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カリロボ  作者: 広瀬ジョージ
エリア2編
80/95

26.早朝にて

 樹が元の身体を手に入れた時。


 山下は昨晩セットしておいたアラームで目を覚ました。

 時刻は午前4時半。

 まだ辺りは暗く、観光するにはまだ早すぎる時間だが、ここから少し離れた撮影現場に向かうのならば今起きねばならない。


 柱に寄りかかるおかしな態勢で寝ていた山下は、伸びをしたり体を捻ったりして体調を整えた。

 その間にどう桜を起こそうかいくらか考える。


 桜の布団に目をやると、布団の中で腕を伸ばしているような歪な形になっていた。

 山下同様、アラームで目を覚ましたらしい。


「姫乃。」

 布団の動きが止まり、伸ばしていた腕が引っ込んだ。


 なぜ部屋に山下がいるのか疑問に思っているのだろう。

 山下は安否確認と釈明を兼ねて近づきながら喋った。


「大丈夫か?昨日風呂で倒れたの覚えてるか?」

「誰……?!」


 誰ってあるか。


 山下はそこでハタと気づく、明かりがついてないから見えないのだと。

 まだ日も登り切っていない時間帯である。

 部屋に差し込む明かりもない。


 山下の目は暗視ゴーグルのように暗闇でも機能するが、桜はそうではない。

 とはいえ、部屋に入りそうな人ぐらい検討がつきそうなものだが、桜は病み上がりだ。

 まだ本調子ではないのかもしれない。


「電気付けるぞ?」

 山下はテーブルの上のリモコンで照明を操作した。


 LEDのライトにじわじわと明かりが灯る。

 桜は布団から顔出して眩しそうに顔を顰めていた。


「おーい。大丈夫か?」

 呼びかけながら覗き込むと、桜の目が見開かれた。

 藍色の瞳にくっきりと怯えの色が浮かんだ。


 桜は跳ね起きると山下と距離を取るように部屋の隅まで飛んでいった。

「姫乃……?」

「……」

 桜は答えない。


 山下は桜の視線が彼女の胸元に注がれていることに気がついた。

 浴衣は寝ていた時に着崩れたようで、胸元まではだけている。


「言っとくけど何もしてないぞ」

 じっと見ていては説得力にかけるので山下はすぐに目をそらした。


「ぶれいもの……」


 山下は空耳だと思い返事をしなかった。

 桜は襟元をギュッとたぐり寄せて、今度こそハッキリと山下に向けて言った。


「無礼者!!!この変態メガネが!」

「……?!」


 山下はこの物言いにまず驚き、それから怒りをあらわにした。


「無礼者?こっちの台詞だ。確かに無許可で部屋に入ってたのは悪かったが、お前が帰るなって言ったんだ。それに何もしていない」

「そんなこと誰がわかる?!」


 確かにそう言われてしまうと証明することは難しい。


「お前、声がデカい。もう少し静かに話せ」

「ほう?声を出されると困るとな?やはりヤマシイことがあったのではないか!」


 先程から桜の言葉は妙に時代がかっている。

 何より桜は今から大声を出そうと息を大きく吸い込んでいるところだった。


「キャーッ!!!」

 山下は瞬時に飛びかかって桜の口を覆った。

 距離を詰め、口を押さえるまで2秒とかからなかったが、桜が叫んだせいで周り部屋がざわめくのがわかった。


「何考えてんだ?!」


 桜は山下の腕を掴み引き離そうとしていた。

 非力な桜ではビクともしないが必死でもがき、形のいい薄桃色の爪が山下の腕に食い込んでいる。


 恐ろしさも感じているようで目には涙が滲みはじめていた。

 その涙に驚いて山下が飛び退くと、桜はペタリと座り込んでしまった。


 山下は桜の反応に混乱していた。

 桜は本気で山下を恐れているようで、今も小動物のように震えている。


 はじめて桜の前で鉄パイプを握りつぶした時ですら彼女は怖がったりしなかったというのに。

 普通に接してくれる事が当たり前になっていて忘れていたが、これが常人ならざる動きを目の当たりにした時の人の反応だ。


『お前怖いよ』

『ナンダヨソレ?キモ』

 よくよく思い返せばこれまでの桜の反応の方が珍しかった。


「驚かせて悪かった」

 一歩踏み出すと桜は距離を取るように後退りした。

 なのでそれ以上は近づけなかった。

 近づく代わりに敵意が無いことを示すように後ろに下がった。


「お客様?安藤さま?」

 従業員の声と戸をノックする音が聞こえた。


 桜は涙目の上、服が乱れている。

 そこに男が一人立っていたら誤解は免れないだろう。


 ここから逃げなければならない。

 しかし唯一の出入り口は従業員がいることにより塞がっている。


 窓から出よう。


 そう決断するのは早かった。

 ここは3階だし、この窓の下の中庭に降りられるだろう。

 3階から降りたなんて誰も信じない筈だし好都合だ。


 桜が部屋の隅で震えているのを見て罪悪感が込み上げてきたが、まず捕まらないことを第一に考えなければならない。


「ごめん」

 仕方がなく桜を置いて窓に向かって走った。


「大丈夫ですか?入ってもよろしいですか?」

 従業員が再び語りかけるのを背中に感じ焦りが加速する。

 窓の内鍵を回した時、後ろから軽い衝撃があり、振り返ると桜が腰のあたりにしがみついていた。


「離せよ」

「なにも命で詫びろとは言ってないっ!」

 桜はごめんの意味をそう受け取ったようだった。


「このくらいじゃ死なないの知ってるだろ?」

 その筈なのに桜は手を離そうとはしなかった。

 まるで手を離したら死んでしまうと本気で思っているような力の込め方だ。


「お主、外を向いたまま待っておれ。そこを動くんじゃないぞ!馬鹿なことを考えるな!」

 桜は念を押して手を離した。


 なにをするのかと思い彼女を目で追うと、突如彼女は浴衣の帯を解いた。

 ギョッとしたのもつかの間、それが襟を正すためだった事がわかり、山下は約束を破って見ていたことを隠すため外を向いた。


「はい!今行きます!」

 桜は部屋の外に向かって叫ぶと同時に、戸を開けに行った。

 山下は戸が開く前に襖の後ろに身を隠した。


「あぁ良かった!叫び声が聞こえたと通報がありましたから……!」

「すみませんでした。寝ぼけてたみたいで……ご迷惑おかけしました」

 桜が深々と頭を下げると従業員たちは焦ったように首を振った。


 部屋を訪ねてきた若女将と男の従業員は失礼しましたと挨拶をして去っていき、山下は肩を撫でおろした。

 桜は先程の態度とは打って変わって、現代的な言葉で丁寧に対応していた。


 訪ねてきた二人が去ると桜はすました態度で戻ってきた。


「どうじゃ!なかなか上手い対応だったろ?」

 部屋の中心まで戻ってくるとまた時代がかった口調になっていた。


「姫乃。お前その話し方どうした?」

「姫乃……?」

 桜は首を傾げた。


「安藤姫乃」

 桜は今度は顔を顰めた。

「おい、いい加減にしろよ?……王野桜」


 まさかと思い本名で呼んでみた。

 すると桜はさっきとは逆の方向に首を傾げる。


 山下は己の顔から血の気が失せるのを感じた。


「お前、俺の名前わかるか……?」

「知らぬ!名を教える前に部屋に上がりよって!婚前だぞ!なんてふしだらな!……」


 桜は自らの肩を抱いて怒り、山下は頭を抱えた。


「なんじゃ?具合でも悪いのか?」

「それはお前の方だろう……!」


 首を傾げる桜を抱きしめた。

「な、なにをする?!」

「すまなかった。気付いてやれなくて……そんなになるまで。疲れてるんだな?働き詰めだったしな……池の水の件はなんとかする。今日はゆっくり休め」


「えぇい!無礼者っ!気安く触るでない……」

 しばらく大人しくしていた桜だったが、また体を動かし始めたので手を離した。


「わかった。もうしない」

「わかればよろし……」

 桜は顔を赤くさせたまま腕を組んで仁王立ちになった。


「おい安藤……」

「安藤ではないっ!あるじの名を間違えるとはなんという不届き者!」


「主だと?」

「そ、そうじゃ……!」

 眉をひそめると桜はしどろもどろになっていた。

 仕方がなく設定に付き合うことにした。


「で、主様はなんて呼べばいいんだ?」

「わらわは帝の娘!『幸』じゃ!」

 本人曰く、幸は得意げに胸を張っている。

 一刻も早く医者にかからなければいけない。


 幸というと今回の仕事の役の名前だ。

 彼女がそこまでプレッシャーに感じていたのかと思うと気付いてやれなかったことが悔やまれる。


 取り敢えず、今日の仕事はキャンセルせざるを得ない。

 当日のキャンセルなど本来あってはならないが事情が事情だ。

 まずは事務所の所長である中津に連絡して指示を仰がねばならない。

  

 マナー違反にあたる時間帯だがやむを得ない。

 床に放りだしてあったスマホを拾い上げ、発信履歴から『所長』の文字を探した。

 すると幸が興味を惹かれたように身を寄せてきた。


「誰にかけとるんじゃ?」

「中津だ。」 

「誰じゃ?」

 案の定事務所の所長、中津慶一の事も忘れてしまっているようだ。


「お前の事務所の所長だろ」

 端末を耳元まで持っていくと幸が腕を引っ張ってきた。


「わらわにも聞かせろ!」

 山下は幸を腕であしらいながら呼び出し音を聞いた。


『おーどうした?まだ早いじゃん……』

 数コール後、眠そうな声で中津が出た。

 幸は山下が相手にしないことが分かると拗ねて布団の上で腕を組んだ。


 幸に背を向けながら山下は話し始めた。

「中津……ヤバいことになった」

『おう?!どうした?!』


 こんな時間にかけているので事の深刻さは十分すぎるほど伝わったようで、中津が携帯電話の向こうでゴソゴソと居住まいを正した。


「姫乃が……」

『どうした?!なんかあったかっ?事故か?!』

「違う。全くの健康体だ。むしろ元気すぎるというか……」


 いきなり大声を出したり、無礼者と罵ったり。

 普段とは明らかに様子が異なる。

 幸の様子をチラリと見やると頬を膨らませていた。


 電話の向こうで中津が息を呑んだ。

『健康体……?まさか母子ともにとか言い出すんじゃないだろうな?』

「違う」

『じゃなんだよ。どうした?』


 話し始める前に山下は一度深呼吸をした。


「俺も混乱してるんだ。実は姫乃が……」



『なに?誰かが乗り移っただと?』

「あぁ。どちらにしろ、いつものアイツじゃないんだ。」

 中津が携帯電話越しに唸った。


「お前の得意分野だろ?」

 回答を急ぐように畳み掛けた。


 桜にすら言っても信じてもらえなかったが、中津は霊能者である。

 なんて馬鹿げた事をと思うが、中津が選んでスカウトしてきた事務所のタレントは皆成功するので、山下はそうと信じている。


『おい、俺の本業は霊媒師じゃねえんだけど……で、今姫乃はどうなってんだ?』

 ちらりと幸を見るとなんじゃ?と言いながら睨んできた。 


「どうやらアイツ自分の事『幸』だと思っているらしい」

『幸ってあの『池の水伝説』か?』

 中津が姫乃の仕事の内容を把握していたのには驚いたが知っているなら話は早い。


「そう。まさにそれだ。話し方まで変わってるんだ。でも姫乃と全くの別人というわけではなさそうなんだ」

『というと?』

「あいつの普段の喋り方と混ざってるんだ」


 もし桜が本当に幸になっているのなら、スマホで電話がかけられることを知っている筈ない。

 それに何より『変態メガネ』と言う言葉のチョイスや訪ねて来た旅館の者に対するしゃべり方は桜そのものだ。


 受話器の向こうでため息をつき、中津はいいか?と前置きして話し始めた。


『この世に憑依なんてものは存在しない。半世紀生きてるが憑依されてる人間なんて一度も見たことない。憑依されたと思い込んでる奴は何人もいたがな』


 何人もと言う事はやっぱり本業じゃないかと山下は思ったが話の腰が折れそうなので飲み込んだ。


「じゃあ、姫乃も?」

『おそらくな。まあ、詳しい事はわからん』


「……中津。姫乃もこんな状態だ。今回の仕事はキャンセルに……」


「嫌!ダメ!」

 声をあげたのは幸だった。

 山下はまた従業員が来るのを恐れて口に指を当て睨み付けると、幸は怯んだように肩を震わせた。

 

『本人もそう言ってるし、いいんじゃないか?』

 幸の声に中津は笑い混じりに言った。


「でも、出来るのか?」

『お幸本人にお幸が出来ないわけないだろ?』

 確かにその通りだが釈然としない。

 電話から聞こえる中津の声はどこまでも楽観的だ。


 山下の懐疑的な視線を浴び幸はフンと鼻を鳴らした。

「そうじゃ!セリフなんてとうに覚えておる!」

『本人もそう言ってるし。いいだろう?』


「それはそうかもしれないが。姫乃はどうすんだ?幸のままだぞ?」


「別に支障はないじゃろ?」

 幸は上目遣いで蠱惑的な笑みを浮かべている。


「いや、ある。」

 幸はムッとした表情をした。

「生意気な!何が不服だ!」 


 山下は幸でなく携帯の中の中津に向かって話しかけた。


「わかった。取り敢えず現場には連れてく。中津、悪いが至急ここまで来てくれないか?」

『なんだって?!』


 無理を言っているのはわかる。

 だが交渉において下手に出てはいけない。

 あくまで当然のことを述べるように毅然とした態度で申し入れた。


「なんとか安藤を診てやってくれ」

『えー。こっち帰って来た時でいいだろう?』

 案の定中津は渋っている。


「わかった。お嬢と藤木にも相談して……」

『だーわかったわかった!行きゃいいんだろ?』

 お嬢と藤木にネチネチ言われる煩わしさを比べたら来る方がうんと楽なはずだ。


「助かる」

『何が『助かる』だ!!!』

「近くに来たら連絡をくれ。新幹線は結構出てるから」

『はいよ』

 電話が切れたのを確認すると耳を離した。


 山下は布団の上で澄ましている幸に目を向けた。

「幸と言ったな?今多重人格とかそういう状況なのか?」

「そのように思っておればよい」

「どうすれば姫乃に会える?桜でもいい」


 幸はギロリと山下を睨みつけた。


「失礼な奴め!目の前に女子おなごがおるのに別の女の話ばかりしよって!」

「同一人物だろうが……」

「ならば問題はなかろう。お前はおさの命を遂行できる。私はこれから姫乃として生きよう」

「だからダメだ」

「なぜじゃ?理由を申せ!」

「それはだな……」


 確かに仕事上のパートナーというだけならば、仕事をしっかりこなしてくれれば申し分ない筈だった。

 しかし、桜はもはや仕事という言葉だけで割り切れる関係じゃなくなっていた。

 

 幸は答えを求めるように山下を見上げている。


 その顔は桜そのものだったし、本当は幸も桜自身。

 本人を目の前にして、正直に言う事は躊躇われた。

 どう言葉にしていいかもわからなかった。


「とにかくだ」

 山下が目を逸らすと幸はほぅと艶のある溜息をついて笑みを浮かべる。


「そんなに『ワタシ』が恋しーい?か?」

 幸は自らの手を胸にあてた。

 そして誘惑するように上目遣いで前傾姿勢をとった。

 さっきまではだけた胸元を見て大騒ぎしていたというのに。


 桜はどちらかというとウブで、少しでも色っぽい話をすれば顔を真っ赤にさせていた。

 普段との違いと、挑発に苛立ちをおぼえた山下は、幸にデコピンを食らわせた。


「いッ!商売道具に何をする?!」

 

 山下はあえて無視して指令を出した。


「おい幸。出る準備をしろ。また迎えにくる。まさか着替えの仕方まで忘れたとは言わないよな?」

「あ、当たり前じゃ!いくつだと思うている?!」

 

 本当に忘れてはいないようで、幸は立ひざの状態でズリズリとスーツケースまで移動した。


「じゃあ5時に迎えにくる。それまでに支度しとけ。」

 山下は幸を桜とは別人物として厳しく扱うことに決めた。 


「おい!どこに行く?!」

「隣の部屋だ。」


 なんて横暴な家臣じゃ!と幸はぶつくさ言いながら支度を始めたので、山下も自身の支度をするため部屋を出た。


 廊下に出た瞬間に嫌な視線を感じる。


「おい!山下っ!」

「あぁ、おはようございます」

 曲がり角から出てきた新田慎吾にウンザリとしたが表情には出さなかった。

 代わりに営業スマイルを貼り付けた。


「おはようございますじゃねぇよ!!!なに姫乃ちゃんの部屋から出てきてんだ?!さっきの悲鳴!姫乃ちゃんに何をした?!」

 新田はいつも隠している筈の敵意を剥き出しにしているが、あいにくそんなことを気にしている場合ではない。


「通報したのは新田さんでしたか。なかなか起きてこないので起こしに行ったら……」

「嘘つけ!!!見たぞ?!昨日酔い潰れた姫乃ちゃんと部屋に入って行っただろ?!」

 新田は言い終わる前に噛みついてきた。


 昨日の出来事を見られていたようだ。

 山下は心のうちで盛大に舌打ちした。


「合意の上ならまだしも、お前まさか無理矢理姫乃ちゃんを……!」

「なぜお前にあれこれ指図を受ける必要がある?」


 新田は驚愕の表情を浮かべている。


「山下っ!今お前!『お前』っつったか?!ついに本性を表したな!!!」


 しまったと思った時には遅かった。

 今まで隠し通して来たのにあっけなく化けの皮が剥がれてしまった。


 バレてしまったのでは仕方がない。

 どうせいつかはこうなっただろう。

 それくらいコイツには言いたい事が色々あった。


 もう隠す必要はないと思うと表情筋も緩む。

 伸ばすよう努力していた眉間の皺も戻ってきて、新田が身構えた。


「お前こそ。いつもの『山下くぅん』はどうした?」

「そんなキモイ呼び方してない!」

「似たようなもんだろ?ことあるごとに絡んできやがって」

「お前と絡みたい訳ではない!!!」

「声がでかい。迷惑だ」


 耳を抑えてうるさいアピールをすると新田は奥歯をギチギチ言わせながら睨みを利かせてきた。

 こんな顔していても人の忠告は聞くようで声のボリュームを落として詰め寄ってきた。


「話がそれたな山下!姫乃ちゃんに何もしてないだろうな?!」

「さぁ、どうだろな。そんなに気になるんだったら本人に聴けよ」

「そんなセクハラまがいの事出来るか!」

「何してたか大体わかってんじゃねーか」

「お前……っ!」


 何をしてたかと言われると柱と寝ていただけだが勝手に勘違いして新田は顔を赤くさせ怒る。


 新田が事あるごとに突っかかってくる理由はなんとなくわかっていた。

 山下とてそこまで鈍くはない。


 桜は気付いていないだろうが新田の桜に対する好意は周囲にダダ漏れである。


「お前やっぱりそういうことか。だとしたら一々俺に突っかかっても無駄だ」

「黙れ。初勝利した暁には俺は姫乃ちゃんに告る」

「お前、少年漫画みたいなこと言うやつだな……それは勝手だがほどほどにしてくれ。迷惑だから」

 新田は混乱のあまり口をパクパクさせている。


「お前、キャラ変わりすぎだ!」

「お前こそ。そろそろいいか?今忙しいんだが」

「俺だって忙しいわ!覚えてろよ山下!」

「忘れなければな」


 ヒラヒラと手を振って部屋に戻った。


 溜め込んでいた鬱憤を晴らしたおかげでスッキリした。


 それから気持ちを切り替え、戦場に向かう武士のように身支度を整えた。


読んでくださり、ありがとうございます!

今回は毎日更新を停止して以来初めての投稿となりました。

活動報告で告知や進行状況をお知らせして参りますのでよければご覧ください。

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