動き出す歯車
書き終えて、いざっ投稿しよう!と言う時、データが吹っ飛びました…。
綺麗さっぱり、なくなっちゃいました…
メモしていた事まで消えちゃいましたトホホ…
リョーガ達が向かう目的地は、オーラルカの街だ。ラ・ドルミィから二週間歩けば辿り着く場所にある。
そうリョーガは対面に座るユースに説明を入れた。
夜も更け、焚き火が彼等の顔を照らす。ギルドで予め調べておいた事を説明し終えたリョーガは、焚き火に拾い集めていた木の枝を焚べながらユースは新たに湧いた質問を投げかける。
「どうして、そんな所へ行こうと思ったんですか?」
ユースがそんな所。と言うには訳がある。
オーラルカの街は王都であり、国王住む城がある所なのだ。その為、治安も安定しており、街の外に出ても危険は少ない。
力のあるリョーガが今更、安全地帯に行きたい。などとは思えないのだ。
「ユウシャってのが、召喚されたんやて。それを見に行くねん」
「ユウシャ?御伽噺に出てくる勇者の事ですか?」
「たぶん、それやと思う」
「そうですか…」
ユースが小さい年頃の時に母親から寝かしつける時に聞かされた話を思い出す。それは、勇者が魔王を討伐し、この世界に平和をもたらした話だ。
実際に今でも魔王はいる。新たに生まれたのだ。だが、その魔王は今の所、人間に危害を加えたりなど一度もしていない。そんな話すら聞こえてこない。
なのに、なぜ勇者を召喚したのか。そうユースの頭に疑問が浮かぶ。だが、それ以前に、もう一つの疑問があった。
「勇者って召喚されたんですか?」
冒険者ギルドでも、街中でも、そんな話は聞いた事がない。噂すらないのだ。なのに、リョーガは知っていた。
もし、それが本当ならば、王国内で秘密にされている筈だ。その情報を手に入れている時点で驚きに値する。だが、本当だとは決まったわけではない。
「みたいやで」
リョーガは、なんでもないかのように言って焚き火に木の枝を焚べ続けている。この勢いだと、一時間も続ければ無くなってしまいそうだ。火も勢いを増している。
「本当なんですか?」
「あいつが言ってたし、そうなんやろ」
リョーガの言う”あいつ”とは、誰を指すのかユースには分からない。だけど、それなりに信頼を置いている事が知る事ができた。
それ以上の話しはしない。とばかりにリョーガは背中を向けて寝転んだ。
妙に勢いが強い焚き火を眺め始める。そして、ある事に気が付いた。
「リョーガさん?」
「………」
リョーガに呼び掛けたが、返答は帰ってこない。若干の焦りを覚え、リョーガの対面に回って顔を確認すると。
「寝てる……」
瞳を瞑り、小さな寝息を立てながら寝ていた。その寝顔からはいつもの荒々しさは感じられず、優しさを感じる。
もし、起こしてしまえば憤怒の化身と化したリョーガが舞い戻るだろう。
「はぁ…今日も僕が見張り役ですか…」
諦念を露わに呟いて元いた場所に戻る。
実は、昨日もユースが見張りをさせられていたのだ。その間に魔物と戦い、リョーガが無駄に消費した木の枝を拾い集めたりして大変だったのだ。
なのに、今日もアッサリと押し付けられた。
「明日こそは、リョーガさんがしてくださいよね…」
背中を向けて寝ているリョーガへと恨みがましく言葉を吐く。それが彼に届いているかは別として。
ーーー
陽の光すら入ってこない鬱蒼とした深い森の中。小鳥達のさえずりは聴こえず、代わりに魔物達の声が至る所から聞こえてくる。
湿った地面は沼地や、木々の太い根が張り巡らされてとても歩き難い。なのに、彼は悠々と木の根を足場に歩いている。
作業着は着替えられ、黒に赤いラインが入ったものを着た彼は、髪留めと化していたゴーグルで両目を覆い、薄暗い森の中を歩いている。
行けども行けども、森は続く。まるで、同じ場所ばかりを歩かされているような気持ちに陥る。そんな場所を歩き続けていれば、一つでも愚痴を吐きたいものだ。
「長いなぁ〜」
だが、彼の口から出たのは、愚痴ではなく感想だった。
例え、彼の身体の半分以上が人間でなくとも、気持ちは、心は人間の持つそれである。彼とて寂しいと思うのだ。
別に彼に仲間が居なかった訳ではない。彼が”作り出した”仲間が居たのだ。だが、仲間達は己の”意思”を持って旅立ってしまった。
それに、仲間達は誰もが人間ではなかった。
だから、彼はーーユートは人を求めている。こう見えてユートは寂しがり屋なのだ。
仲間達が居た時は、まだマシだったが、今は寂しくて三角座りして塞ぎ込みたい気持ちだってある。
だが、彼は休む事なく歩き続けている。一重に、人と出会う為だ。
偶然鉢合わせた魔物を倒しながら、寂しさを紛らわす為にポケットからタバコを取り出して吸い始める。
このタバコは彼のスキル【ガレージ】で手に入れたものだ。
紫煙を置き去りに、まるで向かう先が決まっているかのように一方向へと向かい、歩き続ける。
ーーー
薄暗く静かな部屋の中。そこはまるで執務室のような所だ。
そこで椅子に座り、何やら難しそうな顔をして机の上に置かれた書類を処理する少女がいる。
コンコンコン
静寂を破るノック音が部屋の中に小さく響く。途端、慌ただしく動き始める少女。
「す…少し待て」
可愛らしく少女らしい声が出て、しまった!と言った表情を浮かべ、近くに置かれている黒い箱を口元に当てて低い声で最後まで言い切った。
そして、バタバタと部屋中を走り回り、人に会う為の準備を始めた。
「入って良いぞ」
扉の外に居る人に向かって低く重圧感のある声で入室の許可を出した。
「失礼します」
部屋に入ってきたのは薄黒い鎧を着た者だ。以前見た黒騎士にとても良く似ている。
「魔王様、ご報告があります」
「話せ」
魔王と呼ばれた少女ーー今は身長三メートル程の巨大なマントを羽織った者に話し掛ける。
薄暗い部屋と彼女から発せられる黒い瘴気の所為で、顔はハッキリとしない。
「はっ…恥ずかしながら、我ら黒騎士部隊の隊長が行方不明になりました」
ビシッと胸に手を当てて敬礼をしてから、身内の恥を隠さずに話した。それを聞いた魔王は、やれやれと肩を竦めて言う。
「またか…」
過去に何度も同じような事例はあった。
それは、彼らの部隊の隊長が重度な方向音痴だからだ。任務に就かせると、必ずと言っていい程に一人逸れてしまう。
魔王部隊の中の上辺りだが、戦闘に優れ、なおかつ隠密も得意な黒騎士部隊。彼等に名前はない。
その中で一番強力であった黒騎士部隊隊長。その強さは彼だけで上位に食い込む程だ。なのに、方向音痴なのだ。
「すぐに探し出せ。そして、勇者を殺せ。手段は問わん」
「はっ!」
魔王の命令に敬礼してから出て行く黒騎士。彼等も隊長が面倒ばかり起こすから大変だろう。本当なら、勇者を殺すだけの任務に、彼等の隊長を探し出すと言った任務が新たに食い込んだのだから。
「はぁ…」
黒い箱を机に置き、溜息を吐く。先程までの低い声の主とは思えぬ程に少女らしく可愛らしい声が漏れた。
「父上の代わりとは言え、大変だな…」
少女には似ても似つかない言葉を呟き、机の書類に一つ一つ目を通し始めた。
ーーー
彼の名前はネモ。ユートに作られた人造人間だ。
銀色の髪を持ち、片目部分だけ空いた真っ白の仮面を付け、ユートと同じ作業着を身に付けている。
「………」
彼は仲間達や彼を作り出した主人よりも早く街に辿り着く事が出来た。そんな彼は街の路地で、目の前の一〇歳ぐらいの黒い首輪を着けた男の子を見つめている。男の子は、とても痩せ細っており、切り傷やアザなどの暴行を受けた痕が目立ち、今にも死にそうな状態だ。
ネモの表情は仮面に隠れて分からない。瞳も無機質なもので、何を考えているのかも分からない。じっと少年の姿を見つめ続けている。
ネモの姿に気が付いた男の子。薄っすらと開かれた瞳をネモに向け、地面へと落とした。
男の子から生きる気力は感じられない。生きる事を諦めているようだ。
日の当たる場所を歩く人々は男の子を見ても、顔を顰めるだけで素通りして行く。
それを横目にネモは、男の子の手を優しく拾い上げた。
男の子の手からは、まだ生きていると、強く訴えかけるかのように温かい。だけど、残された命は僅かだと諦めかけているかのように弱々しく脈動している。
肝心の男の子はネモに手を優しく握られても一切反応しなくなっている。
ネモの無機質な瞳に一瞬だけ悲しみが映された。それに気が付く者は何処にもいない。
男の子を優しく抱えて路地から出て、日の当たる大通りへと向かう。
人々の奇妙な人を見る視線がネモに突き刺さるが、彼は全く気にせずに大通りを堂々と歩く。
「いらっ……」
この街の数少ない診療所に足を運んだネモ。店員だと思われる人が入ってきたネモに声を発したが、それは彼の抱える男の子の姿を見て詰まらせた。
「ど、どうなされましたか?」
「………」
店員は引き攣った愛想笑いを浮かべながらネモに尋ねた。だが、彼は何も喋らず、視線を男の子に向けてから、店員へと向けた。
それだけで、店員はネモが何をして欲しいのか察する事が出来た。が、店員は自分で判断を下せず「少々お待ち下さい」と言葉を残して奥へと向かっていった。
診療所の人達にも奇異の目を向けられるネモ。それでも、彼は何も気にせず、何も喋らず、壁際で直立して店員が戻ってくるのを待つ。
数分待ち、戻ってきた店員。
「申し訳ございません。こちらでは”奴隷”の治療は請け負っていません。どうぞお引き取り下さい」
発せられた言葉は治療をしないと言う無慈悲な言葉だった。
ネモは視線を男の子に向ける。もう虫の息だ。いつ死んでもおかしくない程に弱り切っている。
「………」
ネモは何も言わず、店員の側を横切る。
「ちょっ!どこに行くんですかっ!そこから先は行かないで下さい!」
先程、店員が向かって行った方向だ。その為、店員は焦りを浮かべながらネモを止めようと試みる。だが、押しても引いてもネモはビクともしない。ゆっくりと進む車を止めようとするようなものだ。
バンッと開かれる扉。そこには医者のような白衣を着た人と患者が居た。
二人は突然入ってきたネモに驚きを隠せず、医者は道具を手に顔だけをネモに向けて固まり、患者は口を半開きにさせて驚きを露わにした。
「ど、どう言う事だ!今は診察中だぞ!」
我に返った医者は乱入者に怒号を上げる。
よく見ると、ネモの背後には申し訳なさそうな店員の姿もある。汗を垂らしていることから、かなり必死に引きとめようとしたのだろう。
ネモは何も答えずにズイッと腕に抱えた男の子を突き出す。医者は男の子にチラッと視線を向けてから、首にある物に視線が行き、ネモの瞳を見て言う。
「ダメだ。ここは奴隷の治療は受けない。他の所へ行くべきだ」
「………」
医師に拒絶された。だが、ネモは何も言わずに診察台に男の子を優しく寝かせた。
「ダメだと言っているだろ!帰ってくれ!」
医師の声も無視して戸棚や引き出しなどを漁り始めるネモ。
「止めるんだ!兵士を呼ぶぞ!」
その言葉でネモの動きは止まった。引き出しから手を離し、医師の方へと向く。そして、ポケットへと手を突っ込んだ。
凶器を取り出すのではないか。と考えて身構える医師達。だが、ネモが取り出したのは全くの別物であった。
どこにでもあるような財布代わりに使われる皮袋だ。中には何かが沢山詰まっているのか、ゴツゴツとした物が袋の外からでも伺える。
皮袋の口紐を緩め、裏返す。そして、中から零れ落ちたのは、宝石の数々。
大きいものもあれば、小さいものもある。その全ては綺麗な輝きを放っており、この場に居る者全員に、高価な物だと知らしめた。
「………」
ネモは依然として喋らない。だが、瞳が語っている。欲しければ治療しろ、と。
医師達は床に落ちた宝石に視線を向けてから、ネモの瞳に気が付く。ゴクリと誰かが唾を呑んだ。
顔を見合わせる医師と店員。彼等の表情には戸惑いが含まれている。
「わ、分かった。そこまでして欲しいのなら、やってやらなくはない…」
ネモに向かって言う医師。視線はずっと床に落ちた宝石へと向けられている。
「だが、ここではダメだ。他の場所でならしてやらなくはない…」
「………」
視線をネモに向けて言った医師。だが、ネモは首を横に振って提案を拒否した。
今やれ。そう言わんばかりの瞳を浮かべ、医療用の道具を医師に突き付ける。
「うぅむ…分かった。タイト、患者を全員帰らせてくれ。今日の診察は終わりだ」
「わ、分かりました」
タイトと呼ばれた店員は、部屋の中に居た患者を連れて部屋から出て行く。それを横目に医師は言う。
「本当なら奴隷は決まった治療所でしか受けれないが、今回は特別だ。だから、次からは来ないようにしてくれ」
そうネモに言い聞かせてから男の子の治療を始めた。
ネモは、医師の側で何を考えているか分からない瞳を浮かべながらジッと佇み、見つめていた。
リョーガ「なぁ、ユート」
ユート「?どないしたん?」
リョーガ「俺だけ話雑じゃね?」
ユート「いや、作者さんが、必死こいて書いてあの出来やねん」
リョーガ「作者クソやな」
ユート「そんな事言うなって。あれでも頑張ってくれてるねんで。ただ、なんと言うか、うん。雑やな」
リョーガ「ホンマ、作者終わってるやんけ。頭どついたら上手くなるんちゃう?」
ユート「暴力はダメあかんで。争いがない事こそが、平和の象徴やねんから」
リョーガ「平和?なんやそれ?そんなもんクソ喰らえ」
ユート「だから、そんな事言ったらアカンって」




