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クレイジー・アクセル 【略:クレアク】  作者: 九九 零@異世界モノ大好物
第1章〜どうやら、異世界に迷い込んだらしい〜
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初めての戦闘

四話が抜けてました!


気分が向いた時でいいので読んでくれたら嬉しいです。

謎すぎるスキル”ガレージ”へと無事バイクを収納した二人は上機嫌で歩きながらスキルの検証を行っている。


と、言っても、上田の少ないスキルの中で検証できるのは”ガレージ”しかなく、それ以外は検証のしようがない。

だから、向野がスキルを一つづつ試しているのを見ているだけだ。


まず、初めに使ったのは”黒の盾(ブラック・シールド)”。

大声でスキル名を叫んだ向野の左手に黒い靄が集まり、長方形の禍々しい盾を形成させた。


もう大帝の事では驚かないと心に決めたリリィは興味深げに向野の左手を見ている。


次に、『黒の剣(ブラック・ソード)』を大声で叫び発動する。すると、右手に黒い剣が形成された。形は西洋型の直剣だ。

両手に握られた禍々しい黒い武器を眺めてニヘラ〜とだらしなく口元を緩める向野。


「ええのぉ〜。俺にも、そんなん欲しかったわぁ」


上田はそれを見て羨ましがる。彼には攻撃系のスキルは一切ないのだ。そもそも、職業欄には村人Dと書かれていた。完全にモブである。


「ま、俺やからな」


胸を張り、自慢気に剣を振るう向野。二人共これをゲーム感覚に感じている。

まるで、ガチャを回してレアを当てたか当ててないかの域での会話である。


『消えろ!』と心で強く念じる事で黒い靄を発しながら四散した二つの武器。

向野の緩みきった笑みは消えないまま、次に”アイテムボックス”のスキルの検証に入った。


ポケットに入れている携帯を取り出して”アイテムボックス”と、思う事で携帯が消えた。

これは、荷物の持ち運びを嫌う向野にピッタリのスキルだと思われる。


次々に荷物を”アイテムボックス”に放り込んでいく向野。次いでとばかりに、上田の荷物をひったくって放り込む。そんな事をしていると、ふと思った


『これってどれだけ入るんやろ?』と。

入れた物を取り出して、上田に全て持たせてから、中身がある物は一つづつ取り出して入れていく。

そして、向野の荷物を全てと、上田のポーチの中身を幾つか入れ、合計十個に達すると入らなくなった。


「たった十個しか入らへんのかよ」


「されど、十個やな」


「黙れ」


「うぃっす」


アイテムボックスの許容量に文句を言い、荷物を全て纏めてから”アイテムボックス”に仕舞った。ポーチは上田が持っている。


「にしてもよ、俺って勇者やねんな」


前を歩くリリィに聞こえないように小声で上田に話しかける向野。

だが先程、向野に『黙れ』と言われた上田は口を紡いで頷くだけだ。


「勇者やねんやったら勇者らしい事した方がええんかな?」


向野の問いに『え?お前が?マジで言ってんの?』と態度で示し、口元を隠しながらクスクスと笑う。


「やんなー、俺ってそんなキャラちゃうもんな〜」


空へと視線を移してから呟き、再度、上田に視線を戻す。


「で、お前、なんで黙ったままなん?」


向野の言葉に、喋るべきか喋らないべきか、言うべきか言わないべきか考える上田。そして、言う事にに決めた。


「……黙れって言ったから」


「なら、死ね」


全くの正論を返された。だが、上田も負けてはいない。


「答えはノーや。誰がお前のために死ぬかよバーカ」


「殺すぞ」


人一人、簡単に殺せる程の鋭い眼を上田に向ける。

それは、向野のいつもと変わらぬ眼つきだ。が、言葉と合わせれば本気で言ってるように聞こえる。


「やってみろよ」


『どっちみち、できへんやろ』と向野を信じる。が、向野程信用できない人はいない。


「ちょっ!マジで殺ろーとすんなよ!」


スキル”黒の剣”を使用した向野は右手に握られている黒い剣を上田目掛けて大袈裟に振るう。


「ちょっ!?あぶっ!!マジでっ!ヤバイって!!」


上田は本気で避ける。これまで習った武術や体操、はたまたスポーツの技術をフルに発揮しながら避ける。当たりかける事もあるが、間一髪で避けきる。だが、余りにも無駄が多い動きの為、体力の消耗が激しい。だから、徐々に動きは鈍くなり、遂には首元に剣を突き付けられた。ニヤリと笑う向野。両手を上げて観念する上田。

向野は大きく黒い剣を振り被る。目を瞑って無事を祈る上田。


「何してるのよ!!」


そこに上田にとっての天使が舞い降りた。

リリィが向野の頭を叩いて攻撃を止めさせたのだ。


「さっきから、あなた達は!少しは大人しくできないの!?」


そして、随分とお怒りの様子である。

両腕を組んで、ムスッと頬を膨らまして二人を睨み付けている。

怒られているのに、怒っているリリィの顔にトキめいたのは向野だけの秘密だ。


「「………すんまへん」」


即座に正座をして謝る二人だが、同時に同じ言葉を言ったので、顔を見合わせて笑い始める。

そして、再度、リリィが怒り始める。


怒るリリィを収めるため、荷物を代わりに向野が持つと言う事で収めた上田。

それを言われた向野は、上田に鋭い眼を、より鋭くして睨みつけるが、「アイテムボックスに入れとけ」と上田が小さく囁いた言葉で鋭い眼を少し収め、納得した表情で”アイテムボックス”に放り込んだ。


そんな二人のせいで時間が無駄に消費され続け、遂に夕方になってしまった。

リリィの予定では、今頃街に着いているはずなのだ。


のんびりと歩く2人の歩幅に合わせて。と、言うよりも、のんびりと歩いている向野の歩幅に合わせている二人。

そして、そんな三人に前にまたもや時間を取られる事件が発生した。


前方で魔物と思わしき生物達が壊れた馬車の残骸を漁っているのだ。


「ゴブリンね」


リリィが魔物の名前を言った。

その魔物の姿は小学生ぐらいの小さな身長で緑色の薄汚れた肌、魔物特有の真っ赤な眼、口からニョキっと飛び出た黄ばんだ犬歯、長細く尖った耳、中年太りのようなポッコリと出た腹、粗末な布を腰に巻き、素朴な木の棒を加工したような棍棒を腰に携えている魔物だ。


ゴブリンに気付かれないようにゆっくりと進み、リリィが腰に携えている短剣を抜こうとした時、向野が手でそれを制して言った。


「俺が行く」


と、二つのスキルを発動させて光の剣と盾を手に持つ。

彼はスキルを本当の意味で試してみたくて仕方ないのだ。それと、もう一つ『男なら女に一つは良い所を見せなきゃな』と言う理由がある。


彼が一番苦手とする物も忘れ、向野はゴブリンの元へと走っていく。

向野が走ってくる姿に気付いたゴブリンが全く理解のできない耳障りな声を上げて仲間に警告する。獲物を見る眼で走ってくる向野を向け、各々の棍棒を構えて戦闘体制に入り始める。


向野は剣を持つのは初めてだ。そもそも、剣道などの習い事などした事がない。だから、型も何もないままゴブリン達へと突っ込んで行く。そして、容赦なく先頭のゴブリンを防御をする棍棒ごと叩き斬った。


その瞬間、向野は膝から崩れ落ちた。どうしたのかな?と心配そうに見つめるリリィ。そこに上田の姿はない。

なぜなら、彼はこうなる事を予測していたからだ。


ゴブリン達は簡単に仲間を殺した向野を警戒する中、向野は四つん這いで大きく息を吸い込む。そして


「オロロロロ……」


吐き始めた。

彼はグロテスクな光景が苦手だ。想像するだけでも嫌なのだ。なのに、なぜ行動に出たか。それは下心があり過ぎて忘れていたからだ。


「やっぱりそうなったか…」


向野の先を予想していた上田は溜息を一つ吐きながら一番後ろのゴブリンの首を見覚えのある短剣(・・)で切り裂いた。


「グギャァ!?ギャギャッ!!」


またもや仲間を殺されたゴブリン達は怒りを込めた叫び声を上げて棍棒を振り上げながら二人へと襲い掛かる。それは勿論、嘔吐中の向野にも容赦なくである。


「もう!仕方ないわね!」


向野に襲い掛かるゴブリンはリリィが黒い剣を拾って倒す。

上田の方へ来るゴブリンは、上田が倒す。と、思いきや、彼は森へと走って逃げ出した。それを追い掛けて行くゴブリン達。


その場に残るゴブリン達を倒し終えたリリィは黒い剣を置いて森の方を見つめる。


「…大丈夫かな」


戻って来ない上田と彼の持つ短剣を心配するリリィ。実は、上田が持って行った短剣はリリィの物だったりする。いつの間にかリリィの気付かぬ内に盗られていたのだ。


胃の中の物を全て吐き出し、胃液すら出て来なくなった向野は、ゴブリンの死体から顔を背けながら唾を吐いて空を見上げる。

口の中に残る気持ちの悪い味をクチャクチャと唾と混ぜ合わせ、もう一度吐く。そして、タバコを吸い始める。


「ねぇ。あなたの友達でしょ?心配しなくていいの?」


森に行ったっきり帰って来ない上田を全く心配しない向野にリリィは尋ねる。だが、帰ってきたのは適当な返答だった。


「大丈夫、大丈夫。あいつならテンパリながら何とかするから」


それに、と付け足して小さな声で呟く。


「あいつ、残酷なんが好きやしな…」


上田は向野と正反対なのだ。森の中で行われている事を想像するだけで吐き気を催す。


「え?」


リリィには向野の呟きは聞こえなかった。だが、それで良いのかもしれない。

上田は決して自分の事を晒そうとしないのだ。知られる事を何故か嫌がる。だから、森の中に、人の目が無いところへと向かった。そう向野は予想する。


「まぁ、待ってれば来るって。あいつ、よく道に迷うから」


話をはぐらかし、上田の帰還を待つ。

待つ事、数分。上田は爽快の一言で事足りる笑みを浮かべて帰ってきた。

見た感じ怪我はなさそうである。


「で、どうやった?」


「楽しかったで」


「そか…」


上田の楽しかった。は向野からすれば余り想像したくない事だ。

なにせ、上田は向野と違い、猟奇的な人間だからだ。


「ほな、行こか」


深くは尋ねず、向野はゴブリンの死体を目に入れない様に立ち上がる。と、そこにリリィの待ったが入った。


「ちょっと!私の短剣返してよ!」


そう。上田はリリィから短剣を盗んでいた。それも、リリィの気が付かない内にコッソリと盗っていたのだ。


「あぁ、ごめんごめん。さっきの危なかったから借りたんよ」


まるで、少しだけ借りてました。と言わんばかりの言葉である。全く信用できない。


「もうっ!」


プンスカと怒りながらリリィは上田の持つ短剣をひったくる。そして、鞘へと仕舞う。


「次はちゃんと言ってよね!」


「これからはそうするよ」


ヘラヘラと笑いながら返答する上田の言葉には説得力が皆無である。

だが、これ以上上田相手に言っても同じように返されるだけなのを安易に予測がついた為、諦めて歩き出す。

続いて二人もリリィを先頭に歩き出す。

街までもう少しだ。


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