仲間との再会
試験、ようやく終わりました。
そして、新たな試験が追いかけて来ました。
後々に回した事がいっぺんにきた…。
リョーガは、久々に会話したユートが言い残した言葉を頭の中で何度か往復させた後に、スクッと立ち上がり馬車を後にする。
それを慌てて追うユースとエリオス。
エリオスよりも早くリョーガに追い付いたユースは先程聴いた名前の事を質問する。
「あの、リョーガさん。リリィさんって…」
「仲間や」
「仲間…」
そう呟き、思考に没頭し始めた。
エリオスは先程の件により余計にリョーガの仲間に対して興味を持ち、リョーガの仲間らしき存在を探し始めている。
この”ソラの瞬き”には、三代の馬車を利用して販売している。そして、それぞれの馬車の上には何が売られているのかが分かり易い様に看板に絵と文字によって示されている。
一台目は、アイテムの販売。回復薬や解毒薬。その他にも珍しい物がチラホラと隠れて売られている。
二台目は、飲食物の販売。あちこちで手に入れた新鮮な採れたての食べ物が売られている。
三台目は、武器防具の販売。その辺りで売っている雑多な物や、迷宮でしか手に入らない高価な物まで。それだけには収まらず、メンテナンス、修理、改造、作製など手広く行なっている。
そして、その武器防具販売の所に彼女は居た。表情を見る限り、ワクワクと期待を膨らませて何かを心待ちにしているように見える。
リョーガの抜け目のない鋭い瞳は、リリィの姿を決して見逃さなかった。
「リーーー」
リリィを呼ぼうとした。が、その前に店員が来てリリィに何かを手渡した。
リョーガはそう言う所は気を使う人だ。人が何かをしていれば、それを終えるまで待つ。又は、一言言って邪魔しないようにする。それがリョーガである。
そんなリョーガに見つめられていると知らず、リリィは渡された物をジックリと眺め、そして、飛び跳ねて喜びながらお金を払う。
そんなリリィの姿をリョーガは一度も見た事がなく、若干心の中で拗ねながら、もう一度声を掛ける。
「リリィ!」
「ん?」
リリィの赤髪を風によってか、振り返った拍子でか、揺らしながら振り返る。
そして、リョーガを視界に入れた途端、表情は喜びから驚愕へ、続いて、慌て出した。
「えっ!?どどど、どうして!?」
「は?」
リリィが慌てる理由など思いたある節など一切ないリョーガは、若干不機嫌さを露わにしながら目を細める。
それは、誰もが恐れを抱くような畏怖する凶悪な瞳だが、リョーガを知っているリリィには効果のない瞳だ。
「なんでリョーガがここに居るのよ!」
怒ったようにキッと気の強そうな視線を機嫌の悪そうなリョーガへと向けて言った。
だが、リョーガは気にした様子もなく、普通に返答する。飽くまでリョーガにとって、だが。
「なんや?居ったらアカンの?」
「そ、そんな訳じゃないけど、なんでココに居るのよ!」
彼等の会話はどこからどう見ても口喧嘩しているようにしか見えない。
だけど、これが彼等にとっては普通の会話だ。ただ、ユートが居ないから、こんな荒っぽい表情と会話になってしまっているだけだ。
「んなもん、ココに興味あったからに決まってるやんけ」
「王都に?」
「ちゃう。この馬車の行列や」
「キャラバンね…って、私が聴きたいのはソレじゃないの!どうして王都に居るのって聴いてるのよ!」
リョーガは、リリィの問いに「ああ」と、納得したような声を漏らす。
「ちょっとユウシャって奴に興味あったからや。まぁ、もう用はないけどな」
「それだけの理由で王都まで?」
「そゆこと」
リョーガの答えに、ホッと安堵したような、呆れるような溜息を吐くような声を漏らすリリィ。
「あの、リョーガさん…」
二人の会話を聞いていたユースは、話題が途切れたのを確認してから、気まずそうにリョーガに話し掛けた。
声を掛けられたリョーガは振り向き、同時にリリィからも『誰?』と言いたそうな視線を向けられる。
リョーガ並ではないが、リリィの細められた目を向けられたユースはビクッと肩を跳ね上げた。
そんな彼は決して返事を求めてリョーガを呼び掛けた訳ではない。始めて会うリリィに仲間として紹介して欲しかったのだ。
だが、リョーガがそんな高等な技術を持ち合わせてるわけもなく、ユースの気持ちを全く汲み取らずに、「なんや?」と返事した。
ここは僕達の紹介でしょ!と心の中と視線でリョーガに訴え掛けるが、リョーガがそれに気が付く事はない。
「リョーガ、俺達の紹介してくれよ」
ユースが視線で必死に訴えかけているのを横目に困ったように小さく溜息を吐いてからエリオスがユースの思いを代弁した。
だが、リョーガの性格からすると、
「は?めんどいから嫌やし」
「「「はぁ〜…」」」
その発言には、リリィ、ユース、エリオスの三人が同時に呆れの混じった溜息を吐くのに十分過ぎた。
〜〜〜
巨大キャラバン”ソラの瞬き”には、販売店をする馬車の他に飲食店を経営する馬車もある。
馬車内部が厨房になっており、外に机と椅子を出してテラスのようにして経営している。
一応は飲食店だが、騒がしい販売店から離れている為か、静かな喫茶店に近いような感じになっている。
そこに、リョーガ達は居る。
「っ!?なんだこれっ!シュワシュワしてるぞ!」
静かな喫茶店に驚いて声を上げているエリオスは置いておくとして、リョーガは久々に会えたリリィと会話している。
「ーーーって事や」
話している内容は、リリィと別れてからの事である。
「成る程ね。で、その勇者には会えたの?」
リョーガの説明は、先程顔を合わせた時に話した内容と殆ど同じで、気になる事が色々有った。が、それは何故だか尋ねない方が良さげだと判断し、結果を尋ねた。
「おん。会えたで。けどな、期待外れやった」
やれやれと言った風にするリョーガの発言に、思い当たる節があり、訝しむ視線を向けるリリィ。『まさか…そんな訳ないわよね…』と心の中で頭の中に浮いて来た事を否定しながら、続きを話して貰う。
「…どういう事?」
「メッチャ弱かってんよ」
まるで、戦ったような、そんな発言。
リョーガの隣にいるユースは呆れたように顔に手を当てて『あっちゃー』と表現している。
「………」
リョーガの発言にリリィは確信した。
門の前で勇者と騒動を起こしたのは、リョーガだと言う事に。
「何してるのよ…」
大体の事を察する事ができたリリィ。
本当ならば、今すぐに兵士にリョーガを引き渡すべきなのだが、それは何故だか躊躇われる。
なんだか、リョーガを兵士に差し出した時の事を想像すると、嫌な予感しかしないのだ。
「そんな事よりさ、リリィはこんな所で何してたんよ?」
「えっ、わ、私は……そうっ、コレ!コレを鍛えて貰ってたのよ」
リョーガの突然の問いに、動揺を露わにしながら、短剣を見せて言った。
「ふーん」
明らかに動揺していたリリィ。
それは、リョーガに疑いを覚えさすには十分だ。だが、リョーガは目を細めるだけで、それ以上の事は尋ねず、リリィを驚愕と混乱に陥れる話題へと変更する。
「まぁ、ええわ。それよりさ、ここの店主知ってる?」
「え、ええ。確か、ソラって呼ばれてる仮面の人よね」
「おん。あれな、ユートが作ったんやて」
「………は、はあああああああっ!?」
大声を上げて驚愕を露わにするリリィ。その反応を見てリョーガは満足そうに笑う。
「ユート生きててんよ。んでから、話した」
「ど、どうやって!?」
「ユートがソラを使って話しててん。詳しい事は知らん」
「………」
リョーガの説明は大雑把で理解し難いが、リリィは口を半開きにしてユートが生きていた事に驚愕した。
「って事でさ、俺な、ユートの所に行くねん。リリィも行こや」
「えっ!?」
リョーガの隣でオレンジ色のジュースをストローを使って飲んでいるユースが驚いて声を上げているが、それはスルーで話が進む。
「私はまだやる事があるから無理ね」
「えー、なら、それ終わるまで待つからさ」
「終わるまでって、何日掛かるか分からないわよ?もしかしたら、何ヶ月も掛かるかもしれないし…」
「んー……」
リョーガは珍しく思考に浸る。
数秒程どうするかを考え、そして答える。
「ええよ。待つわ」
リョーガは、友人で死んだはずのユートよりも女性のリリィを優先したようだ。
会話が終了したリョーガは机にある甘めのコーヒーに視線を落とーーす前にニヤニヤと意味有りげな笑いを浮かべているエリオスが視界に入った。
「ぶっ飛ばすで」
「なんでだよ!?」
コキコキと指の骨を鳴らして立ち上がるリョーガ。
そして、ツッコミを入れながら椅子を蹴倒して逃げようとしたエリオスの襟を掴み、躊躇なく投げた。
「またかよおおおおお!!」
と叫びながらエリオスは何処かへと飛んで行くのだった。
リョーガ「で、リリィ。ホントは何してたん?」
リリィ「な、なんでもいいでしょ!」
リョーガ「俺だけ除け者かよ〜」
リリィ「除け者になんてしてないわよ!って言うか、誰にも言った事ないわよ!!」
リョーガ「ほな、俺だけに教えてや。何してたん?」
リリィ「そ、それは…」
ソラ『主人の携帯が壊れたと言って持って来たので、直させて頂きました』
リョーガ「なんや。そんな事かよ」
リリィ「…え?」
ソラ『一応報告しておきますが、故障ではなく、ただのバッテリー切れだったようです。リリィ様。充電は渡したあの端末で出来ますので』
リリィ「あ、はい」




