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クレイジー・アクセル 【略:クレアク】  作者: 九九 零@異世界モノ大好物
第1章〜どうやら、異世界に迷い込んだらしい〜
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リョーガの友人

王国にある王城。その謁見の間。

真っ赤な絨毯が敷かれ、壁には赤を基調としたドラゴンと剣の旗が掲げられている。


「よくぞ参った勇者達よ」


玉座に座る男性が階段下で跪く異界の服装をした五人の若者へと言葉を発する。


「娘から話は聴いていると思うが、私からもお願いしよう。どうか、この世界を救ってもらいたい」


椅子に座りながら頭を下げる男性ーー王。

それに対し、若者の内の一人が歩み出て考えていた事を口にする。


「確かに、話は聴かせてもらいました。ですが、僕達はこの世界に来たばかりで、まだ状況を呑み込めていません。少し猶予を貰えないでしょうか?」


「うむ。それも当然の事だ。明日…は早急すぎるか…一週間やろう。その内に考えを纏めて貰いたい」


「はい。ありがとうございます」


「部屋を用意した。案内を寄越すから暫し待て」


言い終えると、王と側近の二人はこの場から退出した。

残された勇者と呼ばれた五人は、後から来た兵士達に案内されるがまま、この部屋を出て行った。



ーーー



「シュルルルッ」


彼の目の前には紫色の肌を持った一匹の蛇が居る。その蛇は、ただの蛇でない事は見ただけで分かる。紫色と言う時点で確実に毒ヘビだ。だが、そこではない。その蛇が部屋を埋め尽くす程に巨大だと言う点だ。

なのに、彼は臆する事はせずに拳を構える。


「さっ、やろっか」


言葉が通じないと分かりきっているのに、彼は軽い口調で話しかける。

そして、戦闘が始まった。


蛇が彼に向かって牙を向けて噛み付こうと大口を開ける。それに対し、彼はその場から動こうとせず、右手を前へと突き出す。


「ブラスト」


彼の口から呟かれた言葉に応じ、右の(てのひら)に丸い穴が空いた。そして、そこに赤い光の粒子が溜まり始めた。だが、遅い。

そんな事をしている間に蛇は牙から毒液を撒き散らせながら素早い動きで彼に迫る。


そして、上から覆い被さるよう彼の体を大口に収めた瞬間、それは呟かれた。


「ファイア」


一筋の真っ赤な光線が蛇の後頭部から飛び出し、部屋の壁を貫いた。

後頭部に自らの口よりも大きな穴を開けられた蛇は、大口を開けたまま横へと倒れた。そして、地面に溶けるように消えて行った。


蛇が居た場所に残ったのは、人の腕程の牙と鱗と野球ボールほどの紫色の石であった。


「まだまだ改良が必要やなぁ〜」


彼は自分の腕を見つめて呟く。そこにあるのは、普通の人間の腕。だが、中身は全く異なる。


「『ガレージ』」


そう呟くと、彼のすぐ目の前にこの世界に存在しない筈のシャッターが現れた。

彼が何もしていないのにシャッターは勝手にガラガラと開き始め、中から機械でできた犬のようなモノが出てきて、蛇が落としたドロップ品を咥えて中へと戻って行った。


「まだや。まだ足りへん」


シャッターが勝手に閉まり、下から薄れながら消えて行くのを横目に、彼は進む。


彼が足を動かす度にカチャカチャと金属が擦れる音が鳴り、腕を動かす度にカリカリと機械が動く音が鳴る。


ダボダボの黒に赤のラインが入った作業着(ツナギ)を着た彼の名は”ユート”。

あの時、落とし穴に自らの落ちた一人ぼっちの冒険者である。



ーーー



ここは荒野。誰かさんが大暴れして人為的に作り出された荒地だ。そこに二人の人影がある。


「ゴブリンぐらいなら倒せるようになったやん」


リョーガとユースだ。紫煙を辿るように視線を向けるリョーガが何があったのかと問いたいほどにボロボロになったユースに言った。


「ですけど、まだ…」


この状態です。と服装を見せて体現する。だが、服がボロボロなだけで、彼の身には擦り傷しか残っていない。

それは、彼がゴブリンの攻撃を紙一重ならぬ、布一重で避け続けたからだ。

彼の反射神経には眼を見張るものがある。


「けど、倒せるようになったやんけ」


あくまで一対一での話だが、ユースはゴブリンを倒す事ができた。

かなりの苦戦を強いられたが、倒せたのだ。


「これからも戦え。んでから、強くなれ」


「は、はい…」


それは遠回しに、これからもボロボロになるまで戦い続けろ。と言っているのだ。

そんな事を言われたユースは空元気すら出てこない。


「あっ、それとな、今日のノルマは後四体やで」


「………へ?」


リョーガの口から初めて聞いた今日のノルマ。時刻は未だに昼過ぎ。されど昼過ぎだ。

朝から昼まで頑張ってようやく一体を倒せたのに、後四体も残っているのだ。


「む、無理ですよ!そんなのむーー」


「無茶ちゃうからな」


ユースの言葉に被せて言ったリョーガ。ついでにギロリと睨むのも忘れない。


「やったら出来んねん。やらな何も出来へん。当たり前やぞ。それに、あのバカは普通にこれぐらいやってたぞ」


「リョーガさんの友人ですか…」


化物じみた力の持ち主であるリョーガが認めた友人と比べられるのもおかしい話だが、確かにユートは弱かった。

どうして、その弱さで魔物を倒せるのか。と疑問を持てるほどに弱かった。


だが、ユースはそんな事を知らない。


「リョーガさんと同じぐらい強かったんでしょうね」


拗ねたように口を尖らせて言った。それがリョーガの癪に触った。


「あ”ぁ?ユートはな、お前よりメッチャ弱かったんやぞ?ステータスの力とかたったの1表示のゴミカスやってんぞ。それやのに、あいつはゴブリンを一人で五体以上倒してんぞ」


居ない事を良い事にかなり酷い言われようのユートだが、彼のステータスを知っていれば誰も否定はできないだろう。


「そんなの、ありえないですよ…」


「初めから無理って決めつけんのがオカシイねん。あいつはな、無理って言う割にはやってたぞ。力も、何もかもが最底辺やったけどな、あいつ、夜とかメッチャ頑張っててんぞ」


実は、リョーガはユートが夜の仕事をしていたのを知っていた。コッソリと付いて行った事があったのだ。

昼間の報酬は明らかにリョーガの方が上だった。なのに、ユートはいつも自分と同じ額を持ち歩いていた。だから、気になって付いて行った。そして、見たのは汗水垂らして働くユートの姿だった。


力がなく、体力もない。ステータスは余り活用できない場所だけ無駄に高く、絶望的だった。

なのに、ユートはヘラヘラと笑いながら気にしてなさそうに振舞っていた。


「リョーガさん…どうして泣いているんですか…」


「泣いてる?は、はははっ、バカが。俺様が泣くわけないやんけ」


そう言ってから後ろを向き、目元をグシグシと袖で拭いてから空を見上げる。

これ以上涙の溢れないように憂い顔で空を流れる雲を一つ、二つ、三つと数える。


思い返さないようにしていても、ユートのヘラヘラと笑う顔がリョーガの頭に浮かんでくる。

その度に、リョーガは助けれなかった事を悔しく思い、ユートが度々出てくる事を恨めしく思う。


ユートは全く悪くない。なのに、彼が頭に浮かび上がる度に怒りが沸々と込み上げる。

謂れのない怒りを向けられているユートが可哀想だ。


「リョーガさん…」


「一つ、お前はあいつより強いんやからゴブリンぐらい簡単に倒せるはずやねん。

二つ、俺を信じろ。俺こそが神や。

三つ、俺の言う事は絶対や。否定したら乳首捻り取ったるからな」


ユースの心配そうな声を遮り、命令口調で言う。ただし、空を見上げながらだ。



〜〜〜



冒険者ギルドに戻ってきたリョーガとユース。今の時刻は夕方だ。その為、ギルドの中は人でごった返し状態である。


それを煩わしく思ったリョーガは、机席で呑んで騒いでいる冒険者の一団の一つを力技で退かせ、二人で悠々と人が減るのを待っている。


そんな彼等にこんな噂話が聞こえてきた。


「風化の迷宮(ダンジョン)って知ってるか?」


「そりゃ、知ってるさ。なにせ、まだ誰も攻略できてない迷宮なんだからな。で、話はこれで終わりじゃないんだろ?」


「ああ。噂で聞いたんだがな、その迷宮から一筋の光が飛び出して空を貫いたんだってよ」


「ハハハッ、そんなの、噂じゃなくて嘘だろ。そんな話をまともに信じる訳ないだろ」


「けどよ、それを見たって奴が妙に多いんだよ。真っ赤な光が迷宮に大穴を開けたってな」


「そんなの、全員が口裏を合わせてるだけだろ?」


「例えそうだとして、お前なら何の利益にもならない事をするか?」


「いや、しないな…」


「だろ?で、俺は考えたんだ。確かあの迷宮は五〇層で探索が止まってたよな?」


「ああ、トップクランの一つ、”黄金の果実”が到達出来た場所だったな」


「そうだ。で、だ。もしかすると、その下、ずっと下まで攻略してる奴がいるんじゃねぇかって、考えたんだ」


「んな訳ないだろ。現実的に考えてみろ。あのクランが五〇層で諦めた場所だ。それ以上行ける奴なんてこの世界どこを探してもいないだろ」


「だよなぁ〜。もしかしてって思ったけど、やっぱり無理だよなぁ〜」


「ああ、無理だ。俺達でさえ五層を抜けるだけで精一杯なのによ」


「だな。じゃあ、噂の光は何だったんだろうな?」


「さぁな」


話はここで途切れた。

リョーガ達にとって全く興味の湧かない話だったが、丁度いい暇潰しにはなる。


「ユース、さっきの話聞いてた?」


「はい。人の話を盗み聞きすると罪悪感がありますね」


「そんな事はどうでもいいねん。それよりさ、その光ってのなんやと思う?」


「なんでしょうか?神の悪戯ですかね?」


「それこそありえへんやろ。俺様こそが神やねんから」


「………あっ、店員さん!紅茶のお代わりください」


「無視すんなや!」


人が減るのを待ちながら、そんなどうでも良い話をするリョーガとユースであった。



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