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ユースvsエリオス

ああ、ようやく、ようやく一話ですよ…


時間があっても、書くのが辛くなって来ました…。


ホントに二日に一回の投稿にしよかな…



決闘が終わり、冒険者ギルドは静かな時を取り戻した。そして、誰もリョーガの煙や臭いに文句を言えなくなった。


いや、文句を言っている人はいる。リョーガと同じ机席に座っているエリオスだ。だが、リョーガは全く耳を貸さないので、ブツブツ独り言を言っている変な人みたいになっている。


そこに、リョーガの待ち人がようやく現れた。


「お待たせしました。リョーガさん」


村人風のオンボロ服に、鞄を背負い、短剣を腰に携えたユースだ。これが冒険者だと言われても、誰も信用しないだろうと言う格好だ。


「お?誰だ?」


「遅かったやん。何してたんよ?」


「何をするのか聴いていなかったので、少し準備に手間取ってました」


「なぁ、そいつ誰なんだ?」


「そか。ほな、行くか」


「はい」


「ちょい、俺は無視かよ」


エリオスが色々言っているが、リョーガイヤーには全く入っていないようだ。


立ち上がったリョーガはユースと共に依頼を選んでさっさとギルドから出て行ってしまった。

なぜか、エリオスは彼等に付いていく。



〜〜〜



街を出れば、すぐそこは草原。案外何もないわけではなく、大きな岩があったり、木がポツンと生えていたり、花畑があったり、魔物が集団でフラフラしてるぐらいにはある。


来る時には居なかった兵士の塊も目の端に映る。


暫く歩き続け、人気のない場所で立ち止まってからリョーガは話しだす。


「ほな、ユース。今回はスライム…は、止めて、この付いて来とるアホと戦え」


そう言って人差し指でエリオスを指差す。


「あ?俺とこの坊主が戦うのか?ハッ、坊主、悪い事は言わねぇ。やめとけ。坊主が俺に勝てるわけないだろ」


エリオスは鼻で笑って隣のユースの頭をポンポンと叩く。

それが嫌だったのか、ユースはエリオスから一歩分の距離を取った。


「アホは黙っとけ」


リョーガの厳しい目がエリオスに突き刺さる。


「スライムじゃダメなんですか?」


「アカン。そのアホと戦え。んでから、勝て」


「………」


チラッと横目でエリオスの顔を確認する。アホと罵られている割には、知的そうな顔をしており、体型はユースの何倍も良く、背中の武器は何があったのか、半ばからひん曲がっている。


「はよやれや」


尖った言葉で言ってから、タバコを取り出して吸い始める。リョーガの瞳からは、グチグチと言ってんとさっさとやれ。と言う意図が込められている。


「はぁ…」


ため息一つ、エリオスから十歩分の距離を取って、短剣を鞘から抜いて構える。


「容赦ねぇな…」


リョーガを横目に見ながら呟き、背中の槍を捨てて構えを取る。

武器はない為、魔法だけで挑むつもりだ。


「それじゃあ、いつでも来な。相手してやる」


エリオスはユースを甘く見ている。それも当然だ。丸腰ではないが、武器は短剣一本。それに、子供にしか見えない顔に、小さな体付き。これまで戦い続けていたSランクのエリオスにしてみれば、小さな子供がオモチャの木剣を持っているのと変わらない。


だから、彼は見誤った。


「行きますっ!」


そう言うや否や、ユースの姿が消えた。いや、エリオスからすればそう見えた。


次に気が付いた時には、すぐ目の前まで短剣の刃が迫っていた。


「うおっ!?」


咄嗟に右へと避ける。が、ユースは容赦なく攻撃を仕掛ける。一発一発に力は篭っていないが、洗練された暗殺者のような鋭さを持ち、幾ら短剣が安物でも、その剣筋はとても滑らかで、凶悪だ。


何度かギリギリでユースの攻撃を避けてから、隙を見てバックステップの要領でユースから距離を取る。

それでも、追ってくるユースからは逃れられず、攻撃を仕掛け始める。


「『エアーシュートッ』」


右手に魔法陣が現れ、そこから風の塊を放つ。。が、それは素早い動きをするユースには全く意味がなく容易く避けられ、猛獣のように瞳をギラつかせて襲い掛かってくる。初めて見た彼と全くの別人にしか見えない。


「くそぉっ!『エアーシュート』『エアースラッシュ』『ストームボム』!!」


半端ヤケクソ気味に追撃を恐れて下級魔法を連発し、最後に自爆覚悟で中級魔法を放つ。

が、全て避けられ、全く当たらない。最後の魔法なんて、ユースが後方へと跳んで避けた為、エリオス自身が放ったものなのに、エリオスにしかダメージが入っていない。


「な、なんて奴だよ…」


ユースの攻撃は一発も喰らっていないのに、ボロボロになってしまったエリオスは目の前の少年に目を向けながら呟く。


またもや攻撃の体制に移ったユースが目に入り、慌てて言葉を口にする。


「ま、待てっ!こ、降参だ!」


武器が無ければ勝てない。そう心の中で呟く。だが、内心では、武器があっても勝てるかどうか分からない。と考えてしまう。


エリオスが降参した事に嬉しそうな無邪気な笑みを浮かべてユースは武器を仕舞った。


「やっぱり、腕が鈍ったな…」


エリオスは自分の両手を見つめて呟く。もう何年も戦ってなく、ずっと呑んだくれていた代償だ。そう感じる。


チラッと視線をユースの方へと向けると、彼は既にリョーガの元へと行っている。


「リョーガさん、勝てましたよ」


「ん?ああ、ほな、スライムでも狩ってこい」


地面に仰向けで寝転んでタバコを吸いながら日光浴を楽しむリョーガは、ユースの報告を聞いてから、適当に次の指示を出している。


「だけど、俺、一応Sランクなんだよなぁ…」


自分がSランクで、腕が劣ったとしてもAランク程はある。なのに、負けた。

全力で戦ったのに、圧倒的力と圧倒的的魔法によって悪ガキのようなリョーガに負けた。

武器がなかったと言うハンデがあったとしても、自分より経験が薄そうな少年に負けた。


悔しい。そう感じるが、それよりも、強く心に思った。あいつらと居れば、俺ももっと強くなれるんじゃないか、と。もうあんな失態を起こさないで済むのではないか、と強く思った。


臭い煙を口から吐くリョーガの元に歩み寄り、すぐ側に座り込んで口を開く。


「…お前さん、リョーガって言ったか?」


「せやけど、なんや?」


「その…なんだ…お、お前さんの目的はなんだ?」


頼もうとした。が、別の事が口から出た。思った事がちゃんと口から出てくれなったのだ。

彼は諦めずに話を続けて、話題を持って行こうする。


だが、リョーガの返答は素っ気ないものだった。


「特にあらへん」


リョーガの返答に苦笑いになってしまう。それでも、彼は諦めずに話題を続けようと奮闘する。


「そ、そうなのか……なら、これからどうするつもりだ?」


「あんまし考えてあらへん。とりま、のんびり旅でもするつもりや」


リョーガの返答に「そうか…」としか返せず、会話が終了してしまった。なんとか話題を持って行こうとしたいたのに、それは無理みたいだ。

だから、意を決して言葉を口にしようとする。


「な、なぁ…」


「なんやねん鬱陶しいな。俺、寝ようとしてんの分からへんのか?」


明らかに不機嫌な表情でタバコを地面で揉み消し、エリオスに睨みを利かせて言い放った。

それに対して、エリオスは素直に謝罪を口にする。


「すまん。いや、そうじゃなくてだな!俺をお前さん…リョーガのパーティーに加えてくれっ!」


勢いに任せて寝転ぶリョーガに頭を下げて頼み込む。

ようやく言いたい事が言えたので、若干表情がスッキリとしている。が、リョーガの返答は彼の表情を困惑に変えるものだった。


「……知らん。ユースに言えや」


「…リ、リョーガがパーティーリーダーじゃないのか?」


「パーティーとか言われても俺には分からんから言っとんねん」


「そ、そうか…分かった……」


不機嫌なリョーガの目付きは、いつも以上に鋭く、凄みがある。

エリオスは、なんとも言えない表情をしながら、遠くでスライムを蹴散らすユースの元へと歩いていく事になった。


ユースにパーティーの事を訪ねる為、どうやって話し掛けるか、と考えてユースの方へと向かうエリオス。


「どうしたんですか?」


だが、その必要はなく、ユースから先に話し掛けてくれた。

まだユースとの距離は五メートル程あり、ユース本人はエリオスに背を向けているのに、彼の存在に気が付いていたみたいだ。


「いや、その、な…」


ユースから話し掛けてくれたから、先に話題を振らずに済んだが、どうやってパーティーの事を言い出すか迷ってしまう。


「またリョーガさんが何かしでかしたんですか?」


エリオスが迷っているのを感じて、振り返って尋ねてくるユース。彼の見た目は完全に子供で、どこからどう見ても非力な少年にしか見えない。


「いや、そうじゃないんだ………」


僅かな時間を掛けて、意を決する。


「その、だな。リョーガにな、パーティーに入れてくれって頼んだが…」


「ああ、成る程。そうなんですか」


エリオスの言葉の続きを察したユースは、近くから忍び寄っていたスライムを片手間に切り倒し、言葉を続ける。


「リョーガさんにそういう話は無理なんですよ。人の話、全然聞きませんので」


何か思い当たる節があるのか、苦笑いを浮かべながら遠い目をして、すぐに視線を戻す。


「一応、言っておきますが、僕達、パーティー申請してないですよ。ただ、一緒に居るだけです」


「……へ?」


二人だとしてもパーティーは作成可能だ。そして、申請はとても簡単で、冒険者ギルドで申請用紙に記入するだけだ。

だから、既にパーティーを作っているものだと思っていたエリオスは意図せず口から変な声が漏れてしまった。


「冒険者なのにオカシイですよね。ですけど、僕達はそんな関係です。リョーガさんが僕の分まで依頼を取ってきて、それを別々にこなす。そんなパーティーとは言えない関係ですよ」


ユースの言う通り、冒険者として変な話だ。パーティーでならば身の安全や依頼の達成率がぐんっと上昇するし、依頼も数段上のものを取る事ができるし、特別な依頼や、別途の報酬を受け取る事も出来たりする。例え二人と言えど、パーティーを作っても損はない筈なのだ。


「マジかよ…」


「マジです」


ユースの顔は嘘を言っている表情ではない。それに、リョーガよりも話の通じる人間なのだ。彼しか信じれる人がいない。

そんな彼が言うのだ。信じるしかないだろう。


「作ったりはしないのか?」


「それは、リョーガさん次第ですね。たぶん、面倒くさい。とか言ってしないと思いますけどね」


あはは、と苦笑いを浮かべて少し離れた所で寝ているリョーガへと視線を向ける。

吊られてエリオスも視線を向け、ユースと同じように困ったような苦笑いを浮かべた。


「取り敢えず、あとスライム八十六体。倒すの手伝って貰えますか?」


「はっ!?八十六ぅ!?」


驚愕に値する討伐数だ。例え、雑魚中の雑魚であるスライムと言えど、その数を相手するのには骨が折れる。

だが、ユースは何ともなさそうに言うのだ。


「はい。いつもリョーガさんから言われるのは、一〇〇体で、先程、一四体倒した所なので、後八十六体です。どこか間違えてますか?」


エリオスの開いた口が塞がらない。明らかに次元が違ったのだ。

普通の冒険者ならば、一日に最大で倒すとしても、二〇が限界だ。それ以上は疲労や時間の問題で困難である。

だが、それをユースは短時間で終わらせているのだ。なにせ、一〇〇体もの相手をしているのだから。


これまでユースがどんな魔物を相手にしていたかなどエリオスには想像がつかないが、まだ子供にしか見えないユースに負けた理由の一つを知る事ができた。


「い、いや、合ってる…」


言葉の最後に小さく「マジかよ」と呟き、討伐を手伝う事を伝える。


その後、彼等が討伐を終えたのは昼前で、ユースはいつもの事なので元気そうだが、エリオスはと言うと、ヘトヘトになって地面に寝転がっていた。


ちなみに、リョーガはユースが完了の報告をするまで熟睡していた。

エリオス「リョーガにしても、ユースにしても、なんでそんなに強いんだ?」

リョーガ「知らん」

ユース「リョーガさんの友達曰く、リョーガさんと一緒に居れば、強くなるそうですよ」

エリオス「そんな美味い話、あるわけ…いや、リョーガのあのスパルタを見てると有り得る…」

リョーガ「強くなりたいんやったら、俺が鍛えたる。文句言ったら、どこぞの巣にでも放り込むけどな」

ユース「リョーガさん、ホントにやるんですよ。僕なんて、何回魔物の巣に放り込まれたか…」

エリオス「お、お前、良く生きて帰ったな…」

ユース「必死でしたからね」

リョーガ「死ぬ気でやりゃ何でもできんねん。諦めんなや」

ユース「ですね」

エリオス「………」

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