とある村の噂話
ユート編になります。
二日に一度の投稿にしようと思います
間に合わないみたいです。
それと、そろそろ年明けですね。
仕事は休みで、家族で遠出になります。
少し早いですが、あけましておめでとうございます!
ここはとある街の酒場。カウンター席と机席があるだけの小さな酒場だ。
「ララトゥールの村。そう呼ばれていた村がある。だが、今では鋼鉄の村などと呼ばれた要塞のような村だ。幾千、幾万もの敵が押し寄せようとも、その村には傷一つ付きやしない。反対に、襲った輩が死体となって帰って来やがる」
「そりゃ、すげぇ村だな。って、ララトゥールの村って目と鼻の先じゃねぇかよ!」
「そうだよ。そんな噂が流れるほど、あの村は凄い事になってんだよ」
「一体、いつからだ!?」
「聞いて驚くなよ?…二週間前だ」
「に、二週間だと!?」
「ああ、俺が前に依頼で立ち寄った時は、普通の村だったんだ。だが、一週間前に行った時、そこは鋼鉄の村だった」
「ま、マジかよ…」
「ああ、嘘なんて吐くわけねぇだろ。っにしても、一体、どうやったんだろうな」
「何がだ?」
「お前は不思議に思わねぇのか?たった一週間で村の全てが鋼鉄の壁になってたんだぞ?どう考えたってオカシイだろ」
「…ドワーフならーー」
「無理だ。例え、ドワーフが何百人集まろうと、あの鋼鉄の壁を一週間やそこらで作れるはずがない。それに、あれだけの鉄を集めるとなれば、この街にある鉄を全て集めても足りないだろ」
「なら、どうやって…」
「それが知りたくて聞いて回ってんだよ」
「そうか。力になれなくて悪かったな」
「いや、良いってことよ。良い話し相手になってくれたしな」
そんな噂当然の話が彼の耳に届いた。冒険者の好きそうな噂話だ。そして、噂には嘘やハッタリ、そして、眉唾なものが多い。
大抵の人は、その話を聴いても信じる事はないだろう。
「オッチャン、コーヒーない?」
「コーヒー?なんだそれ?」
「えーっと、豆を挽いて熱湯で浸出する飲み物の事や」
「ああ、コーフィの事だな。あるぞ」
「ほな、それ頼むわ」
「あいよ」
店主は頼まれた物を出す為に麻袋から豆を取り出して、小さな小箱のような所に入れて挽き始めた。
「細かめで頼むわ」
「やけに詳しいな」
「好きやからな」
「そんなに若いのに珍しいな」
少し変わった少年にジーッと手元を凝視されながら、注文通りにする店主。
店主が知る限り、コーフィは苦く、若い世代が苦手な飲み物だ。大人でも飲むのが嫌いな人がいる。それを飲むと言う少年が目の前に居て、物珍しい気持ちになる。
「あんた。鋼鉄の村って知ってるか?」
先程まで話をしていた人がまた別の人と話しているみたいだ。これからまたもや同じ話が続くのかと、彼は思った。が、それは少し違った。
「なぁ、無視するなよ。連れねぇな」
「ん?俺?」
彼自身に話し掛けていたのだ。それに、話し掛けている人はいつの間にかすぐ隣の席に座っていた。いや、元からその場所に居た。だから、話が丸聞こえだった。
「そうだ。あんただよ。で、知ってるか?」
「一応、な」
「おっ!アレを見たのか!?で?」
「で、って?」
「感想だよ。アレを見た感想を聴きたいんだよ。それと、何か知ってたら教えて欲しい!」
「感想って聞かれても、そこまでの事は思わへんかったで。ちょっと疲れたぐらいやし」
「疲れた?」
「知ってる事って言ったら、村に攻撃仕掛けへん限り、人は死なへんし、普通の壁って事や」
「や、やけに詳しいな…」
「まぁーね」
隣の席のオッチャンの質問に全て答え終えると同時にコーフィが出来上がり、カウンターに置かれる。湯煙が立ち昇り、芳醇な香りを漂わせるコーフィに嬉しそうに彼は頬を緩める。
「ほな、頂きま〜す」
熱々のコップを手に、ズズーッと音を立てて口に含ませる。苦味が濃く、仄かな旨みが口に残る。彼好みの味で笑みが溢れる。
「美味いなぁ。俺、この味好きやわ」
「そう言ってくれると嬉しいな。なにせ、コーフィなんて飲む奴なんて物好きだけだからな」
「美味いんやけどなぁ〜」
「お前さんも物好きの一人だぞ」
「そっかな?」
ヘラヘラと笑みを浮かべて、再度コップを傾ける。店主は彼が美味しそうにコーフィを飲んでくれているのを嬉しげに見ている。
彼ーーユートはホッとできるこの僅かな時を満喫している。
だが、それは、バンッと酒場の扉が開くと同時に響く声によって終わりを告げた。
「居たぁーー!!」
無邪気で元気そうな少女の声だ。
「あぁ、見つかってもうた…」
ユートは残念そうに呟き、コーフィを一気飲みして立ち上がり、ニコッと少女に笑いかける。
「もうっ!気が付いたら居なくなるんだから!ビックリしたんだからね!」
プンスカと怒る彼女にユートはヘラヘラと笑っている。
「ごめんごめん」
「ほら、早く行くよ。買い物、まだ残ってるんだから」
「はいよ」
気の抜けるような返事をする彼は、プンプンと怒る少女に腕を掴まれて連れて行かれた。慌てて硬貨を数枚カウンターに置いていた。
そんなユートの背を見届けた彼等の頭に一つの疑問が湧いた。
「そういえば、あいつ、いつから居た?」
「俺は知らんぞ?気が付いたら、そこに座ってやがった」
ユートの隣に座っていた男性が店主に尋ねたが、店主ですら知らなかった。
全く気配を感じさせず、気が付けばいる。まだ少ししか時が経っていないのに、顔も思い出せない程に影の薄い人だ。なのに、こんな人だったな。と、ユートに抱いた印象は大きい。
「なんだか変わった奴だったな。やけに物知りだし」
「コーフィにも詳しそうだったしな」
「それって、あの苦い飲み物だろ?良くあんな物飲むよな」
「一部の人には人気なのだが、やはり苦手な人は多いからな」
そんな会話が静かで、彼等二人しか居ない店内でされていた。
一方、彼等の話の対象となったユートはと言うと。
「今度は逸れないでね!」
そう注意されながら、逃げられないようにガッシリと腕を掴まれていた。
「あー、うん。気ぃ付けるよ」
などと言いながらも、彼の瞳はキョロキョロとあちこちへと向けられ、明らかに他の物へと気が向いている。
「なぁ、エミル。歩き辛いんやけど…」
「ダメ。離したら、どこかに行っちゃうもん」
「行かへんからさぁ」
「ダメ」
彼は信用されてないらしく、エミルは全く離そうとしない。諦めてエミルの歩幅に合わせて歩き辛そうに足を進めるユート。
「……」
「ダメ」
「何も言ってないんやけど?」
「逃げようって顔してたもん」
「………」
そこまで言われ、何とも言えない表情をするユート。別に彼は逃げようなんて思っていなかった。ただ、『あの店に寄りたいな』や『あの露店行ってみたい』と思っていただけだ。
「にしても、なんで急に街に来たがったん?」
周囲の店などに目を向けながら尋ねる。彼からは、落ち着きのなさが溢れ出ている。
「ちょっと買いたいものがあったの」
「それで、ついでに皆から買い物を頼まれた、と」
「そう言う事。ユートが居てくれて良かったよ」
えへへ〜っと嬉しそうに子供っぽい笑みを浮かべるエミル。
そんな彼女を視界に収め、いつも通りヘラヘラとした表情で次の質問を口にする。
「んで、買いたい物ってなに?」
「それはね、ひ・み・つ」
唇に人差し指を当てて言った。彼女がそれをすると、妖艶さよりも、子供っぽさが大きく出た可愛さがある。
それを僅かに無言で見つめてからユートは言う。
「子供やな」
彼は前々からエミルの年齢が気になっていた。だが、女性に年齢を聴くな。と誰かに言われた覚えがあり、彼女の言動を見て、一人でうんうん、と頷いて納得した。
「なっ!?ち、違うよ!一八歳だから大人だよ!」
「………っ!?」
エミルの発言に驚きすぎて表情を固め、我に返った瞬間、大袈裟に驚いた。
「なに!不満!?」
「いや、そうじゃなくてな、もっと下やと思ってたんよ」
「もうっ!」
プイッと顔を逸らして頬をリスのように膨らます。それを見て、『外見だけじゃなくて、中身まで子供やん』と思ったのはユートだけの秘密だ。
リョーガ「クリスマス明けてから、年明けって、結構早いな。どないする?今日も飲むか?」
ユート「前回、飲んでどないなったか覚えてないん?」
ユース「あの後、凄く怒られてましたね」
リョーガ「は?知らんし」
エリオス「何の事だ?」
ユート「今日は止めとかへん?」
リョーガ「嫌やし!女居らへんねんから、野郎で行くぞ!」
ユート「またかよ…俺は飲まへんからな…」
エリオス「お?酒か?喜んで付き合うぞ」
ユース「ぼ、僕は遠慮しておき…」
リョーガ「ユース、お前は絶対や」
ユート「なら、俺が止めとこ…」
リョーガ「逃げんなや!お前らは絶対や!拒否なんか許さへんからな!」
ユート&ユース「はぁ…」




