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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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719/735

第一七五話 人界の<イレギュラー>

(=ↀωↀ=)<12月1日、ついに書籍新刊23巻と漫画版15巻が発売です


(=ↀωↀ=)<23巻は半分以上が新規書き下ろしなのでどうぞよろしく


(=ↀωↀ=)<あとWEB版にもあるパートの話するとHENTAIが挿絵二枚貰ってます


( ꒪|勅|꒪)<マジかヨ……

 □■皇都ヴァンデルヘイム


 【猫神】の襲来に先んじ、ザナファルドによって宰相ノブローム・ヴィゴマは【皇玉座】の外へと放出された。

 それは【皇玉座】にとっては脱出、あるいは警備のための転移機能。

 事前に登録した者、あるいは機能にレジスト(・・・・)できないレベル二五〇以下の者を外部に転移させる。要人の脱出、有象無象の排除、どちらも可能な機構である。

 皇国に仕える際にジョブとレベルを無くしたノブロームの場合は、無論後者。

 しかし侵入者撃退と違い、空中(・・)ではなく敷地外の地面に放出されているのはザナファルドの意図によるものだろう。


(メッセンジャーとして生かされた形ですね……)


 皇国の要人としてではなく、【死神】の関係者として逃がされたのだ。

 それは、かつて<死神の親指>であり、今は皇国の重臣として死ぬ心算だった彼としては不本意なものだ。


(……私としては、そのメッセージを伝うことなく終わりたいのですが)


 ノブロームは天を見上げる。

 この事件に先んじて、彼は【死神】に【邪神】の死を願った。

 クラウディア……ラインハルトの遺した命令書によれば、【邪神】を殺すために【四禁砲弾】を使うことになっていた。

 処刑という形か、王都を巻き込む形か、どちらだとしても皇国の未来に……そして仕えた皇王の生涯に大きな汚点を残す行為だ。後者であれば王都の民草に甚大な被害も生じる。

 だからこそ、それをせずに済むように……ノブロームは皇国の臣となる前の人生で自らが得た権利を、皇国のために使ったのだ。

 【死神】の手で望んだ対象を送るという、<親指>だった者にとって最後の願いを。


(ですが……)


 【死神】による死が果たされていれば、代償として彼も死んでいるはずだ。

 しかし今現在も……ノブロームに死は訪れない。


(このままでは……!)


 このままでは【死神】が【邪神】を殺すよりも先に、<イレギュラー>たる【皇玉座】を介して【邪神】には効かぬ形で【四禁砲弾】が王都に放たれてしまう。

 王都は滅び、間近で生じた大量の犠牲で【邪神】は<終焉>へと覚醒する。それは最悪の結果だ。


「宰相閣下!」


 と、【皇玉座】の外に放り出されていた彼を見て、防衛大隊の指揮官が駆け寄ってくる。

 周囲を見れば、此処は防衛大隊の指揮所に近い。

 近づいてきた指揮官以外にも、防衛大隊の軍人達は皇都を襲う緊急事態に奔走している様子だ。


「一体何が起きたのですか……ッ! お怪我を……!?」

「私のことは、構いません。それより、動かせる兵力はどれほどありますか?」


 ノブロームの銃創を見て指揮官は驚くが、ノブロームは自らの傷の具合よりも優先すべきことを口にする。


「【皇玉座】の制御がテロリストに奪われました、このままでは王都に向けて【四禁砲弾】が撃ち込まれます……」

「なっ!? それは本ッ」


 指揮官は驚愕するが、しかし事態は彼の確認と理解を待ってはくれない。


 直後、轟音と共に一発目の【四禁砲弾】が発射された。


 砲撃の反動で周囲の建築物の屋根が剥がれ、壁が崩れ、民間人にも被害が出始める。

 警告なしの砲撃による被害が、【皇玉座】に巻き起こっていた。


「遅きに失しましたか……!」

「こ、これは……」


 畏れていたことが起きたのを悔やむノブロームと皇国の歴史でも類を見ない【皇玉座】奪取という大事件に困惑する指揮官。

 だが、そんな彼らの視界の中で、【皇玉座】は次弾を装填し始めていた。

 『まだ撃つつもりなのか』。無言の驚愕がその光景を見ている軍人達の思考に満ちる。


「どの部隊でも、誰でも構いません! 【皇玉座】の制圧……いえ、砲身の破壊を呼び掛けてください!」


 最悪に進み続ける事態を前に、それでもノブロームは次善のために指示を出す。


「こ、【皇玉座】の破壊ですか……!?」

「内部に突入して制御を取り戻す時間はありません……! ならば、砲を破壊することで物理的に発射不可能に追い込むしかないのです……!」

「は、はい……!」


 そも【皇玉座】は正当な手順でテロリスト……先代【機皇】たるザナファルドに奪われたのだ。

 取り戻す手段などどこにもない。

 今できる中で、これ以上の惨劇を防ぐ手段はあの超長距離砲を破壊するしかない。

 だが……。


「し、指示は、伝えました……。……ですが……」


 通信網に対処を命じた指揮官は、通信を終えた後に冷や汗を流しながら首を振った。


「現在皇都の各地にテロリストの一派と思しき武装勢力が活動中であり、防衛大隊の戦力は全てそちらに……それも、各戦線で劣勢にある状況で……」

「ッ……!」


 ザナファルドが特務兵達を皇都全域で動かしていたのはこのためだったのだと、遅まきにノブロームも理解する。

 自分の仕事の邪魔をされないように、皇都に残る軍人と<マスター>を散らし、減らしていたのだ。


「戦争中ゆえ、有力な<マスター>の方々も不在……。何より、あの【皇玉座】は皇国最強の兵器です……。最新型の【マーシャルⅢ】を集めても、破壊は難しく……」

「…………」


 今の皇国に打てる手はなく、届かない。

 このまま座視するしかないのかと、無力感が周囲に満ちていく。


(それでも、このままではいけないのです。こんな、全てを否定するような終わり方は、あまりにも……)


 皇国も、王国も、世界すらも終わってしまう。

 迫る未来を阻む術はないかと、ノブロームが祈るような気持ちで打てる手を探す。


 そのとき……轟音が周囲に轟いた。


「「!?」」


 一瞬、再び【皇玉座】が砲撃したのかと考えたが、違う。

 それは頭上ではなく、大地から伝わってきた。

 見れば、彼らからそう離れていない道路が大きく陥没し、粉塵が立ち上っている。

 まるで上空から何かを凄まじい勢いで叩きつけたかのような有り様。

 その中心には……一人の女が大の字に倒れていた。

 その顔に、ノブロームは見覚えがあった。


「……【掻姫スクラッチ・プリンセス】アカネ・グラフィ?」


 彼女は<LotJ>に属する【掻王】ドミンゴスよりも前に拳士系統爪拳士派生超級職に就いていた人物であり、かつて任務中に死亡した特務兵だ。

 彼女も他の特務兵同様に蘇って皇都で活動していたのだろう。

 しかし今は砕けて陥没した道路の中央に倒れ……胸に大穴を空けて死んでいた

 その死体も光の塵になって消えていく。


「これは、いったい誰が……」


 明らかに何者かによる殺害。

 今の皇都に特務兵に属していた彼女を倒せる人物がいるのかとノブロームは考えて、彼女の落ちてきた空を見上げて……。


『――――』


 見上げた空に、金とも銀ともつかぬ色合いのパワードスーツを見た。


「……!」


 そのパワードスーツに見覚えはない。

 皇国で創られた如何なる機体にも類似はない。

 だが、パワードスーツを使う猛者ならば、ノブロームには覚えがあった。


「【機甲王】、バルサミナ……」


 その名を、とある事情からノブロームはよく知っていた。

 バルサミナは皇国のランカーの一人であり……ノブロームがスポンサーを務めるフランクリンと揉め、リスポーンキルを受けていた、と。

 その件に関してはノブロームも知っていた。

 皇国戦力同士の潰し合いだ。本来であれば苦言を呈して止めるべきだった。

 しかし、国にとってより重要な存在となったフランクリンとの関係を重視して何も言わなかった。

 皇国全体の軍備に関わる生産系のトップであるフランクリンと、一介の戦闘系ランカーであるバルサミナを比較し、前者を選んだとも言える。

 元々<マスター>同士の争いには不介入なのが前提ではあったが、ノブロームは自分がバルサミナを見殺しにし続けていたことは自覚している。

 しかし何の因果か……今この場で現れたのはそのバルサミナだったのである。


『…………』


 バルサミナは眼下のノブローム達を一瞥し……しかしそのまま何も言わずに飛び立つ。

 向かう先は、再度の砲撃準備を進める【皇玉座】。

 その意図は明白だ。

 この危難を止めるために飛び立ったのだと、誰にでも分かる。


 ノブロームはそんなバルサミナの背を、複雑な表情で見送った。


 ◇◆


(何で宰相(お偉いさん)がこんなところにいたのかね?)


 【皇玉座】へと飛びながら、先刻見た光景についてバルサミナは思案する。


(ともあれ、やることは決まったな)


 街中で暴れていた何人目かの<天獄の駒>を倒した際、【UOG】が傍受した通信から状況は分かっている。

 【皇玉座】の破壊。少なくとも砲を破壊しなければ、相当にマズい事態になるらしい。


(あれは皇国の兵器だが、人に管理された<UBM>だ。なら、倒して特典にするのも可能か)


 流石にそれをすれば問題になるだろうか?

 それとも破壊命令が出ているので大丈夫なのか。

 バルサミナとしてはどちらでもいい。

 あれが特典になってしまったとしても、問題になったとしても、結局はバルサミナがカルディナに持ち逃げすることになる。


(ま、砲を壊した後にやれそうならやるか。そうなったときは事態解決の駄賃とでも思ってもらおう)


 バルサミナとしては、まだこの【UOG】のスペックを使い切っていない。

 慣らし運転のラストとしては、荷が勝ちすぎている相手かもしれない。

 だが、バルサミナは既に……主役の相対する悪役(ボス)として【皇玉座】を見据えていた。


『さて、相棒にも連絡を入れておくか』


 バルサミナはそう呟いて、【UOG】の通信機能を起動させた。


 ◇◆


「バルサミナさん、どこぉ……?」


 セブン・ドワーフの輿で街中を進みながら、ミミィは涙目でバルサミナを探していた。


『機動力が違いすぎる。あの機械の鳥に乗った方がいいのではないか? この土地とならば相性も悪くはないだろう』

「変なドラゴンに落とされたペリカンさん以外は人が乗るのに適してないもん……」


 現在はカルディナのランカークランである<ゴブリン・ストリート>に属するニアーラに頼み、金銭を対価に闘技場で鋳型を取らせてもらったスィーモルグ。

 だが、人員輸送用のカーゴ・ペリカンは撃墜された後にまだ再生成が済んでいない。

 ゆえに、雑用担当のセブン・ドワーフに移動も委ねているのだ。

 これでもミミィ本人が歩くより大分マシな速さである。


『……ドラゴンか。どんな奴(・・・・)だった?』


 そんなミミィとエルヴィオンの会話に、エレクィングが疑問を挟む。


「えっと、だから、変なドラゴンだよ……? 輪郭はドラゴンなんだけど、ドラゴンに見えない(・・・・・・・・・)の……。うーんと、ドラゴンの絵に変なスクリーントーン(・・・・・・・・)が貼られてる……みたいな? グネグネに見える感じ?」

『…………』


 ミミィの曖昧な説明に、しかしエレクィングは一定の理解を示す表情をしていた。

 まるで、該当するもの(・・・・・・)を知っているかのように。


『新入り、何を知っている?』

『俺も詳しくは知らねえよ。けど、乗り物を落とされただけで済んで良かったな。家主でもまともにやったら死ぬ相手だ』


 一体あのドラゴンは何だったのか、それをエルヴィオンが問いただそうとしたとき……。


「きゃっ!?」


 皇都全域を揺らす轟音に、ミミィが悲鳴を上げた。

 その音の発生源は、皇都の中心……【皇玉座】の砲撃に他ならない。


『無粋な音だ。これだから下賤な機械は好かない』


 実にエルフらしい物言いでエルヴィオンが文句を言う横で、エレクィングは複雑な顔で【皇玉座】を見上げていた。


(マジで奪って、マジで撃ったんだな……。あれが発射されるところなんて、生きてるときも見たことなかったぞ)


 自分の上司が、仕えていた王が、どこに進もうとしているのか。

 <親衛隊>と違い、生前はあくまでも軍人として属していただけのエレクィングにはその心中までは分からない。

 死後も呼び出されて<天獄の駒>となって従っていたが、それも自分という人間を継続するために選んだ道だ。

 そして今は、<天獄の駒>ですらなくなった。

 エレクィングにとってあの【皇玉座】にいる者達は……遠かった。


「あれ……バルサミナさん?」


 そんな中、【皇玉座】を見ていたミミィは、金とも銀ともつかぬ色合いのパワードスーツが飛翔し、【皇玉座】の砲身へと飛ぶのを目にした。

 バルサミナは、明らかに攻撃の意図を以て飛んでいる。


『相棒、聞こえるか』


 不意に、彼女の装備品の一つである通信機能のあるアクセサリーからバルサミナの声が聞こえた。


「バルサミナさん……?」


 繋がることに不思議はない。ミミィの装備を用意したカリュートが、予め【UOG】の通信先としてミミィの装備を登録していたのだろうと予想がつく。

 問題は、ミミィを相棒(サイドキック)と呼んで皇都を襲う特務兵(テロリスト)との戦いに巻き込んだバルサミナが、再びあちらから呼び掛けてきたことだ。

 嫌な予感がしながら、ミミィが言葉を待っていると……。


『――これから<イレギュラー>と一戦交える。援護を頼む』

 ――想定の数段上の無茶ぶりが飛んできた。


 そしてその一言で通信は切れてしまい、否も応も伝えることはできなかった。


「えぇ…………?」


 強引すぎる同僚に、ミミィが呆然とした顔で声を漏らした。

 出会って間もないのに既に振り回されている。

 元々ミミィ自体が流されやすい人間ではあるが、バルサミナとの組み合わせは輪をかけてミミィへの無茶ぶりが酷い。

 とはいえ、新たな同僚であるバルサミナを連れ帰ることがミミィの仕事であるため、協力しない訳にもいかない。


(……まぁ、議長が何も言ってなかったんだから……そのまま流れで良いのかな……)


 なお、議長が知れば『放置してさっさと帰って来なさい』と言っているだろう。

 とはいえ、最たる問題はそこではない。

 <イレギュラー>……情況的に【皇玉座】との戦闘になることはミミィにも理解できている……が。


「『『…………』』」


 ミミィだけでなく、エルヴィオンとエレクィングも無言であり、三人それぞれが嫌な予感を滲ませた顔で【皇玉座】を見上げている。

 エレクィングは、特務兵として【皇玉座】のスペックを幾らか知るがゆえに。

 ミミィとエルヴィオンは、身近だった別の<イレギュラー>を知るがゆえに。


 人界の<イレギュラー>との戦いがどれほど危険なものか、この三人には予測できていた。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<次回、VS<イレギュラー>


(=ↀωↀ=)<次の更新は新刊発売日の12月1日です


(=ↀωↀ=)<その日に連続更新して皇都パートが終わる予定となっています


(=ↀωↀ=)<いま書いています


(=ↀωↀ=)<新刊も更新もよろしくね!



○【掻姫】アカネ・グラフィ


(=ↀωↀ=)<出落ちみたいに死体で登場した特務兵


(=ↀωↀ=)<本来は超級職と相性の良い特典武具使うタイプだったのに


(=ↀωↀ=)<一回死んで特典武具の方が回収されてしまったので生前より弱体化してる人


( ꒪|勅|꒪)<ちなみにどんな特典武具だったんダ?


(=ↀωↀ=)<攻撃がヒットする度にダメージが倍になる爪の特典武具


( ꒪|勅|꒪)<……【掻王】/【掻姫】の奥義って多段ヒット技じゃなかったカ?


(=ↀωↀ=)<うん。つまりそういうこと


(=ↀωↀ=)<ドミンゴスとは別ベクトルで相性が良かった

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― 新着の感想 ―
掻王って不憫の代名詞か何かなんかね…
新刊の発売日、楽しみです。 攻撃がヒットする度にダメージが倍になる爪武器、武器生産職の超級職だと簡易セーブポイント並みの確率で作成出来るのでしょうか?
ミミィって不憫かわいいですね… あ、前から気になってたんですが、グランバロアにいる巨人系のモンスターってどういう感じなのでしょうか…??イメージがつかなくって…某ドラゴンなクエストの単眼で棍棒持ってそ…
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