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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-  作者: 海道 左近
第七章 女神は天に在らず

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第一六八話 【MGD】

(=ↀωↀ=)<ここでギデオンに視点戻しますよー

 □■<ジャンド草原>


 空中に浮かぶ肉色の鬼灯、【I(インビジブル)W(・ラッピング)B(・バルーン)】。

 特典素材を利用して作られたこの使い捨て(・・・・)改造モンスターの能力は『自らの存在を隠蔽しながら、モノを包んで浮かぶ』のみ。

 戦闘力など欠片もないが、巨竜の如き【MGD】をも包んだまま浮遊できる。

 高い隠蔽能力と格納能力を併せ持たせた代わりに内部のモノが出るときは内側から引き裂き、【IWB】を殺して出るしかないため、コストは非常に悪い。

 しかし一度きりの奇襲に使うならば、上等。


『――【蹂躙砲】、発射』


 眼下に群れる敵……王国の<マスター>に向けて、【MGD】は自らの主砲を撃ち放つ。

 気づいた者達が注意を呼び掛けるが、とても退避が間に合うタイミングではない。


『――ゴゴゴゴッ……――』


 その中で動いたのは、ロードウェル。

 外殻を重ねた巨大化で【MGD】にも匹敵するサイズになっていた巨鎧が大きく両手を広げ、頭上からの攻撃から仲間達を護る壁にならんとする。

 どれほどの威力の砲撃だろうと、巨大化を重ねたこの身と多重装甲で受けきり、仲間を護ってみせると……ロードウェルは《蹂躙砲》を迎え撃つ。

 そして天から降り注いだ瑠璃色の砲弾が巨鎧(マトリョーシカ)に直撃する。


 ◇◆


 煌玉竜シリーズは先々期文明末期……“化身”襲来以前から初代フラグマンが開発を進めていた機動兵器群である。

 元々は【アヴァン・ドーラ】同様に人類の勢力圏をモンスターから切り取るために創られた存在であり、神話級の怪物とも戦える性能を求めて設計された。

 最新型の天竜型動力炉を搭載し、個別の主砲を除けばほぼ共通の規格で造られた機械仕掛けの竜達。

 その内の一騎が【瑠璃之蹂躙ラピスラズリ・トランプル】だ。

 完成後は“化身”との戦場に投入され……しかし【アヴァン・ドーラ】同様に“夢遊の化身”によって搭乗者の五感を狂わされ、海中に没した悲運の兵器。

 この“夢遊の化身”への敗北が後の要塞級特攻戦艦の開発に繋がることとなるが……それは別の話だ。


 敗北したものの【瑠璃之蹂躙】自体が失敗だった訳ではない。

 設計通り、神話級とも正面から五分に戦える戦力は有していた。

 さらに耐久性も優れており、海中に没し、搭乗者死亡によって二〇〇〇年以上の長きに亘って休眠状態に陥っていたものの……容易に再起動可能な状態で維持されていた。

 それを見つけたのが、フランクリンだ。

 フランクリンは第一次騎鋼戦争の後、素材集めのために改造モンスターで海底を探索中に擱座した【瑠璃之蹂躙】を発見。

 皇国軍と連携を取り、ギデオンの事件後にハリボテの皇国海軍を囮にグランバロアの注意を逸らしながら秘密裏にサルベージを実行。回収した【瑠璃之蹂躙】をクランの本拠地まで移送した。

 その後、動力炉のある胸部及び動力炉と直結した主砲のある頭部……機体中枢を取り外し、自らの作る最強の改造モンスターのパーツ(・・・)に流用した。

 そして今、王国との戦争でその主砲を使用したのである。


 ◇◆


 幾重にも……それこそ数十層もの装甲を重ねたマトリョーシカの巨大外殻。

 《蹂躙砲》の砲弾はその全てを貫通、破壊、蹂躙しながら突き進む。


『――――!?』


 それが単に高威力なだけではないと、鎧を纏うロードウェルは即座に気づいた。

 この砲撃には、無駄がない(・・・・・)

 外殻の破壊に十万のダメージが必要ならば、十万のダメージを。

 次の外殻に九万のダメージが必要ならば、九万のダメージを。

 過不足なく、破壊に必要なエネルギーを注いで次々に貫通していく。

 然もありなん。

 個別の主砲を持つ煌玉竜シリーズだが、【瑠璃之蹂躙】に搭載された《蹂躙砲》は単体を確実に消滅させることを重視した《深淵砲》とは大きく異なっている。


 そして、《蹂躙砲》の正体は無数の固定ダメージ魔法の集合体(・・・)だ。


 相手を破壊・貫通するのに必要な数だけ炸裂し、残りの砲弾を先へ先へと送り込み続ける知性爆弾(スマートボム)である。

 この砲弾は暴走する獣達の踏み荒らし(トランプル)の如く、阻む全てを粉砕しながら前進する。

 積層装甲だろうと、【ブローチ】の類であろうと、その威力を必要以上にロスさせるには及ばない。


『――ゴ――』


 そして《蹂躙砲》は無駄なく、必要な分のエネルギー消費でロードウェルを抹殺。

 残存したエネルギーで地上の王国勢を蹂躙(・・)する。

 触れれば消し飛ぶ《蹂躙砲》の砲弾群を受けて、多くの<マスター>が防御スキルや【ブローチ】があってもなお消えていく。


「ッ……!」


 シルバーに乗るレイや翼で飛翔するジュリエットはその機動力で回避していくが、地上を駆けていた他の<マスター>達はそれができない者も多かった。

 拡大する被害と混乱の中、仲間達がどうなったのかも確認できない。

 地上でロードウェルを始めとする王国の<マスター>達が、上空で【IWB】が光の塵と化す。

 そうして、リソースの輝きが満ち……。


『――いやぁ、デカくて良い的だったねぇ』

 ――凄惨さと美しさの入り混じる戦場に……地響きと共に巨大な怪物が降り立つ。


 怪物の傍らには、いつかのようにホログラムで投影されたフランクリンの姿がある。

 コクピット内をリアルタイムで映しているらしく、背後には<宝>のフラッグも見えていた。


「……フランクリンッ!」


 その姿に、その声に、レイが反応する。

 レイにとって宿敵と呼ぶべきモノ。兄や仲間と共に一度は打倒し、そしてこの戦争の最終局面で自分をこの場に呼び寄せた存在。

 彼は今再び、【大教授】Mr.フランクリンと相対した。


『やあやあレイくぅん? 招待状(・・・)は受け取っていただけたようだねぇ』

「どの口で言いやがる」


 受け取らせるためにギデオンを人質に取っていただろうがと、レイはホログラムのフランクリンを見上げながら睨んだ。


『君ならこの呼び方で来ると思ったからねぇ。でも安心しなよ。君が来てくれたならギデオンには手を出さないとも。ほら、今の砲撃だって配慮したからギデオンは無傷だろう?』

「逆だろ? 地下にモンスターを仕込んで、上にそのデカブツが潜む。その陣形こそが目的でギデオンに配慮した訳じゃない」

『それはそうだねぇ』


 地中のワームからのモンスター軍団の展開と滞空した【IWB】内からの奇襲。

 どちらも<ジャンド草原>にレイ達が来ていなければ成立しない。

 そして、『何かを護りたい』という相手の意思を利用して自分の罠に引きずり込むのは、フランクリンが<果樹園>やあの夜にもやっていた手口だ。


「だが、生憎と俺を殺せなかったみたいだな」

『そもそもあれで死ぬとも思ってないよ。君、その煌玉馬で飛べるからねぇ』


 真上からの直線砲撃ゆえに発射が見えていて飛べる者なら回避も難しくないだろうとフランクリンは言う。

 まして、レイにそれができないとも思っていない。


『まぁ、この【MGD】のお披露目には丁度良かったんじゃないかな?』


 巨大な怪物……【MGD】はフランクリンの言葉に呼応し、両腕を拡げて見せる。


「【MGD】……」

『ああ。本来は他の<超級>に勝つために作った改造モンスターだけどねぇ。前の事件の時点で君に使うと決めていたよ』


 【MGD】は金属の身体を持つ怪物。

 けれど、首から上と下では色が異なり、別の怪物を接合したような異形になっている。


『……【RSK】といい、相変わらずモンスターのデザインセンスは良くないらしいのぅ』

『真っ黒極悪ファッションな君達に言われてもねぇ』


 その反論に、ネメシスは思わず『うぐぅ……!?』と苦鳴を上げる。

 やり取りを聞いた生存者からも、『それはそう』と納得してしまう者が一定数出ている。

 なお、ジュリエットだけは『それがいいのに……』と思っていた。


 しかし同時に、聞く者の一部は理解している。

 レイ達は王国勢が立て直す時間を会話で稼ごうとしており、フランクリンは何らかの意図があってそれに乗っているということを。


『ただ、【MGD】については仕方のないところもあるんだよ。もっと合体怪獣らしい見た目にしたかったけど、強度や安定性を考えたら首から下は一番頑丈でデカい【ドラグニウム】の完全遺骸をガワにするのが良かったのさ』

「…………」


 その言葉と【ドラグニウム】という名前から、【竜王】の特典素材を使った改造モンスターなのだろうということはレイにも察しがついた。

 だからこそ、首から上が問題だ。


「その頭、先々期文明の品じゃないか?」

『おっと流石に分かるかな? 君、これまで何度も関わってきたからねぇ』


 レイはシルバーの所持者であり、カルチェラタンの<遺跡>で決戦兵器とも戦っている。

 それゆえか、先々期文明の……初代フラグマンの手掛けた作品に共通する雰囲気を感じ取ったのだろう。


「先々期文明の兵器をそのまま使うならともかく、そんな風に流用や修理するのは難しいって聞いたんだがな」


 実際、破壊された【黄金之雷霆】は【セカンドモデル】のプラントが発見されるまで修理の目途が立たず、一度は副葬品として埋葬されたほどだ。

 そしてプラントが発見された後も、そこからの技術流用はまだ途上……始めることすらできていない。


「先々期文明兵器を改造モンスターのパーツに使えるほどの技術が、皇国にはあったのか?」

『そういうリバースエンジニアリングが得意な同僚は昔いたけれどねぇ。これはそういう話じゃない。皇国だからじゃなくて私だから(・・・・)だし、改造モンスター(・・・・・・・)だから(・・・)だよ』

「?」

『これはもう先々期文明の兵器じゃなくて、私の改造モンスター(・・・・・・・・・)ということだねぇ』


 先々期文明の機械を取り込むなど、本来であれば難しいことだ。

 フランクリンはパンデモニウムの必殺スキルを用いて【瑠璃之蹂躙】の機体中枢を素材とし、そのまま改造モンスター(・・・・・・・)に仕立てたのだ。


『あのデカブツを吹っ飛ばした主砲も、この巨体を動かす魔力も、全てはモンスターにして取り込んだ先々期文明の動力炉が補ってくれている訳さ』

「無茶苦茶だな……」

『私とパンデモニウムはモンスター作成なら素材次第で結構な融通が利くからねぇ』


 フランクリンは説明しながら愉しげに笑う。

 そんなフランクリンに対し、レイは……。



「……他人のステータスを上乗せする能力を持たせたり、か?」

 確認するように、そう問いかけた。



 その言葉に、【MGD】のコクピットでフランクリンが目を細める。


『ああ。気づいていたのかい』

「前に講和会議で兄貴相手にもソイツを持ち出しただろう」

『……あれだけで。やっぱり面倒だったわね、アイツ』


 自分にとっての宿敵はレイ・スターリングだが、天敵はシュウ・スターリングなのだろうと、フランクリンは実感する。

 だが、それは別にいい。

 厄介な相手は【獣王】が引き受けてくれた以上、問題はない。


「兄貴の推測は聞いていたし、もっと言えば……今も見えてる(・・・・)んだよ」


 《看破》によって、【MGD】のステータスは把握できている。

 隠されもしていないそのステータスの内、HP・STR・AGI・ENDの四種は《獣心憑依》をした【獣王】と同じように加算表記されている。

 そしてこの内の一つ、AGIの数値は見覚えのあるジュリエットのもの(・・・・・・・・・)だ。


『もうちょっと勿体ぶっても良かったけど、バレてるなら引き伸ばしても仕方ないねぇ』


 わざとらしくやれやれと言った様子で、フランクリンは言葉を述べる。


『生産職がMVPとなった場合、多くの場合は素材か職人道具の形で特典がドロップする』


 『私の場合は全部素材だったねぇ』とフランクリンは言葉を続ける。


『素材は加工の手間が要るし、腕次第では特典武具に及ばず、さらには復元性すら失われる。これは大きなデメリットさ。特に素材でモンスターを作ったら死=ロストだからねぇ』


 実際、それで特典素材から作った装備をロストするケースは何度か確認されている。

 そしてフランクリンも【DGF】や【DGK】、【IWB】をそれで失っている。


『利点は、腕さえあれば加工の過程でアジャストの方向だって決められること』


 特典がどのような能力を持つかは決められないが、特典素材ならばコントロールできる。

 それが、<超級エンブリオ>の能力による生産ならば尚の事。


『パンデモニウムはモンスターの生産については高い自由度を持つ。オーダーメイドのモンスターや生産設備の代わりになるモンスターでも生産可能だし、特典素材の生前の特性を狙って引き出すことも容易い』


 むしろ、投じる素材リソースと能力の取捨選択で生前を超えることも可能だ。


『パーツの一つ、【ドラグニウム】の話をしようか』


 【鉱竜王 ドラグニウム】。地竜の【竜王】の一種であり、山脈の地下に潜むもの。

 かつて滅んだ【金竜王】の息子であり、地竜の中で最も耐久力の高い体を持つ。

 これは誇張ではなく、真に……そして常に(・・)最も高い。


『【ドラグニウム】の力は、周囲の生物の中で最も耐久力(END)の高い生物のENDを自分自身に加算すること』

「!」


 獣戦士系統の《獣心憑依》と同様だが、違いは二つ。

 ENDのみであることと、キャパシティ内のパートナーではなく半径一〇〇メテル内の生物全てを探査してそれを行うこと。

 元々のENDも四万オーバーであったがゆえに、常に相手より硬い竜として君臨していた。

 ただし、その特性をフランクリンの《叡智の解析眼》で見抜かれ、入念に準備された上で【キングサイズ・オキシジェン・スライム】に屠られ、特典として【鉱竜王完全遺骸】がフランクリンの手に渡った。


『で、似たような上乗せ能力を持っているモンスターは探せばいるものでねぇ……』

「……必要なステータス分、そいつらを狩り集めたってか?」

『そういうことさ』


 周囲の最も高いENDを足しこむ【ドラグニウム】以外にHPとSTRとAGIで同様のスキルを有する<UBM>を見つけ出し、討伐し、これを素材として改造モンスターを作成。

 そして……。


『【RSK】を覚えているだろう? 【MGD】はある意味ではあれの同類さ』

「同類?」


 【RSK】の同類。

 同体にして、別個体。別個体にして、同体。

 つまりは……。


『【MGD】……その中核たる【ディラン】は別の改造モンスターと接合してその能力を共有できる(・・・・・)

「!?」

『だからこそ、《キメラテック・オーバード》という無法が成立するのさ』


 周囲で最も高いHPをコピーする力。

 周囲で最も高いSTRをコピーする力。

 周囲で最も高いAGIをコピーする力。

 周囲で最も高いENDをコピーする力。

 そして、膨大なエネルギーを齎す動力炉と強大な主砲。

 その全てを、同時に発現する。

 即ち、HP・STR・AGI・ENDの全てにおいて……常に周辺生物で最強のステータスを獲得するのが【MGD】という改造モンスター。

 《キメラテック(複合魔獣式)オーバード(超強化法)》の前に、ステータスで上回ることなど不可能。【MGD】は必ず相手以上の存在になる。

 かつてローガンを挑発し、【ゼロオーバー】との戦闘を行ったのは……この機能が十全に作用するかの確認だ。

 そこらの<UBM>程度のステータスなら問題なく機能していたが、全ステータス一〇万オーバーの相手などはそうはいなかったため……【ゼロオーバー】は非常に良いテスト相手だった。

 加えて、先の講和会議での戦闘ではレヴィアタンのステータスを獲得できることも確認している。

 理論上、必殺スキルを発動した【獣王】相手でも互角以上のステータスで戦える存在。


 それこそが対<超級>改造モンスター、【M(メカニクス)G(・ゴッド・)D(ディラン)】である。


『私の【MGD】は最強だとも。たとえ<SUBM>が相手でも正面から倒してみせる』

「…………」


 フランクリンの言葉を、レイは何かを思案するように聞いていた。


『前に君は言っていたねぇ。「<超級>のお前でも、理由なく無敵のモンスターなんて創れなかった」ってさぁ』


 そんなレイに対し、フランクリンは愉しげに言葉を続ける。


『御覧の通り、「理由ある無敵のモンスター」をお出ししたよ。どんな気分だい?』


 かつてのレイの言葉に煽り返すように、フランクリンはそう言って笑う。

 だが、レイはやはり無言で【MGD】を見上げている。


 言うまでもなく、脅威ではある。

 脅威ではあるが……しかし畏怖以上に考えるべきことが今のレイには二つ(・・)あった。

 一つは自分の手札との噛み合わせ(・・・・・)について。

 そしてもう一つは、フランクリンの言葉について。


(フランクリンは自分の利点を話すタイプだが、その実、言わなかったことの方が重要だ)


 かつての【RSK】戦が正にそうだった。

 そして今の【MGD】の説明でも不足しているものがある。


 【MGD】はHP・STR・AGI・ENDを複合スキルたる《キメラテック・オーバード》で増強し、半機械化した身体を動かすMPは動力炉によって賄う。

 必要ステータスを完備した、歪にして無欠の改造モンスター。

 ……否、一つ足りない(・・・・・・)

 それはこの巨体では意味がないDEX(器用さ)ではなく、通常では然程価値がなく横並びなLUC()でもない。


(こんな破格のスキルのコストを、どうやって補っている?)


 動力炉から供給されるMPでそちらも賄っている?

 しかし先々期文明の動力炉と言えど、主砲とあの巨体の動作を担いながらさらにスキルに回せるものか?

 そもそも、《キメラテック・オーバード》のようなステータスに干渉して改変するようなスキルならば、消費するのはMPではなく……。


『「SPはどうした(・・・・・・・)」……って顔をしてるねぇ?』

「……!」


 レイの疑念を察したように、フランクリンは嗤う。


『いいじゃないか。疑問に答えてあげようとも』


 その言葉に、レイは理解する。

 今回は弱点になるがゆえに隠していたのではなく、それこそ勿体ぶって(・・・・・)いたのだ。

 これから話すことこそが、今回の戦いにおいて……レイ・スターリングとの決着において何より重要だから、と。

 これまでの会話も、最終的には此処に繋げたいがためのもの。


これ(・・)が、動力炉と並ぶもう一つのエネルギー源さ』


 そうしてフランクリンがコクピットのボタンを押すと、【MGD】の腹部装甲を開く。

 稼働音と共にゆっくりと開いていく装甲をレイは見つめ……。


「……………………は?」


 それを見た瞬間には、ただ一文字の声を漏らすほかなかった。



 機械的に展開した【MGD】の腹部に、臓物などは詰まっていなかった。

 その中には培養液に満ちた数十のカプセル。

 そして、苦悶に満ちた表情でその中に閉じ込められた人間(ティアン)達がいた。



『――君の真似(・・・・)だよ』



 耳障りなフランクリンの声音がレイの耳を撫でる。

 勝つための、そしてレイの心を折るために用意した仕組みのお披露目を……待ち望んでいたように。


 To be continued

(=ↀωↀ=)<しばらくは間に合ったら月曜日、間に合わなかったら木曜日更新のスタイルで生きます

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― 新着の感想 ―
うわぁ…という感想とともにティアンでコスト賄えるものなのか?って疑問が湧いた 多分次回にフランクリンが説明してくれるだろうけど、ティアン由来の何かを吸い上げるわけじゃないんだったらマスターを中に入れた…
レイの前に悲劇を持ってくると丸ごと潰される未来しか見えねえ…
おいユーゴー、お前のせいやろこれは
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