エリオスは
不幸な事が連続で続き、少しナーバスになってます。
気が立ってると言われても、否定できない有様です。
何日か何もかもを休み、休暇を謳歌してみようかと思っています。はい。
俺の名はエリオス。
こう見えてトップランク冒険者だ。
これまでの俺はSランクの文字に胡座をかいた碌でなしの冒険者だった。
そして、あのドラゴンとの出会いで俺の冒険者人生は終わりを迎えた。
仲間を見捨てて逃げてしまったんだ。
今思えば、あの時の俺はクソッタレな臆病者だった。だが、今の俺は一味違う。
あの化け物みたいな力を持ったリョーガの無理難題を受け止め、鍛えたのだ。
ステータスも著しい成長を遂げ、レベルは愚か、スキルレベルや能力値でさえ無茶苦茶な伸びを見せた。
そんな俺は、今は、酒場で優雅にコーフィーを飲もうと…
「ぶぅーーっ!にっが!」
くそぉーー!
カッコいい出だしが台無しじゃねぇかよ!
店の客は少ないとは言え、全員が俺をバカを見る目で見てやがる。
おいっ、そこ!嗤うな!
仕方ねぇだろ!コーフィーがこんなに苦いとは思ってなかったんだからよ!
「おい、店主。コーフィーってのはこんなに苦いもんなのか?」
「ああ。どこもそんな味だ」
マジかよ!
”ソラの瞬き”で飲んだコーフィーは甘かったぞ!
まろやかでいて、ほんのり甘く、そして後から来る癖になる苦味。それを求めてたってのによ!
「もしかして、”ソラの瞬き”でコーフィーでも飲んだか?」
なんで分かった!?
「よく居るんだよ。あそこのコーフィーと全く味が違うって言う客がな。俺も一度飲んでみたいよ」
そうか…違うのか…。
「あれは癖になる最高のコーフィーだ。飲んだら世界が変わるぞ」
隣に座ってきた客が、そう言いながらコーフィーを注文した。
「ぶーーーーっ」
そして、吹いた。
俺の仲間だな、コイツ。
「やっぱり、どこの店に行ってもあの味は拝めねえのか…」
まさか、あの味を求めて店をハシゴしたんじゃねぇだろうな?
「ああ、あの味が忘れられねえ。もう少し王都でゆっくりしたら良かった…」
隣の男も王都に居たようだ。んでから、”ソラの瞬き”のコーフィーを飲んだみたいだ。
こいつの言いたい事は痛い程分かる。
俺も同じだ。あのコーフィーの味が忘れられねぇ。
今すぐに王都に戻って飲みに行きたくなる味だ。
俺と隣の男と一緒に物思いに耽っていると、唐突に扉が勢いよく開かれる音がした。
だいたい誰が来たか予測がつく。あいつだ。
間違いなく、あのバカが来た。
「おい、エリオス!何サボってんねん。ぶっ飛ばすぞボケェ!」
リョーガだ。
用も何も言われてないのに、この言われよう。
一体、俺が何したってんだ?
「ああ、すぐ行く」
だけど、断れない。コイツの言う事に逆らうと酷い目にあう。それは、たった数日の街から街への馬車の護衛依頼で理解した。
まず、リョーガは口より先に手を出す。
そして、言ったことは面倒がって他人に押し付けるか、あるいは即行動する。
行動と言っても、雑用などは一切しない。こいつがする事は、人を投げ飛ばしたり、魔物を蹴って俺やユースに当てて来たり、火の付いた薪木を使って森を火事にしようとしたり、と、無茶苦茶な事ばかり。
あっ、後、乳首を抓られたのもある。あれは痛かった…。
俺は銅貨を数枚カウンターに置いて、リョーガの元へと向かう。
「行くで」
俺が酒場を出て説明など一切なしに、リョーガはすぐに歩き出す。ユースもいるようだ。
二人が歩き出したので、俺も続いて歩き出す。
だが、一つ確認しておきたい。
「どこに向かってんだ?」
向かう先は、門の方向だ。
だが、リョーガは兎も角、ユースや俺は何も装備していない。
なにせ、今日は休みの筈だったから…。
「ああ?ギルドに決まってるやんけ」
決まってるのか…。
でも、なぜギルドに?
帰るのは明日の筈だぞ?
それに、そう言ったのはリョーガ自身じゃねぇかよ。
「リョーガさんは、いつも前日に依頼を受けるんです」
言われてみれば、朝に集まった時、リョーガがギルドで依頼を受けている所を見た事ねぇな。
リョーガは、街に入って解散した後いつもギルドに立ち寄ってたのか。
って、俺が知りたいのはそれじゃねぇ。
「だからって、なぜ俺らまでも行くんだ?」
いつも、リョーガが勝手に決めてんじゃねぇか。俺らが一緒に行っても、リョーガが決めるんなら、俺ら、必要なくねぇか?
「今回は僕達で決めていいそうです。それに、そろそろランクアップするらしいですし」
「誰がだ?」
「リョーガさんです。次でBランクらしいですよ」
そう言えば、それっぽい事を前に聴いたな。
でも、なんで俺よりも強いのにBなんだ?
コイツなら、もっと上に行けるだろ。
アレを使えば、強さだけで上まで駆けあがれるってのによ。
「戦闘試験は受けねぇのか?」
「なんですか、それ?」
「もしかして知らねぇのか?」
「はい」
マジかよ。
冒険者なら常識だぞ。
「戦闘試験ってのはな、ギルドが選んだ人と戦うだけでランクが上げれるってやつだ。偶に依頼をさせられる事もあるがな」
「戦うだけですか?」
「ああ、戦って勝利すればいいだけだ」
まぁ、こいつらが敗北する想像が全くできねぇがな。
なにせ、Sランクの俺が負けたんだ。いや、負けたなんて生温い。この俺が手も足も出せなかったんだ。
もし、こいつらに勝てるやつがいるなら、是非会ってみたいもんだ。
「リョーガさん、聴いてました?」
「あ?なんの事や?」
「エリオスさんが教えてくれたんですけど、戦闘試験ってのがあるらしいですよ」
「ふーん」
「ちゃんと最後まで聴いてくださいよ。戦うだけでランク上げれるんですよ!」
「へー、そうなんや」
リョーガの反応を見る限り、興味ないみたいだ。
なぜだ?
リョーガの力があれば、Sランクなんてすぐに到達できるだろ。
そうすれば、もっと報酬の大きな依頼を受けれるし、ギルドからの待遇も良くなる。
国への発言権も得る事ができる。
なのに、なぜなんだ?
「戦闘試験しましょうよ!」
「面倒いから嫌や」
……成る程。リョーガらしい返事だ。
確かに、戦うに当たって、手続きしなければならないし、対戦相手が決まるのも待たなければならない。
リョーガはそんな事知ってるはずもないと思うけれど、予想が付いてるんだろうな。
「えーー」
ユースが文句を垂れてるけど、リョーガは聞く耳を持ってないみたいだ。
本当に興味ないんだな。
〜〜〜
あれから数分程で冒険者ギルドに辿り着いた。
入り口でリョーガと別れ、俺とユースは依頼板へ向かい、そして悩んでる。
「どれがいいんでしょう?」
「明日には王都に戻る予定だから、手短に済ませれるやつにしねぇか?」
この辺りは王都の近くだから危険な依頼などは貼ってない。
あるとしても、Aランクパーティー推薦の近くに出た大型魔物の討伐ぐらいだ。
俺は兎も角、ユースは低ランクである薬草採取しか自分で受けた事がないらしく、中ランクや高ランクの依頼を受けるのは初めてだそうで、年相応に子供らしくワクワクしてるようだ。
「そう言えば、リョーガはどこに行ったんだ?」
「リョーガさんなら受付に行きましたよ」
視線を依頼板から外さず答えたユース。依頼を選ぶのに真剣みたいだ。
邪魔したみたいになったが、それでも俺の疑問に答えてくれるってのは、本当にユースは真面目だ。
それにしても、何の為に受付に行ったんだ?
ここで一緒に依頼板を見て、決めてから一緒に受付に行ったらいいのによ。
エリオス「リョーガって、本当、不思議な奴だよな。そう思うだろ?」
ユース「不思議…?変わった人だとは思いますが…」
エリオス「ああ〜。そりゃ言えてりゃ。確かに変な奴だ」
ユース「知ってます?リョーガさんのご友人、リョーガさんよりも変らしいですよ」
エリオス「それ、誰からの情報だ?」
ユース「リョーガさんとリリィさんに聴きました」
エリオス「あの娘とリョーガか。あの娘は兎も角、リョーガが言うとなると…」
ユース「でも、優しいらしいですよ。いつも笑ってばっかりで、頑張り屋さんだとか」
エリオス「ユース。良いか。優いつも笑顔で優しい奴ってのはな、大抵は内に何か危険な物を抱えてるヤツなんだぞ」
ユース「そうなんですか?じゃあ、リョーガさんは?」
エリオス「あれは、ただの暴れん坊の鬼だ」
ユース「鬼…ですか。……確かに…」




