第一八八話 ラストダンス part1 (追記 21:35)
( ꒪|勅|꒪)<前編中編後編じゃないのカ?
(=ↀωↀ=)<また長くなったら困るし……
追記:
(=ↀωↀ=)<一部誤解されてるようなので効果説明に加筆
■フランチェスカ・ゴーティエ
私という人間を振り返る。
物心ついた時点で、自分の半分が家族にとっての異物だと教えられた。
母は美化した思い出に縋り、私に『本当の父親』の話を語り聞かせる。
義父は妻ではあるが自分を愛さない女への愛が薄れていたし、そんな女と『自分が愛されない原因』の混ざりものである私を疎んでいた。
ある頃までは私も娘として義父を父と慕い、義父もそれを許容していたけれど……それもいつからかなくなった。どこかで父にとっての限度を超えたのでしょうね。
それでも、妹が生まれてからは良かった。
義父はあの子を純粋に愛していたし、母もそうであったでしょう。
それに、あの子は私が純粋に愛して接することができる相手でもあったから。
ただ、結局……あの家にはいられなかった。
理由は私の政略結婚が決まったこと……ではなくその理由。
政略結婚の道具になることそのものより、そうなった理由が受け入れられなかった。
義父の言う『育ててやった恩』とやらは確かに感じていた。
理屈は分かる。
けれどきっと、義父はユーリにはそんな言葉をぶつけない。
結局、義父の言動は私自身ではないものが決定的な理由だった。
実父の遺伝子と母の態度が理由だった。
それが、私は気に入らない。
仮に嫁ぎ先が良縁であったとしても、私はきっと納得しない。
私は、私の人生が私以外の理由で歪められることを許容できない。
だから私は、此処にいる。
だから私は、こうしている。
私自身の悪徳で私の人生が転落しようと、私はそれに納得できるから。
◇◇◇
□【聖騎士】レイ・スターリング
「――踊りましょう、椋鳥玲二」
第二の【MGD】の傍で、フランクリンが笑う。
その笑みはこれまで何度も見た俺達を嘲笑うものではなく、どこか爽やかで吹っ切れたものだ。
だからこそ逆に、これまでよりもブレーキが壊れているのだと察してしまう。
「…………」
今のフランクリンは、俺に何を求めているんだろうか?
単に俺を負かしたいのか。
かつてのように、俺を晒し者にした上で負かしたいのか。
奴が俺に執着している理由は、かつて俺が奴の目論見を崩したからだと言っていた。
そのリベンジだった【RSK】戦は俺が勝ち、みんなの協力の上だが奴とモンスター軍団も倒してギデオンを守れた。
そして今日、戦争にも勝利した。
かつての言葉通りに自分を負かした人間、曲げた人間を許さないというなら、俺以上に奴に憎まれる者はいないだろう。
だが、それにしては……違和感がある。
本当に俺への復讐のためだけにこうしているのか?
『レイ……!』
「……ああ」
いや、それを考えている場合じゃないか。
今はフランクリンを倒さなければ……パンデモニウムの落下でギデオンが滅ぶ。
まず、アイテムボックスから回復魔法の【ジェム】を取り出し、前の【MGD】戦で負ったダメージを回復する。
さっきの戦いで消耗品の類は余り使わなかった。予め用意していた【ジェム】は回復魔法だけでなく、攻撃魔法のものもある。
……高級だが市販品の【ジェム】がどの程度フランクリンの真の切り札に効くかは分からないが、手札はあればあるだけ良いだろう。
「……良し」
斧の反動で灼けた左腕はほぼそのままだが、それ以外は治った。
最大HPが少し削れ、左腕も上手く動かない程度……戦うのに問題ない。
『……御主、腕とか取れすぎだからの』
否定はできない。
「回復は終わったかしら? 他にも準備があるならどうぞ」
回復を終えた俺に対し、フランクリンはそんな言葉を投げかけてくる。
この間、仕掛けてくるかと思ったが【MGD】は動いていない。
「何だ、待っていてくれるのか?」
「これが最後。ならできる限り万全の状態でやりましょう」
『ハッ! それなら日を改めて貰いたいものだがのぅ。こちらは【瘴焔手甲】も【黒纏套】もさっきの戦いで使えなくなっておるのだ』
ガルドランダが《零式》を使った反動で【瘴焔手甲】は焼けつき、【黒纏套】はチャージがなくなった。
ネメシスがバラしてしまったが、それは俺のデータを持つフランクリンには既知のことだろう……。いや、加速状態だったから後者は気づいていない可能性があったか?
「ああ。そのこと。別に装備品なんて関係ないから、何時やっても同じよ?」
『何?』
だが、フランクリンはネメシスの抗議を受けても、反応が軽かった。
こちらの装備品が不全である弱みを突く……という雰囲気ではない。
本当に些事としか思っていないのが伝わってきた。
「さて、準備はできたようだし、そろそろ始めようかしら?」
フランクリンはそう言ってアイテムボックスから奴自身よりも大きな何かを取り出す。
卵に似た楕円形のそれは、出現するとすぐに表面に線が入り、内側から開いて中身を露出する。
そこにあったのはシートとハーネス、モニター類。
その内装から、それがコクピットであると分かる。
この戦いの場で生身を晒し続けるつもりはないということだろう。
奴がコクピットに乗り込むと開いた卵は再び閉じて、それを【MGD】が抱え込んだ。
カンガルー、あるいはコバンザメのようだ。
『乗り込むのを阻止しに来なかったわね?』
コクピットの中から、フランクリンが俺に問う。
「……まあな」
今のタイミングでフランクリン自身に攻撃することはできた。
そうしなかった理由は二つ。
乗り込む様子をこちらに見せるような動作が一種の誘いに見えたこと。乗り込まれる前に攻撃しなければまずいと、こちらの動きを誘導していた気配がある。フランクリンならそこに罠を仕掛けてきかねない。
もう一つは……あっちが俺の回復を待っていたことだ。
先に見逃されておきながら、こちらは仕掛けるというのが……少し引っかかった。
『ふふふふ……』
そんな俺の考えを表情から読み取りでもしたのか、フランクリンが笑う。
こちらを嘲笑うのでもなく、ただ楽しそうに笑っている。
『じゃあ、――行くわよ』
次の瞬間、フランクリンを乗せた【MGD】が俺へと突撃してくる。
「!」
その速度は――遅い。
俺よりは速いが、しかし前衛超級職や速度特化の改造モンスターには届かない。
それでも、<マジンギア>以上の巨体による突撃は威圧感がある。
これをどう受けるか。
『Form Shift――黒円盾』
まだ最後の《カウンター・アブソープション》は切れないと判断し、咄嗟にネメシスが第三形態に変形し、黒円盾で受ける。
激突の衝撃で弾き飛ばされたが、ダメージはあまり大きくはない。
「ステータスはそんなに高くないみたいだな……!」
AGIだけでなく、STRも然程高くはない。
他者のステータスを上乗せしていた前の【MGD】には言うに及ばず。
伝説級<UBM>ベースの改造モンスターと比べてもやや劣るか?
『それはそうよ。だって、これは貴方を倒すための【MGD】だもの』
俺の言葉に、フランクリンはやはり何でもないように答える。
『レイ・スターリングを相手取るなら、高いENDは不要。STRもあればあるだけダメージカウンターの餌になる。AGIだってコピーされれば優位性を失う』
『そもそも私がくっついている時点で出せる速度には限度があるもの』と苦笑しながら、フランクリンは言葉を続ける。
『ステータスで必要なのは、固定ダメージを余裕で受けきるHPだけよ』
「……道理だな」
その言葉に、確信する。
フランクリンが出したのは強いモンスターではなく、俺を倒すためのモンスター。
それはきっと、ステータス以外にも何か仕込まれている。
HPだけでは俺に対処できない。当然、フランクリンもそれを理解している。
「シルバー!」
『!』
俺よりは速い速度に対抗するためにシルバーを呼び出す。
騎乗し、一旦距離を取るために駆け出そうとして……。
「……シルバー?」
『…………!』
そのシルバーが――動かない。
まるで光る床に吸い付いてしまったかのように、その脚が上がらない。
そうする間に、再び【MGD】が突撃を仕掛けてくる。
「くっ!?」
俺は咄嗟にシルバーをアイテムボックスに仕舞い、再び黒円盾で攻撃を受ける。
弾き飛ばされてまたダメージが重なるが、問題はそんなことじゃない。
『フランクリン! この結界に何を仕込んだ!?』
「ふふふふ……」
ネメシスが訴えるように叫ぶが、フランクリンはまた笑っている。
だが今度のそれは自身の意図が嵌まったことを喜ぶような笑いだ。
「何をした? 行動阻害……にしては俺の方は問題なく動けているよな?」
この結界に立った敵の動きを封じると言うなら、俺もそうなっていないとおかしい。
ブルースクリーン氏のような機械阻害なら、奴自身も影響を受けてもおかしくない。
そんな俺の疑問に対し……。
『《走行》。装備者が騎乗した状態で走行するスキル。装備者の《乗馬》スキルを必要とし、《乗馬》のスキルレベルによって最大速度が異なる』
フランクリンは、そんな説明文を口にした。
その説明文が何であるかを、俺はよく知っている。
シルバーの持つ装備スキル、《走行》の説明文だ。
《鑑定眼》ならば、読めていても不思議はない。
しかしフランクリンは、どうして今そんな文言を口にしたのか。
「……まさか」
俺は嫌な予感を覚え……【紫怨走甲】を使用する。
【紫怨走甲】の《怨念変換》を使い、自分への回復魔法の使用を試みる。
結果は……起動せず。
【紫怨走甲】はうんともすんとも言わず、俺は自前のMPで回復することになった。
それが何を意味するのか。
アイテムの使用禁止……いや、消費アイテムは使えていた。
ならば………。
「――装備スキルの使用禁止」
『――正解』
フランクリンはとてもとても楽しそうに、俺の答えに手を叩いた。
『《舞踏会》の効果は三つ。自身と対象の結界内への転送。外部に対する認識阻害。そして、内部での装備スキルの使用禁止』
「……!」
『もちろん私も使えないわ。尤も、改造モンスターの持つスキルは問題なく使えるけれど』
俺の特典武具は使えない。
だが、特典素材から作ったモンスターのスキルは使える。
この結界こそが、奴にとって絶対有利の処刑場。
装備品なんて関係ないって発言はそういうことか……!
『「装備品は装備しなければ意味がない」と言うけれど、装備して装備スロットに収めた装備品は使用者との間にパスが繋がるわ』
その仕様は知っている。
闘士系統などで装備品の枠が増えるのは、このパスの数を増やしているからだと以前聞いた。
『《舞踏会》の上ではそのパスが阻害されるのよ。まぁ、<エンブリオ>の場合は<マスター>と別口のパスでも繋がっているからこれでは無効化できないけれど』
フランクリンは『それでも、他の装備品を封じるだけで十分』と続ける。
『「仲間」と「装備品」。貴方がこれまで幾多の強敵を破ってきた要因の内二つがこれで潰れたわね』
クスクスと、楽しそうにフランクリンは笑う。
こちらの手札を次々に封じながら、俺だけを視ながら、奴は笑う。
『救援は来ない。特典武具のスキルは使えない。先々期文明の兵器は貴方を乗せても動かない。そして、あの妙な斧の力も使えない。頼れるのは、貴方自身と<エンブリオ>だけ。でも、次はどうなるかしら? どうするのかしら。椋鳥玲二?』
愉しむように俺を視ている。
きっとこの【MGD】は俺への対抗札をまだ多く抱え込んでいるのだろう。
そんな奴に対し、返す言葉は決まっている。
「――その程度で俺が諦めるとは思ってないだろう?」
『――当然ね』
ネメシスがいる。ジョブもある。
戦う力はまだこの手にある。
この場に立つのが俺一人で、装備が使えないとしても……諦めはしない。
何があろうと――俺は必ずフランクリンを倒す。
To be continued
〇フランクリンと【MGD】
(=ↀωↀ=)<方向性は【RSK】と同じ対レイ君用改造モンスター
(=ↀωↀ=)<だけど本気度が桁違いにヤバい
(=ↀωↀ=)<本人もお出しされたものも極まっている
(=ↀωↀ=)<あと言動は十割リアルのフランチェスカだけど
(=ↀωↀ=)<実際はアバター(cv松岡禎丞さん)のままなのも想像するとめっちゃ怖い
〇《舞踏会》
(=ↀωↀ=)<「装備スキルなんぞ使ってんじゃねえ!」してくるスキル
(=ↀωↀ=)<ちなみにレイ君だけでなくフィガロにも有効に見えるけど
(=ↀωↀ=)<フィガロはきっとスキル無くても装備補正強化されるだけで殺しに来るよ
(=ↀωↀ=)<あ、来週も更新するつもりだけどもしかしたらできないかもしれません
(=ↀωↀ=)<身内の入院と手術があってちょっとプライベートが忙しいのと
(=ↀωↀ=)<界獣の方の話が進んだのでそっちの作業を行うためです
(=ↀωↀ=)<更新できなかったらご了承ください




