世界樹の楽団
後一話です!
ホントですよ!嘘じゃありません!
断言します!
あと、一話です!
それで、ユート編は終了!
リョーガ編に突入!と、なります!!
「おお!美味しいですね!特に、このスープ!トロッとした感触に後から広がってくる味わい深さが堪りません!」
「せやなぁ〜」
結論から言うと、ラッテンの言っていた有名店にすんなりと入れた。
朝食の時間から少しズレている為、客足も少なく、俺とラッテンの他に数人しかいない。
「これも美味しいですよユートさん!」
これは本当に五月蝿い。
賑やかなのは良い事だ。だけど、ラッテンは別だ。一口食べる事に何か言っている。
黙るって事をしならないようだ。なんなら、口を縫ってやっても良いんだよ?
ラッテンがネモ…アルファーから幾ら貰ってるのか知らないけれど、ラッテンは俺に負けず劣らず物凄い食べっぷりだ。
入って速攻でこの店のフルコースを頼む程だ。
まぁ、明らか俺の方が食ってるんだけどね。
それから、周りからの視線が奇異の目に変化しているけれど、視線が突き刺さるのは変わらない。
そんなに珍しい物を見る目で見ないでくれ。
「そう言えば、ユートさんってアルファーさんとどう言った関係なんですか?これまで一度もアルファーさんとユートさんが会って話している所見た事ないですよ?」
急にズバッと内情を聴くね、この子…。
それに、あんたとは今日会ったのが初めてやろ!
「アルファーとはアンタらとアルファーと出会う前からの知り合いや」
「僕達?と、言う事は、一番初めにアルファーさんと出会ったカルヤさんよりもって事ですか?」
「そう言う事や」
「でしたら、僕達と出会う前、アルファーさんは何をしていたんですか?僕達、楽団の中でも知ってる人が一人も居ないんです。アルファーさんは無口だし、聴いても何も答えてくれないんですよ」
なんて答えようか…。
冒険者?いやいや、俺は兎も角、あいつは冒険者をしていない。ギルドカードの提示を求められれば俺が嘘を吐いたってバレる。
だったら…。
「アイツとは…せやな。旅仲間やってん。迷宮とか潜ってたんよ」
嘘は言ってない。それに、証拠を探そうにも見つかる事もない。完璧だ。
「そうなんですか?だから、アルファーさんはユートさんを知っていたんですね。それにしても変な話ですよね。ユートさんがこの街に居る事とか、詳しい居場所まで分かっちゃうなんて」
なんでそこまで追求してくるの!?
新手の嫌がらせか!
ここは適当な事でも言って誤魔化しておくか…。
「それは、あいつのスキルや。特定の場所を探せるってやつや」
「それって、もしかして【千里眼】ですか!?僕、そんな珍しいスキルの持ち主と僕は一緒に居るんですか!?す、凄いですよ!!」
なんか早とちりしてくれた。
これで良かったのかな?
【千里眼】ってスキルが良く分からんが、なんとなくで考えたら、周囲の事を観れるってやつやろ。
一応、ネモは標準装備で半径一キロの状況把握が可能になっているから間違ってなさそうだ。
今度、打ち上げる予定の衛星にネモの状況把握機能とリンクさせるつもりだから、半径一キロと言わず、もっと遠距離が視れるようになる…予定だ。
「ちょっと違うけど、まぁ、そんな感じや」
「帰ったら、みんなに教えてあげなきゃ!僕だけが秘密を独占するなんてみんなに知られたらタコ殴りにされてしまいます」
アハハッて笑ってるけど、それって結構ヤバくね?アンタたらの楽団って、もしかしてヤバイ人の集まりなんじゃね?
もし、俺がそんな事されたら間違いなく死んじゃうよ?
「あっ!時間忘れてました!そろそろ行かないと本当にタコ殴りにされちゃいます!」
どこを見て判断したのか、急いで残りの食事を口の中に掻き込んで、ゲプッと小さなゲップを披露してくれた。
俺も残っている食べ物を、適当に口へと放り込んで噛まずに呑み込む。
「支払いは僕がしておきますので、外で待っていて下さい」
「りょーかい」
ラッテンが店員を呼んでいるのを横目に、俺だけ先に店を出る。
それから暫らく店の前で待ち、ラッテンが小走りでやってきた。
「お待たせしました。さぁ、行きましょう!」
元気よく声を発した後、走り始めた。
一応、俺を気にかけてくれているのか走る速度は遅めだが、人と人の間をスルスルと抜けるのはやめて欲しい。
少しでも遅れれば見失ってしまいそうになる。
数分間走り続け、辿り着いたのは大通りと大通りが交差する広場のような場所だ。
そこに、二台の箱馬車が連なって停まっている。
馬車の壁に大きな文字で『世界樹の楽団』とカラフルに描かれている事からここにネモ…アルファーが居るのだろう。
「はぁ、はぁ、お待たせしましたー!」
小走りだけなのに息切れをしているラッテンが大きな声で馬車の方に声を掛け、馬車の後方から中に入っていった。
取り敢えず、俺も続いて中に入ると、
「何、アンタ?」
初めに目があった人にスッゲェ睨まれた。部外者は入ってくんな!的な視線を馬車の中に居た一同から一斉に向けられたよ。
「この人はユートさんです!」
「だから、誰よ?」
ラッテンが俺の紹介をしてくれるけど、始めに話しかけてきた女性の人は冷たい言葉しか放ってこない。
「ユートさん。この方がカルヤさんです。それから…あれ?アルファーさんは?」
ああ、無視なのね。カルヤさん?が物すっごい目付きで睨んでるけど、無視するのね。
俺、出入り口で固まってるけど、ビシビシとカルヤさんの怒気が感じれるよ。
「アルファーさんならいつも通り一号車に居るんじゃねぇか?」
次に声を発したのは、楽譜に目を通している褐色の肌をした男性だ。年齢的には三〇後半だろう。
「分かりました!すぐに呼んできますから、ユートさんは少しここで待っていて下さい」
えええっ!ここで!?待たされるの!?
いやいやいや!無理!無理だから!
こんな針地獄のような視線の束に耐えられないから!
って、俺の助けを求める視線を無視して行くなよ!!
「で、アンタ、ユートだっけ?何しに来たわけ?」
物ゴッツイ怖いです。はい。
俺、実は女性が怖いんです…。特に、同い年ぐらいが一番怖くて…。
「何黙ってるのよ。何か言いなさいよ。それともなに?口きけないわけ?」
アカンッ!弱気になったら、人生はそこで終了や!
俺の特技は!?
そう!笑う事!笑って全てを誤魔化す事や!
いつも通り、笑えばいいんだ。
そう自分に言い聞かせ、笑みを作りながら返答する。少し引き攣っているのは、見逃して欲しい。
「アルファーに会いに来たんやけど?」
「なに笑ってるのよ。気持ち悪い」
うぐっ!き、傷付く。
これだから女性が怖くなるんよ。
俺がやってたバイト先でも、女性同士の陰口や罵り合い、喧嘩など目の当たりにしていた。
一種のトラウマなんよ…。
「アルファーさんなら、さっきラッテンが呼びに行ったでしょ。なんで今更そんな事言うのよ」
呆れた。とばかりに背を向けるカル…カル…名前が出てこない。
カルさんで良いや。
けどね、一つ言わせて欲しいのよ。
俺、喋れって言われたじゃん!なんで呆れられんの!?今の俺が悪かった!?
「はぁ…」
「なに?文句でもあるわけ?」
耳聡く俺の溜息を聞き付けるなよ…。
「いや、ないよ」
カルさんは「そっ」と素っ気なく背を向けて奥の椅子にズカッと座った。
そして、俺の事をジッと睨み付けてくる。
怖い。怖いよその目。
リョーガと良い勝負…いや、リョーガの方が目付きが悪いか。
普通にしててアレだもん…。
居心地の悪さに耐えながら暫く待つ事、数分。それが数時間にも感じられたのは、突き刺さる視線が厳しかったからだろう。
「アルファーさん!一同、準備は出来ています!」
突然、座っている人は立ち上がり、楽器の作業をしている人は手を止めて俺の方を…いや、俺の後方を向いて頭を下げた。
俺も振り返ってみると
「おお!久し振りやんけ」
ネモが居た。ムスッとした表情の仮面を着けたアルファーだ。
手に持った画用紙を俺に見せてくる。そこには、文字が描かれており、それで意思の疎通をしているようだ。
『お久し振りです主人』
「その主人っての別にいらんって言ってるやん。普通にユートでええよ」
『いえ、主人は我等の主人です』
ネモ達って案外に頑固だから、たまに言うこと聞いてくれない。
まぁ、それで良いなら俺は別に構わないけど。
『お食事、満足していただけましたか?』
「おん。助かったわ。それに、案外美味しかったしな」
『それは良かったです』
「アルファーさん、コレ…いえ、この方はどなたですか?」
後方から声が聞こえて来た。この声は、カルさんだ。俺の事をコレって言われてたけど、言い直してくれたよ。少し嬉しかった。
『この方は私の主人です。十分に敬意を払ってください』
「先程は失礼しました!」
「「「失礼しました」」」
……これって、謝られてるんだよね?
全員が一斉に俺に頭を下げた。ついでにラッテンも。
変わり身の早さが凄い。つか、アルファーの慕われ方が物凄い。
俺、アルファーに憧れるわぁ〜。
「まぁ、ええって。少し心にグサ〜って来ただけやから」
俺の一言に頭を下げている人達の中の一人。カルさんがビクッと肩を震わせた。
まぁ、仕返しはこの程度でいいや。
「冗談やって」
ケラケラと笑って振り返る。
「わざわざ来てくれてありがと。それと行けんくてすまんかったな」
『いえ、頼んだのは私の方ですので主人が謝罪する必要はありません』
「謝罪は受け取らな相手を貶してるのと一緒やねんで」
『申し訳ございません』
「アンタが謝ってどないすんねん。まぁ、アレや。期待してるで」
『その期待に答えれるように精進致します』
堅っ苦しい。けど、それがネモや。
どれだけ言っても俺が相手だと絶対にこうなる。
何を考えているのかなどサッパリ分からないが、それで満足してるなら俺はそれ以上言わない。
面倒な事って、俺、嫌やし。
ネモであるアルファーと、そのお仲間達に別れの言葉を掛けてから、その場を後にする。
レイルム達はここに来る筈だし、待っていれば会えるかな?
そんな適当極まる考えで、広場の隅の壁に寄りかかって時間が過ぎるのを見守る。
何が始まるのかが気になった人や、噂を聞きつけた人が少しづつ集まりつつある広場。
そして、ようやくレイルム達を見つける事が出来た。
どうやら、ミナに案内されているようだ。
いや、違う。ミナが俺から離れるように案内している。
アイツ…。後で覚えてろよ!!
カルヤ「アンタ、アルファーさんと知り合いなんて実は凄い人?」
ユート「いやいや、そんなんちゃうで」
ラッテン「ユートさんはですね、アルファーさんが僕達を劇団に誘う前からの知り合いなんですよ。それも、旅仲間だったらしいですよ。迷宮とか潜って凄いですよね」
カルヤ「アンタの喋り癖がこんな所で役立つとはね…で、アルファーさんは、昔のお仲間に私達の曲を聴かせたいっと。そう言う事?」
ユート「言葉に棘があるのは俺の「気の所為よ」…さいですか…」
ラッテン「そうなんですよ!ユートさんって、僕よりも良く食べるし、なんだかんだ軽い人ですけど、アルファーさんと仲が良い事は確かなんですよ。それにですね、ここだけの話、ユートさんって奴隷の事を詳しく知らないそうなんですよ」
ユート「本人が近くにいるのにそれ言うか普通?」
カルヤ「そうなの?と言う事は、ユートはバカなのね」
ユート「グハッ」
カルヤ「それに、こんな奴隷で変人でバカな人がアルファーさんと仲が良いだなんてアレを見ても信じられないわ」
ユート「カハッ」
カルヤ「ホント、アルファーさんはなんでこんなクズと一緒に居たのか不思議だわ?」
ユート「うぅ…」
ラッテン「カルヤさん。ユートさんが倒れちゃいましたよ?」
カルヤ「そんな人は放っときなさい。それよりも、演奏の準備はできているの?」
ラッテン「あっ!まだでした!すぐに済ませてきまーす!!」
カルヤ「私も残りの用事を済ませてこよーっと」
ユート「……酷すぎやろ…」




