが言ったのでそれを使わせてもらおう。


「ちょっとコイツ出すから、その辺に落ちてる荷物を端に寄せるの手伝ってな」


もうクルマとやらを使う事は決まっておるのか…。

…仕方あるまい。ここまで来るのに時間を掛けてしまったし、今頃馬車で出発しても間に合わんだろう。


「分かったのじゃ……はっ、な、何を言っておるのじゃ!明らかに危険な物を運べと言うのか!?」


素直に返事してしまった!

こんな触ると危険ですよと示す忠告をデカデカと貼られた代物を儂に触れと言うのか!?


「大丈夫やって。ぞんざいに扱わん限り大丈夫。偶にボタンをポチッとしてしまったら爆発するのとか、軽い振動与えたら爆発したりするもんがあるけど、大丈夫やって」


「それのどこに大丈夫な所があるのじゃ!?」



ーーー



私はメリナ。過去に大きな過ちを犯し、犯罪奴隷となった所、レイルム様に侍女として買われました。


本来の犯罪奴隷ならば、鉱山へ送られたり、下衆な扱いを受ける筈なのですが、レイルム様はそんな事を一切要求しません。

私は、運良くとても良い人に買われました。


それから何年か経ち、私は侍女としてやっていけるほどになりました。

そんな時、レイルム様は新たな奴隷を買ってきました。


彼女の名前はミナ。私同様、犯罪奴隷でした。

それから、獣人でした。

獣人は、ここ帝国では忌み嫌われ、迷い込んだだけですら罪に問われ、奴隷にされると聞きます。

そして、ミナはこの通り犯罪奴隷として捕らわれました。

正直、可哀想に思います。私みたいく罪を犯してないのにも関わらず捕らえられ、売られるなんて。


ですが、奴隷に発言権などありません。

ましてや国に発言などできやしません。そんな事をしてしまえば、私は即座に打ち首になってしまいます。


私はミナを哀れに思いながら、侍女としての心得を説きました。

呑み込みは良い方でした。ですが、まだ幼いのか、正直言ってしまいますとバカでした。


それから、また数年。

レイルム様は突然、男性の奴隷を買ってきました。


孫の誕生日になる日に直接渡す為だそうです。その為、勉学ができる人を買ってくるつもりだったらしいです。が、その思惑は見事に外れ、平穏な日常を非日常とさせる事となりました。


彼ーーユートは、初めて会った時から滅茶苦茶な人でした。


言葉遣いは荒く、見た事もない服装で身を覆い、私達の知らない事を全て知っているような、そんな雰囲気を醸し出す不思議な人。


主人であるレイルム様や先輩奴隷である私とミナに一切の敬意を払わず、好き勝手する人なのです。


ですが、それを咎める事は私には出来ませんでした。


レイルム様が怒っても、ミナが彼を攻撃しても、彼は全てをヒラリと躱してしまうのです。

それは、何度も経験して慣れてるような動作で、まるで、柳に風でした。


彼の事を知ろうと思えば思うほど、彼の事が分からなくなる。


奴隷になった経緯は、兵士に騙されたと言ってましたが、それも定かではありません。

騙されたのであれば、他の兵士に話して解放してもらえばいいのです。ですが、彼は未だに奴隷を続けています。


そして、なぜか彼を売った兵士は不可解な死を遂げています。奴隷商と共に…。


それを行なったのは彼で間違いない筈です。なぜなら、その日の晩、彼は屋敷に居なかったのですから。


ですが、それを調べる術はありません。

彼に尋ねた所で教えてくれないでしょう。


いつものように、フラフラと躱されて終わってしまうのが目に見えています。


私は彼の事が分かりません。

いつもヘラヘラと薄っぺらい笑みを顔に貼り付け、気が付けばいなくなっている影の薄い存在。


なのに、周囲に与える影響は大きく、唐突に突拍子も無い事を始める人。


気が付けば私は彼を目で追い掛けています。なぜだか、自分でも分かりません。

ただ、彼の事をもっと知りたいと強く思います。


だからでしょうか?

彼が居なくなると無性に寂しく思うのは…。



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