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カリロボ  作者: 広瀬ジョージ
学園祭編
35/95

35.遺跡コンビ再び

水曜日の夜

無法地帯


「やっぱりここか……」

 三内は憎々しく呟いた。


 三内と丸山が来たのは、以前、葵にボコボコにされたあの場所だ。


 今朝、新たな情報が入ったのだ。

 ここでは定期的にロボット同士のマッチ戦が行われている。

 そこに頻繁に出場している女型のロボットがMac‐Aとそっくりらしい。


 会場全体を写すような構図の写真もあった。

 引き延ばしたため分かりにくいが、写っているのは紛れもなくMac‐Aだった。


 今現在、写真で見たリング上ではロボット同士ではなく、人間同士の試合が行われていた。

 ボクシングでもプロレスでもない、どちらかが戦闘不能になるまで続けるという単純明快な試合だ。

 赤コーナーのファイターがあり得ない放物線を描いて飛んだところでワッと歓声が上がった。


 その熱狂ぶりに三内は顔を歪めた。

「チッ。うるせーなー」

 呟いたところで静かになる筈もなく、人混みの中に視線を彷徨わせる。


 多くの人が波打つように動いているせいで、目を通したところとそうでないところの境界線がすぐに分からなくなってしまう。

 三内は仕方がなく、目だけでなく足も動かす事にした。


「人が多すぎっす。俺人混み苦手なんっすよ……」

 丸山がノロノロと三内の後に付いてくる。


「てめぇ、この前来た時はなんとも言ってなかっただろ!」

「一回目は良いっすけど、二回目は見飽きるっていうかぁ……」

 一発丸山にお見舞いしようかと思って腕を振り上げたが取りやめにした。


「マジで強いんだって!!!」

「ウソゥ。」

 若い男女の会話が耳に入ってきた。


 どんちゃん騒ぎの中その声がハッキリと聞こえたのは、その存在を探し求めていたからに違いない。

 丸山にも聞こえたようで、視線をせわしなく動かし始める。


 三内は後ろを向き、不審そうに見てくる連中に眼つけながらターゲットを探す。


「い、いました兄貴!」

 丸山が声を上げた。

 丸山が興奮気味に指差した方向を見る。


 長い髪をツインテールに結った少女と視線が合う。

 Mac‐Aが気付いて人混みの中に駆け込んだ。


 その隣にいた少年もただならぬ雰囲気を感じてその後を追う。

 三内達に、スタジオにそれっぽい女の子がいると教えたあの少年だ。

 結局スタジオにいたのは葵で痛い目見た。


「あいつグルかっ?!」

 ふつふつと怒り沸き、葵につけられた傷がうずいた。


「逃げられちゃいますよ?!」

「馬鹿、早く追え!」

 三内は邪魔してくる人を片っ端から押しのけ、ツインテールを目印に前進する。

 丸山は三内が薙ぎ払った人にぶつかって、遅れを取りながらそれに続く。


 Mac‐Aは細い体で人の間を縫うように進み、少年は度々後ろを振り返りながらヒョイヒョイと軽快に逃げ、どんどん距離が離されていく。


「待てぇえ!!!」

 三内が叫んだ瞬間。

 ワァ!と歓声が一気に強くなった。


「オットッッ!!!勇敢にも挑戦者か?!この男の連勝を誰か止める事が出来るのか?!」

 ハイテンションな男の声と共に、薄暗いこの場所に眩しい程のスポットライトが降り注ぎ、三内を照らした。


 光に照らされた人はさっさとはけ、光の筒の中にいるのは三内だけとなった。

 嫌な予感がする。


「わーい!圭兄がんばってぇ!」

 聞き覚えのある少女の声援が聞こえて、それは確信に変わった。


 その場から逃げようとしたが、スポットライトは確実に三内を捉えている。


「登場口はそっちじゃないぞ、お茶目さん!周りの人、連れて来て上げてチョーダイ!!!」

 三内は辺りを見回して状況を理解した。

 リングでは連勝中のファイターが新たなる挑戦者を求めていた。


『いいのかな?!戦わずして彼が殿堂入り?!殿堂入りまであと20!19?18!……』

 レフリーがファイターの勝利へのカウントを始めた。

 そんな時にタイミングよく『待てぇえ!!!』と叫んでしまったらしい。


「バカ止めろ!違う!!!」

 一見バラバラで協調性の無さそうな観客達が息を合わせて三内を胴上げし、リングに押し上げた。


 皆このリング上の連勝中のヒーローの活躍を見たいという考えは一緒。

 あるいは、新たな挑戦者が連勝記録をストップさせる事を期待したのかもしれない。

 どちらにしても彼らは戦いを見たいのだ。


「えぶしっ!」

 三内はリング上に落下した。

 三内は生まれたての子ヤギのようにヨロヨロと立ち上がった。


『ここで何をしている?』

 曇った声が三内の頭上から聞こえた。

 

 この偉そうな口調聞き覚えがある。


 三内が顔を上げると、そこには廃品ロボットの頭部で顔を隠した男がいた。

 頭から下は部屋着としか思えないジャージ姿で異様な出で立ちだった。

 しかしならず者だらけのこの場所では特に目立っているという訳でもない。


 十年前、三内達の前から姿を消した少年は大きな成長を遂げていた。

 しかし三内は懐かしんだりしない。

 只々恐怖だ。


「お前っ、山下圭?!」

 三内は悲鳴のように叫んだ。


「大声で名前を呼ぶな。この仮面の意味がなくなるだろ。」

 この生意気で威圧的な喋り口調間違いなく本人だった。


「なんなんだ、その頭?」

「こんなところにいるとも思えんが、知り合いに見られたら困る。」

 重そうな仮面の中でハァと山下は溜め息をついた。


「なんでもいい。早くファイティングポーズを取れ。それで試合開始だ。」

 山下はいつでも来い。とでもいうように体の前で拳を握りしめた。


「絶対にするか!」

三内はこの体勢から動かないぞと決心した。


「早くしろ。この仮面苦しくなってきた。」

「知るかそんな事!」

「酸欠、辛い……お前に勝てば二十連勝で上がりだ。」


 このリングでは勝ち抜いたものは留まっていなければならない。

 ただし、二十連勝すれば殿堂入りとなってリングから降りられる。


 三内が耳を澄ますと、マスクの奥から苦しそうな息使いが聞こえてきた。

 にも関わらず山下は自分が負けるという事は考えていないようだ。


 山下は体の前で拳を構えている。

 その動きにキレは無く、静止する事もままならないようでユラユラしている。


 チャンスじゃないか???


 十年前、十三歳の少年にボコボコにされ続けた数々の黒歴史が蘇る。

 その雪辱を晴らす日が遂に訪れたのだ。


「やってやろうじゃねぇか。」

 三内はニヤリとして拳を握る。

 試合開始のゴングが鳴った。


 それから勝負がつくのに十秒もかからなかった。

 三内がフラフラの山下を挑発する。

 山下はユラリと揺れたかと思うと、一気に距離を縮めてきた。

 その予想外の速さに三内は息を呑む。


 山下の四つの動作で決着がついた。


『殴る』

 三内は体がくの字に折れ曲がったのを感じた。


『足で払う』

 足をすくわれ世界がクルリと反転する。

 視線の先には天井があった。


『受ける』

 といってもリングに叩きつけられるのを阻止してくれた訳ではない。

 次の攻撃する過程で一瞬そう感じただけだ。


『投げ飛ばす』

 三内の体は宙に浮いていた。


 違う!

 格が違い過ぎる……!

 数秒に及ぶ滞空時間中そんな事を思った。


 観客達はワッと歓声を上げ、薄情に横に避けた。

 逃げ遅れた不運な人物と衝突する。


「わ!兄貴なんでこっちに?!ごふっ!!!」

 リングから遠ざかろうとした丸山は背を向けていたので、ぶつかる直前まで迫りくる三内に気が付かなかったようだ。

 三内の下敷きになった丸山は、少しぴくぴくしたのち動かなくなった。


「おっっっと!!!これは最速ノックアァウトオォォォ?!?!?!!」

 レフリーの声が三内に降り注いだ。


 三内は意識が朦朧としながらもリングに視線を移した。

 憎き山下は早々にリングから降りていた。

 綺麗な女性達が山下に言い寄るが、彼は軽く手を上げて拒否した。


 恰好つけやがって……


 一体何が違うのだというのだろうか。

 同じ人間だというのに、なんで特別なものを持つ人間と、持たない人間がいるのだろう。

 どんなに強く望んでも、決して手に入れる事は出来ない。

 努力して手に入れようとした時期もあったが決して手に入らなかった。


「覚えて、ろよ……」

 皮肉にも。自然に口から出たセリフが余計に格の違いを知らしめた。

 そこで三内の意識が途切れた。




「ゲホッゲホッ……」

「圭兄弱ってるね!今なら倒せるかな?」

「ちっとは心配したらどうだ」

「だいじょうぶ?」

「もう遅い。……そろそろ行くか。」

「うん!」




 二つの足音が遠ざかったところで、優太はようやく肩の力を抜いた。

 山下兄妹が人の目を気にして逃げ込んだ暗がり。

 そこにある階段さらに下ったところに優太と真華は身を潜めていた。


 優太は足元に落ちてきたロボットの頭部を拾い上げ階段に腰を降ろす。

 山下が息を吸うため放り捨てたものがここまで転がって来ていた。


「マジか……今さっきの葵の兄ちゃんかよ?!あの兄妹どうなってんだ……?!」

 仕事中はじめて葵の兄を見た時、大人しそうな印象を受けたのだがそれは誤りであったようだ。

 葵の様子から見るに葵よりも強そうだった。


 山下はさっさと息を整えて去って行ったが、優太の呼吸は未だに落ち着かない。

 優太の目が暗闇に慣れてくると、暗いところにいた真華の姿がよく見えるようになった。


 真華は平静で優太が落ち着くのを待っていた。

 そういえばロボットって息が上がるんだろうか。


 いい加減に情けないので大きく息を吸って、優太は上下する肩を無理やり抑えた。


「今の追いかけてきた奴ら誰だよ?」

 以前どこかの研究所から勝手に逃げてきたと言っていたが、追跡者がいるなんてはじめて知った。

 しかもそいつらは以前優太に話しかけてきた奴らだった。


 あの時はそれが真華の事だと思わず、スタジオで丸くなっていた別の少女を教えた。

 もしあの時本当に真華がスタジオにいたかと思うとぞっとする。


「今のは三内と丸山。研究所の下っ端。」

「お前を追ってる?」

 真華は頷いた。


「で。なんでお前、葵達からも逃げてるんだ?」

 優太は見事追跡者を打ちのめした山下にお礼をしようとしたら、真華に呼止められたのだ。

 『出てかないで、隠れてて。』と。

 真華はフッと笑った。


「さっきから質問ばっかりだね。」


はぐらかされそうだったので、優太は更に言葉を加えた。

「葵なら事情話したら助けてくれそーじゃね?」


 そう思ったのは葵が幼馴染の愛希と一緒に、風紀委員の仕事を手伝っているのを目撃したからだ。

 葵は帝都学園の治安維持を楽しんでやっているようで、生徒の頼みとあれば喜んで、引き受けてくれるはずだ。

 出来れば葵の兄にも協力を要請したい。


「それは無理。」

 考える間もなく真華は答えた。


「きっと葵達も私を探してるだろうから。」

「なんで?!一緒の学校行ってるけどそれ大丈夫な訳?」


 真華は首を振った。

「正直あんまりよろしくない。でも葵はまだ私の事、気付いてないみたいだったから。」

「気付いてない?」

 真華は察しが悪い優太を苛立たしげに見下ろした。


「言ったでしょ?私、前はこことは違うところにいて、ここに来たらこの格好になってたって。だから葵は気が付いてない。お兄さんも気付いてない。」

「葵達もお前の言ってる『こことは違うところ』から来たってこと……?」


 優太は息を呑んだ。

「まさかあの二人もロボット?!」


 真華は首を振った。

「それは違うと……思う。」


「思うってなんだよ?」

「私も分らないの!だって、あの強さ見てどう思う?」

 優太は腕を組んで唸った。


 確かに今の試合といい、体育の授業でみる体力といい人間離れしている。

 強力に作られたロボットなのか、それとも人間、または別の何かか。


 例えるならそれは……

「スーパーマン的な感じ。」


 あの強さは見ているとある種の爽快感がある。

 単純明快に強いモノが正義。

 例えるならばそんな感じだった。


 深刻そうにしていた真華だったが、優太の答えを聞きプッと噴き出した。

「キバってたまに子供みたいなこと言うよね。」


 優太は心外だというように腕組みをした。

「だってさー、喋るロボットまで出てくるぐらいだから、いてもよくね?」


 優太から見れば真華も、スーパーマンのように突飛で理解しがたい存在だ。

 自我を持ち自由に生きるロボット。


 真華は納得したように頷いた。

「分かった。仮にスーパーマンだとしても私のヒーローだとは限らないでしょ?」

「ヒーローは皆のものだろうよ!」

 真華はその楽観思想羨ましい。というように溜め息をつく。


「まぁ、とにかく!分かりやすく言えば二人は『もといた世界』のヒーロー。二人は『善意』で私をもといたところに戻そうとする。あっちにいる人のために。」

「お前あっちに家族とかいるわけだな……!」

「でも、私帰りたくない!」


 優太は『なら帰るべきじゃね!』という言葉を飲み込んだ。


「私、今が好き。樹もこっちにいる。今度の劇なんて私達恋人同士なんだよ?!」


 優太は熱く弁をふるう真華を宥めた。

「オーケー、オーケー落着けって!!!」


 真華は下を向いてフゥっと息をついた。

「でも、どうせ捕まるなら。葵達の方がいいかな……」

「おいおい!諦めんなって!」


 優太は仮面を床に置いて立ち上がった。

「牧さんに相談してみようぜ!」

 

 すっかり後ろ向きになった真華の背を押して、優太は階段を上がった。


 まず優太が出て外の様子を見た。

 また三内、丸山と鉢合わせたらいけない。


 外の様子は相変わらず騒がしく、いつもと変わらないように見えた。

 三内達が飛ばされたリング付近に目を凝らす。


 蛍光色の奇抜な恰好をした老人がいて、似たような恰好の若者達が三内、丸山の撤去作業を始めていた。

 優太は何度か同じような光景を見た事がある。


 彼らはここを拠点にしている闇医者集団だ。

 怪我をして動けなくなったファイターを介抱し、後で法を少しばかり超えた治療費を請求する。

 しかし彼らの腕は良く、この界隈では比較的良心的な集団だ。


 三内、丸山は彼らの服装のように奇抜な色の担架に乗せられ運びだされていった。

 ふざけているのか、道を開けろというアピールなのか、ピーポーピーポー!と担架を扱う青年が大きな声を上げている。


 三内丸山はピクリともせず、途中で起きる事も無さそうだ。


「いなくなった!行くぞ!」

 真華は優太の後に続いて出てきた。


 試合が終わった事でリングに集まっていた人がバラバラに動き出して、その人達とぶつからないようにいつもの螺旋階段の麓まで急ぐ。

 後少しで階段に足を掛けようというところで、真華にギターケースを掴まれ、後ろにつんのめった。


「戻ってキバ!」

 真華は近くにあった立ち飲み式カウンターに、あたかも初めからそこで飲んでいたかのように優太を立たせ、自分も同じようにカウンターの方を向く。


 優太が後ろを振り返ると螺旋階段から山下兄妹が降りて来ていた。

 真華に足を踏まれて仕方がなく前を向いた。

 それでも兄妹の会話には耳を傾けていた。




「マキいなかったね……」

「アポなし訪問だからな。」

「アポってなぁに?」

「アポイントメント。」

「アポイントメントってなぁに?」

「辞書で調べろ。」

「むー……『リリ』のこと聴こうと思ったのにな。」

「いろいろと知ってるぽかったからな。それともう一つ聞きたい事がったんだ。」

「なーに?」

「お前は知らないかもしれないが『ギター男』を探してるんだ。」

「『ギター男』……?」

「まぁ、俺の仕事の話だからお前には関係ない。」

「見つけたらどうなるの?」

「中津から報酬がもらえる。」

「じゃあアオも探す!!!」



 兄妹の声は雑踏の中に消えていき、しばらくして二人はカウンターを離れた。


「どういう事?!あの人たち、マキさんとも知り合い?!」

 真華は声を潜めながら頭を抱えた。


「なんか俺まで指名手配されてる?!追われるってこんな感じか?!」

優太は初めてその恐怖を身でもって体感した。


真華はふぅとため息をついて、パンと体の前で手を叩いた。

「決めた。私しばらくスタジオに行かない。」


 牧原は真華の連絡先や潜伏先について一切知らない。

 話した事も無いし、聞かれた事も無かった。

 自分があのスタジオに行かない限り、足取りが付くことはないと真華は考えたのだ。


「チョイ待ち!マキさんが葵サイドについたと断定はできないだろ?」

 真華はギロリと鋭い眼光で優太を睨んだ。


「わかんないでしょ?!でもイイ人なら葵達に味方しちゃうかもだし。」

 優太はうっと黙り込んだ。


 普通に考えれば彼女を家族のもとに返すのが一番いい解決方法。

 もし牧原が葵達の話を聞いて、家族に同情すれば葵達に協力するかもしれない。


「お前どうやってこの先やっていくワケ?」

 優太は視線を下げた。


「お前、手もちゃんと動いてねーじゃん。」

「気付いてたんだ。変?目立つ?」

 優太は人の些細な変化、行動についてはとても鈍感だ。

 優太でも気付いてしまう程、真華の腕に異常が出て来ていた。


「走る時は、さすがに気付いた……」

 真華は腕をさすりながらそっかと小さく呟いた。


 三内達から逃げている時、右手は人をかき分け、前に進もうと懸命に動いていたが、反して左手は体の横にダランとぶら下がっていたのだ。

 更にその腕は人混みに揉まれユラユラと不自然に揺れるのだ。


 真華は右手で左手首を掴み、ポケットの中に入れた。

 その動きはどことなくロボットダンスのように見えたが、茶化す気にもなれない。

 そして仕事をした右手もポケットの中に収めた。


「これでどう?」

 普段の腕を振って歩く真華を知っているため違和感はあったが、少なくとも腕に異常があるようには見えなくなった。


「いいんじゃね?」

 真華は自分に大丈夫というように数度頷いた。


「どうすんだよ。マキさんいなけりゃ……直してももらえないじゃん。」

「それは……」

 真華は言いよどんだ。

 そして笑顔になる。


「あんたがいるじゃない!」


 ドラマとかだったらオウ!と雄々しく返事するところだが、優太は嫌そうに顔をしかめた。


「え、俺なんも出来ませんけど?」

 真華はガキ大将を彷彿とさせる強引な態度で優太に迫った。


「乗り悪っ!とにかく私に協力すること!いい?」

「よくない。良くない。」

「……秘密ばらしてもいいんだよ?」

 真華は可愛らしい上目使いで、平気で卑怯なマネをする。


「汚ぇ!揺する気か!」

「愛希ちゃんビックリしちゃうだろーなー!キバが携帯の歌の正体だったら驚くだろーな!」


 優太は自分も『真華がロボットである』という秘密を握っているのも忘れて、窮地に追い込まれていく。


「オーケー!!!分かった。出来る範囲だぞ。」

「ありがとう。」


 真華はか弱い女の子のように動く腕を胸に当ててホッと息をついた。


「無理やり言わせたくせに……」

「なんか言った?」

「なーんにも……」

 真華はポケットに手を突っ込んだまま、歩き出した。

 そしてクルリと優太を振り返る。


「明日から頼みましたわよ!」

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