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カリロボ  作者: 広瀬ジョージ
学園祭編
45/95

45.SOS

 金曜日の王野家。

 桜のモデル仲間のユウとオリが家に招かれていた。


 おからで作ったクッキー。

 寒天ゼリーのフルーツポンチ。

 かぼちゃのベイクドプリン。

 クルミ入りパウンドケーキ。

 その他市販のおやつが食卓にところ狭ましと並べられていた。


「わお!」

「作ったねー!」


 桜はオリとユウの荷物を預かると、食卓に着くように促した。


「たくさんあるから、たくさん食べてね!」

「たくさん食べると太るぅ。」

 ユウはどれを食べようかとお菓子を見比べ始めた。


 桜はその言葉を待っていたと言わんばかりに瞳を輝かせた。

「大丈夫!そう言われると思って全部低カロリーでそろえたの!」

「さっすが姫乃!」

 オリとユウがお菓子に手を付けたのを見ると桜はしめしめとほくそ笑んだ。


 そして二人から預かった荷物を二人の目に付かないところに片した。

 二人が美味しそうにお菓子を食べている様子を食卓の対局側で見守る。


 ヘンゼルとグレーテルに出てくる魔女の気分だ。

 しかし桜は二人を食べごろになるまで太らせたい訳ではない。


「いい嫁になれるよ、姫乃。」

 桜はオリから賛辞にうんうんと頷く。


 そして桜は早くも本題を切り出した。

「オリぃ、ユウゥ……一緒に行こうよ……」


 オリはスプーンですくい上げられたベイクドプリンをいったん皿に降ろした。


「やはり。急に開かれたお菓子パーティにはウラがあったか……」

 勘のいいオリは何となく予感はしていたようでやれやれと肩をすくめた。

 ユウは何のこと?とクッキーを頬張りながら首を傾げた。


 桜は昨日から自身のマネージャー、山下の愚痴をこぼしていたが、今日の朝から二人の土曜日の予定を聞きまわり始めていた。

 土曜日は桜の母校でもある帝都学園の学園祭がある。

 数日前までは山下と一緒に遊びに行く予定だった。


 山下とは未だに険悪ムードのままで、桜は一緒に文化祭に行ける者を探していた。


 桜はすがるような目つきでオリを見た。

「ダメ。仲直りしていきゃいいじゃん。」

 オリは桜を面倒臭そうにあしらい、ベイクドプリンを口に運んだ。

 そしてその後はペースを上げてモリモリと食べ続ける。


「ユウ……」

 今度はパウンドケーキに手を付け始めているユウに狙いを定めた。


「文化祭の話かぁ。明日って言ってたっけ?お買い物行きたいから!」

 面倒臭そうにはしなかったものの、オリよりも躊躇なく断られた。

 そこで桜は奥の手を使う事にした。


「樹が劇に王子様役で出るよ?」

 ユウはどこか樹を狙っている節があるので近づけたくないが仕方がない。

 効果は絶大でケーキを食べるユウの手が止まった。


「それは……!」

 ユウが乗って来たので桜も目を輝かせた。

「スゴイでしょ?見たいでしょ?」

「見たい、見たい!」

「でしょ!一緒にビデオ撮りに行こ!」


 ユウが頷くその前にオリの声が二人の間に入る。

「ダメ。仲直りするまでどこもいかないよ!」


 するとユウはさっきまでの興奮が嘘のように静まった。

「……だってさ。」


 ユウはアッサリと態度を変えた。

 ユウを一緒に連れていくならオリを説得せねばならない。


 桜はオリに牙を剥いた。

「別にユウと行ってもいいでしょ!」

「その場しのぎにしない!先延ばしにしない!!!」

 オリは桜を上回る権幕で言い返す。


「オリが山ちゃん化してる!」

 確かに語調は違うものの、彼がいかにも言いそうだった。


 オリはそれから溜息をついて肩の力を抜いた。

「別に私はいいんだけど。先延ばしにしていくと長引くかなと思って言っただけ。姫乃と山ちゃんがお互いにそれでいいんなら、あたしも口うるさく言わないよ。」

 急に優しい口調で諭され、桜はうつむいた。


「一人で行きたくないのはお互い様なんだから。ここは姫乃が大人になって謝ったら?」

 オリの横でユウも頷いていた。


 桜は口をごにょごにょさせて机に突っ伏せた。

「山ちゃんは一人じゃないかもしれないし……」

 自分の言葉で悲しくなって桜はスンと鼻をすすった。


「「どういう事?」」

 オリとユウは大きく身を乗り出した。


 桜が思い浮かべているのは自分が見た事無い保健医の女性。

 帝都学園は山下の母校でもあり、その女性の勤務先でもあるので二人に縁のある場所だ。

 二人で楽しく過ごすことだって可能だ。


 それなら謝ったところで一緒に行けないかもしれない。


 桜が高校生だった時、若手の教員が恋人を連れてきたのを皆で冷やかした経験がある。

 うるさいとかやめろとか先生は言っていたけど嬉しそうだった。


 もしその保健医と山下が同じように冷やかされていたら?

 それは付け入る間もないぐらい微笑ましい光景で、桜は思い描いて涙ぐんだ。


 オリとユウは変わるがわる質問して、言葉を詰まらせる桜から聞き出し、山下への不信感をつのらせていく。


「アンニャロー……二股か?」

 オリは顔を顰めた。


 ユウは食べるのを止めて慌てて桜を慰めた。

「そうと決った訳じゃないよぉ!一緒に行く約束してたんでしょ?大丈夫だよ!」


 桜は頭を伏せたまま首を振った。

「酷い事言っちゃったし……」


「なんて言ったの?」


 桜はスンと鼻をすすった。

「……変態メガネって……」


 オリとユウが同時に吹き出した。

「ぶふっ」

「ちょっとオリッ……!姫乃真剣なんだからっ!ふふっ。」


 二人が笑ったので桜もつられて笑ったが、空しくなって止めてしまった。


「それとね。約束はしてたわけじゃないの。毎年一緒に行ってるから約束しなくても良かったの。また今年も行くと思って。」


 桜と山下の間には約束など不要だった。

 その前日に、明日はどちらが迎えに行こうと会話する、あるいは当日一緒に起きて出かけると言うのが普通だった。

 言葉無くとも、お互いその日だけは他の予定は入れないでおくのだ。

 それは二人が卒業してから毎年続いていた。


 桜が寂しそうに笑い、涙をこらえたのがオリとユウにも分り、これには二人も桜に同情的になった。


「許せん!あのメガネ、かち割ってやる!」

 オリが携帯を取り出したのを見て桜は首を振って止めた。


「いいよ、オリ……!」

 桜が止めるとユウはオリに加勢した。

「この際、浮気相手も呼び出してよ、オリ!」


 桜は首を傾げる。

「浮気相手?」


 そこでオリとユウは異変に気が付いた。


「ん?姫乃と付き合ってるのに、もう一人彼女を作ったらそれは浮気だし、二股でしょ?」


 桜はそれを聞いてしれっと言い放った。

「別に、山ちゃんとはそういうのじゃないよ?」


「「付き合ってないの?!」」


 桜は顔を真っ赤にしてブンブンと手を振った。

「ち、違う!いや、そうッ!そうだよ!別に付き合ってる訳じゃないもん!」


 聴かれただけでこの狼狽えよう。

 いかに桜が初心な女であるかがよく窺えた。


 それを見た二人は驚きと呆れが入り混じった締まりのない顔になっていた。


「それは姫乃が悪い!」

「ど、どうして急に?!」

 桜は急に二人の態度が一変した事に戸惑った。


「営業時間外に束縛しちゃダメでしょ!」

「束縛っ?!」

 桜は言われて初めて気が付いたという顔をした。


 桜はユウに助けを求めたが、ユウも険しい顔をしていた。

「それなら話は別!姫乃、甘え過ぎ!」

「甘え過ぎっ?!」


 オリとユウは深く椅子に腰を掛けなおした。

「なんだよ!姫乃が浮気された訳じゃないのね……?」

 桜はうんうんと何度も頷いた。


 オリは大袈裟だけど、と前置きして桜を諭した。

「山ちゃんには山ちゃんの人生があるんだから。邪魔しちゃダメでしょ」

「邪魔なんてしてないもん!」


「たとえば、姫乃が誰かと結婚したとき、山ちゃんどうするの?まさか一緒に居たりしないでしょ?」

 桜はうーんと考えた。

「まぁ、一緒に居ないとしよう。」

 オリは話が続かないので仮定ね、仮定。と桜を納得させた。


「だとしたら山ちゃんは、今まで姫乃と過ごしてた時間どうやって過ごそう?」


 想像は得意だ。

 桜は頭を働かせてそれらしい答えを返した。


「山ちゃんなら働いて過ごしそう。」

 実際山下は桜が仕事している時はマネジメント以外の仕事をこなしている。

 しかしオリが求めていた答えはそれではない。


「……まあ、そうかもしれないけど!他の人と過ごしてもいい訳じゃない?」

 桜は仕方がなく頷いた。


 たしかにその通りで、今だって山下と一緒にいない時、桜はユウとオリと過ごしている。

 他の人と過ごすのは当たり前の事だ。


 ただし山下の場合、一緒に過ごすのは保健医の女性だ。

 それは納得したくなかった。


「その保健医さんに限らず、他の人といる時間作ってあげないと……!」

 ユウは桜に言い聞かせるように言った。


「認めたくはないけど。ヤツはモテる。ソトヅラがいいから……ソトヅラは!」

 オリは何度も外面はと強調した。


 山下はなぜか外では桜達に見せるような偉そうな口調や態度は見せない。

 したがって彼はその気になれば他の人といる時間も作れるのだ。


 ユウも大きく頷いた。

「タイムズビル受付嬢、杉崎さんは完全に気があると思います!」

 デリカシーを欠いたセリフではあるがそれも事実。


 桜は突っ伏せていた顔を上げて大きな瞳をさらに大きくした。

「えっ?!そうなの?!」

「そ、そうだよ。鈍い、姫乃。」


 タイムズビルの受付嬢、杉崎里香さん。


「うわぁ……だからあの時……」


 その事実に気付いたと同時に桜は罪悪感に苛まれた。

 そうとは知らずに葵が山下の妹と知る前『山ちゃんには葵さんっていう彼女がいる』と杉崎に言ってしまった。


 その時まるでこの世の終わりのような顔をしていた理由が今分かった。


 そういえばそのあと正しくは妹だったって訂正したっけ……?

 たぶんしてないや。ごめんなさい。

 あれから休み時間はRPAをやってることが多くなったが、もしかして関係あったりする?


 桜は肩を落として俯いた。


 オリは桜の様子に首を傾げて咳払いをした。

「これを機に山ちゃん離れしたら?」


 オリの言葉はたいして大きくはなかったが部屋によく響いた。

「ついでに樹君離れをしてくれると私はありがたいなぁ!」

 桜はユウのセリフを聞き流した。


「ただ一緒にいたいから一緒にいるじゃダメなの?」

 桜は口に出すのもはばかるような愚直なセリフで言い返した。

 ユウとオリは顔を見合わせて返答に困っている。


「同じことだもん。彼氏でもマネージャーでも一緒にいる理由は一緒にいたいからだもん!」


 桜が言ったことは筋が通っている。

 だからこそユウとオリは返答に困り、言葉を模索した。


「彼女さんも山ちゃんと一緒にいたいんじゃない……?」

 ユウが恐る恐る桜に言い返した。


「なんで相手が『彼女』って呼び名になったら、皆そっちを味方するの?呼び名が変わっただけだもん」


 その保健医も以前は桜と同じ立場にあった。

 『彼女』と呼ばれる立場になったら、そちらが優先される。

 解せない。


「それは姫乃と山ちゃんの場合だけであって、世間的に考えると……」

「世間的ってナニ?彼女ポジションは申告制なの?早い者勝ちなの……?」

 二人が困ったような顔で桜を見ていた。


 桜はふうと息をついて、しぼんだ風船のように力なく頭を抱えた。

「ゴメンね。私のためを思って言ってくれてるのは分かってるんだけど……」

 オリとユウは笑顔を見せる事で桜を許した。


 ユウはいい事思いついたと言わんばかりに両手をポンと合わせた。

「姫乃の事気になってる子がいたんだけど、紹介してあげようか?」

「イ、イラナイ!」

 桜は力を入れて拒否した。


「そ、そう?」

「こりゃ山ちゃん離れは時間かかりそうだな……」

 桜は赤くなった顔を手で覆い隠した。


「じゃあ、山ちゃん離れしたら……」

 桜は手の隙間から語りかけた。

 オリとユウは桜に注目する。


「明日は一緒に行ってくれる?」

 桜は手の隙間から二人を窺った。


「いや、それは別問題。」

 オリが小さく手を振る。


 桜は手で顔を覆うことは止めて、ガタガタと立ち上がった。

「……っ!今夜は返さないんだから!」


 オリは何かに気が付いて素早く立ち上がるとリビングを見渡した。


「私達のカバンどこやった姫乃?!」

「隠しました。」

「返せ!」

「そうだ、そうだ!」

「一緒に行ってくれるなら返すもん!」


 プルル……

 備え付けの電話が鳴りだした。

 電話の音で三人は静かになる。


 桜は二人にことわり、一次休戦して受話器を取った。


「はい!もしもし?」

 興奮を抑えて落ち着いた声で応答する。


「おー王野?元気か?」


 受話器の向こうから聞こえたのは懐かしい恩師の声だった。

 帝都学園の教師で桜と山下の恩師であり、今は樹の担任である後藤だ。


「後藤先生?!久しぶりです!」

 桜はその懐かしさのあまり声を弾ませた。


「元気そうだな。山下とはまだ一緒にいるか?」

 後藤の口からタイムリーな人物の名前が飛び出した。


「なんで山ちゃん?!」

 まさか樹がケンカしたことを喋ったのかと思った。


 桜の慌て具合を見てオリとユウが後ろでクスクスと笑った。

 受話器の向こうでも笑い声が聞こえる。


「すまん、すまん!この電話の後、山下にも電話しなきゃならないんだ……一緒にいたらちょっと変わってもらおうと思ってな。最近、妹もみる事になったから」

 後藤の声から苦労が窺えた。


「葵ちゃん、学校ではどうですか?」

「同級生とも仲良くやってる。お前の弟がよく世話焼いてくれてる」

「そうなんですか?よかったぁ」

 桜は誇らしくてふふふと笑みをこぼした。


「お前ら明日は来るか?」

 明日は帝都学園の学園祭だ。


「んー分かんないです」

 今審議中だ。

「行こうかなとは思ってます!」

 桜がユウとオリに視線を飛ばすと、二人はわざとらしく目を反らした。


「弟、なかなか頑張ってるぞ!」

「はい!家でも練習してました!」


「で、その弟の事なんだが……」

 桜は耳を傾けた。


「はい……?」

 急に後藤の声のトーンが変わったので桜も声のトーンを落とした。


「もう帰ってるか?」

「え?まだですけど……」


「そうか。アイツ今日点呼せずに帰ったから」

「えぇ?!すいませんでした!」

 桜は受話器を握ったまま姿が見えている訳でもないのにペコペコしてしまう。


「あぁ!王野だけじゃなかったから、大丈夫だ。いや、大丈夫という訳ではないんだがな。じゃあ、帰ったら連絡入れるように言っといてくれ。」

「はい……すいませんでした。」

「おう。またな」

 通話が切れると桜は受話器を元の位置に戻した。


「イツキ、まだ帰らないの?そういえば遅いよね……」

 オリはリビングの掛け時計に視線を移した。


 確かに点呼の時間に学校を出たならもうとっくに帰っている筈だ。

 妙な胸騒ぎがして桜は樹に電話をかける。


 『おかけになった番号は現在、電源が切れているか、電波の届かない……』

 桜はハッと息を呑む。

 機械音が更に桜の不安を掻き立てた。


「オリ、ユウ。どうしよう繋がんない……!」


 オリは呆れ気味に笑って見せた。

「大丈夫、もう高校生でしょ?ちょっと帰りが遅くなるくらいよくあるでしょ?」


 桜はオリの言葉に首を振った。

「でも、樹だよ?三時二十分に学校終わって、三十分の電車で帰ってくるような樹だよ?」


 それは誰とも話すことなく、ひたすら歩き続けなくては出ないタイム。


「……」

 オリは樹の交友関係を口には出さずに察した。

「……早いね。」

 ユウは迷った末にそうコメントした。


「それに遅くなる日はメールする約束だもん。一度も破ったことないもん……」


 そのメールは最近になって習慣化したものだ。

 以前は遅くなる日なんていうものは滅多に存在しなかったから。


「私探しに行ってくる。」

 桜は今にも家を飛び出しそうだった。


「大丈夫だって!もうちょっと待ってみなよ!」

 オリは桜を抑えるように椅子に座らせた。


「いやだ行く!絶対行く!」

「落ち着いて姫乃!」

 今度はユウが桜を宥めた。


 その間にオリは念のためもう一度携帯から樹に掛けた。

 『おかけになった……』


「出ろよヘタレ!」

 オリは仕方がなくメールを送った。

 当然の如く返信は来ない。


「探しに行く。公園にいるかもしれない……」

 桜はうわ言のように呟いた。

 桜は胸の前で握った手をしきりに握りなおすようにしている。


 オリとユウは顔を見合わせ、この状態の桜を外に出すことはできないと判断した。


「公園……?この近所の?」

 ユウが聴くと桜は頷いた。


 樹が以前迷子になった時にはそこで発見されたのだ。

 もう高校生になった樹がそんなところにいるとは到底思えない。


「見てきてあげようか?」

 桜は答えず泣きそうな顔してうつむいた。


 桜も薄々樹がそんなところにいるわけがないとわかっていたからだ。


 十年前の苦い記憶を思い出すと同時にスマホに手が伸びていた。


「姫乃!警察はまだ早いって!」

 桜は否定の意を示すように頭を振った。


 さっき山ちゃん離れしてみようと思ったけど無理そうだ。

 出てくれなかったらどうしようという思いが頭をかすめる。

 その思いを断ち切るように桜はスマホを握りしめた。


「……もしもし?」

 数回のコールの後山下が応答した。


「山ちゃぁん……」

「どうした泣きそうな声出して。」

 いつもと変わらない山下の声を聴いたら嗚咽がひどくなって、途切れ途切れに言葉を吐いた。


「樹が、いなく、なっちゃった……」

「落ち着け。さっき後藤から電話が来た。葵も帰ってない。」

「どうしよう……」

 山下が受話器の向こうで鼻で笑った。


「大丈夫だ。お前は家にいろ。普通に帰ってくるかもしれない。」

 桜は山下に姿は見えていないにも関わらず何度も頷いた。


「うん……。山ちゃん。」

「ん?」

「変態メガネって言って、ごめんなさい。」

「うん」

「それと一緒に学園祭行きたいです。」

「わかった」


 彼は電話越しにクスリと鼻で笑うと通話を切った。


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