拾話 ベヘモット 後編
(=ↀωↀ=)<前回と分割したのに普通に二話分ある……
■ベヘモット
クラウディアとはそれからも色々なことを話した。
彼女の両親や兄の事、立場、二重生活、ハイエンドという特殊な生まれ。
最近ではそれらに纏わる諸問題に人格を増やして対応しようとしていること。
『……人格ってそんな簡単に増やしたり改造できるの?』
「簡単ではありませんけれど、私ならできますわね」
『……今のクラウディアが話しやすいからあまり変えないで欲しいけど』
「ああ。こちらはそのまま残しますわ。ちょっと脳の容量を使いますけれど、問題ありませんわ。私はハイエンドの中でもそういう小技が得意な部類ですもの。……先代のように戦闘力特化でも良かったのですけど」
人為的な多重人格化って小技かなぁ……。
トンデモないし人間離れしていると思うけれど。
……だからこそわたしも他の人間と接するよりも落ち着けるのかな。
それに、クラウディアも子供の頃に第三皇子だった父親を殺され、政治や安全上の理由から暫くは母方の家に引きこもっていた話を聞いたときには、『似ている』とも思った。
そういうわたしに似た傷があることで、わたしはまた少し彼女を受け入れた。
けど、引きこもっていた彼女も親友ができて一緒に皇都の学園に通うようになった結果、今のような活発な彼女になったのだという。
そのことに『良かったのかな。良かったんだよね』と複雑な気持ちになるけれど、そうなったクラウディアが調査やパトロールをしていてわたしが見つかったんだから……やっぱり良かったんだろう。
同時に『わたしもクラウディアと関われば何か変わるのかな?』とも思った。
『……?』
ただ、このあたりでわたしは疑問に思った。
クラウディアは、会ったばかりのわたしにあれもこれも話しすぎではないだろうか、と。
過去のこと、人格のこと、そして国家機密レベルの話も混ざっている。
会って間もないし、この世界での素性も定かでない<マスター>に話すことじゃない。
さっきの話にあった親友だって聞いていないこともあるはず。
そう思ってクラウディアに聞いてみると……。
「ベヘモットには包み隠さない方がいいと思いましたのよ」
『何で?』
「貴女、こちらから距離を詰めないと離れていくタイプですし、質問されすぎるのも好きじゃないでしょう?」
『…………何で初対面でそれがわかるの?』
自覚は少しある。
壊れてわたしを見なくなったお母さんや、あの事件以前の友人達。
そうした人達に、わたしはもう会おうともしていない。
自己分析すれば、お母さんに呼びかけて無視され続けた経験で『わたしからのアプローチ』に消極的に……臆病になっている。
ついでに言えば、あれこれと聞いてくる人間もあの事件のマスコミのせいで苦手だ。
だからこそ、逆に向こうからあれこれと彼女自身の事を話してくるクラウディアとは話しやすい。
けど、そんなわたしの性格を……会ってからどのくらいの時間でクラウディアは把握したんだろう?
「私、そういうことが得意なハイエンドですの!」
『ハイエンドって言葉、便利だね……』
ジョブに限らずオールマイティ過ぎる……。
……ううん、クラウディアが特にそういうタイプなんだっけ。
何でもできるようで実は向き不向きがあるから……友人になって手伝ってほしいってクラウディアは言ったのかな。
『…………』
「できますわよ、ベヘモットなら」
『しれっと心読まないでくれる?』
『まだこの世界で何もできていないわたしに何ができるか分からないけどね』と思ったらノータイムで返答された。
……手間がなくていいけれども。
『…………』
まぁ、クラウディアが期待してくれているし、元々の願望もある。
クラウディアが守っているこの街を壊そうとはもう思ってないけれど、……壊したいものを壊せるだけの力はやっぱり欲しい。
だからわたしも……強い<エンブリオ>が欲しいな。
◆
そんなわたしの想いが通じたのか分からないけれど。
それから間もなく、わたしの<エンブリオ>が生まれた。
◆
「私はTYPE:メイデンwithガードナー【怪獣姫 レヴィアタン】。最強の怪獣です。ベヘモット、共に立ちはだかる全てを蹂躙しましょう!」
それが生まれた<エンブリオ>……レヴィの第一声だった。
「『…………』」
わたしはクラウディアと顔を見合わせる。
わたしが自分を指差すと、クラウディアは「ですわ」と頷いた。
……そうか。<エンブリオ>って<マスター>のパーソナル次第だっけ。
…………そうなるよね。
『GAOOOOOOO!!』
なお、レヴィはそんなわたし達の反応をどう思ったのか、ガードナー体……二階建ての家くらいの大きさの怪獣に変身して吼えていた。
うーん、クイーンから聞いていたアバターの限界サイズに近いかな?
……あと何倍かは大きくないと映えないかも。
◆
レヴィは「私達は最強です」、「他の全ては有象無象」、「鎧袖一触、全て蹴散らしてみせます」、「この国ごと踏み壊してしまいましょうか」といった強い言葉を吐き、わたしと自分以外の全てを見下しながら突撃し……よく負けていた。
<エンブリオ>が持つという固有スキルは一切ない。
代わりに同じ到達形態のガードナーよりはステータスが高いらしいけれど、弱い。
クラウディアの叔父という軍人さんに訓練をつけてもらったときは、「訓練など必要ないでしょう。私ならばどれほどの敵でも容易く蹴散らしてみせます!」と言っていたのにあっさり負けていた。
聞いたところによると第一形態のレヴィの強さは亜竜クラスらしい。
『こんな、はずでは……』
『…………』
怪獣形態で倒れているレヴィについて、わたしは深く考える。
力押ししかできないのに力押しで負ける。
なのに自分が最強だと思って突っ込むからやっぱり負ける。
メイデン体は賢そうな見た目なのに、レヴィはものすごく……残念な子だ。
『…………』
でも、わたしはレヴィのことを悪く言えない。
だってレヴィはこれ以上なく、わたしの<エンブリオ>だ。
わたしが思っていたものを、抱えていたことを、実現したいことを、そのまま形にしようとしている子だ
煩わしく憎い全てを力任せに全部ぶち壊してしまいたい衝動そのもの。
彼女は、わたし以上にわたしらしい。
だから、世界でわたしだけはレヴィを否定できない。
『グゥ……ベヘモットの怪獣である私が人間サイズの小物に負けるわけには……。いずれ第二第三……第七形態の私が全ての人形を踏み潰してみせる……』
人形にボコボコに負けた後も、レヴィはそう言って悔しそうに唸っている。
その言葉は余人が聞けば悔し紛れだけれど……わたしとクラウディアはそう思わない。
彼女がわたしの願望そのものならば、いずれはわたしが望んだものになるかもしれない。
煩わしい何もかもを壊す、大怪獣に。
わたしの望みの卵は、<エンブリオ>となって此処に在る。
『クラウディア』
「もちろん。今後の特訓やレベルアップ、お手伝いしますわ!」
本当に話が早いや。
そして、分かってくれている。
レヴィだけでなく、わたしももっと強くなりたい。
それが、今のわたしの気持ちなのだと。
◆
それから沢山戦って、沢山負けて、わたし達は少しずつ強くなった。
下級の頃、レヴィがあまりにも死にすぎて、上級への進化には一年以上掛かってしまった。
下級の終わり頃にはガードナー獣戦士理論が流行して、わたしも恩恵に与ったけれど、それでもまだまだ<マスター>の中では中の下くらい。
一向に強者になんてなれないけど、そんなわたし達をクラウディアは応援してくれた。
負けて負けて負けて負けて負けて勝って負けて負けて負けて勝った。
上級の頃、レヴィのステータスが格段に伸び始めた。
ガードナー獣戦士理論との相性が良くて、わたし達はこれまでよりも明確に強さの階段を上っていった。
勝って負けて負けて勝って負けて勝って勝って負けて勝って勝った。
段々と、勝利が敗北を上回ってきた。
◆
そんな日々を送る中で、クラウディアとの思い出も増えてくる。
あるときは、「お兄様にガールフレンドができましたわ!」と言ってわたしの下宿に駆け込んできた。
『お兄様=自分自身じゃない?』と思ったけれど、当時はクラウディアとラインハルトは記憶を繋げてなかったので、ラインハルト側は同一人物であることに気づいていなかったし、自分の性別も男と自認していたらしい。
その後、色々あってラインハルトのガールフレンド……というには間に何段階かありそうなジュバと一緒に頼まれたクエストをこなした。
自分の別人格が勝手にじれったいラブコメするのってどういう気分なんだろう。
あるときは、親友兼片思い相手だった王国の王女の誕生日に何を送ればいいかと相談された。
『……お菓子とか服でいいんじゃない?』と言ったら、「それはこの前やりましたわ!」と返された。
「たとえばベヘモットなら何を貰ったら嬉しいんですの?」と聞かれたので、『経験値』と答えたら「女子力以前の問題ですわね……」とドン引きされた。
だってガードナー獣戦士理論に合わせてビルド練り直し中だったからレベル上げたかったし……。
結局、相手が読書も趣味だったので希少な本を送ることになり、希少本をレアドロップするらしいボスモンスターの討伐マラソンに付き合わされた。
後になって思うと、『経験値が欲しい』というわたしの欲求も叶えてくれたのだと思う。
あるときは、王国の王女が留学を終えて王国に帰ってしまい、クラウディアは初めて見るレベルで精神的に凹んでいた。
結局わたしはその王女と顔をあわせることはなかったけれど、クラウディアにとっては重要な人物であることはよく分かっている。
なにせ、今のクラウディアの人格自体がそのアルティミアと出会って生まれたものらしいから。クラウディアにとっては親友と好きな人とお母さんと一遍に別れたようなものなのだろう。
わたしには理解も難しい複雑な感情だけれど、とりあえず慰めて一緒にレベル上げに向かった。
あと、『……クラウディアって恋愛関係の相談多いな』ともちょっと思った。
あるときから、クラウディアは食料アイテム集めを依頼するようになった。
皇国の飢餓が目に視えて酷くなってきた頃だったと思う。
その中で同じクエストを受けたカタと知り合った。
わたしと同じ、メイデンかつガードナー系列の<エンブリオ>の<マスター>。
そのことでレヴィがニーズヘッグに対抗心を燃やしていたけど、相手のニーズヘッグは気にせず食べてばかりだった。
クエストの途中、自分達の<エンブリオ>のカテゴリーの話になったとき、彼はこんなことを言った。
「この前会った王国のメイデンが言っていたことなんだけどさ。『ここを一つの世界だと認識した上で、危機感を抱いていればメイデン、使命感を抱いていればアポストルが生まれる』……らしいよ?」
カテゴリー別性格診断が流行り始めていた頃の話だけど、それをメイデンが言っていたって言うのが不思議だ。
それにこの話が正しいなら、わたしは……何に危機感を抱いたんだろう?
◆
そんな時間を何年も過ごして。
クラウディアや彼女の関係者と交流を深めていったわたしは……昔ほど人間が怖いと思わなくなってきた。
段々と自分がこちらの世界で強くなっていることもある。
けれど、それを別にしても……少しずつ自分の心が穏やかになっていくのも感じていた。
そんな風に、この世界で生きて。
心身ともに、成長を果たして。
わたし達は……<超級>に到達した。
<超級>になって、わたし達は“最強”になった。
第七形態に到達したレヴィのステータスはどのガーディアンよりも高くて、【獣王】に就いたわたしはその全てを活用できた。
そして、必殺スキルはこの世界での最初の望みを叶えた。
わたし達は最大最強の怪獣になって、負けることなく、あらゆる敵を倒した。
神話級の怪物を、それすら超えた<SUBM>を、わたし達は倒した。
それ以外にも、多くの敵と戦って……。
そして――内戦でクラウディアを守るために皇国の人間と戦った。
それはかつてやろうとしていたこと。
『人間嫌いのわたしが怪獣になって、圧倒的な力で他者を蹂躙する』、その実現。
だけどその行為は、今のわたしにとって『やりたいこと』ではなくて……『やらなければいけないこと』になっていた。
かつては皇王になるつもりなどなかった……他のことに集中したかったクラウディアが色々あって『自分が皇王にならねばならない』と背負い込んだように。
今のわたしは、自分以外を理由に戦っている。
そのことを、ハッキリと指摘されたこともある。
あの内戦の最中、わたし達に一人で相対した<超級>……スプレンディダに。
「動物やら怪獣やらの顔色は判別つかないけど、それでも何となく分かるものだね!」
『…………』
「君、作業ゲー状態だね? 楽しんではいないでしょ?」
否定はできなかった。
かつてはクラウディアの期待に応えたいと、自分の望みに手を掛けたいと、必死に強くなった。
けれど、最強という頂に届き、かつての自分が望む姿になった後は……戦うことがあまり楽しくない。
自分達が強くなりすぎて<超級>になってからは【グレイテスト・ワン】以外に苦戦しなかった。
今のわたし達は、壊したいものを何でも壊せる。
今ならきっと【グレイテスト・ワン】にだってわたし達だけで勝てる。
そして、そこまで辿り着いてしまったから、戦いへのモチベーションも落ちている。
何より、壊したいものを壊せるのに……壊したいものがもうない。
時間が経ったからか、あるいはこちらでクラウディア達と関わったからか。
今のわたしに昔ほどの憎悪は消えかけている。
お父さんやお母さんを傷つけた人間ならともかく、こちらの人間に対する憎悪は……実感できるほどに強くはない。
『…………』
だけど、戦う。
モチベーションがなくても、憎くなくても。
それでもクラウディアを守るために必要だから敵は倒すし、蹂躙する。
容赦はしないし、油断もしない。
「怪獣にしては怒りの表現が足りてないネ! 怪獣映画をもっと観たらどうかな!」
『You shut up[うるさい]』
煽る風でもなく単なる感想としてその言葉を吐いただろうスプレンディダを踏み潰す。
けれど不死身の彼を倒せず、けれど真剣に戦い続ける。
彼のギミックを暴くために、あるいはただやられているように見える何かが起死回生の秘策を打ったときに対応できるように。
ただ、結局……スプレンディダとの決着はつかなかった。
戦っている間にクラウディアの方が戦いを終わらせて、皇国の内戦が終結したからだ。
◆
内戦のすぐ後に今度は王国との戦争が始まった。
『クラウディアの片思い相手がいる国と戦争になるんだ……』と疑問には思った。
けれどクラウディアがまた……色々と抱え込んだ顔をしていたから、わたしは彼女に付き合うと決めた。
また、『やらなければいけないこと』だ。
その戦争で、わたしは王国最強の魔法使いを倒した。
他にも多くの<マスター>を倒して、戦争にも勝てそうだったけれど……途中でカルディナが攻めてきたからそちらに急行した。
この戦場にはカタもいたけど、かつての彼とはまるで違っていて……話すこともなかった。
そうして戦っていると停戦になって……<マスター>にとってこの世界で最初の戦争は終わった。
◆
いつかの戦争再開に備えた準備期間。
わたし同様にあの戦争で活躍したローガンが調子に乗って、頭角を表したフランクリンが<超級>になっていた。
そして、色々あってその二人とチャットをするようになった。
同じ<超級>だけれど、性格は合わない二人だった。
ローガンは<超級>の力での作業ゲー同然の決闘を繰り返していて、わたしと違って自分の力を誇示する機会だと楽しんでいた。
フランクリンの方は自分や自分の居場所を護るために執拗に他者を攻撃していた。
フランクリンの方は、少しだけわたしに近い気がした。
クラウディアから自国の<超級>とはできるだけ仲良くしてほしいと言われていたけれど、わたしがチャットで話すことはあまりなかった。
基本的にローガンが調子に乗って、そんなローガンをフランクリンがギリギリまで煽るのがいつものことだった。
◆
クラウディアは皇王になって背負い込んだ責務のせいで、昔のようにわたしとは一緒にいられなくなった。
わたしも、大変なクラウディアを助けるために仕事をするけれど、それは『やらなければいけないこと』でしかなかった。
そんな日々を繰り返す。
作業のような戦いを繰り返す。
『やりたいこと』は見当たらない。
友達がいる以上、この世界から離れることはないけれど。
正負どちらの熱も……いつの間にかわたしの中から失われていた。
けれど、そんな日常を繰り返していたときに。
わたしは――シュウを見つけた。
◆
ある日、フランクリンが王国の幹部を暗殺する仕事を受けた。
一応皇国の重要任務だからわたし達もその話は聞いていた。
けれど実行当日、<超級>のフランクリンがなぜか失敗して、わたし達は一連の顛末が記録された映像を見た。
その映像の中に、シュウはいた。
地下の空間で、クマの着ぐるみが大量のワームを一方的に蹴散らしていた。
怪獣が他の怪物を蹂躙しているようにも、ヒーローが悪者を退治しているようにも見える、冗談のような光景。
<マスター>がモンスターを一方的に倒す光景はこの世界では珍しくない。普段のわたしも似たようなものだろう。
けれどなぜか、わたしはシュウの戦いに夢中だった。
彼そのものが、彼の振る舞いが、目を惹く。
子供の頃、お父さんと一緒にドラマや映画を見たときのような気持ちになった。
わたしの中で、忘れかけていた熱が燻り始める。
わたしは、シュウのことがとても気になった。
◆
それから、わたしもクラウディアから頼まれて王国に向かって。
ギデオンの街で、シュウと出会って。
あの夜のシュウ……【破壊王】の活躍を見た。
何万というモンスターの群れに立ち向かい、鎧袖一触に蹴散らしていく。
――まるでヒーローみたい。
それは正に、スクリーンの中のヒーローのようだった。
あのときの胸の高鳴りを、わたしは思いだしていた。
◆
それから、ギデオンで何度もシュウと会った。
お互いの正体を知りながら、牽制しあいながら、それでも交流を重ねて。
愛闘祭で、デートをして。
わたしは、わたしの気持ちを自覚する。
わたしは、シュウに恋をしている訳じゃない。
わたしは、シュウに過去を重ねて見ている。
ヒーローの姿を。
かつてのわたしが夢見ていた姿を。
そして思ったんだ。
わたし達は、シュウと戦わなければいけない。いいえ、戦いたい。
それはフランクリンがシュウの弟に向けている『自分がそうあれなかった姿』を否定したい感情とは違う。
怪獣になれたわたしと、かつて目指したヒーローそのものであるシュウ。
今の自分と過去の理想。
最強になった今のわたしと、過去のわたしが目指したもの。
それは……どちらが強いのか。
『やらなければいけないこと』ではない……わたしが『やりたいこと』。
作業ではなく欲求として、わたしはシュウと戦い、比べたかった。
◆
けれど、直後の講和会議でわたしの望みは半分しか叶わなかった。
シュウの機転で分断されて、レヴィだけが彼と戦った。
そして、その戦いでシュウの弱点までも見えてしまった。
あんな制限を抱えているなら、戦い方を選ばなければわたしが絶対に勝ってしまう。
また少し、熱が冷めていくのを感じた。
◆
そして、わたし達の次の……最後の戦いの舞台が戦争に決まった。
ルールを見て、賭けているものを知って、わたし自身が<命>に選ばれた。
それが意味するのは、シュウとの決着がどうしようもなくつまらなくなるということだ。
『やりたいこと』は、きっとできない。
「<命>の件、お願いしますわね、ベヘモット」
『うん。…………』
出会ったばかりの頃の……わたしよりもわたしの心に詳しかったクラウディアなら、今のわたしの気持ちも理解して何か他の言葉をくれていたと思う。
けれど、今のクラウディアにはそれができなかった。
……多分、もう限界なんだと思う。
『…………』
なら、わたしは、ここまでわたしの手を引いてくれた友達のために戦おう。
クラウディアのこれまでの、そして最後の頑張りを無駄にしないために……この戦争に勝つ。
自分のやりたいことではなく、友達のためにやるべきことをする。
『やりたいこと』よりも、『やらなければいけないこと』を選ぶ。
わたしの欲求よりも……クラウディアの方が大切だから。
フランクリンやローガンでは相性の悪いシュウを、わたしが倒す。
◆
そして、戦争の最終日。
今のわたしは……王国の<宝>を餌にシュウからクレーミルに呼び出された。
それは、望むところだった。
お互いに折れたフラッグは一対一。
ここで<宝>を壊してしまえば、皇国の負けはなくなる。
たとえフランクリンが皇国の<宝>を壊されたとしても、<命>が絶対に残る。
だから、二つ目のフラッグをわたし達が先に壊した時点で、皇国が戦争に勝利する。
自分のすべき作業を理解して、わたしはシュウの呼び出しに応じた。
つまらない決着でも、それが『やらなければいけないこと』だから。
◆
けれど、わたしは気づかなかった。
シュウが、クレーミルで何を狙っているのかを。
To be continued
(=ↀωↀ=)<次は三日後か一週間後
(=ↀωↀ=)<ちょっと身内の入院などでゴタゴタしてるのでその予定次第になります
◯初期レヴィ
(=ↀωↀ=)<簡単に言うと
(=ↀωↀ=)<見える範囲の敵にとりあえず突っ込むアクティブMOBみたいな生態してた
(=ↀωↀ=)<相手が純竜とか偶々他所から来た高レベルモンスターとかエリアのボスモンスターとかでも
(=ↀωↀ=)<お構いなしに突っ込むし静止も聞かない
(=ↀωↀ=)<リード引きずって走る犬のようなもの
(=ↀωↀ=)<そして負ける




