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カリロボ  作者: 広瀬ジョージ
エリア2編
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10.修学旅行の夜


「ここから宿までまた自由行動だが、修学旅行生に高額の水を売りつける業者がいると連絡があった。くれぐれも注意するように。あと夕飯を食べる場所は部屋班ごとに奥から詰めて座るように」

 学年主任は淡々と言うと最後に解散と声をかけた。


「水ってさっきの?」

 優太は樹に面白可笑しそうに耳打ちした。

「かもしれないね」


 樹達が次の自由行動を許されたのは、エリア2を二分する形である山脈の東側、左都(さみや)だ。

 右都の川沿いの街並みからバスに乗り約20分、長いトンネルを通り山の向こうにある。

 この場所は先程の場所よりも繁華街といった感じで、お酒を取り扱う店も多く見られた。


 大分日も落ちてきて店先の提灯がボンヤリと温かく光っている。

 人も多く活気があり、景気の良い笑い声も聞こえてきた。


 細目で見ると時代劇の世界にタイムスリップしてきたように感じる。

 よくよく見ると道行く人は樹達と同じような現代的な装いをしているのだけれど、店の人などは着物や割烹着、法被などを着ている人もいるので、やはりそのように感じてしまうのだ。


 ボンヤリと光る提灯に誘われるようにして樹達は歩き出した。


 樹達の最終目的地はこの通りにある宿で、そこで夕食をとって今日の行事は大体終了となる。


 学生たちは皆同じ方向に歩き出し、興味がある店に各自が立ち寄って、程よくばらけながら探索を開始した。

 提灯のおかげで道は明るく、人通りのおかげで日は落ちてきたというのに寒さもそれほど感じない。


「この辺はさっきよりオットナな感じだね!」

 と葵は子供の用にはしゃいだ。


 葵は周りを見回してあ!と呟いた。

「キレー」


 葵の視線に合わせて通りの奥を見ると、息を呑むような紅の着物の美人が歩いていた。


「お嬢みたいだね!」

 樹は葵の言葉に同意するように頷いた。


 お嬢というのは二人の兄と姉が働く中津芸能事務所にいる演歌歌手、東雲綾の事だ。

 彼女もまた目の前の女性のように、いつも綺麗な着物で過ごしている。

 普段は落ち着いた色合いの物が多いが舞台に立つときにはあのように艶やかな装いになる。


 その女性は遠くに見えていたがいつの間に静々と樹達の横を通ってすれ違っていった。


「綺麗な人だねぇ、良い色の着物」

「言うと思ったよ」

 葵と樹の前を歩いていた和馬と永久が、女性とすれ違ったあと口を開いた。

 紅は和馬のフェイブリットカラーだ。


「あー見てたら欲しくなっちゃったなぁ!このへん老舗の呉服店があったよね?」

「え?買う気?」

「丁度BONの皆もココに来てるからそこまでかさばらないと思うよ?」

「着物なんて買うの君ぐらいだろうね」

 永久は冷ややかに言うとあたりを見回した。


「なんか甘い物が食べたい」

 探せということだろうか。

 永久は樹を見上げた。


「永久、さっき和菓子食べたばっかりじゃん……」

 そう言いつつ樹も周りを見渡して甘い物を探した。


 甘い物を探していると、奥まったところに細い通りがあることに気が付いた。

 人ひとりが通れる程の道で、通ってもいい道か迷うが、どうぞ入ってくださいと言わんばかりに小さい提灯がいくつも灯っていた。

 通りの先の広いところまで見えていたが、そこを通れば異世界にでも行けてしまえるような雰囲気がある。


「行ってみない?」

 そう言ったのは樹じゃない。

 樹の後ろから通りを見ていた優太だ。


 樹は入っていって民家だったり、格式の高い料理店だったりしたらどうしようと考えて、とてもじゃないけど行ってみようなんて言えない。


「止めておきなさい」

 そう言ったのも樹ではない。

 通りの前でぼうっとしている樹と優太を追い越していった愛希だ。


「なんか気になんじゃん。な、樹!」

 愛希に断られた優太は近くにいた樹をひっかけた。


「うん。ちょっとね」

「きっとあそこに続く道なのよ」

 愛希は少し後ろに下がって宙を見上げた。


 樹と優太もそれについて一旦通りから離れ、愛希の隣まで行って同じように見上げてみる。

 手前の建物に隠れてはいるが、上の部分だけが少し顔を出している。


 他の建物とは若干趣が異なり朱色の派手な建物だった。

 かといって街並みの雰囲気をぶち壊しているといった感じではなく、あくまでも和風で街並みの挿し色のような感じだった。

 長年の経過で少し褪せたような色をしているのも街に溶け込んで見える理由かもしれない。


「何の建物?」

「月華楼……?」

 優太の問いかけに愛希がパンフレットを見ながら呟いた。


「お寺?ではないよね?」


 樹達をよそに、赤ら顔の中年がゆらゆらと歩いて来て例の通りに入っていった。

 樹達は言葉を交わさずその成り行きを見守った。


 男性が向う側についたらすぐにその横に法被姿の若い女の人がやってきた。

「ようこそイラッシャーイ!」

 そう言って若い女の人に導かれて男性は姿を消した。


「なーんだ。飲み屋さんか。俺たちは入れないっぽいな」

「そうだね」

 優太は興味が失せたようで再び通りを歩き出した。


 樹は少し残念に思いながらも幻想的な通りの作りにまだ心を奪われていた。

 樹がその先をぼおっと眺めていると、通りの向こうに紅い人が見えた。


 先ほどすれ違った着物の女性だ。


 着物の女性は口元にスッと手を当てて、後に膝を少しまげてあいさつした。

 口元に手を当てたのは、樹の視線に気づいてぷっとふき出したからだろう。


 とても上品なしぐさだった。

 

 まさかそっちから見えていて、さらに挨拶されるとは思っていなかった樹は少しあたふたしたのち、会釈して慌てて優太達を追った。


 まだどぎまぎが静まらないうちに優太達と合流した。


「なぁ、愛希!今のところどう思う?」

「どう思うって?」

 優太はだからぁと愛希に詰め寄った。


「池の水だよ!あの通りの向こう、広そうだったし池ぐらいあってもいいような雰囲気だった!」


 たしかに通りの向こうは日本庭園のような造りになっているらしく、灯篭が見えていた。

 あの雰囲気なら和風な池があってもおかしくない。


「それに建物の名前!」

「……月華楼?」

「そう!月じゃん。池の水伝説じゃん!」


 月の映った池の水をすくって飲めば二人は結ばれる。

 そんな伝説だった筈。


「それだけで決めつけるのは早いわ。他にも『月』が付く店なんて山ほどあるし池だって。今日私が行った寺にもあったわ。それにあそこに池があるって見たわけでもないし」

「でもさぁ……」

「大体池の水なんて飲めるものじゃないわ。」


 優太がシュンとしているのを見ると愛希は付け足すように言った。


「きっと名前が池の水ってだけでお寺のどこかに湧いてるのよ」

「なるほど!」

 優太が再び元気を取り戻したのを見て愛希は安心したように口角を上げた。


「飲めるといいなぁ……お!楽しそうじゃん!」

 優太は葵や永久がお菓子の量り売りをしているのを見つけて、それに混ざっていった。


 流石、売っているお菓子も和風の昔ながらの物ばかりで、洋風のものは一切置いていなかった。

 葵はお土産、お土産と言いながら金平糖を袋に詰めている。


 永久は一通り試してみるようで、綺麗な色のついた飴菓子を一粒、一粒袋に詰めている。


「和馬、そっちの端から一個ずつ入れてよ。」

「りょうかーい。」

「俺は?」

「奥の落雁を一個ずつ」

 和馬と優太も加勢に入ったがしばらくかかりそうだ。


 樹も手伝いに行こうかと思ったら愛希に呼び止められた。


「ねぇ王野君。お姉さんからなんか池の水の事聞いてない?」

「聞いてないなぁ……」


 聞いてはいるがそれは夏の特番の話で愛希が聞いているのとは性質が異なる物だろう。


「そう……ホントにあるのかしら?この時代ネットで検索しても出てこないなんて。」

 出てくるのは二つの池の水伝説だけで場所はどこにも記されていない。


「いざとなったらあの二千円の水、買ってあげようかしら」

 愛希は冗談めかして言った。


「一回アネキ達に聞いてみるよ」

「ありがとう。そう言えばお姉さん達も来てるんだってね」

「そうなんだ。どっかで鉢合わせないといいけど……」


 樹が溜息をついた瞬間、通りの向こうに背の高い男女が歩いているのが見えた気がして、息が詰まりそうになる。


「王野君?」

「宮野さん!俺も飴買ってくる!」


 樹はお菓子屋さんのなるべく奥に入った。

 愛希も不思議そうに通りの向こうを眺めてから店に入った。


「愛希ぃ!見て!一杯だよ!」

「葵、これ詰め放題じゃなくて量り売りよ」

「違うの……?」


 結局葵の詰めた金平糖は店の人の好意と皆がちょっとずつ買ったことで初めの十分の一の量に収まった。


「永久、これ量り売りだよ?」

「分かってるよ。僕は知ったうえで選んでるからいいの」


 店のお菓子を一通り詰めた永久だったが値段は何とか二千円以内に収まった。


「僕量り売りなんて初めてだよ」

 和馬は嬉々として買った金平糖を口に運んだ。


「マジか!松田家の事だから『好きなだけ詰めなさい!』って感じかと思った。」

「そもそもお菓子を買いに出かけたことがないんだよねぇ」

「え、そうなの?」

「じゃあ、『チョコは重いからクッキー入れなさい』とか言われたことないの?!」

「それは俺もないよ」

「僕も」

「木林森家だけ?!俺そのおかげで大体お菓子の重さ分かってるんだって!」

「重い順にチョコ系、グミ系、ラムネ系、クッキー系でしょ?」

「さっすが愛希!」


 樹達が店の老人にお礼を言って店を出ると、通りに人だかりが出来ているのを発見した。

 樹はさっき通りの向こうに姉達が見えたけど気のせいだろうと言い聞かせた。


「何だろう?」

 止めてくれればいいのに、葵は人だかりに興味を持つ。


「行ってみようぜ!」

 優太がさらに追い打ちをかける。


「集合時間あるから……」

 樹は控えめに言ってみたが無駄だった。


 樹は葵に手を引かれ人垣の中心へと連れていかれる。

 幸いにも樹の予想に反して人だかりの中心にいた人物は姉ではなかった。


「新田慎吾だ!」

 樹は後ろについてきた優太や和馬に見た?見た?と問いかける。


 今を時めく若手俳優、樹が毎週楽しみにしているドラマの主人公でもある。


「ホントだ!スゲェ!」

 優太は樹と同じように歓喜の悲鳴を上げる。


「王野君でも芸能人に興奮するんだ。」

 一方和馬は冷静だ。


「そりゃそうだよ!」

 いくら姉が芸能人で、顔見知りの人がいると言ってもそれはほんの一部だし、ほとんどは滅多に会うことは無いので騒ぎたくもなってしまう。

 そのほんの一部の芸能人以外の芸能人に会うのは初めてだ。


「どうしよう?!話しかけちゃダメかな?」

「プライベートだったら失礼だよっ!」

「でも、見ろ。写真撮ってもらってるぞ!」

「スゴイ、ファンサが凄い……滅茶苦茶良い人……!」


 樹達が少し離れたところで、キャイキャイしているとファンと写真を撮り終えた新田と目が合う。

 新田は丁度樹達がそうしたように目を丸くしてこちらを見ている。


 そのままずいずいと歩いて来て樹の前まで来た。


「姫乃ちゃんの弟君!」

「えっ?!」


「そうだよ!」

 慌てふためいている樹の代わりに葵が答えた。


「やっぱり!そっくりだなホントに!」

 樹が迫力に押されて目をぱちくりさせていると、新田はごめん、ごめんと謝った。

 流石芸能人、笑った時の白い歯は鍵盤のように整っている。


「何度か姫乃ちゃんに写真で見せてもらったことあるから、つい話しかけちゃったんだよねぇ。ごめん驚かして!」

「いえ、全然ッ!」

 この日ほど勝手に自分の写真を見せて回る姉に感謝した日はない。


「皆は修学旅行で来てるの?」

「そうです!」

 この問いかけには優太が力いっぱい答えた。


「ってことは高3?」

「いえ、2年生です。」

 と和馬が答えた。


「そっか。しっかし奇遇だね、丁度撮影と同じ時期にこっちに来てるんだ?」

 樹は緊張のあまり、そうです、そうなんです!と不必要に頷いた。


「そう言えばまだ圭兄達に会ってないね。」

 葵は樹と違い、兄達にいつか会うものとして旅行を楽しんでいる。


 樹としては出来れば会わないまま平穏に過ごしたいところだけど。


「『圭兄』?」

 今まで気さくに話しかけてくれていた新田の顔が微妙に曇った。


「この子っ、姉のマネージャーの妹なんですっ!」

 ずっとドラマのシリーズ見ていましたとか、言いたいことは色々あったが結局これが出た。


「あぁ!山下君の……!」

 新田が手を叩き、葵はそうだよというように頷いた。

 新田は桜と共演することが多いので、山下とも知り合いなのだろう。

 

 身内だけどやっぱりすごいなと樹は少し姉と山下を見直した。


「弟も妹も同じ学年にいるんだ。仲良しなんだね」


「うん。アオ達、樹達んちにドーセーしてるの」

 新田は脳天にカミナリが直撃したような顔をした。


 樹はそれを見て、あらぬ誤解をされているようだと理解した。

「葵……!それはちょっと違う……!」

「だって唯がケッコン前に一緒に住むのドーセーって言ってたもん」

 葵は口を尖らせた。


「それは確かに間違いじゃないわ」

 愛希は葵に頷いて見せた。


「で、でもさー……なんか同棲って言うと響きが……」

「お姉さん達はともかく、王野君と葵はただ一緒に住んでるって感じよね。」

 再び新田は雷に撃たれた。


 この人はいったい何に反応しているんだ?


「君!その話、詳しく!!!」

 愛希は急に掴みかかってきた新田に困惑する。


「新田さん!愛希に何すんだ!!!」

「あの、離していただけないでしょうか?」

 愛希は逆に掴みかかろうとする優太を制して冷静に対処する。


「あぁ、ごめんごめん、つい取り乱してしまった!」

 新田は笑って取り繕うが、芸能人という肩書は永久には全く通用せず、訝しそうな視線を容赦なく新田に浴びせた。


「なんなのこの人……?」

「怪しい……」

 永久に続いて葵も睨む。


「嫌だなぁ!怪しくないって妹ちゃん!じゃ、修学旅行楽しんでね!」

 新田はそそくさと退散した。


「あ!ありがとうございます……!」


「今の何だったの?」

「圭兄のお友達なのかな?」

「愛希!大丈夫か?!」

「大丈夫よ。見てたでしょ?」

「ずいぶんと賑やかな人だったね。」

 口ぐちに感想を言いながら目的地に向かって歩き出した。


「そう言えばさぁ、今日泊まるのって、なんていう旅館だっけ?」

 優太の問いに和馬が答えた。


「『松の湯屋』。安く済ませるためにね!」

 樹は妙にその名前に聞き覚えがあるような気がしていた。


 修学旅行のしおりにも書いてあったからだろうか?

 いや、違う姉の口から聞いたのだ。

 樹は嫌な予感を感じ始めていた。


「旅館って安いの?」

 葵が服の袖を引っ張るので意識が引き戻された。


「さぁ?」

 旅慣れていない樹には相場が分からずそう答える他なかった。


「そう言う訳じゃないけど。その旅館うちの傘下だから。」

「傘下ってなに?」

 葵は再び樹に問いかけるが、樹の代わりに和馬が答えた。


「まぁファミリーってことさ!」

「ファミリー!」

 和馬と葵がイェーイと拳を突き上げると目的地はもう目の前だった。




「うわぁ……こんなところに泊まれるんだね……!」

 樹と優太は旅館の内装を見て息を漏らした。


 室内にも関わらず日本庭園風の箱庭があり、川のせせらぎも聞こえた。


「樹見て!コイがいるよ!」

 箱庭の中を覗きこんでいた葵が興奮気味に手招きした。

 みると丸々と太った真っ赤なコイが気持ちよさそうに泳いでいた。


「ホントだ!」


「それよりも王野君の好きそうなものが奥にあるよ。」

 和馬は玄関からさらに進んだ場所にあるお座敷を指さした。


 そこには人が二、三人座れるのがやっとというぐらいの畳スペースがあった。

 人が腰かけられるぐらいの高さに底上げされている。


 座敷の上では黄緑色の着物をまとった女性が琴を奏でていた。

 数人がその周りを囲んで演奏に聞き入っている。


 しかし様子がおかしい。


 みな、琴を弾く手元でなく、女性の顔に注目している。

 さらには不躾に顔を覗きこんだり、許可なく写真を構えたりしている。


 それでも演奏者は微動だにしていない。


「あれって……」

「近くで見てみなよ」

 樹は促された通りに演奏者の近くに寄る。


「やっぱり……!」

 樹はその素晴らしさに目を奪われた。


 琴を演奏していたのはやはりロボットだった。


 『演奏からくり人形 月夜』

 『ロボット』というカタカナを使った名称で呼ばないのがいかにも和風旅館らしい。


 月夜はうっすらとほほ笑んだような顔をした和風美人だった。


「びっくりした?」

「びっくりした。人みたいだ……」

「ここが松田カンパニーと提携する前からここにあったんだ。腕のいい技師が作ったみたいだよ」

「へぇ……」

 月夜は一曲演奏を終えると、何を演奏しようか考えるように一拍置き、再び演奏を始めた。


 その様子に魅入っていると和馬がポンと肩を叩いた。


「さぁ班長!そろそろ食堂に移動しようか!」

「え?!俺が班長だったの?」

「当ったり前じゃないか!」

「えー」

「班長が部屋の鍵貰ってから食事だってさ!ここの料理美味しいんだから!」


 仕事内容把握しているようなら代わってくれればいいものを……


 樹は月夜を名残惜しく思いながらその場を後にした。

 名残惜しく感じたのは、月夜の整った顔よりも、弦を絶妙な力加減で触れられるその技術が気になったからだった。


 自分がロボットの女の子だったら、無条件に好きになってしまうのではないかと思っていたので安心した。

 彼女(真華)はやはり特別だった。


 一階にある食堂は既に同級生で埋まっていた。


「キレー!」

「美味しそう!」

 一つのお盆の上に乗せられた料理は文化的かつ色彩豊かだった。


「食べるの勿体ないなぁ……」

 樹は部屋割り、つまりは永久、優太、和馬と席に着いた。


 普段は自ら食べる料理を写真に収めたりしないが、今日はカメラを構えた。

 しばらくして従業員が小鍋に火をつけに来た。


 温かい料理は寒い道中を歩いて来た身に染みわたることだろう。


「部屋ごとに食べ始めてよし」

 との事だった。


「手を合わせてください!」

 優太の音頭で樹達は美しい料理を前にぴったりと手を合わせた。


「いただきます!」

「「「いただきます!」」」


 いつもなら夕飯を食べる時に一日の終わりが近づいていると感じるが、今日はまだこれから起こることに胸を弾ませる。

 ご褒美旅行はまだまだ続く。


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