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閑話2

お風呂に入って、お茶飲んで、おかき食べて、野良猫をモフモフしてたら嫌な気持ちが吹き飛びました。


ついでに、猫に顔を引っ掻かれました。


取り敢えず、休みは取れました。今週末から一週間の長期休みです。

「邪な心を清めてきます!」と社長に言ったら、笑って休みをくれました。


なので、温泉にでも行って心と身体を綺麗に洗ってこようかと思います。



レイルムの屋敷にて、する事が特にないユートは新聞を読むレイルムと一緒にズズズッとコーヒーを飲んでいる。


ユートは相変わらずの無糖だが、レイルムは薄茶色に濁った甘いコーヒーだ。


ユートの背後から、忍者のように壁から現れてはナイフを投げているミナがいなければ、とても平和に感じられる日常。

ちなみに、ユートは飛んでくるナイフを全て体を僅かに動かすだけで避けられている。


そんな時、ドタドタドタッと騒がしい足音が食堂まで聴こえてきた。

次の瞬間、バンッと勢いよく開かれた扉からいつもクールな表情から一変。焦燥を露わにしたメリナが現れた。


「どうしたのじゃ、騒がしい」


だが、レイルムはページを捲りながら煩わしげに言葉を吐く。

どうやら、新聞を読むのを邪魔されて気分を害したようだ。


だが、次に紡がれた言葉によって、彼等の和やかなるコーヒータイムは終わりを告げた。


「ソ、”ソラの瞬き”がっ!街のすぐ側に”ソラの瞬き”が来てます!」


「な、なんじゃと!?」


「はぁ!?…あがっ!」


メリナの言葉に、驚きを露わにした二人は、咄嗟に立ち上がった。

その瞬間、レイルムはコーヒーを零してしまって新聞を濡らし、ユートはミナの攻撃に命中してしまった。


頭からピューッと血の噴水を吹き上げながら固まっているユートと、攻撃が初めて命中した事にピョンピョンと跳ねて喜ぶミナは置いておき、レイルムは汚れた新聞の事など忘れて大声で指示を出す。


「じゅ、準備じゃ!今すぐに出掛ける準備をするのじゃぁ!」


「は、はいぃ!!」


レイルムの一言により、メリナは即座に踵を返して走り去って行った。

それを最後まで確認する事なく、レイルムも歳に似合わない全力疾走で部屋から退出していく。


残されたユートは、未だに放心状態で頭からピューッと血の噴水を吹き上げ、ミナは子供のように喜びながら食堂中をピョンピョンと跳んで、全身で喜びを露わにしていた。



〜〜〜



あれから、数分で準備を終わらせたレイルムは、既に準備万端のメリナとミナを引き連れて玄関にいる。


メリナとミナは小さな背負い鞄を持ち、レイルムは彼女の鞄の倍以上の巨大な背負い鞄を持っている。


イライラとした表情で、コツコツと機嫌悪そうに靴の先で地面を叩きながらレイルムは言葉を吐く。


「ユートはまだかぁ!!」


そう。肝心のユートが来ていないのだ。

彼に持たせる為の超巨大な鞄まで既に用意されているのに、未だに現れないのである。


「メリナ!ユートは!?ユートは何をしているのじゃぁ!!」


「は、はい!すぐに確認して来ます!!」


レイルムに言われ、即座に駆け出すメリナ。

普段の彼女を見ていると、絶対にしないと断言できる有り得ない行動だ。

だが、彼女も、レイルムも、あの有名な”ソラの瞬き”が来るのを待ち望んでいたのだ。

気がはやるのも仕方がないのだろう。


それから数分して、メリナは少し困ったような表情を浮かべながら戻って来た。


駆け足で戻ってきているが、レイルムは待ちきれずに荒い声を吐き出す。


「ユートは!?」


「そ、それが…固まってました…」


メリナは初めにユートの部屋を見に行ったが見当たらず、次にユートがいつもいる食堂に向かうと、彼を見つけれた。

だが、未だにユートは固まっていたのだ。

床に大きな赤い水溜りを作りながら…。


「な、何ぃ!?し、仕方がない!!ユートは置いて儂らで行くぞぉ!!」


「はいっ!」


『後の掃除が大変です…』と、心の中でヒッソリと呟くメリナと、ユートを殺し損ねて悔しそうなミナは、歳の割に素早い動きで屋敷を飛び出したレイルムを追い掛ける。



ーーー



レイルム達が屋敷を出てから数分後。


ユートは顔を死人の様に真っ青にして短剣が刺さった瞬間で固まっている。

ちなみに、出血は止まっている。


次の瞬間、彼の小さな溜息と共に一時停止されていた動画が再生するかのように動き出した。


「……はぁ…やっと直った」


ユートは小さく溜息を吐きながら、頭に突き刺さったままの短剣を引き抜く。

スポンッと小気味の良い音が鳴ったが、それはユートクリオリティである。


「ミナめぇ…フリーズしてもうたやんけ……」


あのコンチクショーが…と毒吐きながら、視線を下に向けると、


「あ…真っ赤……」


大量の赤い血で床一面が染められていた。


「これ、綺麗にせなメリーさんに怒られそうやな…」


はぁーーと深い溜息を吐き、無限収納(イベントリ)から色んな物を取り出し始めた。



ーーー



「あ、あれが、”ソラの瞬き”…」


予め屋敷の前にメリナが用意していた馬車に乗ったレイルム一行の目に、馬車が五台。その内の二台に人が餌に群がる蟻のように集結しているのが門を出たすぐそこから確認できた。


御者をしているメリナはそれを見て、頭に浮かんだ疑問を口に出す。


「噂とは少し違いますね……」


「噂には尾ひれがつくものじゃ」


だが、その疑問をレイルムはバッサリと斬り捨てて、「急ぐのじゃ!」と指示を出す。


そして、もう少しで目的地に到着する。と、言う所で、それを遮る者が現れた。


「なっ!?」


どこから現れたのか、進行方向に突然、ここには居ない筈の彼が立ち塞がったのだ。


咄嗟にメリナは手綱を強く引っ張り、馬車を止めると、馬の鼻先が彼の顔に掛かるギリギリの位置で止まることができた。


「な、何をしてるのじゃ!目的地はすぐ…」


突然、馬車が止まった事にレイルムは怒鳴り声を挙げながら馬車の背後から顔を覗かせ、そして、言葉を詰まらせた。


「ユ、ユート!?どうやって!?い、いや、今はそれどころじゃない!なぜじゃ!なぜ邪魔をするのじゃ!」


彼等の求めるかの有名な”ソラの瞬き”は目と鼻の先だと言うのに邪魔をされ怒り心頭のレイルム。

だが、ユートは困った表情で頬を掻きながら余りにも信用したくない言葉を口にした。


「あれ、ニセモンやで」


ユートの後方にあるキャラバンを親指で指しながら言ったのだ。


「……は?」


「……へ?」


”ソラの瞬き”だと思い込んでいたレイルムとメリナはユートの言葉を聞き、声を揃えて間抜けな声を出してしまった。


ちなみに、二人が間抜けな声を挙げている時にユートを発見したミナは攻撃を再開した。


メリナは『どう言う事でしょう?』と疑問符を頭の上に幾つも浮かべながらキャラバンを見つめ、レイルムは即座に我に返って少し怒りを込めた声で理由を尋ねる。


「違うとは何がじゃ?儂は確かに通り掛かった人達から聴いたぞ?」


街から出るまでにスレ違った人達が話していた。それは、あのキャラバンが噂よりも小さいが、確かに”ソラの瞬き”だと店主(・・)が言っていた事を。


「別に買いたかったら止めへんで」


少し悲しそうに眉を寄せて、馬車の通る道を開ける。

それを確認したメリナは馬車を進めようとするが、「…けど」とユートが付け足し、メリナは動きを止めた。


「それが後で偽物やって気付いても、俺は知らんからな。確かに俺は教えたで」


続けて、「あれは後でぶっ潰す」と、珍しく怒りの混ざった声音と視線でキャラバンを睨み付けた。


そんな怒りに燃えるユートの姿を見た事がないレイルムの頭からは完全に怒りが抜け、疑問しか浮び上らなくなった。


「どう言う事じゃ?なぜ、あれが”ソラの瞬き”じゃないと判るのじゃ?」


レイルムが思った事をそのまま口にして尋ねると、先程まで怒気を溢れ出させていたのが嘘のように、振り返ったユートは、いつもの様にヘラヘラとした笑みを浮かべて答えた。


「”ソラの瞬き”の現在地は王国、ハルネネの村付近を南に進行中。馬車台数十六台。総勢人数126人。別動隊の現在地は王国、サナキルの街にて買い物途中。馬車台数十一台。総勢人数53人」


それは、余りにも正確すぎるモノだった。

何一つ嘘を言っているようには聴こえず、まるで、その現場を見てきたような口振りである。


「………」


その事に驚きを隠せないレイルムとメリナ。

話を聞いていないミナだけが、二人の様子に気が付いて首を傾げている。


「俺はあいつらの情報を全部持ってる。せやから、わざわざ教えにきたんやんか。それでも買いたいんなら、どうぞ」


行ってくれ。と、言わんばかりに手”偽ソラの瞬き”の方へと動かす。


その行動を見て、レイルムは長めの溜息を吐いて、悲壮感を漂わせながら言う。


「……はぁーー、今回はお預けか…次、本物が来たらユート、お主が教えてくれ」


「はいよ」


ユートは軽い感じで返事を返し、”偽ソラの瞬き”へと歩いて行く。

その後ろ姿は、絶対に関わってはいけなさそうな怒りが篭ったオーラが放たれている。


「どうしますかレイルム様…?」


このまま、引き返すのもアリだ。

だけど、ユートとは一体何者なのか。と言う事を見極める事もできる。と判断したメリナは問い掛ける。


それにすぐには答えれなかったレイルムだったが、見ない方が良い。と、長年の感が訴え掛けていたので、それに従う事にした。


その後、レイルム達が街に入ってすぐに、”偽ソラの瞬き”へと買い物に行っていた大勢の人達が一斉に街へと避難し始めた。


それから少し経った後、街の外から大きな爆発音が聴こえ、街中に轟く程の怒号と泣き叫ぶ悲鳴が響き、最後に一本の閃光が壁に大穴を開けながら道行く人々の頭上を通り過ぎ、街の中央にある大きな建物の一部を削り取った。


メリナは、御者に集中する振りをして冷静を装っていたが、内心でユートの正体がとても気になり始め、ミナは言うまでもなく、後方の事など全く気にせずにユートを殺す為のプランを練っていた。


そして、レイルムだが、彼は屋敷まで帰る途中、背後を見ないように必死に好奇心に抗ったが唐突に頭上を通り抜けた一筋の閃光を見て腰を抜かしてしまい、数日間動けなくなったのだった。


レイルム「一応聞いておきたいのだが、あの偽ソラの瞬きは無事なのかの?」

ユート「うん。殺してはないで。ただ、一生消えへん傷とトラウマを植え付けただけやから」

レイルム「それを笑顔で言うお主が儂は怖くて堪らん…」

メリナ「あの光線は魔法ですか?魔力が感じられなかったのですが?」

ユート「一応魔法の部類やな。魔法で空気を圧縮して、その際に応じる熱を一方向に放射する魔法や」

メリナ「……どう言う事ですか?」

ユート「科学の話やから、分からんかったら、そんなもんやって思ってたらええよ」

メリナ「そ、そうですか…」

レイルム「やっぱり、無茶苦茶じゃ…」



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